空前の社歌ブーム!? 企業と社員をつなぐ「懸け橋」としての社歌の魅力に迫る

あなたの会社に「社歌」はありますか? 毎日の朝礼でなんとなく歌っている人もいれば、ウチは社歌はないし、「昔ながらの、ちょっと堅苦しいやつでしょ?」なんていう印象を持っている人もいるかもしれません。

空前の社歌ブーム!? 企業と社員をつなぐ「懸け橋」としての社歌の魅力に迫る

あなたの会社に「社歌」はありますか? 毎日の朝礼でなんとなく歌っている人もいれば、ウチは社歌はないし、「昔ながらの、ちょっと堅苦しいやつでしょ?」なんていう印象を持っている人もいるかもしれません。

しかし近年、その社歌が社員に愛されるものに形を変え、再び注目を集めているのです。

具体的には、社歌によって会社や社員のマインドにどんな変化が起きているのでしょうか。数多くの社歌制作を手がける「社歌制作ドットコム」を運営する、株式会社アイデアガレージの代表・西尾竜一さんにお話を伺いました。

キーワードは“絆”や“つながり”



西尾さんによると、社歌が再び注目を集めるようになったのはここ数年のこと。その背景には、東日本大震災があるのではないかといいます。

「東日本大震災を経て、皆さん自分と社会のつながりを考えるようになったのではないでしょうか。それと同時に、会社という存在をあらためて見直し、じっくりと社員と会社の関係を深めていくためのコミュニケーションツールとして、社歌が再び注目を集めているのだと思います。

その証拠に、歌詞の内容にも変化がみられます。これまでの社歌は会社の理念を歌詞の中に織り込んだものが主流でした。80年代から90年代のバブル期に制作された社歌をみると、グローバル化する社会の中で世界進出への意気込みを歌ったものが多くみられます。会社の存在意義や姿勢をクライアントに示すための、いわば対外的な社歌です。

一般的に、歌詞は社員の方が集まって、キーワードを挙げてもらいながらつくることが多いのですが、近年は“絆”や“つながり”といった単語が目立ちます。これはバブル期にはあまりみられなかった特徴です。社歌の使われ方も、式典などで歌われるほかに、社員が飲み会などの楽しい時間を過ごす時や、仕事で落ち込んだ時に個人的に聞いたりすることが増えているようです。対内的なコミュニケーション手段として、社歌が使われるようになりつつあるようですね」

 

ヒットソングのようにポップな社歌も


さらに、曲調にも新しいジャンルが登場しています。社歌といえば雄大なオーケストラをバックに、全員で合唱するものというイメージがあるかもしれませんが、若者がなじみやすいJポップのような社歌もあるのだとか。

「求人情報サービスを提供するユメックスからは、会社の節目のタイミングで社歌の制作依頼がありました。もともと若い会社ですし、業態的にも従来の社歌は合わないということで、Jポップのヒットソングのような社歌『虹色の架け橋』を制作しました。

歌詞には“SAKURA” “MUGEN”というキーワードが入っていますが、これは社内の基幹システムの名前。そのため、あえてシステムの名前を残してアルファベット表記にしているんです」

社員の方はこの社歌をミュージックプレイヤーに入れて日常的に聴いたり、カラオケにも入っているので飲み会の最後に歌ったりしているといいます。たしかに、自分が普段から使っているシステムの名前が歌われているとなれば、愛着も湧きますし、働く自分のテーマソングのように響くかもしれませんね。この社歌は新卒採用の説明会でも流しており、そこでも好評だといいます。

定番のオーケストラも、若い層から好評


一方、新しく社歌を制作する場合でも、オーケストラを使った従来のものも根強い人気を誇ります。社歌制作ドットコムでは、制作するジャンルはJポップとオーケストラで半々程度なのだそうです。

「オーケストラを使ったマーチ調はどんな世代でも口ずさみやすく、月日が経っても古くならないのが特長です。愛知県知立市にある産業機械メーカーの富士機械製造が2016年に制作した社歌『革新の翼』や、今年100周年を迎えた商社・芝本産業の社歌『先駆の光』もマーチ調です」

富士機械製造が社歌を制作したきっかけは、社長の発案からでした。社長や役員、各部署の担当者が集まって結成されたプロジェクトチームは、「100年後も歌われる社歌を作りたい」として定番のマーチ調を選んだといいます。

「プロジェクトチームは平均年齢が30代と比較的若いチームでしたがマーチ調を選びました。社員からも好評で『うちの会社、歌があるんだ』とおもしろがってくれたり、カラオケで歌ったりしてくれていると聞きます。マーチは覚えやすいですし、ポップスでなくても若い層に受け入れられているようです」

歌詞はプロジェクトチームが会社をあらわすキーワードを出し合い、集まった単語の中から象徴的なものをさらに厳選。それをもとに制作されたそう。自分たちが選んだなじみ深い言葉がちりばめられていることで、ますます愛着が湧きそうです。

芝本産業は社内の年齢層が幅広いため、どんな人でも口ずさみやすいマーチ調を選択。月曜日の朝に朝礼で歌うだけでなく、電話の保留音を社歌にするという、ユニークな使い方をしています。「Do the right thing right(当たり前のことを当たりまえにやる)」という企業姿勢を表すフレーズが歌詞に入っており、対外的なアピールとしても活用しているそうです。

これからの社歌は、社員に寄り添ったものへ



直立して全員で歌うというイメージから、より社員に寄り添ったものへと形を変えている社歌。西尾さんは、「特にやりたいことがないまま入社したという若者にこそ、会社を身近に感じるきっかけになる社歌が受けているのではないか」とも話します。仕事の充実感は業務内容だけでなく、職場の雰囲気や人間関係も重要な要素。社歌によって会社への愛着が増し、仲間とのコミュニケーションが円滑になれば、なんとなくこなしていた仕事にやりがいを感じることもあるかもしれませんね。

そんなふうに、社員と会社、社員同士をつなぐきっかけにもなる社歌を、あなたが仲間たちともし作るとしたら。どんな言葉で、どんなメロディーの歌が生まれそうでしょうか?

最近の20代は、会社への帰属意識が薄くなっている傾向があるともいわれます。それは決してどちらが悪いということではありません。ただ、会社に愛着が持てないことで仕事にもやりがいが見いだせずにいるのであれば、社歌を通じて会社と自分のつながりについて考えてみませんか。

(取材・文:小沼 理/編集:東京通信社)

識者プロフィール
西尾竜一(にしお・りゅういち)
社歌制作ドットコムを運営する株式会社アイデアガレージ代表取締役社長。社歌作詞家。2008年より社歌制作事業を展開。上場企業・ベンチャーなど会社の規模や地域を問わずさまざまな企業の社歌制作を担当。「経営者や現場の社員の方と直接会う人間が歌詞作りに携わるべき」との考えから自ら作詞を担当し、顧客の望む曲調のジャンルに合わせてプロの作曲家をプロデュースして社歌を作る。社歌・応援歌・イメージソングなど、これまでの制作楽曲は約80曲を数える。社員参加型社歌制作の第一人者。
http://sya-ka.com/

※この記事は2017/12/19にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。

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