ビジネスマンの肩書きを捨てて、新しい一歩を踏み出した彼らは、どんな会社員時代を過ごしていたのでしょうか。
連載「あの人だって元ビジネスマン!」。今回はお笑い芸人、ダニエルズ・あさひさんの後編をお送りします。仕事に本腰を入れていなかった彼でも営業成績を上げることができた秘訣とはなんだったのでしょうか。
前編:【連載】あの人だって元ビジネスマン! 芸人 ダニエルズ・あさひ┃破天荒な会社員時代 浮気がバレてホームレス状態になったことも
1988年生まれ。東京都出身。タイタン所属のお笑いコンビ・ダニエルズのボケ担当。大学中退後、ワタナベエンターテインメントの養成所に入学し、事務所を転々とするも、25歳のとき、芸人を辞めて約2年間会社勤めを経験する。その後、2018年からタイタンに所属し、OL姿のヒステリックな女性を演じるコントで注目の若手芸人。
なぜか褒められた!「商談バックレ事件」
――前回のお話では、お酒や女性関係にルーズで遅刻も多く、ちょっとダメな社員だったのかな、と思いました。
あさひ:そうですね。朝まで飲んで出社することも多かったです。ある日、昼の12時に商談があるのに起きたら夕方で(笑)。あわててケータイを見ると、鬼のように上司から着信履歴が入ってました。
恐る恐る電話をしたら、会社の人は事故にあったと思ってたみたいで。さすがに僕も寝坊とは言えず、適当に誤魔化したんです。商談は代わりに後輩の女の子が謝りに行ってくれて、彼女は先方からめちゃくちゃ怒られたみたいなんです。
――その後輩が可哀想ですね。すぐに菓子折り持って行くやつですよね。
あさひ:後日謝りに行ったら、「あなたは悪くないのよ」という謎の展開になりまして。僕が明らかに悪いじゃないですか。でも、ダンス衣装のお店だったので、社交ダンスに興味があるフリをしたらすごく気に入ってもらえて、最終的には「ちゃんと筋を通して偉いわね、あなた」みたいな感じで契約が取れたんです。会社の人も驚いていました。
――昭和のサラリーマン映画みたいな話ですね(笑)。あさひさんは、どんな人が営業に向いていると思いますか?
あさひ:妻は現役の営業マンですが、ストイックにやるタイプ。僕は肩の力を抜くタイプなので、人それぞれだと思うんです。僕の場合はとにかく早く帰りたかっただけなんですよ。なので、そのためにノルマを達成しようと頑張っていました。
遅刻はしても、「残業」はしない
――なんでそんなに早く帰りたかったんですか? やっぱり飲みに行くためですか?
あさひ:それもありますけど、なんかみなし残業みたいな制度があるじゃないですか。だから別に残業したからって、何十時間もしないと残業代もつかないし無駄だなって思って。18時ぴったりにはあがって18時半までには家に帰るっていうのをやってましたね。
――会社によっては、早く帰りづらい雰囲気がありますよね。
あさひ:そこは気にせず、「ノルマを達成しているからいいでしょ?」という感じで帰っていましたね。しばらく続けていると、周りも「そういう人なんだ」という認識になって。すぐ帰るのも、キャラになっちゃえば大丈夫なもんですよ。
――確かに、社内でのキャラを確立するのは大事ですよね。
あさひ:調子に乗らないことも大事。営業って、順調に契約が取れているときはつい調子に乗りがちなんです。でも、誰にでも波があるので、調子に乗っていると、不調になった途端に「ざまぁ見ろ!」って白い目で見られる。なので、僕は好調なときもなるべく目立たないよう心がけていました。
――そこも戦略的だったんですね。
あさひ:契約先がバッティングしたときも、あえて譲るようにもしていました。そうすると、自分が困ったときに周りが助けてくれる。会社ってそういう世界だと思うんです。すごく出世したかったわけでもなかったですから。
――でも、最終的にはエリアマネージャーにまで昇格されたんですよね? ラクをしながら出世までしちゃって。
あさひ:1年弱で昇格しました。みんな、同僚同士で“友達”になっちゃってて、ダラダラ残業しながら仲良くやっているんですよ。僕は仕事として割り切っていたし、短時間で集中して結果を出してたんです。
芸人をやりながらバイトしていたときに比べると倍くらいは稼げていましたし、個人的にはすごく満足していましたね(笑)。
会社員は「我」を出すと辛くなる
――いまひとつ仕事に対して前向きになれないビジネスマンたちに、何かアドバイスはありますか?
あさひ:会社で「我」を出すと辛くなると思うんですよ。体制が変わったり、ノルマが変わったり、組織自体もコロコロ変わるじゃないですか。自分にとって「得」な変化もありますけど、悪くなったときにダメージが大きい。我を持たなければ、腹が立つこともそんなにないですよ。
――再び芸人になるために会社を辞めるときは、スムーズにいきましたか?
あさひ:退職希望者が上司からキツく当たられているのを見ていたので、GWの直前に言うことにしたんです。そのまま長期休みに入るので、GW明けには「そういえば、辞めたいって言ってたな」みたいな感じになると思って。それは正解でしたね。
――奥さまはどんな反応でしたか?
あさひ:「いいよ、もう一回やってみなよ」って言ってくれて。30歳までという期限を付けたのですが、そのぎりぎりのところでちょっとテレビに出られるようになって、いまはバイトをしながらどうにか踏ん張っているところです。
この連載では、会社勤めの経験がある著名人に会社員時代のちょっとやんちゃなエピソードを伺っていきます。次回は、お笑い芸人「やさしいズ・タイさん」のインタビューをお届けします。
前編:【連載】あの人だって元ビジネスマン! 芸人 ダニエルズ・あさひ┃破天荒な会社員時代 浮気がバレてホームレス状態になったことも
【連載】あの人だって元ビジネスマン!
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文/富山英三郎 撮影:佐坂和也
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