小さな「習慣化」で、大きな変化を。誰でもできるコツを、 有識者に聞く

スキルアップの勉強や運動など、続けたいとは思いつつも、三日坊主になってしまう人は少なくないでしょう。習慣化ができない要因は、いったいどこにあるのでしょうか。 自身の経験に基づく習慣化のコツをまとめた『誰でも簡単にできる習慣化のヒント21』(Kindle)を執筆した杉森真哉さんに、良い習慣を身につけるための秘訣を伺いました。

「習慣化」で楽しく働いている様子

「習慣化」は自己肯定感を高め、成長につながる

働き方のポイントを見つけたイメージ

杉森さんは、普段はシニアカウンセラー、ファイナンシャルプランナーなどの肩書きでシニアライフ相談サロンを営んでいます。まずは、そんな杉森さんが習慣化に関するコンテンツの執筆を手がけた理由を聞いてみました。

「数年前から、お客さまや同業の方へニュースレターを作って配信しているのですが、そこで書いた中でも反響の大きかったテーマが、『習慣化のコツ』だったのです。私自身、日々の食事に注意することや資格試験の勉強といった、継続が必要な事柄にチャレンジして挫折してきた過去がありました。これではいけないと試行錯誤し、積み重なったノウハウがより多くの人にとっても役立つのでは、と思ったのがキッカケです」(杉森さん、以下同)

習慣化は、螺旋階段を上るように取り組もう

仕事で配信していたニュースレターを通じて、人々の習慣化に対する悩みを知ったという杉森さん。人々が習慣化を追い求めるのはなぜなのか、習慣化にはどんなメリットがあるのか、聞いてみました。

「やはり成長や目標達成には不可欠なこと、と認識しているからではないでしょうか。それが習慣化のメリットだと思います。達成できれば満足感も生まれますし、自己肯定感も上がるはずです。

私は、習慣化とは螺旋階段を上ることに似ていると思っていて。ぐるぐると同じところを回っているような感覚がありながらも、確実に上へと上がっている。一つひとつ積み重ねている時は大きな変化を感じづらいですが、しばらくして、ふと気が付いたらいろんなことができるようになり、成長を感じられるものだと思います」

日々の習慣が、人生を良くも悪くもする

一方、成長につながる良い習慣もあれば、いわゆる悪習慣と呼ばれるものもあります。悪習慣は螺旋階段を下りていくようなもの、と言えるかもしれません。

「代表的な悪習慣としては、やはり食事が挙げられるでしょうか。“毎日食べているものが、体を作る”とよく言いますね。体に良いものを食べていれば健康な体が作られ、悪いものを食べていれば不健康になってしまう。ぜひそれを肝に銘じて、もし今、悪い食習慣を抱えているようなら、早めに断ち切ることをおすすめしたいです」

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「習慣化」できない原因は、きっと自分の中にある

仕事がうまくいかず同僚に励まされる様子

習慣化ができない人には、何か共通点があるのでしょうか。それがわかれば継続の足がかりになりそうです! 杉森さんに解説いただきました。

「1つは、ハードルを高く設定し過ぎていること。例えば、『明日から毎日10km走る』と決めても、仮に初日はできたとしても、2日目からは億劫になってしまうかもしれない。10kmではなく1km、毎日ではなく週●日から、といった具合に、実現可能なところからスタートするのがおすすめです」

「本当に続けたいことなのか」を探る

「加えて、『それが本当に続けたいと思っていることなのか』自問自答してみるのもポイントです。本気度があるかどうかを確かめること、とも言えるでしょう。気づけば他のことを優先していたり、続けて取り組まなかったりするならば、自分にとってそれほど必要のないことなのかもしれません。自分の中での優先順位が低いのなら、無理に続けようと思わなくてもよいのでは、と思います。もしそれを達成できなかった場合、テンションが下がってしまいますしね」

優先順位が低ければ、続けられない

確かに、なんとなく習慣化したいと思っても、なかなか達成は難しいもの。何かしら大きな目的があるからこそ、続けられるのかもしれません。

優先順位の高さは必須だと思います。それが低いと、『余った時間にやろう』となり、結局はやらなくなってしまう。もし本気で取り組みたいことがあるのなら、朝一番にやってしまうくらい、優先度を上げないといけないと思います。それができると、1日を気持ちよくスタートできて、満足度も自己肯定感も上がりますよ」

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三日坊主を回避する、習慣化のコツ4選

三日坊主を回避して前向きに働く様子

習慣化のメリット、それが続かない理由を理解できたところで、いよいよ習慣化達成のためのメソッドをご紹介。杉森さんがさまざまな試行錯誤をして「こうすると続けやすい!」と実感した、4つのポイントをひもときます。

「必ずこのタイミングでやる」と決める

「まず1つは、1日の中で取り組むタイミングを決めて固定すること。私は我が家のトイレ掃除を担当しているのですが、掃除のタイミングを『朝一番』と決めています。起きがけにトイレに入ったら、その時に掃除を済ませてしまう、ということですね。

また、家族に『今日は●時に帰ります』といった帰宅予定を知らせるメールは、朝の移動時間にすることに決めています。忘れずに実行するには、この方法がおすすめです」

期日を設定し、勢いがある時にやってしまう

「締め切りを設けるのも有効策の1つです。私が発行しているニュースレターも、発行日をあらかじめ決めているからこそ、そこに間に合わせて継続ができています。いつかやろうでは、いつまでたってもやりませんから。

