- セルフマネジメントとは?
- ビジネスでセルフマネジメントが求められる理由とは?
- ビジネスにおけるセルフマネジメントのメリットは?
- セルフマネジメントが得意な人の特徴は?
- セルフマネジメントのスキルを高める方法は?
- 自分の成長に欠かせないセルフマネジメント
テレワークで働く人や、キャリアアップしたい人に必須のスキル「セルフマネジメント」。今回は、コミュニケーション論を専門とし、企業の組織づくりにも携わっている拓殖大学商学部教授の長尾素子さんにうかがった話をもとに、今の時代にセルフマネジメントが求められている理由や身につけるメリット、セルフマネジメントのスキルを高める方法について解説します。
セルフマネジメントとは?
「セルフマネジメント」とは、直訳すると「自己管理」のことです。ビジネスでは、目標の達成や自己実現のために、自分の思考・感情・行動を調整しパフォーマンスを最大化するスキルのことを指します。
セルフマネジメントのスキルを高めることで、自分の仕事を効率的に回せるようになるのはもちろん、職場での人間関係を円滑にしたり、ワーク・ライフ・バランスを保ったりといった幅広い効果が期待できます。
ビジネスでセルフマネジメントが求められる理由とは?
なぜ、ビジネスにおいてセルフマネジメントが求められているのでしょうか。その理由を具体的にご紹介します。
働き方改革によって生産性向上が求められているから
国を挙げて推進している働き方改革。企業として取り組むべきは、労働時間を短縮した分、従業員一人ひとりの生産性を向上させることです。効率の良い働き方をするためには、仕事に優先順位をつけるなど、自分で判断できる決断力やタスク管理が重要になります。これはセルフマネジメントの一環です。
テレワークの普及によって自己管理するシーンが増えたから
テレワークの普及により、働き方の自由度が高まりました。上司や同僚による管理が行き届かないところで働く場合、指示がなくても自分で行動して目標を達成しなければなりません。成果を上げるために、自分自身でスケジュールなどを管理する必要があります。
企業が自己成長できる人材を求めているから
昨今は、人の能力が企業の価値を上げていく「人的資本経営」が求められています。企業価値を創出するものとして、個々が有する潜在能力や経験によって磨かれたスキルに対し、これまで以上に焦点が当たるようになりました。
自己成長できる人は企業価値を生み出します。そこで、ただ漫然と働くのではなく、自ら学び、スキルアップする意欲のある人材が求められています。
多様性がこれまで以上に尊重される時代だから
異なる特徴や価値観を認め合う「多様性の時代」と言われている現代。そのため、さまざまなバックグラウンドを持つ人々と良い関係性を構築し、互いに学び合い、相乗効果をもたらす働き方が求められています。
しかし、自分と異なる価値観を持つ人とコミュニケーションを取るのは、想像以上にストレスがかかるもの。より良い関係性を築くためには、ストレスを上手にコントロールしたり、適応力を磨いたりする必要があるのです。
なお、適応力については以下の記事で詳しく解説しています。
<関連記事>適応力は多様性の時代に必須! その理由やメリット、キャリアアップへの役立て方を解説
人生100年時代のキャリアを自分で開拓する必要があるから
終身雇用制度が崩れ、転職が当たり前になったことで、自分でキャリアを形成していく必要に迫られています。定年後の人生も、これまでのように「定年を迎えたら余生を楽しむ」という時代ではなくなりました。
この先どのように社会に貢献していくのか、そのためにはどのようなキャリアが必要なのかを自分で考えていかなければなりません。
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ビジネスにおけるセルフマネジメントのメリットは?
セルフマネジメントを身につけていると、どのようなメリットがあるのでしょうか。具体的なビジネスシーンを交えてご紹介します。
業務の効率がアップする
セルフマネジメントが身につくとメリハリのある働き方ができるようになり、結果として業務に集中できるようになります。
さらに、上手に時間管理ができれば、仕事以外の時間を無理なく捻出でき、余暇を楽しむ、人間関係を広げる、学びの時間をつくるなど心身の健康や自己成長にもつながります。
冷静になって最善の選択ができる
感情的になることと、感情を行動に表すことは違います。感情的になるのは、セルフマネジメントができていない状態です。一方、感情を場に応じて適切に表せるのは、セルフマネジメントができている状態です。
前者は感情に支配されている状態、後者は感情を客観的にコントロールできている状態とも言えます。ビジネスシーンでは、感情的になって得をすることはありません。セルフマネジメントが身についていると、自分の感情や行動を客観視でき、場面ごとに最善の選択ができるでしょう。
体調やメンタルが安定する
どのような体調やメンタルが理想的なのか、自分の目指している状態が把握できていれば、それに向かって努力できます。また、理想に至っていなくても、そこに向けて努力している自分を意識することで、希望を持つことができ、結果的にメンタルにも良い影響を与えます。
メンタルと体はつながっているので、メンタルが良い状態であれば体も良い状態になる、といった好循環が生まれるでしょう。
仕事のモチベーションを維持できる
仕事に対して目標や「なりたい自分」を設定することで、それに向かって努力できます。達成感は自己評価につながり、その積み重ねによって仕事のモチベーションも維持できるでしょう。
自らキャリアを選択、開拓していくことができる
新卒入社の会社で定年まで働き続ける、あるいは一つの業界でキャリアを積んでいくなど、これまでキャリアの選択肢は限られていました。
しかし今では、同時に複数の職業に就くパラレルキャリアなど、キャリアの選択肢は広がりつつあります。また、仕事を一時中断して大学などで学ぶリカレント教育や、仕事を続けながら知識やスキルを習得するリスキリングといった選択肢もあります。
キャリアを自分で築いていくためには自己管理が必須です。逆に言うと、自己管理ができれば、自分でキャリアを選択したり、開拓したりといった可能性が広がると言えるでしょう。
他者からの信頼が得られる
セルフマネジメントが身についている人は、他者から見て信頼が置ける存在です。自分を律して常にパフォーマンスを最大化しようとするので、仕事を期限までにやり遂げる可能性が高く、何事も安心して任せられます。
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セルフマネジメントが得意な人の特徴は?
