- ユング心理学における夢分析とは?
- 追いかけられる夢は何を意味している?
- 追いかけられる夢はどんなときに見る?
- 追いかけてくる相手別の夢分析
- 追いかけられる場所別の夢分析
- 追いかけられる夢の結末別の夢分析
- 追いかけられる夢を見ないようにするための対処法は?
- 夢はあなたにとって大切な知らせ
実在する人やお化けなどに追いかけられる夢を見たことがある人は多いかと思います。「追いかけられる夢」は心理学においてどのような意味を持つのでしょうか。また、どのようなときに見ることが多いのでしょうか。
ビジネスパーソンが置かれている心理状態を想定し、追いかけられる相手、場所、シチュエーション別の夢の分析と、そういった夢を見たときの対処法まで、ユング心理学に基づいた心理療法を行う臨床心理士の吉田美智子さんに伺い、分かりやすく解説します。
ユング心理学における夢分析とは?
ユング心理学とは、スイスの精神科医・心理学者であるカール・グスタフ・ユングが創始した心理学のことです。
ユング心理学において、夢分析は無意識のメッセージを解読する重要な方法として位置付けられています。ユングは夢を心の深層(無意識)からのメッセージと理解し、夢と向き合うことで自己理解や成長を促すと考えました。
夢は無意識からのメッセージ
人は、大人になるとさまざまな役割・責任を果たすことが求められるようになるため、自分の本当の気持ちや個人的な成長、希望、夢などは後回しにしがちです。その過程で、自分がかつて大事にしていたことを忘れてしまうこともよくあります。そのようなときに、無意識が「何か大切なことを忘れてはいませんか?」とメッセージを送ってくることがあります。それが夢なのです。
客体水準と主体水準
夢を理解するためには「客体水準」と「主体水準」という2つの見方があります。
客体水準では、夢の登場人物や状況を現実の出来事としてとらえます。一方、主体水準では、夢の登場人物や状況をその人自身の内面だととらえます。たとえば、「上司に追いかけられる夢」は、客体水準で考えると「仕事が未完成のため、上司が夢で催促している」と解釈できますが、主体水準では「何か自分では気づいていない課題があり、それを上司の顔をした自分自身が注意喚起しようと追いかけてきている」と解釈できます。
追いかけられる夢は何を意味している?
追いかけられる夢は、「何か自分が果たしていないことがあり、そのことを自分に注意喚起している」と解釈できます。それは、現実の仕事・課題を指していること(客体水準)もありますし、自分が見落としていることやないがしろにしていること(主体水準)を指すこともあります。
実際に仕事がとても忙しいときに追いかけられる夢を見ると、自分でも「仕事が忙しいからかな」と納得できるので、こういう時は客体水準で解釈しましょう。しかし、納得できない、理解できないと感じたら、主体水準で考えるのが望ましいです。
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追いかけられる夢はどんなときに見る?
追いかけられる夢はどのようなときに見ることが多いのでしょうか。ビジネスパーソンが置かれている状況を例に、具体的に解説していきます。
仕事のプレッシャーを感じているとき
仕事が忙しくて余裕のないときや、仕事で求める成果を出せるか不安に感じているときなどに、仕事関係の人や物事に追いかけられる夢を見ることがあります。
生き方が一面的になっているとき
日々の仕事や生活に追われてしまい、自分の感情や個人的なつながりをないがしろにしてしまっているときなどに、人間として大切なことを思い出させようとして、追いかけられる夢を見ることがあります。
抑圧していることがあるとき
例えば、子どもの頃に「泣くのは恥ずかしいことだ」と教えられて感情を抑制したり、優等生であることを求められて自分の本当の気持ちが言えなかったりという経験がある人もいるのではないでしょうか。
吉田さんによると、こういった自分の心の中に無理に押し込めてきたことがある場合に、今まで抑圧してきた感情などが、夢を通じて「そろそろ自分に目を向けてくれませんか?」「向き合ってくれませんか?」というメッセージを送ってくることがあるということです。
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追いかけてくる相手別の夢分析
誰かに追いかけられる夢を見る場合、大前提として追いかけてくる相手は「自分が現実で抱える課題」を表しています。追いかけてくる相手から考えられる、夢の解釈について解説していきます。
お化け・怪物に追いかけられる夢
