手取り30万円の年収や生活水準は? ファイナンシャルプランナーが詳しく解説!

同じ「月収◯◯円」でも手取りと額面でかなり異なります。手取り30万円の生活水準・生活レベルはどのようなものになるのでしょう? ファイナンシャルプランナーの西山美紀さんにお聞きしました。

手取り30万円の実態は?

多くの場合、税金や社会保険料が差し引かれた状態で口座に給与が振り込まれます。すでにそれらが差し引かれている金額を「手取り」、差し引かれる前の金額を「額面」と言います。

つまり自分の給与振込口座に毎月30万円が振り込まれている状態が「手取り30万円」です。手取り30万円の場合、月収や年収はおおよそいくらになるのでしょうか。目安を見ていきましょう。

手取り30万円の額面は?

「額面」とは、税金や社会保険料などが引かれる前に、会社から支給されている給与を指します。「手取り30万円」の場合、実際には会社から月38万円ほどが支給されています(扶養親族がいるなどの条件によって、この金額は異なります)。

この額面38万円から、税金で2万7000円ほど、社会保険料で5万5000万円ほどが差し引かれ、約30万円が給与振込口座に入ります。これが「手取り月収」になります。財形貯蓄や社内預金など給与天引きがあったり、会社で団体保険に入っていたりする場合は、その金額も差し引かれて振り込まれます。

手取り30万円の年収は?

手取り30万円は、額面が38万円ほどだとお伝えしました。ボーナスなしの場合で考えると、年収は38万円×12カ月で、456万円ほどになります。

ボーナスの有無でどう変わる?

ボーナスが、もし1年間で給与の4カ月分出る場合、年間で16カ月分の収入になります。おおよそ38万円×16カ月で、年収は608万円になります。ボーナスなしの場合の年収は456万円でしたので、大きな差です。手取り月収だけでなく、ボーナスの有無によって年収は大きく変わります。

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手取り30万円の生活水準をシミュレーション

手取り30万円の場合は、どんな生活水準になるのでしょうか。ここでは分かりやすいように、ボーナスなしの場合で見ていきましょう。

独身・一人暮らしの場合は?

独身・一人暮らしなら給与を自分のためだけに使えますが、一人暮らしのため家賃負担は10割、水道光熱費も基本使用料の割合が高くなる傾向にあり、家族と暮らしているのとあまり変わらない負担となります。30万円のうち、家賃が3割ほどの月9万円、水道光熱費が月1万5000円だとすると、残りの19万5000円でやりくりする必要があります。一般的なケースでは以下のように考えられます。

食事・外食費:4〜7万円
スマホ等の通信費:5,000円
日用品代:5,000〜1万円
交際費:1〜2万円
趣味代:1〜3万円
被服・美容等:1〜3万円
その他:1〜2万円
貯蓄:2〜3万円

特に一人暮らしでは、万一のときに頼れる人がそばにいないことが多いため、毎月の貯蓄は必ず確保しましょう。また一人暮らしでは、外食費や交際費が膨らみがちなので気を付けてください。

夫婦など二人暮らしの場合は?

共働き夫婦など二人暮らしで、それぞれ手取り月収が30万円、合わせて60万円のケースで考えてみましょう。

二人暮らしの場合は、家賃や水道光熱費を折半する家庭が多いようです。家賃や水道光熱費として2人で16万ほどかかった場合、残りの44万円でやりくりすることになります。

ここでは簡易的に、2人合わせた金額の一般的なケースを見ていきましょう。

食事・外食費:6~10万円
スマホ等の通信費:1万~1万5,000円
日用品代:7000~1万5,000
交際費:2~5万円
趣味代:2~6万円
被服・美容等:2~6万円
その他:2~8万円
貯蓄:2~6万円

二人暮らしの場合は共働きなら家計に比較的余裕ができるため、つい使ってしまいがちです。それぞれが毎月手取り月収の1~2割ほどを貯めた上で、お金を使うようにしたいですね。

子育てファミリーの場合は?

子どもがいる場合は子どもにかかる費用(保育園代や学費、塾代、習い事代)などが大きくかかるほか、水道光熱費、食事・外食費、日用品代なども膨らみがちです。また部屋数の多い家を選べば家賃も大きくなります。

共働きで手取り月収が30万円ずつあるケースのイメージ例を見ていきましょう。

食事・外食費:6~10万円
スマホ等の通信費:1万~1万5,000円
日用品代:1~2万円
交際費:2~3万円
趣味代:2~4万円
被服・美容等:2~4万円
学費や習い事代等:1~10万円
その他:2~8万円
貯蓄:1~3万円

子どもが大きくなるにつれて支出は増えていく傾向にあるので、幼いうちに貯蓄をコンスタントにしておくことがカギになります。

どの費用にどのくらいかけられる? 手取り30万円でできること

30万円の手取りがあったらどんな生活になるのでしょうか。住居関連から車、子どもの養育費、貯金まで、イメージを確認してみましょう。

家賃の目安は手取りの何割?

家賃は毎月必ずかかる固定費で、一度かかり始めると急に変えられません。できるだけ抑えておくことでお金を他の支出に回すことができます。家賃は管理費なども含めて、手取りの3割以内が理想です。月の手取りが30万円なら、9万円以内となります。ただし、セキュリティ面などを考えると、それ以上の金額になってしまう場合もあると思います。その際は、他の支出を引き締めるなどで調整しましょう。

車は購入できる?

