2軸でキャリアを形成する? 可能性を広げるキャリア未来地図とは

転職するか踏みとどまるか……。今の自分の仕事に対して、迷いや疑問を感じている人もいるのではないでしょうか。

2軸でキャリアを形成する? 可能性を広げるキャリア未来地図とは

転職するか踏みとどまるか……。今の自分の仕事に対して、迷いや疑問を感じている人もいるのではないでしょうか。

そんなキャリアのはざまに立っているあなたへおすすめしたいのが、「キャリア未来地図」の描き方です。多くの若者が悩みがちな「キャリアの積み方」について、『「キャリア未来地図」の描き方』の著者であり、マーケティングコンサルタント、大学教授、作家と多彩な顔をもつ原尻淳一さんに伺いました。

キャリア未来地図とは


キャリア未来地図とは、自分のキャリアを「仕事」と「プライベート」の両方で描くことで未来の可能性を広げていく、というもの。自分の現在地を知ることで、目的地も見えてきます。そのため、方向性を定める、という意味合いで「地図」ということばを道具(ツール)として用いているそう。まずは一枚、白い紙を用意してみましょう。自らの手で真っ白な地図に未来を描き、方向性を定めることによって、迷ってもブレることのない冒険=人生に挑戦することができるのです。

「ライスワーク」と「ライフワーク」の2軸を両立させる「キャリア未来地図」


そこで、原尻さんは「ライスワーク(食べるための仕事)」と「ライフワーク(生きがいややりたいこと)」の2軸のキャリアを両立し、相互にエネルギー交換をしながら自身の価値を高めていくことを提唱しています。

「ライスワークとは生きていくための仕事であり、会社から与えられたミッションをクリアすることによって報酬が得られる、いわゆる『ミッション・オリエンテッド』です。一方、ライフワークは特技や趣味など、自分がやりがいを感じるようなことを指し、『キュリオシティ・ドリヴン』と呼んでいます。好奇心の赴くままに活動するということです。

いつ何があるか分からない世の中ですし、ライスワークだけでは不安です。もし、ライスワークがうまくいかない状態になっても、ライフワークでスキルを蓄えておけばビジネスに転換する可能性を持つことができますよね。ですから、ライフワークで楽しみながらスキルを積むことが、今の苦しい時代に健全でいられる最適な手段じゃないかなと」(原尻さん:以下同じ)

ライスワークもライフワークも、だれかに与えられた仕事をこなすだけではなく、自分で仕事をつくれるレベルまで踏ん張ることが一人前になる第一歩だそう。目の前にある仕事に積極的に取り組み、人脈や知見、業務のノウハウを地道に身につける。その、小さな積み重ねこそが成功につながっていくようです。

今はライスワークもライフワークもどちらも中途半端になっている…という人は、次で紹介する「キャリア未来地図」を実際に描いてみることで、「今やるべきこと」と「向かう先はどこか」を整理しましょう。キャリア未来地図はあくまで「描く」だけでいいそうです。

「キャリア未来地図」を描くための必須ポイント7つ


では、「ライスワーク」と「ライフワーク」の2軸の両立を踏まえ、実際に「キャリア未来地図」を描くためのポイントに着目しましょう。前提として、いくら自分が好きなことであっても継続するのは大変ですから、継続しやすいアドバイスも盛り込んでもらいました。

1:年収ではなく「成長」を一番のモチベーションと捉える


「転職を考えるにしてもそうですが、目先の年収にとらわれるのではなく、『成長』を一番のモチベーションにしましょう。僕の経験で言えば、力が付いてくれば勝手にお金は付いてくるもの。たとえば『○○先輩ぐらいまで成長しよう』といった、身近な目標設定だと取り組みやすいかもしれませんね」(同)

2:企業の経営資産を一度見つめ直す


「今いる会社に慣れてくると悪いところばかり目につくようになります。また、飲みの席で会社の悪口を上司から聞かされたり、ネガティブになりがち。それが嫌で転職でもしようかと考えている人は一度立ち止まって、再度会社の経営資産を見つめ直してみましょう。自分の成長できる部署やプロジェクトがあるかを探し、社外転職する前に社内転職を考える。この視点、案外抜けがちです」(同)