追いかけてくる相手の姿は、現実で抱える課題に対して自分がどう感じているかが反映されます。そのため、夢の中でお化け・怪物に追いかけられるのは、抱えている課題に対して、自分が「見慣れないもの、恐ろしいもの」のように感じているからだと思われます。
例えば、これからの世界情勢や経済がどうなるのかわからず、漠然とした不安にかられているのかもしれません。基本的に不安が膨らむのは、どう対処すべきかわからないからです。少しでも現実的な対処ができるように、ニュースを見る、本を読むなどして、知識をつけるとよいでしょう。
職場の人に追いかけられる夢
職場の人に追いかけられる場合、その職場の人をあなたが普段からどういう存在だと認識しているのかを改めて考えてみましょう。「必要な存在だけど、対応は面倒くさい」と感じているならば、あなたは抱えている課題についても「必要だけど、面倒くさい」と感じていると考えられます。
また職場の人に対しては、身近な人と違って、社会的な顔で接することが多いでしょう。内心は不満を抱いているのに、無理をして接していることはありませんか。普段、職場の人に自分がどんな対応をしているか、振り返ってみましょう。
身近な人に追いかけられる夢
身近な人に追いかけられる場合、夢に出てきた人物が、あなたにとってどのような存在かによって解釈が異なります。
例えば、友だちに追いかけられる夢を見た場合、苦手な友だちであれば、その課題は自分の苦手なことを表しています。いつも優しい友だちなのに怖い顔で追いかけてきたのであれば、信頼を裏切られたと感じた出来事があり、そのショックを引きずっているのかもしれません。
このような場合は、まず自分の置かれている状況を振り返り、不安の原因を明確にしましょう。原因が把握できたら、信頼できる人に相談するなど、具体的な対処ができるかもしれません。
知らない人に追いかけられる夢
追いかけてくる相手が知らない人の場合に表しているものは、お化けや怪獣ほどではありませんが、自分にとってはなかなか遠く、受け入れ難い課題であることが予想されます。
例えば、初めて取り組む仕事を任されて大きなプレッシャーを感じていることはないでしょうか。こういった夢を繰り返し見る場合は、抱えている課題を自分1人で解決しようとせずに、まずは上司や同僚などに進め方について相談してみることをおすすめします。
大勢の人に追いかけられる夢
あなたの内面が、なんとかあなたに課題と向き合ってほしいと願ってはいるものの、あなたが拒絶しているために、大勢の人たちとなって追いかけてきていると考えられます。例えば、締め切りが差し迫っているのに、見ないふりをしているタスクはありませんか。そういったものがあれば先送りにせずに向き合ってみましょう。
また、大勢の人に追いかけられて孤独感を覚えているのであれば、現実世界でも、周りの理解が得られず孤立しているのかもしれません。もしそれが職場なのであれば、自分にも問題がないか振り返ってみましょう。また、信頼できる人に相談したり、仕事以外のつながりを持ったりするのも対策の一つです。
追いかけられる場所別の夢分析
夢で追いかけられる場所も、現実世界であなたが抱えている課題の性質を伝えるヒントになります。ここでは追いかけられている場所別に、夢の解釈を解説していきます。
職場
職場で追いかけられる場合は、働きすぎのサインかもしれません。常に仕事のことばかり考えていませんか。もし心当たりがある場合は、休暇をとる、意識してリフレッシュするなど、仕事から離れる時間を持つのが良いでしょう。
森の中
森の中で追いかけられる夢は、課題があるものの、それがまだはっきりしないことが考えられます。
例えば、自分のキャリアに悩んでいることはありませんか。はっきりと自覚していなくても、心のどこかで「働き方を変えたい」「留学したい」「別の職種に挑戦したい」と考えていることがあるかもしれません。この夢を見たときは、自分は現状をどう思っているのか、これからどうしたいのか、改めて振り返ってみるとよいでしょう。
トンネル
トンネルや迷路からは、課題があるのはわかっているものの、どう取り組めばよいかがわからなくて困惑している様子が伺えます。
長い間目標に向けて取り組んできたけれど、うまくいっておらず、この先どうすればいいかわからないと感じていることはありませんか。例えば、取得が難しい資格の勉強に取り組んでいたけれど、合格できないという状況や、やりたい仕事があって長年下積みをしてきたけれど、なかなか芽が出ず、今後について迷っているといった状況が挙げられます。このような場合は、信頼できる人に相談してみると新しい視点やアドバイスを得ることができ、方向性が拓ける可能性があります。
街の中
