「書く瞑想」ジャーナリングで頭と心を整えよう!まずは1日1分からスタート

仕事や人間関係、将来のことなど、頭の中でぐるぐると考え続けてしまうことはありませんか?ネガティブなことを繰り返し考えていると、ストレスが生まれて、心にダメージが蓄積されてしまいます。そうならないためにも、思考や感情を整理して、前向きな気持ちを取り戻すことが重要です。 そんなときに試してほしいのが、「書く瞑想」とも呼ばれるジャーナリングです。マインドフルネスの専門家で、『書いて整える1分間 瞑想ノート』の著者である吉田昌生さんに、ジャーナリングの効果や実践方法などについて伺いました。

書く瞑想を始めた人の様子

書く瞑想「ジャーナリング」とは?

ジャーナリングで頭の中にあることを書き出す様子

「ジャーナリング」とは、頭の中にあるものを書き出す作業のこと。書く瞑想とも呼ばれ、マインドフルネスの一種として、近年注目を集めています。

しかし、ジャーナリングやマインドフルネスについて聞いたことはあっても、実践したことはないという人も多いかもしれません。そもそも、マインドフルネスとは、どういったものなのでしょうか? まずは、その概要について、吉田さんに解説してもらいました。

「私たちは普段、無意識のうちに過去の嫌な出来事や未来の不安についてぐるぐる考えたり、仕事でマルチタスクを行ったりして、想像以上に脳に大きな負担をかけています。そんなときに役立つのが、瞑想を通じて、“今ここ”に意識を集中させるマインドフルネスです。

マインドフルネスを行うと、脳の過剰な活動が鎮まり、脳が休まるので、ストレスを軽減させたり、集中力を高めたりすることもできます。Googleやインテルなどの世界的な企業でも、従業員のストレス軽減とパフォーマンスアップのために、研修で取り入れられているのです」

瞑想というと、坐禅のように、静かに座って行うイメージがありますが、頭の中にあるものをノートなどに書き出す「ジャーナリング」でも、マインドフルネスの効果が得られると吉田さんはいいます。

「ジャーナリングとは、頭の中に浮かんでいる感情や思考を、書き出して整理していくこと。手を動かして、書く作業に集中するので、脳と心が鎮まっていき、頭の中をクリアにすることができます。これが書く瞑想と呼ばれるゆえんです。

他の瞑想と違うのは、無意識下にあった不安や悩みなどを、書き出して “見える化”できること。自分の思考を言語化し、客観視してみると、ネガティブなことをぐるぐる考え続けてしまったり、感情に飲まれてしまったりするのを止められるのも、ジャーナリングの魅力といえるでしょう」

書く瞑想「ジャーナリング」の効果とは?

ジャーナリングでストレスを軽減するイメージ

ジャーナリングを行うと、具体的にどのような効果が得られるのでしょうか。吉田さんに詳しくご紹介いただきました。

ストレスが軽減され、免疫機能が向上する

「ジャーナリングは、ブログやSNSのように、誰かに見せるために書くものではありませんし、日記のように、起きたことを書くものでもありません。感情を抑えたり、書いた内容を整えたりせず、頭の中にあるものを自由に表現できるので、心を解放し、ストレスを軽減することができます。最近では、免疫機能が向上するという研究結果も出ています」

ありのままを受け入れられるようになる

「ジャーナリングでは、自分を非難したり、批判したりせず、ネガティブな感情も含めてありのままを書きます。すると、『どんな自分でも自分は自分だ』と、自己受容ができるようになり、自然と他者受容もできるようになっていくのです。結果として、共感力が高まり、心の知能指数とも呼ばれる『EQ』が高まっていくといわれています」

感情をコントロールする力や言語化能力が高まる

「手を使って書く行為は、感情のコントロールを司る『前頭前野』を活性化させるので、イライラや怒り、不安といった感情もうまくコントロールできるようになります。また、前頭前野は言語力にも深く関わっているので、言語化能力やIQも高まっていくと考えられています」

目標が明確になり、前向きに取り組めるようになる

「ジャーナリングでは、感情や思考を見える化することによって、自分を客観視できます。そのため、セルフカウンセリングやセルフコーチングとして活用することも可能です。

頭の中でぼんやり考えるのではなく、ジャーナリングを通じて書き出してみると、目標ややるべきことが明確になり、行動につながりやすくなります、さらに、ネガティブな感情やマイナス思考も受け入れられるようになるので、前向きな気持ちで目標に取り組めるようになるでしょう」

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書く瞑想「ジャーナリング」の基本のやり方は?

