SNSアカウントを変えるように、何度でもリセットすればいい。ハラミちゃんが考えるこれからのはたらき方

YouTubeで飛躍のチャンスをつかみ取ったハラミちゃんは、どのような人生を送ってきたのでしょうか。キーワードは「何度もリセットする」ということでした。ハラミちゃんの「はたらく」ことに対する考え方や、働き方のヒントをお聞きしました。

※インタビュー前編はこちら
ピアニスト・ハラミちゃん誕生秘話! 会社員時代の休職を経て、リベンジはここから始まった

ハラミちゃんが考える「はたらく」とは?

――ハラミちゃんは、「はたらく」ことをどのように考えていますか。

ハラミちゃん:実はわたし、はたらくという行為がとても好きで。お金稼ぎが好きという意味ではなくて、単純にわたしのなかでは「はたらくこと=人生」という感覚なんです。

もちろん仕事では楽しいことばかりが起こるわけじゃありません。つらいこともあります。それに、「人の役に立ちたくて働いている」という言い方だと、言葉が美しすぎちゃってしっくりこないです。ただわたしの感覚として、働いている瞬間がもっともアドレナリンが出て気持ちが高ぶっていて。

会社員として働いていたときも、仕事が人生のほぼすべてを占めていました。たぶん自分が一番イキイキした状態でいられるのが、働いている時間なんだと思います。

――目標に向かって突き進むこと自体が好きなのですね。

ハラミちゃん:そうですね。逆にわたしは、暇な時間をどう過ごそうかって悩むタイプです。昔はそういう落ち着かない自分が嫌で、ゆっくりした時間をどうにかして過ごさなきゃと思ってました。でも最近はようやく開き直って、自分ははたらくのが好きなんだって思っています。

ただ、はたらくことが好きだって言い切れるのは本当に幸せなことだとも自覚しています。やっぱりそれは、自分が好きなピアノを弾くことが仕事になっているから。

もし私からピアノの仕事がなくなって食べていけなくなったとしたら、もう一度どこかの会社に就職すると思います。そしてまた、仕事に熱中する人生を続けるんじゃないでしょうか(笑)。

人生を切り開いたわけではない。ただ、狭い道を選んだだけ

――ハラミちゃんは、自らの手で自分の人生を形作ってきたように思います。そのような人生を切り開こうとする意識は持っていましたか。

ハラミちゃん:「ハラミちゃん」の誕生をいちから語ると、切り開いた感がすごいかもしれません。だけど正直、わたしが今の状態になれたのは結果論に過ぎないと思っていて。切り開いてきたという意識はあまりないですし、自分の行きたい方向へ行くために意図的に人生を形作っていくことは、なかなかハードルが高いと思います。

でも、一つ思うことがあって。音大を選んだとき、IT企業を目指したとき、休職してYouTube一本でやると決めたとき……わたしが人生において重要な選択をする際に心がけていたのは、「狭い道を通る」ことでした。

――「狭い道を通る」ですか。

ハラミちゃん:はい。毎回の選択で狭い方の道を選んで通っていくんです。すると、最終的に自分と同じ場所に立つ人はいなくなって、自分一人になる。そういう存在の人ってやっぱり価値が出ると思うんです。ニッチな領域かもしれないけど、その人にしかできない何か、語れない話が生まれると思っていて。

もしかしたらこれも、わたしの場合のみに言える結果論かもしれませんけどね。でも、もし自分の人生を切り開いていきたいと思う人がいれば、周りの人々があまりいない「狭い方の道」を選択していくといいのではないでしょうか。

人生は何度でもリセットしてみればいい

――今は人生100年時代とも言われ、同じ会社に一生勤める終身雇用制も限界を迎えつつあります。そんなこれからの時代、どういう働き方で生きていけばいいと考えていますか?

ハラミちゃん:父母の世代はおそらく、就職して定年まで同じ会社にいることが普通だった。だから結婚や出産、昇給などいろんなことを加味して、大きな緊張感を持って人生の決断をしていたと思うんです。

でも今って、良くも悪くも過去を気軽にリセットして、何ターンもの人生を送れる時代です。だからこそ、一つの決断をライトに下せるというか。リセットの負担が減っている気がしています。

わたしが初めてストリートピアノを弾いた日、今までの知り合いや友達とつながっているSNSアカウントをすべて絶って、新生ハラミちゃんのアカウントを作ったんです。そうしたら今まで気にしていた周りの目がすべて消し飛んで、まるで生まれ変わったような気持ちになって。

でもリセットの気軽さに気づいてない人は「1回やってみよう」にも怖気づいて、腰が重くなってしまう。だったら5年でも1年でもいいから、もっと自分の人生を短い単位で考えてみてはどうでしょうか。何回もアカウントを作り直していくように、生き方も変えていけばいいと思います。

――確かに今の時代、アカウントを変えれば簡単に生まれ変われますよね。

ハラミちゃん:会社員時代の出来事で、今でも印象に残っていることがあって。仕事がスランプですごくつらかった時期、仲良くしていただいていた先輩にカレーを食べに連れ出してもらったんです。

そのときわたしは先輩に、「自分の20代、本当にこれでいいんですかね」みたいなことをポロッと言いました。すると先輩は「本気でやろうと思えば、今日会社を辞めて明日から放浪の旅に行く、なんてこともできる。でもそれをやってないのがあなた自身の選択だよ」と言ったんです。

その言葉を聞いて、確かにその通りだと思いました。結局わたしは現状を変えることを恐れて、今はまだ辞めどきじゃない、と自分に言い聞かせているだけだなって。でも本当はいくらでも生まれ変われるし、やり直せる。そう納得してからとても気持ちが楽になったんです。

短いサイクルで人生を考えてみようと思ったからこそ、貯金が尽きるまでYouTube一本でいくという決心をすることができました。今は終身雇用の時代じゃないからこそ、何度も生まれ変わって短い人生を何回もやってみるみたいな、そういう生き方をしてみてもいいんじゃないかなと思います。

※インタビュー前編はこちら
 ピアニスト・ハラミちゃん誕生秘話! 会社員時代の休職を経て、リベンジはここから始まった

【プロフィール】
ハラミちゃん●音楽大学を卒業後、IT企業の会社員を経て、2019年にピアニストとしての活動を始める。YouTubeチャンネル登録者数は198万人、総再生数は5億回(2022年5月現在)。2022年1月、女性ピアニストとしては15年ぶりとなる武道館公演を開催した。2022年3月にはピアノカバーCDアルバム第2弾となる『ハラミ定食2~新メニュー揃いました!~』をエイベックスより発売。2022年4月からハラミちゃん過去最大規模となる全国ツアー「ハラミ定食2 全国ツアー ~新メニューお届けするぬ!~」を14都市25公演で行なっている。2022年9月には『ハラミちゃんリクエスト収穫祭 ~みんなで決める!!最強ピアノカバーBEST50~』を開催する。YouTubeチャンネル「ハラミちゃん〈harami_piano〉」。

取材・文=弥富文次
写真=佐坂和也
編集=小林雄大

【関連記事】
はたらく上では“負担”を半分に分け合いたい。男女2人組YouTuber・パパラピーズのこだわり
「他人からの評価なんてどうだっていい!」お友だち系YouTuber・そわんわんが考える“はたらくこと”
「ウソをつく回数」を数えたとき働き方が変わった!サラタメさんの考える「会社に求めすぎない働き方」とは
どうせはたらくなら「ワクワク」したい!ダンスユニット・エグスプロージョンが再定義した「はたらくこと」

page top