「マインドセット」を仕事に活かすには?意味や事例も解説

「マインドセット」とは、一人ひとりの持つ基本的な考え方やその癖などを指す言葉です。近年ビジネスでも注目されているマインドセットですが、どのような場面で活用され、育てていくのかを考えてみましょう。

考え事をする若手社員

これまでの経験などから形成された思考パターンである「マインドセット」。近年ではビジネスでも注目されてきています。今回は、マインドセットの概要をはじめ、ビジネスシーンにおける重要性や活用方法について、オンラインでビジネススキルが学べる「やさしいビジネススクール」で学長を務める中川功一さんに伺った内容を基に、分かりやすく解説します。

マインドセットとは?概要を分かりやすく紹介

ビジネス戦略を立てる様子

マインドセットとは、物事に対する基本的な考え方の指向のことです。具体的には、人間が持っている思考パターンや考え方の癖といった、考える際の基礎となる枠組みのことを指します。マインドセットは自分自身の性格や経験などから形成されるので、基本的には一人ひとり備えているものが異なるのです。

マインドセットが仕事において重要な理由

近年ビジネスでは、マインドセットが注目されている傾向にあります。その背景の一つには、「モチベーションからマインドセットへ」という考え方の転換が挙げられます。

これまでは、モチベーション(motivation:動機)を中心とした行動や考えが重視されていました。しかし、近年の研究では、モチベーションは流動的なものであり、些細なことによって低下・上昇すると分かってきたのです。

つまり、モチベーションをビジネスの基盤にして取り組むことを続けていると、安定したパフォーマンスを維持できなくなってしまいます。そこで、仕事における取り組みに対する考え方として、マインドセットが重要であると注目されるようになりました。

ビジネス・仕事におけるマインドセットの種類とは?

自己肯定感が高い若手社員のイメージ

マインドセットの種類について、それぞれの特徴や違いを解説します。

成長型マインドセット

「成長型マインドセット」とは、物事に対して「より成長しよう、より先に進もう」といった基本姿勢のことを指します。仕事において、高いパフォーマンスや継続した成果を出すには、この成長型マインドセットが欠かせません。

よりよい成長型マインドセットとは、「自分はできる」「自分は価値のある人間だ」といった感情である「自己肯定感(self-esteem)」が高い状態とも言えます。高い自己肯定感があれば、何事にも前向きに取り組める上、自分に価値を見出せたり、より成長しようと考えられたりすることができます。

固定型(停滞型)マインドセット

「固定型(停滞型)マインドセット」は、人生は自分の力以外のもっと大きなものに左右されてしまうという考え方です。

成長型マインドセットとは逆にあるもので、この考え方は、頑張りや努力にかかわらず「自分の能力や可能性には限界がある」といった、自己肯定感の低さが関係します。自分に対して自信が持てないときは、物事に対する基本姿勢も後ろ向きになってしまいます。そのため、前向きな努力に対しても疑問を持ってしまい、仕事の成果なども出しにくくなってしまうのです。

個人と組織におけるマインドセットの違い

マインドセットは、個人と組織のそれぞれにあり、両者では意味が少し異なります。

個人におけるマインドセットは、それまで個人が積み重ねてきた経験により形成されます。先天的な個人差もありますが、努力や成功によって得てきた体験などの後天的な経験によっても構築されるものです。

一方、組織におけるマインドセットは、その組織が有している良いビジョンや、それを実践するための仕組み、行動パターンなどによって形成されます。つまり、組織でポジティブな考え方が共有されていれば、仕事に対しても前向きなマインドセットが構築されるのです。

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マインドセットを変える方法は?

マインドセットを変えるためのステップ

ビジネスでは、より成長しようとする成長型マインドセットを身につけることが大切です。固定型マインドセットを成長型マインドセットへ変えるには、どのような方法があるのでしょうか。3STEPで解説します。

STEP1:自己決定する癖をつけ、「根拠のない自信」を育てる

固定型マインドセットの根底には自己肯定感の低さがあるので、成長型マインドセットに切り替えるには自己肯定感を高める必要があります。そのため、まず「根拠のない自信」を育てましょう。

具体的な行動として一番大切なのは、自己決定していくことです。自己決定を繰り返すと、「人生のさまざまなことを自分で決めてきた」「自分の人生は自分が動かしている」と感じられるようになります。すると、より成長しよう、先に進もうという姿勢が身につき、根拠のない自信の獲得につながります。

STEP2:達成した経験である「根拠のある自信」を積み上げる

根拠のない自信を育てる一方で、成長型マインドセットには「根拠のある自信」を得ることも重要です。根拠のある自信を得るためには、実際に何かを達成した経験が必要になります。この経験は、自分が自信を持って行動するための根拠となり、健全なマインドセットを育むために大切になるのです。

