平成時代に加速したデジタル化、その先は?
平成時代は携帯電話やインターネットの普及、スマートフォンの台頭など、目まぐるしいテクノロジーの変化がありました。ビジネス領域ではIT市場が急成長し、デジタル・マーケティングの手法が浸透していきました。
平成から令和へ時代が移り変わり、ビジネスシーンはITの変化によってどんな影響を受けるのでしょうか。最新のIT用語をもとに考察してみましょう。
令和を象徴するIT用語5選
さまざまな領域で新しいIT用語が生まれていますが、今回はどの業界においても触れることが多いと思われる、時代を象徴するIT用語を5つ紹介します。
DoT(ディープラーニング・オブ・シングス)
DoT(ディープラーニング・オブ・シングス)とは、「モノのディープラーニング化」を指します。DoTを正しく理解するためには、2015年前後から注目されてきたIoT(インターネット・オブ・シングス)を振り返るとわかりやすいかもしれません。
「モノのインターネット化」を指すIoTは、さまざまな商品をインターネットにアクセス可能にすることで、データの集約やより良いサービスの提供を実現するものとして注目されました。
例として、家電製品とインターネットを組み合わせたスマート家電が挙げられます。インターネットを介することで、家電はスマートフォンでリモート操作したり、稼働状況をリアルタイムで確認したりできるものになりました。
DoTはこのIoTの次の技術として注目されているものです。このディープラーニングとは、コンピュータ自らがデータの特徴を捉え、学んでいくシステムのこと。先に挙げたような商品群にディープラーニングの機能が付与されることで、モノはさらに活用の幅を広げるでしょう。
たとえば、ドローンをDoT化することで、撮影する映像をリアルタイムで分析し、適切な判断のもと自動操縦を行う機能が誕生するかもしれません。スマート家電は、人間の手ではなく人工知能の判断で操作されるようになり、やがてスイッチすら要らなくなるでしょう。
5G(ファイブ・ジー)
5Gとは「第5世代移動通信システム」のこと。次世代の通信技術として、社会に革新をもたらすことが期待されています。
2020年から、大手キャリア各社が5Gへの移行を始めます。現在私たちが利用している4Gと比べてより改善されるのは、同時接続性と低遅延性です。5Gを利用することで、これまで4Gでの利用に限界があった大量データの高速受信や、複数デバイスの同時接続が可能になります。
5Gの必要性は、先に触れたIoTの浸透によって高まりました。人々はスマートフォンでより多くのデータを送受信するようになりましたが、4Gはインターネットや音楽・映像コンテンツの最低限の閲覧にしか対応していません。また、映像テクノロジーの発展や、映像コンテンツの普及も同様のニーズをもたらしました。8Kの映像やライブ配信コンテンツなどにすべてのユーザーがストレスなくアクセスするためには、5Gへのアップデートが必要不可欠です。
5Gが普及することで、将来性のあるいくつかの事業が技術的な条件をクリアし、発展するでしょう。たとえば、自動車の自動運転技術には、リアルタイムで交通網の状況や歩行者を認識・判断できる回線環境が必要でした。5Gがあれば、自動運転は実用化できると言われています。
5Gの普及に合わせてリリースされる予定の新サービスや商品についての事前情報も多く、5Gは人々の生活を大きく変える要因のひとつとなりそうです。
DX(デジタル・トランスフォーメーション)
DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは、「進化したデジタル技術を浸透させることで人々の生活をより良いものへと変革する」ことを指した言葉です。この概念は2004年、スウェーデンの大学教授エリック・ストルターマン氏によって提唱されたものです。
2020年改めてDXに注目が集まっているのは、経済産業省内「デジタル・トランスフォーメーションに向けた研究会」の調査結果が話題になったからです。同研究会によると、日本企業の老朽化した既存の基幹システムはDX推進の障壁となり、2025年までに刷新をしなければ、それ以降年間で最大12兆円の経済損失が発生するかもしれないのです。では、企業は具体的にどのようにシステムを刷新すべきなのでしょうか?
DXを理解するための事例としてよく名が挙げられるのは、アマゾンです。アマゾンはあらゆる商品を販売するソリューションを提供することで、人々の消費行動や商品販売の在り方そのものを変えました。同社のサービスのひとつであるAWS(アマゾン・ウェブサービス)も、あらゆるデジタル・コンテンツ制作のソリューションを提供し、企業のビジネスモデル構築に影響を与えています。
このように、デジタル技術で変革をもたらす思考を各企業が持ち、その事業展開のために組織やシステムの見直しから始めることが、DX推進の第一歩です。
ゼロトラスト
IT技術が浸透していくなかで、リスクとしてたびたび注目されてきたのがセキュリティ問題です。個人情報や機密情報に誰もがアクセス可能になることは、利便性と共にあらゆる犯罪行為を生み出してきました。
こうした背景から、2010年、Forrester Research社より「ゼロトラスト」が提唱されました。IT社会では基本的に信頼し得るものはなく、たとえ家族や企業内でも情報流出のリスクがあるという考え方です。
クラウドソリューションを提供する大手各社はすでにゼロトラスト・セキュリティと呼ばれるシステムを導入しており、データ保管場所の分散や保護を徹底しています。
2020年以降、5Gの台頭やDoT化が進むなか、ゼロトラストに基づくセキュリティ対策の必要性は一層高まるでしょう。
MR(複合現実)
MR(Mixed Reality/複合現実)とは、デバイスを通じて現実世界と完全にシンクロするデジタル情報を体験することのできる技術の総称です。VRと同じように、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を装着してユーザーはMRを体験できます。
VRでは現実と遮断されたバーチャルコンテンツを体験しますが、MRは現実世界に混ざり合ったコンテンツを体験します。さらに、この体験はARとも違い、ユーザーの移動に応じてリアルタイムで変化します。ARが現実世界に透過したコンテンツを重ねて見るイメージであるのに対し、MRは操作可能なホログラムを投影するような感覚です。
MRのためのデバイスはすでにいくつか発表されており、実用化に向けたコンテンツリリースや企業活用の実践例が今後増えていくと考えられます。ARやVRとは異なる発展が期待されるMR市場は、2020年以降さらに成長率が伸びるでしょう。
技術進化とその影響力をキーワードから捉えよう
今回紹介したIT用語は、いずれも事業の見直しや組織改革で向き合う可能性の高いものばかりです。これまでにも勝る大きな変化を遂げるかもしれない今後を、これらのIT用語の意味から予想していきましょう。
文=宿木雪樹
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