「B・K・B」の頭文字で置き換える芸風が印象的なバイク川崎バイク(通称・BKB)さん。コロナ禍以降、noteでショートショートを執筆されたり、YouTubeを配信されたり、活動の場を広げています。また「M-1グランプリ」の前説を務めるなど、盛り上げ上手としても知られています。そんなBKBさんに後編では自身の活動の幅や、好感を持たれるコミュニケーションのコツを伺いました。
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元美容師・バイク川崎バイクの転身マインド:大切なのは動機より行動
BKBに追い風が吹いた! キャリアのターニングポイント
──BKBさんはキャリアの初期、コンビを組まれていたんですよね。コンビを解散してからピン芸人としての日々が始まりました。
NSCに誘ってくれた地元の友達は半年で辞めました。そのあと「帽子屋お松」というヤツと「街の帽子屋さん」というコンビを組んだんです。帽子屋お松がめっちゃ面白くて、「こいつと組んだらなんとかなる」と思っていました。でもネタも全部お松が書いていたので、俺は「じゃない方」で。
──ピン芸人としてやっていくなら、ネタも自分で作らないといけないわけですもんね。
はい。だから解散したときは芸人を辞めようと思いました。「もう無理や」って。
──でも辞めずに活動を続けられました。その理由は何だったのでしょう?
そのころには周りに芸人仲間が増えていて、みんなが「一人でもやってみたらええんちゃう?」と言ってくれたんですよ。「失うもんなんかないんやし」って。中でも印象的だったのは「このままなんもせず2カ月くらい経ってから動くの、めっちゃ怖なると思うで。スベってもええから、来月のライブ出よう」という言葉。それを言われて、ネタもない中、ライブだけ決めた記憶があります。
──そこからピン芸人として走り始めて今に至るわけですね。ピン芸人になってから今までの中でターニングポイントを挙げるとしたらどこになりますか?
ターニングポイントと言えるかは分からないですが、いまだに覚えているのは29歳くらいに出たオーディション。当時は今と芸風が違って「俺はおもろい」と調子に乗っているところを見せるネタをやっていました。
大阪の劇場に出るためのオーディションなのですが、これが全然受からないんですよ。受からずに辞めていく芸人も山ほどいました。当時の僕はこれに合格するというのが最大の目標でした。そのオーディションに、あるグラビアアイドルが番組の企画として応募していて。芸人じゃないので仕方ないんですが、水着でスベり続けて会場がめちゃくちゃ冷めた空気になったんです。
その次の出番が僕で。近くにいたガクテンソクの奥田が「川崎さん! 振り切った方がいいです。『あの後に笑い取れるのは俺くらいや』くらい言った方がいいっす」って言ってくれて。そのマインドで出て行ったらめっちゃウケたんです。2分間ウケ続けて、「どうもありがとうございました」の「ありが」くらいで合格の音が鳴りました。あれは印象深い場面でしたね。
それ以降、お笑いファンから認知されるようになったし自信も付きました。「BKBに追い風が吹いた」と言われました。報われ出したのもそれくらいからだと思います。
芸人仲間に愛されるBKBが伝授する、コミュニケーションの心得
──さまざまな困難や葛藤を乗り越えて、現在はお笑い界でご自身の地位を確立されています。現在、このお仕事を続けている原動力は何ですか?
「笑う・笑かされることが大好きだから」ですね。楽屋とか、移動中のバスで、ずっと芸人仲間としゃべっていたいんですよ。芸人と一緒に笑い合いたい。仕事を辞めたら、その時間がなくなっちゃうわけじゃないですか。
ルミネの仕事をおろそかにしたらルミネの出番がもらえなくなって、芸人仲間が集まる「ルミネの楽屋」が味わえなくなる。それはきつい。モチベーションは「みんなに会いたい」ですね。つらいことがあったり、ネタでスベったりしても、その後の芸人とのやりとりに救われるんです。僕がやっているYouTube「美容室チャンネル」も芸人としゃべる場を作りたいからという理由でやっています。
──言い換えれば、職場の人間関係が良いということですもんね。
そうですね。じつは30歳で一度、芸人を辞めたことがあります。そのときも自分が尊敬している先輩や仲間たちが「川崎やったら大丈夫やで」「いつでも帰ってきたらいいよ」と言ってくれて戻ってこられた。そう思うとお金が稼げなかっただけで、当時から本当に環境は良かったですね。
──今のお話からも分かるように、BKBさんは交友関係が広く、多くの方に愛されています。良好な交友関係を築くコツがあったら教えてください。
顔色をうかがい過ぎないことです。普通に話しかけただけで怒られることはないでしょうし、少し失礼なことを言っても「何言うてんねん、お前」ってツッコんでくれて笑いになることが多い。もちろんあまりに失礼だと怒られるので、顔色をうかがう必要がある場合もあります。でも黙るとノーコミュニケーションになってしまうので、気を遣い過ぎて黙らないようにすることですね。
もちろん黙った方が良いときもあるので、その切り替えも大切です。僕も一時期「切り替え力」を意識していた記憶はあります。おかげで今は、急に元気にもなれますし、急におとなしくもなれます。
一発屋になれなかったBKBさん。活動の幅を広げる展望
──コロナ禍にはnoteで短編小説を書き、書籍化もされました。お笑いとはまた違う分野に挑戦したことで得たことはありますか?