このような経験は、いつから始めても遅くありません。基本的にマインドセットは自分自身でつくっていくものです。どのような小さな「達成した」経験でも良いので、根拠のある自信として積み上げていきましょう。

STEP3:自信を持って他者と関わる

「根拠のない自信」と「根拠のある自信」を自分で積み上げていったら、他者とも自信を持って関わりましょう。

成長型マインドセットは、他者との関わりの中でも育まれます。他者から承認を得ることで、「自分には仲間がいる」「自分には価値がある」という実感が湧き、自己肯定感の確信につながります。

反対に、社会との接点が薄くなってしまうと、自己肯定感が下がってしまいがちです。自己肯定感を高めるためにも、自分が無理をしない、心地よい範囲で問題ないので、相手を尊重しながら、自分も尊重できる関わりを持つようにしましょう。

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マインドセットを定着させるためのポイント

自分に言い聞かせている様子

自分や他者との関わり合いで育み、身についたマインドセットを定着させるためには、自分に言い聞かせることがポイントになります。

人は言語によって物事を認識します。そのため、せっかく自信を積み上げ、自己肯定感を高めて良いマインドセットを身につけても、それが言語化されていなければ、あいまいなものになってしまうのです。

定着させるための具体的な方法は、自分が「どのような場面」で「どう頑張り」、「どのように結果を出した」のか、そして「自分には努力し、達成できる力がある」と、明確に言語化しておくことです。このように細かく詳細に言語化すると、脳がはっきりと認識するようになります。ぼんやりしていた自信がしっかりと形成されれば、その分マインドセットも強固になるので、定着につながります。

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マインドセットの活用事例をシーン別に紹介

目標設定を行う様子

実際にビジネスシーンにおいて、マインドセットはどのような場面で活用されるのでしょうか。ここでは具体的な2つの場面を想定し、マインドセットの活用事例を紹介します。

目標設定を行う場面

マインドセットを自分自身に活用する例としては、目標設定をする場面があります。営業職のケースを例に説明しましょう。

自分に自信が持てない固定型マインドセットでは、十分な経験を積んでいるにもかかわらず、「年間の売り上げ目標は前年比の105%」「営業スキルを向上させるために週1程度は学習時間を設ける」というように比較的難易度が低く、達成しやすい目標を設定してしまいがちです。そうなると、自身の大きな成長にはつながりにくいでしょう。

一方、成長型マインドセットで目標設定を行うことによって、目標に対しても「もっと成長したい!」という原動力を維持したまま前向きに取り組めます。その上、目標自体も「年間の売り上げ目標は前年比の200%」というような自分にとって少し難易度の高い「ストレッチゾーン」以上での設定もしやすくなります。加えて、定性的な目標であっても、「顧客に合わせた能動的かつ最適な提案を行う」「コミュニケーションスキルや専門性に長けた人材になる」などの設定も可能です。

さらに、目標達成によって成功体験が得られれば、より成長型マインドセットを育むこともできるでしょう。

後輩・部下を育成する場面

マインドセットを他者に活用する例としては、後輩・部下を育成する場面があります。

後輩や部下への人材育成においては、彼らのマインドセットを高められるように、物事をデザインすることが大切です。マインドセットを毀損するような育成方法では、たとえ技能が身についても、その先、消極的で自己決定できず他者に頼りがちになったり、環境に対して不満を持つようになったりするケースがあります。

彼らのマインドセットを高めるために物事をデザインする方法としては、新たな課題といった挑戦を与え、成功体験を積ませていくのが王道的な方法です。課題に取り組む中で、「仕事のやり方が良かった」「配慮が行き届いていて素晴らしい」などの前向きな声かけもこまめに行いましょう。

このようなプロセスの中で得られる前向きな承認は、相手の脳内で言語化されて整理されます。それらが後輩・部下のマインドセットの構築につながるのです。

マインドセットをうまく活用する

より先に進もうとする成長型マインドセットは、どのようなビジネスパーソンにとっても必要になるものと言えます。もしも自分が、「自分の能力はこれ以上成長できない……」という固定型マインドセットを持っていると感じたのであれば、まずは自己決定をしたり、成功体験を積み上げたりなどで得られる自己肯定感を高めていくことから取り組むのが効果的です。

自分の能力の限界を自分自身で決めつけてしまうのは、あまりにもったいないです。成長型マインドセットをうまく活用し、より先の成長へつなげていきましょう。

監修:やさしいビジネススクール学長 中川功一
経済学博士(2009年、東京大学)。「アカデミーの力を社会に」をライフワークに据え、日本のビジネス力の底上げと、学術知による社会課題の解決を目指す。学長を務めているオンライン経営スクール「やさしいビジネススクール」を中心に、YouTube・研修・講演・コンサル・著作などで経営知識の普及に尽力している。 主な著書に『感染症時代の経営学』『ど素人でもわかる経営学の本』『戦略硬直化のスパイラル』など。

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