地頭とは?地頭がいい人の特徴と鍛え方を分かりやすく解説

「地頭」は、論理的思考力やコミュニケーション能力など、知識に依存しない社会的能力を指す言葉として使用されています。本記事では、そもそもの意味や地頭がいい人の特徴、ビジネスパーソンが地頭を鍛えるメリットやその鍛え方まで、専門家監修のもと、分かりやすく解説します。

地頭がよくビジネスで成功する人のイメージ

「あの人は地頭がいい」といったように、「地頭」という言葉を聞いたり、使ったりしたことがある人も多いのではないでしょうか。 地頭は、ビジネスシーンで求められることの多い能力ですが、そもそも何を指すのか説明するのが難しい能力でもあります。

そこで今回は、その意味や地頭がいい人の特徴、ビジネスパーソンが地頭を鍛えるメリット、 鍛える方法について、社会人基礎力協議会の代表理事・拓殖大学商学部教授の長尾素子さんに伺った話をもとに、分かりやすく解説します。

「地頭がいい」とは? その意味を解説

地頭がいい人が仕事をスムーズに進めるイメージ

そもそも「地頭」とは、何を指すのでしょうか? まずは「地頭」の意味や、一般的に使われることの多い「地頭がいい」という言葉の意味を見ていきましょう。

そもそも「地頭」とは?

「地頭」は約10年前に、辞書に登場した新しい言葉のようです。2012年発行の『大辞泉 第二版』ですでに紹介されていますが、正式な言葉として掲載していない辞書もまだ多くあります。

「地頭」を紹介している辞書では、「生まれつき備わっている頭の良さ」、「大学などの教育で与えられたものではないその人本来の頭の良さ」、「一般に知識の多寡ではない論理的思考力やコミュニケーション能力など」などと定義されています。

ビジネスの世界では、こうした定義から派生して、「論理的思考力やコミュニケーション能力など、知識に依存しない社会的能力を備えた人」のことを「地頭がいい」と表現する場合が多いようです。

「地頭がいい」とは?「頭がいい」との違いは?

「地頭がいい」という表現の意味には、知識やスキルを持っているだけでなく、それらをもとに論理的に考え、迅速に判断し、実行できるという意味が含まれています。

一方、「頭がいい」という表現は、一般的に「計算が早い」、「幅広い教養がある」といった意味で使われる場合が多いようです。また、学校では、成績が良いと「頭がいい」と評価されることも多いでしょう。

しかし、こうした「頭の良し悪し」が、必ずしも社会に出てからの評価や仕事の成果と一致するとは限りません。ビジネスシーンでは、論理的思考力やコミュニケーション能力などを使って、持っている知識やスキルを他者のために役立てることが重要になってくるのです。

ビジネスシーンで地頭が求められる理由は?

ビジネスシーンでは、臨機応変な判断力や対応力が求められる場面も少なくありません。そういった場面では、知識やスキルをいくら持ち合わせていても、対応できないこともあるでしょう。

さらに近年では、AIやIoTの普及により、自動化される仕事も増えています。そのため、知識の豊富さよりも、IT技術を活用して社会に役立てられる地頭の良さがますます求められているのです。

地頭がいい人の特徴

物事を複数の視点から捉えて的確に説明する人

一般的に「地頭がいい」といわれる人は、どんな人なのでしょうか。ここからは、地頭がいい人の主な特徴を解説します。

情報収集力・分析力がある

地頭がいい人の特徴として最初に挙げられるのが、情報収集と分析に長けている点です。こういった領域はAIの得意分野ですが、AIも万能ではありません。情報が偏っていたり、間違った情報を「正しい」と認識したりするリスクもあるでしょう。

地頭がいい人は、情報収集力だけでなく、「適切なエビデンスに基づいた情報か」「倫理的に問題がないか」といった点からも判断し、実際に活用できる情報なのか見極める洞察力も備えています。

判断力・実行力がある

ビジネスには課題がつきものですが、課題を解決するには、「いつ」「どのように」「誰がやるのか」といった各要素を適切に判断し、アクションに移す必要があります。

課題解決のためのアイデアを出せる人はいても、それを判断し実行までやり遂げられる人は決して多くありません。地頭がいい人は、こうしたプロセスを実際にアクションに移し、課題解決へと導くことができます。

