あの人のおしごと見学〜イラストレーター・五島夕夏をシンガーソングライター・マナミが訪ねる〜

子どものころ夢みた仕事。大人になった今でも気になる仕事。 そんな憧れの仕事を生業とする人物を訪ね、仕事を始めたきっかけや仕事観について対談する本企画。第三回目となる今回は、シンガーソングライターのマナミさんがイラストレーター・五島夕夏さんを訪ねます。

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【今回の訪ね人(左)】
マナミ
シンガーソングライター。2001年にアコースティックデュオ「アニーポンプ」を結成し、2010年にメジャーデビュー。その後2011年にシンガーソングライターが集まる音楽ユニット「Goose house」に加入。2018年にハウスをとびだし、「世界一音楽を楽しむ場所」を掲げ、新プロジェクト「Play.Goose」を発足。2019年8月にはソロとしては初のMini Album「PATCH VIDE[0]」をリリース。全国でライブ活動も精力的に行っている。
マナミさんTwitter

【今回の仕事人(右)】
五島夕夏
1992年7月18日生まれ。桑沢デザイン研究所卒。学生時代に出会ったロシアの絵本に大きく影響を受け、絵本画家を志す。現在はフリーのイラストレーター・ライターとして活動しながら、グッズの販売やファッションブランドのノベルティデザイン等、活動は多岐にわたる。
五島夕夏さんTwitter

初めて仕事でお金をもらったことは、忘れられない特別な思い出になる

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マナミ今日も五島はかわいいなあ。

五島なにそれ、あらたまって(笑)。

マナミ五島とはいつも会っているから、いろんな話をしてきたけれど、今日は仕事の話を深掘っていきたいなと思って。この企画の話をもらったとき、いい機会だ!って。

五島確かに、じっくり話すっていうのもいいね。

マナミ私、実は絵を描く人になりたかったんだよね。

五島え、そうだったの?

マナミお母さんが絵を描く仕事をしていたから、たぶんその影響が大きいんだけど、小さいときは絵画教室にも通ってたの。そこから絵を描くのが好きになって、漠然と漫画家とか絵本作家とか、そういう絵を描く職業に憧れを持つようになったんだよね。

五島そんな話、初めて聞いた。

マナミでも成長するにつれて、いつの間にか筆がギターになっていったんだよね(笑)。

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▲マナミさんの幼少期

マナミ五島は小さいころに憧れていた職業とかあるの?

五島私はずっと絵を描く人になりたかったね。

マナミそうなんだ! じゃあちゃんと夢を叶えてるんだね。

五島できないことがすごく多かったから、むしろ「絵しかできない」と思い込んでいて。両親がどちらも絵に関わる職業だったこともあって、「私はそういう運命(さだめ)を持って生まれてきた」と思ってたの。

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▲五島さんの幼少期

マナミなるほどね〜。でも五島は本当に絵の仕事が天職だと思うな。毎回欠かさず個展に行ってるけど、毎回感動するもん。いつもこうやって描いてるんだね。……あ! その色、五島の作品でよく見る色だ!

五島よく見てるね〜。こういう淡いグリーンとかピンクが好きでよく使うの!

マナミ綺麗だなあ。五島の絵には必ず救いがあるんだよね。「ひとりじゃないよ」 「そのままでいいんだよ」って寄り添ってくれるように、自分でも触れないような心の奥の傷や痛みをそっと撫でられている気持ちになるの。

五島嬉しい。ありがとう。

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マナミ小さい頃から絵を描く職業になりたいと思っていて、実際に仕事になっていったのはどういうタイミングだったの?

五島そうだな、私の場合はSNSのおかげかな。学生時代、サロンモデルをやってたときに「イラストを描いてます」とツイートしたら反応してくれる人がいて、そこからDMとかで「絵の依頼をしていいですか?」と、仕事になっていった。初めて絵を描いて渡したときは、渋谷とかで待ち合わせて、絵とお金を交換して(笑)。

マナミ怪しいやりとりみたい(笑)。

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五島そのときは絵が一生の職業になるっていう自信がなかったから、「学生のうちだけでも続けていけたらいいな」ぐらいの気持ちだった気がする。マナミは?

マナミ私は24歳のときにデビューをしたんだけど、そのときに初めて歌でちゃんとお金をもらったんだよね。といっても、もちろんアルバイトしながらじゃないと暮らしていけなかったんだけど。それでも「好きな歌を歌ってお金をもらっていいの?」っていうくらい、嬉しかった記憶がある。

五島初めて仕事でもらうお金ってやっぱり特別だよね。

マナミそのお金で、お父さんを食事に連れて行ったんだ。ずっと行きたいって言ってた創作居酒屋で、そんなに値段も高くないんだけどね。とにかく美味しかったなあ。

五島うわー、すごくいい話。

「いつでも楽しいわけじゃない」喜びのピークが異なる、歌と絵

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五島今はソロでもグループでも活動していて忙しいと思うけど、どんな生活をしているの?

