日頃から言葉のかけ方や返事のしかたにおける意識が低いという人も多いのではないでしょうか。人に好かれる言葉の使い方を心得ておけば、人間関係の悩みを解決する糸口となるでしょう。
誤解やすれ違いの理由は、言葉が生まれる前の「背景」
渡辺さんは「そもそも言葉はとても不確かなもの」だと言います。
「その理由は、言葉を発するまでの思考回路が一人一人異なっているからです。相手が『なぜその言葉を発するにいたったのか』が理解できなければ、言葉のコミュニケーションによる誤解やすれ違いが簡単に生まれてしまいます。
会話のなかでそういったネガティブ要素をなくすためには、言葉が生まれる前の気持ちを掘り下げたうえで、ベストな言い方をしなければなりません。この点を踏まえつつ、好印象を与えるOKフレーズと避けるべきNGフレーズをご紹介します」(渡辺由佳さん:以下同じ)
こんなときどう言えばいい? OKフレーズ・NGフレーズ
では、早速ビジネスシーンでありがちな場面を想定した、OKフレーズとNGフレーズを学んでいきましょう。
●褒められたとき
ビジネスシーンでは「いつも君のおかげで助かっているよ」など、ときとして称賛の言葉をもらうこともありますよね。そういったときのOKフレーズとは?
OKフレーズ「そう言っていただけてうれしいです」
「日本人の美徳として『謙遜』を良しとする風潮が根付いています。そのため、褒められると『とんでもない』と否定する人がとても多くいます。しかし、ときにそれは相手の気持ちを押し返す言葉となってしまうことも…。相手の言葉をしっかりキャッチして素直に『うれしい』と喜ぶと、相手も自分の気持ちが伝わったと感じうれしいはずです」(同)
●配慮の言葉をかけられたとき
たとえば先輩から「何か分からないことがあったら聞いてね」と配慮の言葉をかけられた場合は、どう受け答えをするべきなのでしょうか?
OKフレーズ「ありがとうございます。そのときは、よろしくお願いします」
「こちらもよく言ってしまいがちなフレーズですね。『大丈夫です』と言われた相手は、「あなたに聞くことはもうこれ以上ありません」という意味合いに受け取ってしまうかも。この場合は、まず何よりも心配してくれた相手の気持ちに対してお礼を伝えましょう」(同)
●質問されたとき
お客さまや取引先、上司からと、さまざまな場面で質問をされる機会があると思います。そんなときは、やる気を見せる回答が必須とのこと。
OKフレーズ「申し訳ありませんが、○○が分からないので、教えていただけますか?」
「とくに若手社員に多いのですが、分からないことに対して『教えられていません』などと返してしまうと、やる気のなさだけでなく、そこに相手を責めるニュアンスが加わってしまいます。ビジネスは1から10まで教えてもらうものではなく、5から10は自分で考えるべきもの。そういった認識を持ち、意欲を見せる言い方を心がけるといいですね」(同)
●資料などの修正をするよう指示を受けたとき
上司や先輩に資料などを提出したとき、やり直しの指示を受けることは少なくありません。この回答のポイントは「口答えと受け取られないように気を付けること」だそう。
OKフレーズ「部長のご意見を反映したいので、ご意見を伺えますか?」
「NGフレーズでは、『私の資料は完璧なのに』と口答えをしているように受け取られてしまうことも…。前向きに対処しようとしている意思を伝えるには、誤解のないよう丁寧な言い方をしなければなりません」(同)
●マイナス評価を伝えるとき
ここからは言葉をかけられる側ではなく、かける側の場面を想定したNG・OKフレーズです。第三者からのマイナス評価を伝えるときは、どんな工夫が必要なのでしょうか?
OKフレーズ「取引先の○○さんの性格を考えると、対応は早くしたほうがいいよ」
「人づてに自分のマイナス評価を聞くのは大変ショックが大きいもの。相手のためを思うならダイレクトに伝えるのは避け、『未来に向けたアドバイス』に変換して発信するのがベストです」(同)
●依頼をお断りするとき
依頼をお断りする場面は主に取引先など、社外の人に対して発生する機会が多いかもしれません。より一層、配慮が求められる対応ですが……。
OKフレーズ「お受けできるのは○○の条件となります。ぜひ次回のお仕事では~」
「NOの結論を伝えるときに大切なのは、『会社として受けられる条件』をしっかり確認してから相手に伝えること。上司が下した結論であっても、折り合いをつけてうまく話が通るようにするのも、間に入った人の責任です」(同)
●間違いを指摘するとき
少々気まずいのが「相手の間違いを指摘する」シーン。相手を責めるのではなくやわらかく伝える技術を身に付けておけば、良好な関係を保つことができますよね。
OKフレーズ「こちらの数字をいま一度、ご確認いただけますか?」
「少しの言い回しの違いで、言葉を受け取った側が感じるニュアンスは明らかに異なります。相手を責めるような強い言葉ではなく、一歩下がったところから間違いを指摘すれば、相手に思いやりが通じるはずです」(同)
●目上の人へ相談をしたいとき
仕事のなかで一人では解決しがたい問題にぶつかったとき、上司や先輩にアドバイスをもらいたいなんてことも多いですよね。そんなときに使える大人のボキャブラリーとは何でしょうか?
