物流業界に大きな影響を与えたテクノロジー
2000年以降のオンラインショッピングの普及とともに、物流業界に求められるクオリティやスピードは年々高まってきました。その結果、深刻な人手不足や配送ミスなどの課題が生まれ、現在はシステムの抜本的な見直しを迫られています。
こうした現状を解決する方法として、物流業界ではさまざまなテクノロジーが活用されつつあります。IoTソリューションを生かした配送データの集約や、配送業務の自動化、在庫管理の効率化など、あらゆる観点で物流業界とテクノロジーは結びつきはじめています。
令和以降、物流業界はどのような進化を遂げるのでしょうか。最新のIT用語をもとに、物流業界とITの交点を考えます。
物流業界に関わるIT用語4選
自動運転
自動運転とは、自動車がある一定の条件下において自動で運転する技術のことを指します。自動運転には条件に基づいてレベルが設けられています。
- レベル1…単一機能の作動
- レベル2…複数の機能の統合制御
- レベル3…一定の条件下で自動運転、緊急時対応のみ運転者が操作
- レベル4…一定の条件下での完全自動運転
- レベル5…条件関係なく完全自動運転
これまで自動車メーカーをはじめ、大手各社が自動運転システムの開発や実験を進めてきました。近年、その実用化のための条件が満たされつつあることで、自動運転車が一般発売される日も近いと言われています。
2020年現在、公道において一般利用が間近な自動運転はレベル3のものです。今後法整備が進んでいけば、完全自動運転による配送業務も現実的なものになっていくでしょう。また、倉庫内の在庫移動など限定された条件での自動運転はすでに実用化が進んでいます。
自動運転が実現した社会では、流通システムそのものが大きく変化しているでしょう。
ドローン
数年前からテレビでも目にするようになったドローン。これは無人航空機のことを指します。
物流業界でのドローン活用は、大きく分けてふたつの方向性が期待できます。
一つめは、これまで配送の難しかった離島などへの物流を担う役割です。物流にドローンを生かす場合、長時間の飛行や天候への対処などさまざまな課題が浮かび上がりますが、これらは近年の開発と実験により解決されつつあります。
二つめは、在庫管理を行うエリアでの監視業務です。上空から一定のエリアを自動で可視化できるドローンは、工場やビルでのセキュリティ保全に極めて適しています。また、ドローンとIoTの技術を組み合わせれば、在庫のデータ取得や点検業務などの自動化も実現性があり、活用方法は広範にわたります。
物流とドローン、そしてIoTの掛け合わせの可能性は、2020年より開始する5G回線の導入によって、より広がるでしょう。人手不足の解消など、あらゆる課題解決をドローンが担う日は近いかもしれません。
モニタリング
物流業界におけるシステム改革を図るとき、多くの場合必要とされるのが高度なモニタリングです。リアルタイムで行われる画像分析とディープラーニングなどの学習機能が掛け合わせられることで、モノの移動状況を逐一データ化することが、それを管理するシステムに役立てられます。
たとえば効率的な運送・駐車のオペレーションや、在庫管理エリア内での空きスペース活用、スタッフ導線の指示など、モニタリングで実現できるソリューションは数多くあります。
今後モノの移動経路はすべて可視化され、その経路が最適化されることが、物流業界のスタンダードとなっていくでしょう。
RFID
RFID(Radio Frequency Identification)とは、メモリが内蔵された記憶媒体であるRFタグをリーダライタと呼ばれる機器でスキャンし、電子情報を読み込むシステムです。RFタグは交通機関の改札で用いられるSuicaやプリペイド型電子マネーカードにも利用されている他、シール型やコイン型などさまざまな形状のものが存在し、技術的に新しいものではありません。
RFタグの大きな特徴は1回のスキャンで複数のRFタグを読み取ることができる点と、遠い場所にあるRFタグも読み取ることができる点です。この特徴は物流業界の在庫管理に非常に適していると言われていましたが、位置特定の距離の誤差が大きいことなどから、その実用性はやや低いものと考えられていました。
しかし、近年ベンチャー企業を中心に開発が進み、RFタグの位置特定の精度は大幅に上がりました。今後、物流業界でのRFIDの活用はさらに広がることが予想されます。また、RFタグとAIによるデータ分析などを掛け合わせた、新たな物流ソリューションの提供も増えるかもしれません。
物流業界の自動化・効率化を支える技術をチェックしよう
技術の進化は、物流業界の業務の自動化と、携わる人員の業務効率化を進めていくでしょう。その変化は従来の物流プロセスをよりスムーズにするだけでなく、これまでモノの移動が難しかった場所にモノを届けるなど、社会課題の解決にもつながります。アナログな作業の多かった業界だからこそ、令和時代の物流業界の進化はより加速するでしょう。
文=宿木雪樹
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