ジャーナリングに必要な用具を揃えるイメージ

さまざまなメリットがあるジャーナリングですが、具体的にどのように行えば良いのでしょうか。ジャーナリングの基本的な実践方法について、吉田さんにご紹介いただきました。

頭の中に浮かぶものをありのままに言語化していく

「まずは、頭の中に浮かぶものを書き出してみましょう。書き出すのは、ノートでも付箋でも、コピー用紙でも、何でも大丈夫です。できれば手書きの方が良いですが、スマートフォンやパソコンでも問題ありません。『洗濯物が溜まっているのが気になる』『明日の会議が不安だ』といったように、浮かんだままに書いてみてください。

文章だけでなく、単語や箇条書きでも良いですし、イラストや図でも問題ありません。考えて書くというよりも、頭の中にあることを躊躇せずに外に出していくイメージです。もし思いつかなかったら、そのまま『何も思いつかない』『書くことがない』など、ありのままを書きましょう。そうしているうちに、頭の中を言語化できるようになっていきます。

ただし、怒りの感情には注意が必要です。『頭にくる』『許せない』『ふざけるな』といった怒りばかりを書いていると、その思考パターンに入り込んで、余計にネガティブな感情が強くなってしまう可能性があります。

怒りは二次感情といって、悲しみや寂しさ、恐れ、罪悪感、劣等感といった一次感情を守るための防御として生まれるものです。そのため、『ひどい言い方をされて傷ついた』『本当は〇〇をしてほしかったのに、△△されて悲しかった』など、怒りの根底にある一次感情を書くようにしてください」

書き出したことを一つ選んで深掘りする

「書き出して客観視するだけでも、感情や思考は整理されますが、もし時間があるなら、書き出したものから何か1つ選んで、深掘りしてみてください。じっくり見つめ直してみると、悩みや苦しみを解消する手掛かりが得られるかもしれません。

例えば、最初のステップで、『上司にいつも意見を否定されて悔しい』と書いたとします。次のステップでは、書いた内容について、『本当はどうしてほしい?』『なぜ上司は否定するんだろう?』と、自分自身に問いかけてみて、浮かんだことを書いていきます。

『頭ごなしに否定せず、まずは意見を聞いてほしい』『信頼されていないのかもしれない』といったように、考えを書き出したら、それを相手に伝えるメッセージに変換します。このとき、大切なのは、上司を主語に置いて書かないこと。『あなたはいつも私の意見を否定しますよね』『信頼してくれないのはどうしてですか』といったメッセージは、実際に伝えたときに反発を招いてしまいますし、事態の改善にはつながりません。

『突き放されたように感じて、すごく悲しい。意見が違ったとしても、どの部分に賛成できないのか教えてほしい』『チームとして成果を出すために、信頼関係を築いていきたい』といったように、自分の気持ちや考えを建設的に伝えられると、相手との関係性も変わっていくでしょう。直接伝えなかったとしても、思考や感情が整理されて、気持ちがスッキリするはずです」

タイミングはいつでもOK!1分間から始めよう

「なるべく負担なく継続できるように、まずは1分間から始めてみましょう。1分でも効果は出るので、無理に長く続ける必要はありません。もし、じっくり考えたいテーマがあれば、20分、30分と時間をかけてやってみても良いでしょう。

行うタイミングは、いつでもOKです。朝であれば、今日のテーマや目標、達成したときの気持ちなどを書き出せば、やる気をアップできます。昼にやるなら、午前中を振り返り、午後へのステップにすると良いでしょう。夜はいろいろ考えごとをしてしまいがちなので、心を落ち着けるために、ありのままを書き出して、感情や思考を整理するのがおすすめです」

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書く瞑想「ジャーナリング」の効果をさらに上げるコツ

ジャーナリングの効果を高めるイメージ

ジャーナリングの効果を上げるコツがあれば、ぜひ知っておきたいですよね。効果を高めるポイントについて、吉田さんにご紹介いただきました。

自分に思いやりを向ける

「一番大切なのは、書いた内容を評価したり、批判したりせず、そのまま受け止めることです。自分の弱い部分やダメな部分に出会ってしまったら、そんな自分を受容し、許すように心がけましょう。

