緊張してしまう理由は?
緊張とは、人が不安や恐怖を感じたときに自身を守ろうと防衛本能が働いて生じる現象だそうです。
「人間には体を活動的にする『交感神経』と、リラックスさせる『副交感神経』があります。この二つはアクセルとブレーキのようなもので、人が不安や恐怖を感じると防衛本能から交感神経が優位になります。その結果、血液の循環や代謝が活発になり、緊張が生じるのです」(桐生さん、以下同)
緊張するとどうなる?
人は緊張すると、交感神経が優位になり、血管が収縮して血圧が上がります。その結果、以下のような体のサインがあるそうです。
- 心拍が速くなる
- 呼吸が浅くなる
- 汗をかく
- 手足の震え
- 声の震え
「緊張」と「緊張感」は異なると意識する
過度な緊張はビジネスの場面でしばしばマイナスに働くことがあります。ただし緊張した状態がポジティブに働く場合もあります。桐生さんはそれぞれを「緊張」と「緊張感」という言葉を使って説明されているそうです。
「緊張と緊張感は分けて考えた方がいいかもしれません。『よく見られたい』『失敗したくない』『怒られたくない』など、さまざまなことを考えて意識が散漫な状態のときに起きるのが緊張。
一方で緊張感は意識が一つのことに集中する状態のときに生じます。緊張というとマイナスのイメージを持たれがちですが、適度な緊張感を持つことは仕事において重要だと思います」
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緊張しやすい人の特徴とは?
緊張しやすい人とはどんな人なのでしょうか? その特徴を解説します。
リスクに対する感度が高い
緊張しやすい人の特徴として「リスクに対する感度が高い」側面があるそうです。
「リスクの感度が低い人は、緊張しづらい傾向にあります。勢いで『やっちゃえ』と、何事も取り組めてしまう。一方でリスクの感度が高い人は気になることがたくさん生じるので意識が散漫になりがちです。プレゼンでも『間違えたことを言わないか』『プレゼン相手からどう思われるか』など、さまざまなことを意識して、緊張しがちになります」
経験不足・準備不足
経験不足や準備不足も緊張しやすい人に多い特徴と言えます。
「人前で1度しか話したことがない人と100回話した経験のある人とでは、想定できることが異なります。『持ち時間が5分ならこのまとめ方が良さそう』とか、『取引先はこう言ってくるからこう返答しよう』などですね。経験値からそうした想定ができていれば、人前に立つことにもあまり緊張しなくて済むはずです。
またあらかじめ多くのケースを想定するには、事前の準備も必要です。『こういう質問をされたときのために返答を検討しておく』といった準備が不足していると、緊張が生じやすくなります」
ストレスを抱えやすい
普段からストレスを抱えやすい人も緊張しやすい人のようです。
「例えば嫌なことがあるとずっとイライラしている人など。なぜなら体も力みやすく、交感神経が優位になりやすいからです」
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緊張してしまう3つの原因
人はなぜ緊張してしまうのでしょうか。桐生さんは緊張の原因が主に三つあると指摘します。
「私は『PFTバランス』と呼んでいます。Pはフィジカル、Fはフィーリング、Tはテクニックです。体に原因がある方、心に原因を抱えている方、そしてテクニックがないから緊張するという3パターンです」
体に原因がある場合
体に原因がある状態とは、「呼吸が浅い」「姿勢が悪い」などを指します。これらの原因から声が小さくなってしまいがちです。自身の声が小さいと「うまく伝わらないかもしれない」「緊張していると思われているかもしれない」と注意が散漫になり、緊張が増してしまいます。
心に原因がある場合
心に原因がある状態は「リスクの感度が高い」「ストレスを抱えやすい」などを指します。これらの理由から、交感神経が優位になりやすい人です。そのため緊張しやすくなります。
テクニックに原因がある場合
テクニックに原因がある場合というのは具体的には、「早口になってしまう」「話し下手」などが挙げられます。それらの原因によりうまく相手に話が伝わりません。そのため「相手からよく思われていないかもしれない」などの不安から注意が散漫になり、緊張しやすくなります。
すぐに実践できる!人前で緊張しない方法・緊張をほぐす方法
緊張しない方法としてはどんなものがあるのでしょうか?上述した3つの原因によって、対策は変わってきます。
腹式呼吸をする
緊張の原因が体にある人は、自分の体をコントロールすることで緊張をほぐせる可能性があります。
「呼吸が浅くなるなど、体に原因がある人には深呼吸がお勧めです。副交感神経を優位にするために重要なのは腹式呼吸。腹式呼吸を簡単に行うには、後ろで手を組んで、胸を張って息を吸うと良いです。空気でお腹の辺りが膨らむのを感じると思います。