マナミ私の場合、あんまり時間に縛られてなくて、朝から活動するときもあれば、夕方からのときもあるね。ライブが近ければほぼ毎日昼から夜までスタジオだし、レコーディングの前2ヶ月とかは、基本的に制作期間になって、昼夜問わずずっと制作してるよ。基本的には自宅でやるか、メンバーといっしょにスタジオにこもるか、詞を書くときはファミレスで朝まで書くこともあるかな。

五島そこは私も同じ! 朝起きられないときは起きないし、夜眠くないときは眠らないし、描きたいときは描くし……わりと気ままにやってる。でもやっぱり展示の前なんかは、1ヶ月間ぐらい毎日ひたすら描いてるかな。今は展示が終わって2週間くらい経つけど、本当になんにもしてない(笑)。

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マナミ私もオフをもらったら、そんな感じ(笑)。まずお家のことをして、お布団干したりとか、猫を飼っているから、猫をこねたりとか。

五島猫をこねる(笑)。

マナミ制作期間とかスタジオにこもっている時間はある意味修行みたいな感覚に近いかなあ。

五島そうなの?

マナミいつでも楽しいわけじゃない。でも、歌が形となって、ファンの人に届いて、笑ったり泣いたりしてくれるのを見た瞬間、すごく救われるの。

五島うんうん。

マナミ私にとって歌は、「受け取ってくれる人がいるからこそ生まれる」って意識があって。私が今日まで歌えるのは、支えてくれてるファンの方たちのおかげだから、誰かの人生が動く瞬間を見るのがすごく嬉しいんだよ。私の存在意義や喜びは、そこに繋がってると思う。

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五島ライブを見てると本当にそれを感じるな。マナミが歌い出すと、観客のみんなが「うわーーーーっ」ってなるんだもん。ステージに立って声を出した瞬間に、人の心の中を一気に感動へと持っていけるあなたに私は憧れてるよ。

マナミなんか照れるなー(笑)。五島にとってそういう気持ちいい瞬間ってどんなときなの?

五島私は描いているとき。喜びのピークがあるとすれば、描き終わって紙を持ち上げて、「できた!」ってときだね。誰かの目に触れたときももちろん嬉しいんだけど、そのときはもう自分が描いたものじゃない感覚がちょっとある。描き終わると自分の体からは離れて「新しい生き物」がいる感じ……。

マナミへえ〜、不思議な感覚。

末永く長く歌い続けること、描き続けること

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五島絵を買ってもらったときも「お迎えしてもらってよかったね」みたいな気持ちになる。自分が褒められているというよりは、作品が褒められている感じのほうが近い。だから、描いてない瞬間は全然健やかじゃないよ(笑)。売り上げも気にするし、悩むことのほうが多いかな。

マナミそういうときはどうするの?

五島わたしはきれいなものを見てる。

マナミきれいなもの?

五島目や心が「わー!」って語彙力がなくなるようなものを見るの。昨日は咲いてなかった花を見つけたときや、いつも見かける野良猫がある日2匹で歩いてるのを見かけたときとか。そういうときに「わー!」ってなる。

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マナミちょっとわかるかもしれない……。それは私たちの仕事が心の形を「作品」にすることだからなのかもしれないね。心が動く瞬間ってとても大事で、猫を撫でているとき、「こんなにあったかくて気持ちいいのに、私より先に死んじゃうのかな」って悲しくなるときがあるの。たぶん客観的に見たらくだらないことでも、くだらなくない。決して健やかなことだけが正解じゃなくて、むしろ、ちょっと落ち込んでるくらいの方が作品になったりして。

五島落ち込んだときはいつも支え合ってるしね(笑)。

マナミそうだね。いつも本当に救われてるよ。心が死なないように、一生懸命栄養を与え続ける存在がいるって心強いことだなって思う。だから、とにかく健やかにまっすぐ生きて、おばあちゃんになっても歌っていたいな。

五島そうだね。わたしも、一生描くことが1番の目標だから、どんなにスランプが長くても、心の動きがゆっくりになっても、死ぬまで描いていたいなって思う。シワシワのおばあちゃんになってもマナミの歌聴きに行きたいよ(笑)。

マナミ私も、ヨボヨボでも五島の絵を見に行きたいや(笑)。

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(文章/高山諒 カメラ/Hide Watanabe 編集/サカイエヒタ)

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