3:会社内で尊敬できる「メンター」を見つける


「先ほどの目標設定と同じ人でも構いませんが、社内で尊敬できるメンターの存在をつくることも大事。できれば、月に1度ぐらい飲みに行ったり、お茶に行ったりして相談できるような関係が持てればベスト。何か困ったときに近くにメンターがいると、方向性を見失わずに済みますからね」(同)

4:「1%」でもいいからライフワークを継続する


「ライフワークについては、無理なく続けることが一番。極端にいうと、ライスワークが99%、ライフワークが1%でもいいわけです。時々、時間があるときはライフワークにどっぷり漬かるなど、そのぐらい柔軟でOK。途切れずに継続することがスキルを上達させるコツです」(同)

5:周囲からの評価や反応を成長の糧にする


「好きなこととはいえ、続けるのは忍耐が必要です。大好きなライフワークですらモチベーションを維持するのは大変です。そこで周囲からの評価や反応をモチベーション維持に組み込んでみる。たとえば、ブログやSNSであえて「修業」を発信して、読者に評価をいただく、あるいは思い切って公募やコンペなど正当に評価してもらえる機会を利用するのもいいですね」(同)

6:コミュニティーに所属し、ライフワークの仲間をつくる


「現在はテクノロジーが発達して、簡単にウェブ・コミュニティーに属することができますよね。ライフワークはやりがいを感じながら楽しく続けるのが大前提。スポーツにしても芸術鑑賞にしても、仲間をつくればより一層世界が広がり、1人では得られない新鮮な情報も手に入ります」(同)

7:仕事が降ってくるようになったら本物の証


「若い方のなかには、『天職は自分で探してつかみ取るもの』だと言う人がいます。でも僕は、『天職は探すものではなく、自然と降ってくるお役目』だと思っています。周囲の人から認められるまでやり続けた結果、手に入るものであって、天職が見つかる人と見つからない人の差は、ここにあるんじゃないかなと。お役目が与えられるまで、とにかく目の前の課題を120%の力でやりきってみてください。努力はきっと誰かが見ていますから」(同)

「人生で一度は起業すべき」原尻さんのアドバイス


現在、起業して自身の事務所を構えている原尻さんに20代のビジネスパーソンへのアドバイスを伺ったところ、「人生のなかで一度は起業したほうがいい」と語ります。

「独立すると会社のありがたみがしみじみ分かるんです。お金を生み出すつらさもうれしさも分かる。そして、自分自身で税金を支払うので、会社で経理が自動でやってくれるのとは違い、自分が社会を構成し、担っている当事者性が強くなります。会社をつくるとなると、銀行の役割や社会の仕組みなども理解せざるをえないので、若い方たちは企業で修業してから、老後でもいい、一度起業してほしいと思っています」

まとめ


食べていくための「ライスワーク」と自分がやりたいことや生きがいとなる「ライフワーク」。どちらも諦めることなくスキルを身につけていくことで、相乗効果が芽生え、自分の成長につながっていくシナジー戦略はとても今っぽい方法ですね。

現状の自分の働き方を見つめ直し、ライスとライフのエネルギー分散をうまくコントロールできる人が、明るく前向きな未来に祝福されるはずです。


識者プロフィール
原尻淳一(はらじり・じゅんいち) Harajiri Marketing Design 代表取締役/龍谷大学経済学部 客員教授 1972年埼玉県生まれ。大手広告代理店へ入社し、ブランドマーケティングの業務に携わる。その後、エイベックスグループに転職。多くのアーティストのマーケティング戦略、映画の宣伝戦略、アニメの事業計画立案等を行う。現在はレコード会社、芸能プロダクション、食品メーカーのマーケティングコンサルタントを行っている。ここ数年、京都市ポータルアプリをプロデュースし、世界の京都ファンづくりにも取り組み、地方創生マーケティングにも携わる。また、大学教授として実践的なマーケティングの講義とワークを学生たちに展開している。著書に『IDEA HACKS!』等、東洋経済ハックシリーズ。近著では『企画のつくり方』(日経文庫)がある。 Harajiri Marketing Designオフィシャルホームページ著書『「キャリア未来地図」の描き方』(ダイヤモンド社)

※この記事は2016/07/07にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。

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