セルフマネジメントが得意な人には、考え方や行動において共通した特徴が見られます。
自分の体とメンタルのベストな状態を把握し、努力できる人
自分の体とメンタルのベストコンディションを把握している人です。
例えば、体調面では調子の良い時期と悪い時期を把握していたり、メンタル面ではリフレッシュするための術(趣味など)を持っていたりします。そして、その状態を維持またはより良くするために努力を惜しまない点も参考にするべきでしょう。
物事を俯瞰して捉えられる人
思考・感情・行動をコントロールするには、目の前の出来事だけにとらわれず、物事を俯瞰することも必要です。それができる人は、起こり得る出来事やその影響、対応の仕方を知っています。
鳥の目になって自分自身とそれを取り巻く環境を眺めてみると、自分がやるべきことが分かり、その結果、自分自身をコントロールすることができるのです。
怒りとうまく付き合える人
自分の中に沸き起こる怒りを客観的に見る力、怒りの原因や対象を分析する力、怒りの収め方とその影響を見通せる力を持っている人です。何に対して怒りを感じるか、どうすればそれが解消されるか、相手にどうしてほしいかを言語化できる特徴があります。
例えば、予定通りに資料作成が進められていないにもかかわらず、報告も相談もしない後輩がいたとします。内心では、「なぜできていないんだ!」と怒りを感じていても、セルフマネジメントが身についていれば、「午後の会議で使う資料ができていない状況について説明してほしい」と言えるでしょう。
怒りが沸き起こったとしても、その原因が資料の不備に対してであることを理解すれば、怒りを相手にぶつけずに済みます。むしろこの発言は、どうすれば会議前までに資料を仕上げられるのか、という解決に向けた対応といえます。
なりたい姿に向かって自己を高められる人
自己を高められる人は、なりたい姿にたどり着くための計画を立て、その計画を実行するとどのような結果になるかを想像(ビジュアル化)し、実現するためのストーリー(キャリアデザイン)を作っていくことができます。
先の例に挙げた先輩社員が、「後輩の育成を担当して、ゆくゆくはリーダーになりたい」という“なりたい姿”を設定した場合、後輩を育てるためにはどうすれば良いか、という視点で物事を冷静に考えるようになります。
その視点に基づくと、「資料ができていない状況を招いた要因として、後輩にどのようなスキルやマインドが足りないのか」「どのようにすれば後輩が育つのか」と考え、それらを改善するための計画を立てることができるでしょう。その一連の動きこそ、なりたい姿に近づくための努力になるのです。
セルフマネジメントのスキルを高める方法は?
最後に、セルフマネジメントのスキルを高める方法についてご紹介します。
さまざまな人と交流し自分を相対化する
海外に出ると日本のことがよく分かると言われるように、他者を通じてしか自分を客観視することはできません。
幅広い人と交流することで、いろいろな面を持ち合わせる自分を相対化することができます。上司や部下・同僚から評価してもらう360度フィードバックが有用だと言われるのは、さまざまな視点からの自己理解が進むからです。
関係性のある複数の人たちからフィードバックをもらうことによって、自分の強みをどんどん伸ばし、弱みを改善できるようになります。改善が難しい場合は、自分だけで抱え込まずに他者に支援をお願いするのもいいでしょう。
ストレスを発散する術を持つ
ストレスは体調を崩してしまう要因の一つです。定期的にスポーツを楽しむ、音楽を聴くなど、ストレス発散の術を自分なりに持っておきましょう。
さらに、仕事と家庭以外に自分の居場所(サードプレイス)を確保することも重要です。居場所というのは具体的な場所である必要はなく、自分をいつでも仲間として受け入れてくれるコミュニティのこと。
そのような居場所はストレス解消になりますし、仕事や家庭でうまくいかなくても「他に居場所がある」と思えるようになるので活力の源にもなります。
できないこと・苦手なことを把握する
できることは強みとして活用し、できないことは誰かの支援を仰いだり早めに相談したりするなど、対応策を準備しておきましょう。
放置したり、先延ばしにしたりすると管理能力に欠けると評価されかねません。スケジュール管理・タイムマネジメントなども重要ですが、最も重要なのは、できないこと・苦手なことを放置しないで対応策を常に持っていることです。
一人で解決できないことは他者の力を借りましょう。
自分の成長に欠かせないセルフマネジメント
セルフマネジメントは、自己を管理しながら成長をできるスキルです。
「セルフ」という言葉が入っているため誤解されがちですが、すべてを自分で解決する必要はありません。自分ができること・できないことを客観視し、必要な時には援助を求めましょう。また、自分も他者から助けを求められたときに応じることで良い循環が生まれます。
セルフマネジメントを身につけて、パフォーマンスの最大化を目指したいですね。
監修:長尾素子
拓殖大学商学部教授
株式会社TOKYO GLOBAL GATEWAY(東京都英語村)取締役COOおよび一般社団法人 社会人基礎力協議会 代表理事を兼務。
コミュニケーション論を専門とし、グローバル人材の育成、社会人基礎力の育成に携わる。また、企業・団体における研修事業にも関わっている。
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