OKフレーズ「少々お知恵を拝借したいことがあるのですが」
「人間関係をスムーズにするのは、こういった大人のボキャブラリーにほかなりません。相手を警戒させるのではなく、OKフレーズのように相手に敬意を払う言い方ができれば、断然コミュニケーションがとりやすくなります」(同)
ビジネスシーンで気持ちの良い会話をするための5つのポイント
最後に、ビジネスシーンで気持ちの良い会話をするために心がけておきたい5つのポイントをアドバイスしていただきました。ここまで網羅すれば、コミュニケーションはお手のもの!
●プラスの発言は意図まで言い切る
「言葉の受け取り方は人によりさまざまです。たとえば『ナイーブ』という言葉はプラスの印象に受け取る人もいれば、マイナスに受け取る人もいます。そういったときに大事なのは『意図までしっかり言い切る』こと。ナイーブをプラスの意味で発信するなら『あなたのナイーブで繊細なところがいいと思うな』など。これなら誤解を生むことはありませんよね」(同)
●相手が不安になる曖昧な言い方をしない
「曖昧な表現は相手を不安にさせてしまうので、ビジネスでは極力避けるべきでしょう。その代表格として、『とりあえず』という便利な言葉がありますが、これは『間に合わせ』のような意味が感じられ、言われた相手のモチベーションを下げたり、不安にさせたりすることがありますので、オススメしません」(同)
●人の好き嫌いを口にしない
「ビジネスの場には『好き・嫌い』といった私情を持ち込まないのが基本です。好き嫌いを口にすることで、組織がギクシャクする原因にもなりかねません。たとえばデザイン案を選ぶときなど、感覚的な部分で評価するような場面では『好き・嫌い』はアリかもしれませんが、その理由まできちんと説明する必要があることは覚えておきましょう」(同)
●クッション言葉を形式的に使わない
「クッション言葉は形式的に使うのではなく、おのおののシチュエーションごとに最適な言葉を使い分けるといいですね。たとえば、どちらでもいいお願いには『差し支えなければ』、ちょっとした頼み事なら『恐れ入りますが』というふうに上手に使い分け、ワンランク上のコミュニケーションを目指しましょう」(同)
●「でも」で相手の話を横取りしない
「会話のなかで、ついつい無意識にやってしまいがちなのが、『でも』や『逆に』など、相手の話を区切り、会話を横取りしてしまうこと。否定の言葉を使うことで、相手を身構えさせてしまうことにもつながります。そうしないためには、相手が何を言いたいのかを聞いたうえで、『分かります。私も~…』と話を続けると会話の流れもスムーズになりますよ」(同)
まとめ
こちらに悪気はなくても、相手に不快感や不安を与える言い方はいくつも存在するようです。気づかないうちにNGフレーズを使ってしまっていたという人も多いのではないでしょうか? 「好かれる言葉」のテクニックを身に付ければ、ビジネスでのコミュニケーションが円滑になるでしょう。ぜひ、明日から実践してみてくださいね。
識者プロフィール
渡辺由佳(わたなべ・ゆか) 1964年、東京都出身。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。テレビ朝日にアナウンサーとして入社。報道から社会情報番組まで多数の人気番組を担当。1993年に独立。以後、フリーアナウンサー、話し方講師としての活動をはじめ、テレビ朝日アナウンサースクールやシェリロゼ(自分磨きスクール)で指導を行うほか、みずほ総合研究所(株)、SMBCコンサルティング(株)、(株)星和ビジネスリンクなどで「ビジネスマナー」「コミュニケーション」「ビジネスメール」をテーマに企業向けのセミナー講師も務める。2016年より大妻女子大学文学部非常勤講師を務める。公式HP/最新著書:『好かれる人が絶対しないモノの言い方』
※この記事は2016/07/25にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています
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