また普段から手をグーにして呼吸すると浅い呼吸になりがちですが、手をパーにして呼吸をすると腹式呼吸がしやすくなります。」
姿勢を良くする
緊張の原因が体にある場合、姿勢を良くすることも一つの対策だそうです。
「体に緊張の原因がある方の多くは猫背だったり、肩に力が入っていたりします。呼吸の器官が曲がっているので声が詰まったり震えたりするのです。姿勢を正して、肩をリラックスさせると良いでしょう。体幹が安定するので話す声も安定してきます」
失敗をチャンスと捉える
次に「緊張の原因が心にあるタイプ」の人はどうすればよいのでしょうか? 桐生さんはその一つとして失敗に対する解釈を変えることをお勧めしています。
「リスクの感度が高い人は人前で話をしたときに緊張すると『恥をかいた』と考えます。そしてその結果『もう話したくない』となる。でもリスクの感度が低い人は人前で話をしても『最初に失敗しておいてよかった』『次のチャンスに生かせる』と感じます。このように、失敗に関する解釈を自分の良いように変えていきましょう」
これだけは伝えたいことを決める
また心に緊張の原因がある人にとって「意識を集中させること」も重要な対策です。
「意識が散漫では緊張が生まれるので、意識を集中したい。でも散漫になっている意識をいきなり集中させるのは難しいと思います。
それで心掛けてほしいのは、『これだけは伝える』という1行を決めること。20分のプレゼンでも1分の自己紹介でも同じです。ほかの箇所で頭が真っ白になっても、途中で詰まってしまっても問題ありません。とにかく自分が本当に届けたい1行だけが伝わることを目標にしましょう」
手をゆっくり動かしながら話す
テクニックが緊張の原因になっている人の対策の一つが、早口にならないようにすることです。
「緊張するとつい早口になってしまう人も多いと思います。ただし緊張しているのに『ゆっくり話してください』と言われても直すのは難しいでしょう。
そんなときは、話し方ではなく動作を遅くするように意識します。なぜなら話すスピードは動きのスピードと連動するからです。話をするとき、手を動かす人も多いと思います。手をゆっくり動かすと、自然と話すスピードも遅くなる傾向にあります」
直前に人と話しておく
緊張をしないようにするためのテクニックの一つとして、「直前に人と話しておく」というのも有効です。
「例えばスポーツでも準備運動をしないでいきなり全速力で走れば、けがの原因になります。人前で話すこともそれと同じ。プレゼンなどの直前に人と話しておくと緊張が和らぐ場合があります。
大勢の前でのプレゼンに緊張するという人も多いと思います。いきなり人前に立つから緊張がより強まるのです。最初に会議室に入っておいて、後から入ってくる人にあいさつして話しかけておくと良いです。大勢から見られる立場だと緊張しますが、自分から積極的に会話しに行くことで緊張も和らいでいくでしょう」
徐々にできることを増やしていく
いきなり重要な会議や大人数の会議でのプレゼンを任されれば、緊張して当然です。そこで徐々に自分が緊張しないシチュエーションを増やしていきます。
「できることを徐々に増やしていきましょう。最初はハードルが低いことで構いません。人数の多い会議でプレゼンすることをゴールとするのであれば、『会議前に誰かとあいさつをする』から始めてもいいです。10人以上の会議で緊張するなら3人の会議で司会をやってみるなどもいいでしょう。徐々に緊張するシチュエーションをクリアしていき、最終的に大きな会議でプレゼンできるようになれば良いのです」
まとめ
重要な場面で緊張のあまり本来のパフォーマンスが発揮できず、失敗した経験を持つ人も多いと思います。紹介した実践方法はどれも明日から実践できるものなので、この記事を参考に緊張を和らげる方法を実践していってはいかがでしょうか。
【プロフィール】
桐生稔(きりゅう みのる)
株式会社モチベーション&コミュニケーション代表取締役。
1978年、新潟県十日町市生まれ。2002年、大手人材派遣会社に入社。営業成績がドベで新卒3カ月にして左遷される。そこから一念発起し、全国で売上達成率No.1を実現。その後、音楽スクールに転職し、事業部長を務める。2017年、社会人の伝わる話し方を向上すべく、株式会社モチベーション&コミュニケーションを設立。これまでに全国40都道府県で年間2,000回にわたり「伝わる話し方」のセミナーや研修を開催してきた。テレビ朝日とABEMAが共同製作する人気番組『マッドマックスTV論破王』では、ディベートの審査員も務めている。
https://www.motivation-communication.com/
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