まもなく開始する4年に一度のサッカーの祭典。各チームが自国の誇りを懸けて戦うW杯では、サッカー選手の他にも、実はさまざまな職種の人が関わっています。2002年W杯日韓大会の決勝で主審を務めたコッリーナさんが、一躍時の人となった“審判員”もその一つ。
今回は、その“審判員”になるための方法を、2002年の開校以来サッカーに関わるあらゆる人材を育ててきたJAPANサッカーカレッジのコーチ・審判専攻科で教鞭をとる須崎政幸さんにサッカー審判員の仕事の中身についてお聞きし、求人票を作成してみました!
サッカー審判員の求人票
■職業名:サッカー審判員
■所属企業:(1級審判員の場合)日本サッカー協会と契約
■就業場所:フィールドの中
■ 就業時間:1試合90分
■ 給料:(JFAと契約を結ぶPR審判の場合)年俸制
上記以外の審判は試合ごとの謝礼のみ
■ 手当:交通費支給
■ 就職倍率:不明
※1級審判員になるのは、プロサッカー選手になるより難しい場合も
※(1級審判員の場合)全国で現在176人が活躍中
■その他、業種による特記事項
サッカーに対する“情熱”や“思い”がどれだけあるのかが重要
(1)就業時間ってどれくらい?
「サッカー協会から審判を依頼された日は、その試合の時間だけ当地へ赴けばいいわけではありません。準備体操や会場の下見、用具のチェックなどの試合前の下準備から、試合終了後の試合結果の確認や反省会などをする必要があるのです」(須崎さん、以下同じ)
--試合日以外でもやるべきことはあるのでしょうか?
「上級免許を取って、上位カテゴリーの試合を担当することになればなるほど、持久力や瞬発力といった運動能力が必要となってきます。そのため、試合日以外の日でもしっかりとした体力づくりは必須です。さらに良いジャッジをするためにはサッカーを深く理解していないといけないので、日頃からサッカーを見ないといけません。ヨーロッパの主要リーグやワールドカップなど世界トップクラスの審判が活躍する試合で勉強するのです。その他、各サッカー協会が定期的に開いている“勉強会”も推奨しています」
(2)審判員の給与とは?
「いわゆるPRと名がつく、日本のプロの審判は十数人しかいません。176人いる1級審判員の中で、さらに人数が絞られるわけです。彼らについては、日本サッカー協会と契約していて、年俸で給与が決まっています。それ以外の人たちについては、基本的には兼業をしていると思っていいでしょう」
--つまり、審判だけで食べていくには相当のハードルがあるようです。それでは、プロの審判員以外の人たちはどのくらいの報酬をもらっているのでしょうか?
「基本的に、給与という形ではお金は渡されません。交通費+謝礼で支払われます。謝礼額は、各協会・大会ごとに規定されていますので一概には言えませんが、それだけで食べていけるほどのものではありません。お金のためにするのではあれば、他の仕事をしたほうが効率はいいでしょう」
(3)サッカー審判員になるための方法
「サッカーの審判の資格は4級から1級までの4段階に分かれています。飛び級はありませんので、1年に1階級ずつ上級免許を取る形になります。4級と3級は、各都道府県のサッカー協会が主催する講習会で取得することができます。3級を取得する場合、前年度の審判実績がある程度必要です。さらに簡単な体力測定と筆記試験もあります。普段から体を動かしている人や、サッカー少年団や社会人リーグなど何かしらサッカーに関わっている人であれば、難なく取れると思います」
--しかし、2級の審判員から一気にハードルが上がるようで……。
「2級を獲得するためには、それなりの実績と能力が問われます。と言うのも、管轄が9地域からなるサッカー協会(北海道・東北・関東・北信越・東海・関西・中国・四国・九州)になり、都道府県からの推薦が必要となるからです」
--それでは、1級はもっと難しいのでしょうか?
「1級免許は相当難しいです。実績だけでなく試合をコントロールする高い能力が必要です。例えば、(1?100の)競技規則を丸暗記すれば、それでいいわけではありません。安全、公平公正に試合をコントロールするために、サッカーを深く理解することが必要です。観客、チームスタッフなどを含めたあらゆる要素を頭に入れ、瞬時に判断することが求められます。さらに体力試験も厳しい。1級を持っていればJリーグやJFLといった日本でトップのサッカーに体力面で付いていくことが求められるから当然ですよね」
--JリーグやJFLの試合を担当するためには、1級免許が必要なのだと言います。では、2級と同じように推薦状などは求められるのでしょうか?
「1級免許の管轄は日本サッカー協会(JFA)になります。そのため、地域のサッカー協会からの推薦が必要です」
日本サッカー協会が公開している情報によると、2級審判員が3,321人であるのに対して1級審判員は176人しかいません。そこからも1級審判のハードルの高さがうかがい知れます。
(4)審判員になるための心得
「正直に言って、審判員としてJリーグやW杯で活躍するのは、簡単なことではありません。もしかするとプロサッカー選手になるよりも難しいかもしれません。1級審判になるだけでも、かなりのハードルがあります。そして1級審判になったからといって、ヒルズ族のような(金銭面で)裕福な生活が送れるわけではありません。これはうちの生徒にいつも言っていることですが、サッカーに対する“情熱”や“思い”がどれだけあるのか。それが、サッカーに関わる仕事をしていくためには、とても重要だということです」
1級審判員の資格を取得するところまでも険しい道のりですが、さらにW杯で審判をするとなると、1級免許資格者の中から日本サッカー協会に推薦されて、国際審判員にならないといけません。プロのサッカー選手になってW杯に出場するのと同じように、審判員にも高いハードルがあるようです。そういう視点でW杯の審判を見るとまた違った面白さに気付くことができるかもしれませんね。
(識者プロフィール)
JAPANサッカーカレッジ/2002年、新潟で誕生したサッカーに関わる人材を育成する専門学校。選手、トレーナー、コーチ、レフェリー、サッカービジネスなど、さまざまな分野の人材を多数輩出。日本で数少ない「JFA公認2級審判員養成校」に認定されている。
JAPANサッカーカレッジ
※この記事は2014/05/23にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。
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