昨今のIT分野でよく耳にするようになったトレンドキーワード、「IoT(Internet of Things:インターネットオブシングス)」。聞きなじみのないという人も多いかもしれませんが、IoTの加速により、今後各業界は大きく変化し、市場規模も拡大していくと想定されています。
そこで今回は、IoTとは何か、また、今後ビジネスにおける各分野がどのように変わっていくかについて、ITコンサルタントの栗原潔さんに伺います。
IoTの定義
まず、現在盛んに使われているキーワード「IoT」の定義について、「おおまかには『身の回りにある物理的な“モノ”がインターネットを経由して互いにやり取りしたり、クラウドにデータを提供したりすることで生まれるソリューション』と考えればよいでしょう」と栗原さん。
また、家電製品のように、これまでにもコンピューターを内蔵したモノは数多くありました。そうしたモノとの違いについて、「IoTのポイントは、コンピューターを内蔵した個々のモノがバラバラに稼働するのではなく、ネットワークを介することで相互に情報をやり取りできるようになる点」だと語ります。
IoTの導入による身の回りの変化とは
昨今のビジネストレンドとして挙げられるようになったことで、IoT=最新技術とイメージしがちですが、実はIoTが私たちの生活に利便性をもたらした事例は以前から存在していたのだそうです。
「例えば、電気ポットにネット接続機能を搭載することで使用状況を確認できるようにし、一定時間使用されない場合に家族へメールを送信することで、一人暮らしの高齢者の見守りを行う、というサービスが以前からありました。これはIoTの初期の事例といえます」
それでは、身近なモノへのIoTの導入が加速することで、今後私たちの身の回りはどう変化していくのでしょうか。
「今後は外出先からスマートフォンで家の冷暖房を調整するといったことも、安全規制の問題が解決されれば普及していくでしょう。また、スマートメーター(ネット接続機能を備えた電気メーター)による自動検針により、電力会社が人件費を削減でき、電気料金の低減に結びつけられる可能性もあるでしょう」
IoTによってもたらされる各分野の変化
「IoTは物理的な“モノ”を使用するあらゆる領域に影響を与えるため、実質的にIoTの影響を受けない産業はないと言ってよいでしょう」と栗原さん。特に大きな変化が表れると予想される分野について、次のように語ります。
◎製造分野
「製造業では、IoTの延長線上にある考え方として『Industry 4.0』という概念が提唱されています。『第三次産業革命(コンピューターによる自動化)に続く第四の産業革命』という意味であり、工場内外のさまざまな機器を連携させることで、生産性を大きく向上させられるようになると想定されます。『Industry 4.0』はドイツのシーメンスやフォルクスワーゲンなどのメーカーが提唱した概念ですが、今では日本を含む世界的な潮流となりつつあります」
◎自動車分野
「自動車の世界には、IoTを生かしたシステムとして、ITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)があります。現在のカーナビやETCの機能をさらに推し進め、ネットワークを介して自動車どうしがデータをやり取りしたり、クラウド・サービスを提供されたりすることで、今後、さらなる渋滞の解消や事故の削減に結びつけることができるようになるでしょう。現在は、大手自動車メーカーのすべてがITSへの取り組みを開始していると言ってよいでしょう」
◎物流分野
「物流の世界では、例えば、米UPS(United Parcel Service)が配送車にGPSとネット接続機能を搭載することで、配送センターにおいて配送車の動きを把握し、効率的で最適な配送ルートを導き出すといった取り組みが成果を挙げ始めています。また、将来的にはAmazonが試行しているようなネット接続されたドローンによる商品配送も特定分野では普及していくでしょう」
◎医療分野
「医療の分野では、センサーを搭載したウェアラブル装置を身につけることで、体温、脈拍数、血圧等を測り、私たちの健康状態をリアルタイムでモニタリングできる仕組みが提供されることで、健康増進や救命に役立つことが期待されます」
IoTは必然的なメガトレンド
最後に「IoTは必然的なメガトレンドであり、長期的に見れば、IoTによる物理的な“モノ”の世界とデジタルなコンピューターの世界の融合が進んでいくことは確実」と語る栗原さん。今後私たちの生活をますます便利に、そして多様化させていくIoTについて、ぜひこの機会に理解を深めておきましょう。
※この記事は2016/03/03にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています
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