この夢は、あなたが夢の中の街をどう感じているかによって解釈が異なります。
知らない街でも心地よいと感じているなら、あなたはその課題に取り組むことに前向きであると考えられるでしょう。反対に、不穏な感じがする、周りの人が敵に見えるときは、その課題を受け入れがたいと感じていると考えられます。
例えば、予定している商談に対して、挑戦しがいがあると感じていたり、反対にプレッシャーや不安を感じていたりするときに、こういう夢を見るかもしれません。不安を感じている場合は、入念に準備を行い、プレッシャーを和らげるためのリラックス方法などを取り入れてみましょう。
追いかけられる夢の結末別の夢分析
追いかけられる夢の結末によっても、心理状態が違います。結末ごとの夢の解釈を解説していきます。
追いかけられて捕まる夢
追いかけられて、捕まってしまった場合、あなたの気持ちの準備はまだできていないけれど、その課題に取り組むことがどうしても必要であるため、夢の中で捕まっていると考えられます。
例えば、重要な会議やプレゼンが近づいていて、プレッシャーを感じている、または、上司に言いづらく、先延ばしにしていた報告を抱えているといった状況が考えられます。捕まるのは怖かったかもしれませんが、あなたが抱えている課題に取り組む覚悟を迫る夢であり、悪い夢ではありません。覚悟を決めて取り組んでみましょう。
追いかけられて逃げ切る夢
追いかけられて逃げ切る場合は、抱えている課題はあるけれども、自分では必要性を感じていないため逃げてしまっている状態です。
例えば、会社から取得を勧められていた資格の勉強を、つい先延ばしにしてしまっているようなことはないでしょうか。今回は逃げ切っても、また追いかけられてしまうかもしれません。向き合う覚悟を持った方がよいでしょう。
追いかけられて場面が変わる夢
追いかけられて場面が変わる夢を見ることはありませんか。これは追いかけられることが怖くて、まだ受け止められない時だと考えられます。夢は「場面を変える」ことで、プレッシャーを緩和しようとするので、自分はまだ、抱えている課題を受け入れる準備ができていない、不安に感じているのだな、と理解してください。
例えば、重要な会議やプレゼンが近づいているけれど、心の準備ができていないのかもしれません。今はまだ、不安が強くて自分を変えることは難しいと感じていたとしても、いずれきっと良い変化・成長が得られるはずだと信じていると、場面が変わらず、課題と向き合うことができるようになってきます。
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追いかけられる夢を見ないようにするための対処法は?
追いかけられる夢を見ないようにするためには、どのようなことを心がけるといいでしょうか。取り入れやすい対処法を紹介します。
リフレッシュやリラックスを心がける
追いかけられる夢を頻繁に見ることがあり現実で思い当たるストレスやプレッシャーがある場合は、日常生活を見直して、リフレッシュやリラックスを心がけましょう。生活リズムを整える、栄養バランスのとれた食事を摂る、身体を動かす、デジタルデトックスなどがおすすめです。
自分と向き合う
現実に追われて、自分がないがしろにしてきたことはありませんか? 少し時間をとって、自分と向き合ってみてください。休暇をとる、自然の中でゆっくり過ごす、芸術に触れる、音楽や読書を楽しむなども有効です。自分が本当に大切にしたいことに気づいたら、それを生活の中に取り入れてみてください。たとえば、趣味に打ち込む時間を作る、ゆっくり過ごす時間を作る、家族と話す時間を持つとよいでしょう。
夢はあなたにとって大切な知らせ
追いかけられる夢を見ることは、あなたにとって大切なことを知らせようとする心の働きによるものです。夢では怖く感じるかもしれませんが、必要以上に怖がる必要はありません。夢をきっかけに自分を振り返り、ビジネスパーソンとしてだけでなく、人間としても成長を重ねていけるといいですね。
監修:吉田美智子
心理カウンセリングルーム「はこにわサロン東京」代表。臨床心理士・公認心理師。外資企業勤務後、心理臨床の道を志す。臨床心理士の資格取得後は、東京都・神奈川県・埼玉県スクールカウンセラー、教育センター相談員などを経て、2016年に「はこにわサロン東京」を開室。主な技法は、ユング心理学に基づいたカウンセリング、箱庭療法、絵画療法、夢分析。日本経済新聞・読売新聞・日経クロスウーマンなどに寄稿し、メディアでも活躍中。著書に『声かけで伸ばす 内向的な子のすごい力』(ディスカヴァー・トゥエンティワン )など。
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