得たものはめちゃくちゃあります。明らかに仕事の幅が広がりました。執筆を始めてから、舞台やドラマの脚本、「ネタを書いてください」みたいなオファーも来るようになって。仕事が倍になった感じです。
──その状況も含めて、執筆を始めたことはBKBさんにとって良いことでしたか?
絶対に良かったです。最近は何かに特化するのではなくて、色々なことをしたいと思っています。もし一発屋になっていたら、それだけを突き詰めていたと思います。世間では「一発屋」はネガティブな意味で使われることが多いですけど、なれるものなら僕は一発屋になりたかったんです。
ただ僕は「一発」を当てられませんでした。だから「BKB」ネタ以外もやりたい。一人コントやラジオでのおしゃべりもやりたいし、「M-1グランプリ」の前説などで盛り上げ役の代表格にもなりたいし、執筆もやっていきたい。なんならそのギャップでモテたい(笑)。とにかく「すごい!」って言われたいです。
──一口に「お笑い芸人」と言っても、テレビに出る・劇場に出る・地方の営業など、さまざまな方向性での活躍があると思いますが、BKBさんは今のバランスが一番心地良いですか?
そうですね。もうちょっとテレビにも出たいですけど、ここからさらにワッと売れる絵はもう浮かんでいません。あまりにテレビで売れると執筆もできなくなってしまうので、今のバランスがいいですね。あとは全体的に底上げができたらうれしい。でも気持ちは日々変わっていくので、それに身を任せて流動的でいたいです。
前説に定評のあるBKBさんがアドバイス。人前で緊張しない方法
──先ほど「盛り上げ役の代表格にもなりたい」とのお話もありましたが、BKBさんと言えば、前説での盛り上げにも定評があります。この記事を読んでいるビジネスパーソンにも、プレゼンなど人前で発表する機会があるかと思います。最後にそういった人たちに向けて、場を温める上でのアドバイスをお願いします。
慣れじゃないですかね。緊張するということは「うまくいくかもしれないし、うまくいかないかもしれない」「スベるかもしれない」と思っているわけですよね?でも慣れてないときなんか、スベるに決まっているんですよ。だから「温められないけど頑張る!」でいいんじゃないですかね。あとは準備運動が大事。ちゃんと大きい声を出すとか深呼吸をするとか。僕らも本番前にこうした基本的なことをやりますよ。
──それは意外ですね。芸人さんは、スッと舞台に出て行きそうなイメージがありました。
全然! あれはさんまさんが作り上げた芸人のイメージです(笑)。僕らは本番前にちゃんとストレッチして深呼吸して発声練習をしてから舞台に臨みます。僕は「ヒィアヒィア」とかも発声練習します。それで周りの芸人に「それは練習せんでええやろ!」とツッコませて事前にコミュニケーションを取る。事前に誰かと会話しておくと緊張感もほぐれやすいので、これもおすすめの方法です。
プレゼンの場合は、ウケを狙いにいくよりも「一生懸命、場をほぐしているんですよ」というかわいげを伝える方が場がほぐれそうな気がします。「(大声で)こんにちは! すみません! 声量間違えました」とか(笑)。
──それ、すごく場が和みそうですね。
本当ですか? じゃあアドバイスは「声量を間違えてください」で!(笑)
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元美容師・バイク川崎バイクの転身マインド:大切なのは動機より行動
【プロフィール】
バイク川崎バイク(ばいくかわさきばいく)
1979年生まれ、兵庫県出身。お笑い芸人。3年間、美容室に勤めた後、NSC大阪に入学。2007年にピン芸人として活動を開始。2014年、「R-1ぐらんぷり2014」決勝に進出。2020年にSNSで発表した小説が『BKBショートショート小説集 電話をしてるふり』として書籍化され、表題作が後に『世にも奇妙な物語』でドラマ化された。現在はnoteにてショートショートの発表、YouTubeの配信など活躍の場を広げている。
https://clinkme.jp/bkb_bkb
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