視野が広い

地頭がいい人は、自分の考え方や行動に固執せず、さまざまなことに関心を持つ傾向があります。そのため、失敗を恐れずにチャレンジしたり、異なる意見や未知の考え方を受け入れたりすることで、自身の視野をさらに広げていくことも可能です。

物事を複数の視点から見ている

ビジネスシーンでは、業務やクライアント、課題などについて、情報を集め、深く理解する必要があります。地頭がいい人は、カメラレンズの焦点距離を変えるようにさまざまな視点から物事を見て、分析や判断を行っているのです。

例えば、山を遠くから眺めるのと、1本1本の木に焦点を当てるのとでは、見えてくるものは異なりますが、事実を理解するにはどちらの視点も欠かせません。このように業務やクライアントなどを多面的に観察し、正確な姿を捉えることで、高い成果を上げているのも、地頭がいい人の特徴です。

コミュニケーション能力が高い

地頭がいい人は、コミュニケーション能力にも優れています。プレゼンテーション力や論理的説得力といったスキルにとどまらず、自分とタイプが違う人とも向き合い、状況に応じた効果的なふるまいを行うことができるのです。

人は論理的であると同時に感情的でもあります。その両面を理解し、コントロールできるのも、地頭がいい人の特徴といえるでしょう。

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地頭は今からでも鍛えられる!

自己研鑽で地頭を鍛える様子

「地頭は生まれつきの能力で、あとから鍛えるのは難しいのでは?」と思う人もいるかもしれません。しかし、社会人基礎力の育成に携わる長尾さんによると、ビジネスシーンで求められる「地頭の良さ」は、今からでも鍛えることのできる社会的な能力なんだそう。

人には生まれついての「才能」や「センス」が備わっていますが、そうした先天的な能力に恵まれていなくても、努力によって伸ばせるものもあります。

水泳に例えて考えてみると、生まれながらに運動神経が良く、すぐに泳ぎをマスターして、選手を目指すような人もいるでしょう。しかし、全員が全員、選手を目指す必要はありません。誰でも熱心に練習すれば、ある程度は泳げるようになります。それと同様に、地頭も努力によって伸ばすことが可能です。地頭を鍛えると、以下で紹介するようなメリットも得られるので、ぜひ鍛えていきましょう。

ビジネスパーソンが地頭を鍛えるメリット

楽しく仕事を進める様子

ビジネスパーソンが地頭を鍛えると、多くのメリットを得ることができます。具体的には、次のようなメリットが期待できるでしょう。

周囲の信頼が得られる

地頭を鍛えておくと、意見や判断を求められる場面で的確で説得力のある発言ができるようになり、物事を迅速に進められるでしょう。すると、自分の仕事が捗るだけでなく、「あの人に相談すれば、仕事が捗る」、「課題が解決する」といったように、クライアントや上司、同僚たちからの信頼が集まります。その結果、任される仕事の範囲が広がり、チャンスが増え、仕事のやりがいも大きくなるでしょう。

仕事に対して主体的に取り組めるようになる

地頭を鍛えて物事を俯瞰できるようになると、自分が今やっている仕事が全体のプロセスの中でどんな役割を担っているのか理解できるようになったり、意義を見出したりできるようになります。

また、自分の裁量の範囲内で工夫や判断を行えるようになり、仕事をポジティブに捉えられるようになるでしょう。その結果、仕事に対して主体的に取り組めるようになるので、やりがいや面白さを感じやすくなります。

成長を実感できるようになる

地頭を鍛えることで視野が広がると、どんな経験でも「今後に活かせないだろうか」と前向きな視点で捉えられるようになり、考え抜く力や課題発見力が身につきます。過去の失敗についても、ただの失敗で終わらせず、失敗の原因を分析し、改善点を導き出せば、自身の成長につながるでしょう。

できなかったことができるようになるのは、誰でもうれしいものです。人は成長を感じられると、自然と次へのチャレンジに向かっていけます。すると、さらに成長を実感できるので、好循環を生み出すことができるでしょう。