しかも、なるべくエンジンがかかっている時にやった方が、効率がいいです。会社勤めだった頃は、よく会議の議事録をまとめる役割を担っていたのですが、時間を置かず会議後すぐに取り掛かるようにしていました。間を置けば置くほど面倒になるし、嫌々やっていたら時間もかかってしまう。だから動きが止まっていない時に取り組むことを推奨します。飛行機も離陸時が一番エネルギーを使うといいますね」

他者との約束事にして強制力を生む

「自分との約束は破りがちですが、他人との約束はきちんと守るもの。だから、あえて他者を巻き込んでしまうのもおすすめです。私はコロナ禍にYouTubeで対談を100回するチャレンジをしていたのですが、対談相手のスケジュールを早めに押さえることによって『やらざるを得ない状況』を作っていきました。ある種の強制力を働かせることも必要だと思います。誰かに『毎日これをやります』と宣言するだけでも、効果はあるのではないでしょうか。

できたらそれを記録しておいて、1週間続いたとか、30回目を迎えられたとか、キリの良いタイミングを記念日にして自分にご褒美をあげるのも、続けるための工夫の1つです」

既にあるルーティンに組み込む

「習慣化したいことを、それ単独でやるのは腰が重いかもしれません。その場合は、既に取り組んでいる別の習慣とくっつけることによって、ハードルが下がる可能性があります。私は毎日飲みたいと思っていた青汁を洗面所に置くようにして、朝の身支度のルーティンの中に組み入れました。別で青汁だけを飲もうとすると、忘れたり準備が億劫になったりしますが、身支度と青汁をひもづけたことで、習慣化のハードルが大きく下がりましたね」

習慣化の成功率を上げる、セルフコントロール術

セルフコントロールでモチベーションを上げるイメージ

最後に、習慣化を挫折しそうになる自分を奮い立たせるために、杉森さんからアドバイスをいただきました。

「『悔しい気持ち』を習慣化のスイッチに替えるのは、1つの方法ですね。私は過去に、とある資格試験に落ちてしまい悔しくて、そこから勉強が続くようになった経験があります。もちろん、最初からうまくはいきません。一度挫折をして、自分にとって必要なものだと自覚するのも、習慣化達成のための良い薬になる気がしますよ」

優先順位は、数をこなすことで自覚していこう

仮に、いろいろと悔しいことが多くてあれもこれもやりたい……といった具合に、優先順位を決めるのが難しくなった場合は、どうすればいいのでしょうか。

「とにかく数を打ってみることです。迷って足踏みをしていても、何も変わりません。何かに取り組んでみて、違うと思ったら別のことに手を付ければいい。その中で、気持ちが乗るものに出会ったら、それを追求していけばいいのではないかと思います」

「褒める」と「挑戦する」のバランスが大事

習慣化に取り組んでみたものの、三日坊主になってしまった……なかなかテンションの下がる事態ですが、挽回するコツはあるのか、伺いました。

継続できなかったからといって、自分を責めないことが大切です。仮に三日坊主で止まってしまったのなら、3日続けて期間を置いて、また3日続けて期間を置いて……と繰り返せば、それはそれで長いスパンで見たら『継続』と言えると思います。『3日もできたじゃないか』と自分を褒めて、自己肯定感を上げることが、次の行動につながるはずです。

とはいえ、やはり『やりたくないけれど必要だ』と思うようなことに果敢にチャレンジすることは、大きな成長につながります。私たちは毎日学校へ通っていたわけですが、行きたくて行っていたのではなく、義務だから行っていた。それでも続けたからこそ、いろんな知識や経験が身についたのです。

私は学生時代に剣道をやっていて、冬の寒い日の練習がとにかく辛くて嫌でした。行きたくないなと毎回思うけれど、我慢して行くといい汗をかいて、『今日も来て良かったな』と感じられたのです。一歩を踏み出すのにはある程度のパワーが要りますが、踏み出してしまえば意外と楽しい、やって良かったと思えることはたくさんあります。かつて学生時代に抱いたような達成感を、ぜひ社会人になった今、思い出してみてください」

まとめ

習慣化に取り組むには、まずは自分の気持ちに正直になって、手を付けやすいものからやっていくことが重要。仕事に役立つスキルの勉強など、何かしらの実益を得られればより良いのはもちろんですが、そこに本気になれないのなら、手を付けやすいことからやってみるのも1つの手です。それによって価値観が磨かれて、自分にとって本当に必要な習慣が何なのかを探ることは、自身の成長につながるでしょう。まずは小さなハードルを設定して、本気で取り組んでみて。螺旋階段を上がるように、着実に前進できるはずです!

話を聞いた人:杉森真哉 さん
シニアカウンセラー、ファイナンシャルプランナー。大学卒業後、大手測量会社にて、固定資産税を課税する自治体の役所に対するコンサルタントとして活動。現在は、PSE税理士グループ共同代表、株式会社PSE資産プランニング代表取締役として、顧客の相続業務に対応。また、シニア世代の困りごとを解決する相談サロンを開設し、見守りサポート、保証人・生前財産管理業務などにも取り組む。共著に、『そうだったのか! 相続のトリセツ』(幻冬社)、『Q&A 固定資産税は見直せる 適正納税の方法と実践』(清文社)などがある。

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