車を所有する際には大きな金額がかかります。購入後も駐車場代や保険料、ガソリン代、修理代、車検代など継続してコストがかかるため、購入時はカーローンを組まず、できるだけ貯蓄から一括で出すことを目指しましょう。

一人暮らしで駐車場代が高いエリアに住んでいる場合は、手取り30万円から駐車場代やガソリン代を出すのが困難になるかもしれません。実家暮らしの場合や一人暮らしでも、安い駐車場を借りられれば検討の余地はあるでしょう。

一人暮らしの場合は、手取り3割の家賃を払っているとすると、9万円が差し引かれ、毎月21万円でやりくりすることになります。車関連の費用を1カ月当たりにすると、駐車場代を除いても2~3万円程度はかかる見込みのため、それ以外の支出を抑え、貯蓄もしながら21万円内でやりくりできれば検討できると思います。

毎月の貯金額イメージは?

貯金はできれば毎月手取りの1割以上が理想です。手取り30万円なら、毎月3万円の貯金です。ただし、一人暮らしや子育て中で教育費がかかる場合は、毎月3万円の貯金は難しいかもしれません。その場合は金額を減らして1万円でも2万円でも、毎月何かしら貯金する習慣を身に付けましょう。

共働きの場合は手取りの2割以上貯められるケースもあります。無理のない程度に夫婦で月6~12万円の貯金を目指してみてはいかがでしょうか。

子どもの養育費にかけられる金額の目安は?

子どもがいる場合、どれくらい養育費をかけるかは、各家庭の方針にもよるでしょう。養育費以外の支出を抑えられれば、その分多く出すことも可能ですが、できれば手取り月収の1割以上は貯金をした上で、残りのお金を配分するようにしたいところです。

ただし子どもの養育費は、小学校、中学、高校、大学と成長するにつれて支出がどんどん大きくなるのが一般的です。そのため小さいときから習い事代や塾代などをかけすぎないように注意しましょう。

養育費に余裕のある小さいときは貯金額を増やし、将来の大学費用(大学費用の目安は、高3夏までに子ども一人300万円以上)を、早いうちからコツコツ貯めていくようにしましょう。

住宅ローンで借りられる金額の目安は?

借入可能額は、返済負担率(年収に占める年間返済額の割合)や物件価格に対する住宅ローンの金額の割合など、さまざまな要素が関係します。あくまでも基準ですが、フラット35であれば返済負担率は年収400万円以上なら35%以下となっています。手取り30万円で年収456万円なら年間返済額の上限が約159万円になり、仮に金利1.5%で返済期間35年とすると借入可能額は約4240万円になります。

年間返済額についてはカーローンや教育ローン、カードローンなどがあれば合算された金額で考えますので、気を付けてください。また、借入可能額はあくまでも「借りられる額」の目安で、「35年間ずっと返せる金額」ではありません。家計やマネープランを確認しながら金額を決めましょう。

手取り額を上げる方法

現在の手取り月収が20万円台で、今後手取り月収を30万円に増やしたい人、またすでに手取り月収が30万円でもっと増やしたい人もいるでしょう。手取り額を増やすにはどうしたらよいのか、その例を紹介します。

スキルアップを目指す

現在の勤務先で手取り額を上げるには、仕事の成果を上げてベースアップを目指すほか、マネジメントスキルを身に付けることで職位アップを目指すのも手です。

また、会社によっては資格取得により、毎月手当を出すケースもあります。就業規定や福利厚生制度を改めて確認してみましょう。手当がない場合でも、資格取得によってスキルアップを目指すことは、結果的には手取り額アップにつながる可能性があります。

転職を検討する

転職によって手取り額アップを目指す方法もあります。同じ職種のまま違う業種に転職するほか、職種や業種は同じでも、会社が変われば収入が上がるケースもあります。一つの会社に勤めているとなかなか気付かない場合もありますので、求人情報などを調べてみると今後のキャリアを考えるきっかけにもなるでしょう。

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手取り30万円を目指すには? 職種を紹介

これから手取り30万円を目指すとしたら、どんな職種が考えられるでしょうか。今回は2つの例を紹介します。

技術系(IT・通信)

doda「平均年収ランキング(職種・職業別)」によると、技術系(IT/通信)の全体の平均年収が442万円です。ボーナスがなければ、手取り月収は30万円ほどになります。経験を積んで、ITコンサルタント(平均年収590万円)やプロジェクトマネジャー(平均年収686万円)を目指せば、さらなる収入アップも期待できます。技術系は理系出身者が多いと思われがちですが、IT系は文系学部卒から就職するケースもみられます。

営業系

doda「平均年収ランキング(職種・職業別)」によると、営業系の全体の平均年収が439万円です。この場合もボーナスがなければ、手取り月収は29万円ほどで、少し頑張れば手取り30万円が見込めます。同データによると、営業系のうち、MRや証券、医薬品メーカー、電機メーカー、銀行などの業種が比較的年収が高い傾向にありました。営業のスキルを身に付け、より年収アップを目指して業種を移るというのも一案かもしれません。

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まとめ

今回は、手取り30万円の人のイメージをお伝えしました。これから手取り30万円を目指そうと思っている人、また手取り30万円から増やしていこうと思っている人は、ぜひ参考にしてみてください。

【執筆者プロフィール】
西山 美紀(にしやま みき)
ファイナンシャルプランナー・コラムニスト。出版社で編集・マーケティングに従事後、2005年に独立し、ファイナンシャルプランナーの資格を取得。生き方やお金、人間関係などをテーマに取材を重ね、単に貯蓄額を増やすのではなく、日々に潤いをもたらしてくれるお金の貯め方・使い方を雑誌やWebで発信中。Oggi、LEE、日経DUAL、All About等で取材執筆・コラム掲載のほか記事監修や講演等。著書に『お金の増やし方』(主婦の友社)、『お金が貯まる「体質」のつくり方』(すばる舎)など。
Twitter:@writerN1225

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