仕事中の「マスク」はどうすればいいの? 若手ビジネスパーソンが身につけておきたい、ビジネスマナー最前線

ビジネスパーソンとしてステップアップするためには、必要なビジネスマナーをしっかり体得していかなければなりません。今こそ自己流マナーを卒業すべく、基本から学び直していきましょう。今回は、マナー講師として多岐にわたり活躍するマナー西出ひろ子先生に若手ビジネスパーソンが知っておくべきマナーについて質問。マスクのつけ方からリモートワーク中の注意点まで、幅広く解説いただきます。先生が教える「TPPPO®」を体得して、相手を思いやるビジネスマナーの本義を学んでいきましょう!

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マナーが“緩く”なったのは、グローバルスタンダードな視点から

日本でのビジネスマナー遍歴を振り返ってみると、ここ数年で大きな変化が起きています。まず、大きく変わったのはファッションです。ビジネスシーンではNGと言われていたリュックサックですが、震災以降は動きやすさから取り入れられることが増えました。同様に、靴に関しても国が通勤時のスニーカーを推奨したこともあって着用している人も多くなっています。

日本のビジネスマナーに変化が起こったのは、クールビズやカジュアルデーの導入がきっかけ。これまで厳しいルールが定められていた大企業でも、「グローバルスタンダード」の視点から身だしなみに関するルールが少しずつ見直されてきました。

「マナー」は相手を思いやる気持ち。メリハリのある行動を!

英語のマナー(manner)を日本語に訳すと、相手への敬意を示した行動を指す「礼儀」となります。儀礼の「礼」は相手への思い遣り、「儀」は儀式や儀礼を意味しますが、日本では“礼儀”ではなく“儀礼”になっている人が多いのも現状です。こんな風にしなければならないと「型」ばかり意識するのではなく、状況に合わせた行動をとりましょう。

ドラマや映画を見てもわかるように、海外の人はファッションや言動が日本とくらべるとラフに感じます。カジュアルな服装で仕事を行い、挨拶をするときには名刺だけを取り出してポーンと渡してしまう。一方で、仕事終わりにパーティーや食事会があれば、シーンに合った服装にわざわざ着替えて行くメリハリがあります。本当の意味でのグローバルスタンダードを目指すのであれば「通期時にはリュックにスニーカーだけど、クライアントに会うときにはビジネスバッグと革靴にチェンジ」といったように、状況に合った使い分けを身に付けると素敵です。

ビジネスシーンでOKなマスク、NGなマスク

マナー講師としてインタビューを受けたり講演を行ったりするなかで、ビジネスシーンでの「マスク」について頻繫に質問を受けます。個人的には仕事中であっても必要に応じてマスクを着用してかまわないと思っています。体調や生命に関わることですからね。

例えば、新型コロナウイルスなどの感染防止のための緊急非常事態時におけるマスク着用などの状況とは別として、花粉症の方が接客中にマスクを外している場合、クライアントや顧客から「鼻が赤いけど大丈夫かな。辛そうだな」と心配されてしまうことも……。相手の立場に立って思いやりの心を持つマナーの意義から考えると、相手に心配をかけないためにマスクを着用することは立派なビジネスマナーなのです。

ただし、ノーメイクを隠したい、小顔に見せたいなどの理由でマスクをつけるのはNGだと思っていた方がよいでしょう。オンラインミーティングでも、これらの理由でマスクをしている人がいるようですが、これは他人のための配慮ではなく、自分のための行動なので残念ながらマナーあるマスクとはいいがたいですね。

カフェやコワーキングスペースなど、社外で作業するときのマナー

働き方が多様化するなかで、会社以外の場所で仕事を行う人も増えてきていますよね。そんななかで身に付けてほしいのが、人がたくさんいる場所でのマナーです。電話で「○○社の△△プロジェクトについてですが……」といったように、個人名や業務に関する情報を口に出すのはもちろん厳禁。誰が聞いているのか分からない状況で仕事に関する情報を話すのは避け、電話の必要があれば人がいないスペースまで移動しましょう。

人がたくさんいる場所でパソコンやスマートフォンを置きっぱなしにするのもNG。近くにいる人からは画面が鮮明に見えてしまうこともあるので、席を離れるときには画面を閉じるようにしましょう。また、日本では少ないかもしれませんが、パソコンを置きっぱなしにしていると盗まれてしまうリスクもあります。リスクを回避するためにも、念には念を入れて行動するようにすることが周囲のプラスにもなり、かつ、あなた自身のプラスにもなります。ビジネスマナーはウイン-ウインの関係を築くこと。マナーはお互いをハッピーにするものです。

マナーが寛容化するなかで、求められる「自律」

私は、一般的に使われているTPOではなく「TPPPO®」(TIME・PLACE・PERSON・POSITION・OCCASION)を使っています。「TPPPO®」は基本となるタイム(時)・プレイス(場所)・オケージョン(場合)に加えて、パーソン(相手・人)ポジション(立場)を足した言葉。相手との関係性や自分の立場をふまえたうえで、適切な行動をとることこそマナーの本義であると考えています。

日本のビジネスマナーが少しずつ寛容になるなかで、大切なのは“自分を律する気持ち“を持つこと。ルールが緩くなったからといって甘えるのではなく、緩くなったからこそ相手の立場に立って自分を律することが求められていると思います。

”~~すべき“と決めつけず、その時々で最適な言動を選択できる、臨機応変な気の利くビジネスパーソンになってご活躍くださいね。

【監修】
マナー西出ひろ子●ヒロコマナーグループ代表。ウイズ株式会社代表取締役社長。一般社団法人マナー教育推進協会代表理事。マナー講座や研修はもちろん、マナー評論家として数多くのメディアに出演。28万部の『お仕事のマナーとコツ』(学研プラス)のほか、近著に『テレワークマナーの教科書』(あさ出版)など、国内外で95冊以上の著書・書籍監修。
https://hirokomanner-group.withltd.com/

文=山本杏奈
編集=五十嵐 大+TAPE

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