【今回の訪ね人】
たなか
音楽家・アーティスト。元ぼくのりりっくのぼうよみ。映画俳優やホスト、YouTuberなど、自己を媒体としてさまざまな表現活動をしている。現在はやきいも屋づくりに邁進中。
たなかさんTwitter
【今回の仕事人】
わっきゃい
動画クリエイター。YouTubeの動画が話題となり、テレビに出演。その後、日常のどうでもいいニュースを集めた『どうでもいい日常のニュース』が再び話題に。斬新なアイデアで動画の投稿他、広告のディレクションにも携わる。
わっきゃいさんTwitter
1ヶ月のうち1日しか働かない動画クリエイターの生き方
この家来るの二回目だなあ。
そんな感じしないよね。今日は何の企画なの?
「憧れの仕事人」に話を聞く企画で、わっきゃいの仕事のスタイルとか考え方が面白いから、今日はちゃんと聞いてみようかなと。めちゃ好きなんだよね。
それはありがとう。僕のやり方は動画クリエイターとしてはけっこう特殊だね。
そこが面白いんだよねえ。いま月に一日しか仕事してないんでしょ?
毎月最終日に1ヶ月あったことを思い返して、『どうでもいい日常のニュース』として動画を作って投稿するのが今の主な仕事だね。日常がコンテンツってことでいえば、毎日が仕事みたいなものだけど。
あの動画ってどのぐらいで作るの?
10時間ぐらいかな。動画作る日だけは朝6時に起きてるよ。まず片付けと機材の充電をするの。
そうか、月1回しか機材使わないから充電が必要なのか(笑)。それで何時まで作るの?
日によるけど19:00ぐらいかな。久しぶりに働くから、投稿したらもうリアクションも見ないで、たそがれて無になるよね。
無になるんだ(笑)。
それ以外の日は友だちとゲームしたり、散歩に行って社会と触れ合ったりしてるかな。たまに広告の仕事もするし、企画会議に参加することもあるよ。
やっぱYouTuberの動きじゃないよね、すごくいい意味で。そもそもわっきゃいが動画を始めたのっていつからなの?
動画そのものに関しては、もう相当前だね。小学校のうちから動画を撮ってたかな。アメリカで17歳まで育ったっていうのが大きいんだけど、アメリカって宿題の提出の仕方が自由なんだよ。ちゃんとまとめられていればどんな形でもいい。だから僕は動画を使ったプレゼンで課題を提出することが多かったんだよね。
日本だとそんなの全然ないなあ。でもなんで動画を使ってプレゼンしてたの?
小さい頃からアナウンサーに憧れがあったんだよ。話すのも好きだし、かっこいいなと思って。あとはその場でどうにかなるから(笑)。表情や声、身振り手振り、抑揚で割とそれっぽくなるんだよ。
たしかに今も一日でどうにかしてるしね。でも、簡単そうに見えてもそこには確かな技術があるよね?
そう。僕がやってるアナウンサー動画って、演技力と表現力がめっちゃ大事なんだよ。フォーマットだけを真似しても、本物の技術を身につけないとそもそも企画として成立しなくて、そこはアメリカで宿題をやってるうちに培われてきた部分が大きいと思う。
本物のアナウンサーになろうとは思わなかったの?
「アナウンサーになりたい!」と思っても、ちゃんと就職活動をして、アナウンサーになるとしたら三年くらいかかるし、いろんな縛りもありそうだなと。ただ、今はYouTubeっていう手段があるし、「自分の日常くらいなら伝えられる」とふと思ったんだよね。今ってあるものでやりたいことできるじゃんって。
最初から最後まで全部自分でやりたい「メイドイン自分」の精神
このパソコンでいつも動画作ってるの?
うん。僕の使ってるソフト原始的なんだよね。
え、待って。これ『Windows ムービーメーカー』じゃん(笑)。『Audacity』も入ってるし、2000年ぐらいで時代止まってるでしょ、このパソコン(笑)。
全部フリーソフトで動画作ってるね。
YouTubeのチャンネル登録者数40万人超えてるクリエイターなのに信じられない(笑)。やっぱりそういうところいいよね。
ありがとう(笑)。たなかくんは子どもの頃、憧れの職業とかあったの?