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地頭を鍛える方法

「選択」を通して判断力を磨く様子

鍛えるメリットの多い地頭ですが、具体的にどうしたら強化できるのでしょうか。ここからは、日ごろから取り組める地頭のトレーニング方法を紹介します。

批判的思考力を身に付ける

批判的思考(クリティカルシンキング)とは、当たり前と思われていることを異なる視点で考えること。批判的といっても、物事を否定的に考えるネガティブな思考法ではありません。これまで当然だと思っていたことに対して疑問を持ったり、自分の考えにバイアスがかかっていないか振り返ったりすることで、ものごとを多方面から深く理解するための思考法なのです。

例えば、多くの人が「英語を勉強することは良いことだ」と考え、英語学習に取り組んでいます。ですが、改めて考えてみると、「英語を勉強する目的はなにか」「ほかの外国語ではいけないのか」といった疑問も浮かんでくるでしょう。こうした疑問を一つひとつ追求していくと、英語学習の本質が見えてきます。

実際にトレーニングに取り組むときは、ニュース記事や書籍などを活用するのがおすすめです。書かれていることを鵜呑みにせず、疑いを持ちながら読むと、批判的思考力を身につけることができます。

日ごろの「選択」を通じて判断力を磨く

わたしたちは普段から、小さな「選択」を繰り返して生活しています。こうした選択を通じて、判断力を磨くのもおすすめです。

例えば、レストランで料理を選ぶ場合、食べたいものを直感で注文するのも良いですが、「予算が○○円だから、栄養のバランスも考えて、○○と○○にしよう」といったように、根拠や合理性を考えて注文すると、判断力を高められます。

なかなか決められない人は、なぜ迷ってしまうのか考えてみると、自分の癖に気付けるかもしれません。こうしたトレーニングは、「仕事でも同じような癖が出ていないだろうか」と振り返るきっかけになり、仕事にも応用できるようになるでしょう。

新しいことにチャレンジしてみる

ミシガン大学ビジネススクールのノエル・M・ティシー教授は、人が成長するには、心地良い「コンフォートゾーン」を出て、適度な負荷がある「ラーニングゾーン」に身を置くことが大切だと提唱しています。

例えば、全く痛みを感じないコンフォートゾーンで柔軟運動を続けても、体はなかなか柔らかくなりません。痛みを少し感じるラーニングゾーンまで体を曲げるようにすると、柔軟性は増していきます。

新しいことへの挑戦はまさに、緊張やプレッシャーを感じるラーニングゾーンに身を置くことで、自身を成長させる体験といえるでしょう。いつもと違う場所へ行く、普段は接しない人と話すなど、ちょっとしたチャレンジでも十分です。こうした経験は、視野を広げることにもつながります。

異業種で働く人たちと交流する

新しいチャレンジとしておすすめなのが、異業種で働く人たちとの交流です。普段は付き合いのない業界の人と話してみると、自分の仕事を客観的に捉え直したり、コミュニケーション能力を磨いたりできるでしょう。交流の際は、時事問題についてディスカッションしてみるのもおすすめです。多様な考え方に触れるチャンスにもなります。そのためにも、日頃から時事問題に関心を持ち、情報を集めておきましょう。

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地頭は日ごろのトレーニングによって鍛えられる

ビジネスの世界では、情報分析力や判断力、実行力といった社会的に役立つ能力を持った人が「地頭がいい人」として評価され、多くの企業から求められています。「地頭」は生まれつきの頭の良さを指す場合もありますが、ビジネスシーンで求められる「地頭」は、今からでも鍛えることができる社会的な能力です。

地頭を鍛えれば、自分の仕事が捗るだけでなく、ビジネスパーソンとしての可能性を広げ、成長するきっかけにもなります。今回紹介した4つのトレーニング方法などを日ごろから活用し、地頭を鍛えていきましょう。

監修:拓殖大学商学部教授 長尾素子
株式会社TOKYO GLOBAL GATEWAY(東京都英語村)取締役COOおよび一般社団法人 社会人基礎力協議会 代表理事を兼務。コミュニケーション論を専門とし、グローバル人材の育成、社会人基礎力の育成に携わる。また、企業・団体における研修事業にも関わっている。

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