なかなかうまくいかないときは、『信頼の置ける親友だったら、なんて言ってくれるかな』『大切な人が同じように悩んでいたら、なんて声をかけるだろうか』と、想像してみるのもおすすめです。思いやりを込めた肯定の言葉を、自分にかけてあげてください」

テーマや問いかけを設定する

「書き出す前に自分に問いかけを行ったり、テーマを決めたりするのも良いでしょう。思考が湧いて、書き出しやすくなります。

ぜひやってみてほしいのは、感謝している気持ちにフォーカスして書いていく方法です。例えば、『居心地の良い家があって良かった』『いつでもスマホが使えてありがたい』『アイスクリームがおいしかった』など、些細なことでも構いません。当たり前に思っていることに、あらためて向き合って感謝するだけでも、ネガティブな感情が減っていきます。

『最近、不安に思っていることは?』『10年後、どうなっていたい?』といったように、現在の自分や未来の自分にフォーカスする問いかけもおすすめです」

おすすめのテーマ

  • 感謝していることは?
  • 最近、不安に思っていることは?
  • 今一番ほしいものは?
  • 今の自分を一言で表現すると?
  • 10年後、どうなっていたい?

定期的に振り返りをする

「書いたものは捨ててしまっても構いませんが、取っておいて、後で見返してみると、いろいろな発見があります。そのとき深刻になって悩んでいたことも、今になってみれば、何でもないように思えることもあるかもしれません。すると、『今の悩みも、時間が経てばちっぽけなものだと思えるだろう』と、気持ちが楽になるはずです。

さらに、自分が落ち込むときのパターンや、考え方の癖にも気づけるので、落ち込まないための対処法を考えたり、ネガティブ思考から脱したりするチャンスにもなるでしょう」

ジャーナリングでセルフコーチングを行うには?

不安や迷いを減らしていく人のイメージ

ジャーナリングは、テーマや書き出す内容を変えることで、さまざまな目的に応用できます。最後に、ジャーナリングでセルフコーチングを行う方法について、吉田さんにご紹介いただきました。

「まずは、目標を書き出して、明確にすることが大切です。もし、『チームリーダーに抜擢されて、良きリーダーとしてチームを引っ張っていきたい』と思っているのなら、自分にとっての理想のリーダーとはどんな人なのか、詳しく書いてみましょう。

次に、目標と現実のギャップを書き出します。『プレイヤーとして活躍しながら、部下の成長も促せるリーダー』が理想なら、『普段の業務で精一杯』『後輩をうまくフォローできていない』といった課題が見えてくるでしょう。その課題を解消するためにできることを書き出してみると、目標達成に近づく行動につなげられます。

なぜそれを達成したいのか、自分に問いかけてみるのもおすすめです。自分が大切にしていることや、価値観の軸が見えてくるので、目標がさらに明確になり、不安や迷いも減っていくでしょう」

まとめ

仕事をしていると、思い通りにいかないことも少なくありません。悩みのほとんどは、人間関係に起因するといわれていますが、物事の受け止め方や考え方の癖が変われば、人との関係の中でストレスを受けたとしても、うまくリカバリーできるようになっていきます。

まずは、無意識に考えていること、感じていることを書き出して、それをあるがままに受け入れてみましょう。悩みや不安を頭の中で反芻し続けるのではなく、一旦書き出してみると、思考や感情を整理でき、仕事にも前向きに取り組んでいけるようになります。ジャーナリングは、1日1分からでも有効です。今回の記事を参考に、気軽に始めてみてはいかがでしょうか。

話を聞いた人:吉田昌生さん
マインドフルネス講師、作家、一般社団法人マインドフルネス瞑想協会代表理事。世界40ヵ国を巡り、さまざまなヨガや瞑想を学ぶ。2009年からマインドフルネスの指導を開始。日本における「マインドフルネス」の啓蒙・普及に早くから貢献。スポーツクラブの瞑想プログラム、瞑想アプリの監修、 企業や大学での講演のほか、マインドフルネス瞑想の指導者を育成する講座も開催。YouTubeチャンネルでも、マインドフルネスに関する動画を配信中。

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