小学生の頃とかは、小説家になりたかったなあ。
たなかくんは本質がアーティストだよね。ぼくりり時代は、どちらかというと音楽という形で「自己表現」のスタンスをとっていたし、「たなか」になってからは「たなか」というキャラクターで人生を歩んでいるところを含めての自己表現になっている。
そうだね。
でも今は無職でしょ?
いや、実は最近けっこう働いててさあ。会社作ったりしたんだよね。やきいも屋さんをやろうかなと。あと6月には舞台に出たり、なんだかんだ忙しいんだよね……。
そうなんだ。今度見かけたら買うね。
ありがとう! 今は一貫して遊びと仕事が一体化してるかな。お金を稼ぐことにプライオリティを置きすぎないというか。楽しそうだなーってとこが原動力で、もちろん最終的には利益を出すようにするんだけど。だいたい今はこんなスケジュールで仕事してるなー。ただ、直接自分で手を動かすことは少ないかも。いろんな人に手伝ってもらってるよ。
へえ〜。でも自分で手を動かさないってことは、アイデアを思いついたら、誰かにお願いするわけじゃない? 僕はそれをしたくないんだよね。僕は「メイドイン自分」にこだわってるから、最初から最後まで全部自分でやりたいの。
メイドイン自分。
「自分発の、オリジナルな発想にこだわる」ってことかな。僕はなるべく競争を避けていたい性格だから、「自分発」の立ち位置を確立することでそれが実現できる。あと、結局僕は自分の発想が一番好きっていうのも強い。デザインまで全部やりたいし、結果的に頑固に見られてしまうこともあるんだけどね……。
なるほどなー。僕は自分より優れている人間を見つけてきて、自分が思いもしないアウトプットを返してくることに対して喜びを感じるタイプなんだよね。僕が曲を作っているとき、誰かはデザインを極めていて、また別なところではイラストに命を捧げている人がいて。それが混ざり合ったとき、キメラみたくなれる瞬間があって、それが面白い。
たなかくんはちゃんと俯瞰できているからこそ、人を信頼して任せることができるんだと思うな。
これって優劣とかではなく、流派が違うんだよね。でもわっきゃいがすごいのは、自分がやりたいこと、クライアントが満足すること、ユーザーが楽しむこと、この3つを絶妙なバランスで保ってるところだよね。もちろん本質的には全部の仕事は自分が楽しむためなんだろうけど、ちゃんとその三点倒立を意識しながら仕事をしているのが伝わってくるよ。
たしかに、いかにこの三点倒立を成し遂げるかというのをゲームとして楽しんでいるかな(笑)。
将来はどうなるかわからない。変わっていくのもいいことなのかもしれない
今後はどうしていきたいとかあるの?
なんにもない。将来なんてわからないから。「やりたいことをやる」っていう意味では、そのやりたいことを一生続けるんだろうね。動画コンテンツは今のところやめる理由が見つかってないし、楽しいからしばらくは続けていくんだろうなとは思う。たなかくんは?
うーん、聞いといてなんだけど、僕もないかなあ。
とはいえいつかは家庭を持つかもしれないね。
うん、子どもが4人ぐらいいるかもしれない。もし子どもができたら、性格も変わるのかなあ。みんなから「あいつ変わったな」みたいに思われそう(笑)。
そうなるといろいろ言ってられないもんね。「自分のやりたいことだけやっていたい」とか。
ただ、そういう風に変わっていくのもいいのかなと思ったりもする。それこそ第2章の楽しみがそこにはあるような……。
そうなると、今みたいにゲームやってゴロゴロしてらんなくなるね。
えー。いや、それはずっとしてたいなあ(笑)。
(文章/高山諒 カメラ/Hide Watanabe 編集/サカイエヒタ)
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