「させていただく」とは、謙譲表現のひとつです。ただし、適切な場面と不適切な場面があるため、注意して使わなければなりません。
使用可否を判断するためのポイントが、「許可」と「恩恵」です。本記事で、2つの条件を理解し、正しく「させていただく」を使用しましょう。
【敬語一覧】ビジネスで間違いやすい表現や使い方のポイントはこちらからチェック
「させていただく」とは
「させていただく」とは、「相手の許しのもとに自分の行為や動作を行うこと」です。主に動詞の後につけて、謙譲表現として使用します。
「させていただく」の使用可否のポイント
「させていただく」は謙譲表現で、基本的に取引先や上司など目上の相手に対しても使用可能です。しかし、状況によって「させていただく」を使用することがあまり適切ではない場面があります。
そこで、「させていただく」を使用できるか確認する際のポイントが、「許可」と「恩恵」の2点です。正しく「させていただく」を使えるようになるために、各ポイントを確認しておきましょう。
ポイント1 相手側又は第三者の「許可」を得る
相手側又は第三者の「許可」を得るためのものであることが、「させていただく」の使用可否を判断する際のポイントです。例えば、相手の持ち物を使わせてもらう場合や、相手に時間を使わせてしまう場合は、基本的に「許可」を得なければなりません。
もし、許可を得るための発言やメールではない場合、「させていただく」の使用を見送りましょう。
ポイント2 そのことで「恩恵」を受ける
また、あることを「させていただく」ことで、自分が「恩恵」を受けるという事実や気持ちがあるかも、大切な判断基準です。例えば、自社の商品を売り込むために取引先へ面談のアポを入れる場合、上手くいけば成約、売上増につながるため、自分(自社)に「恩恵」があるといえます。
自分に「恩恵」がないにもかかわらず、丁寧に伝えようとしてつい「させていただく」をつけていないか、使用前にチェックしましょう。
なお、紹介したポイント2つを満たしていない場合でも、「させていただく」の使用が受け入れられることがあります。厳密な判断基準ではなく、あくまで「許容度」を判断する際のひとつの指標と理解しておきましょう。
【無料診断】あなたの仕事力はどれぐらい?リモートワークにも役立つ仕事力をチェック
この「させていただく」の例文は正しい?NG?
紹介した2つのポイントを踏まえ、ここからそれぞれの文章が正しい「させていただく」なのかを確認していきましょう。正しいとはいえない文章については、正しく言い換えた例文も紹介します。
正しく「させていただく」を使用した例文
まずは、正しく使用した例文を2つ紹介します。
【例文1】 書類のコピーを取らせていただけますか?
他人の書類をコピーするのであれば、当然相手の許可が必要です(1)。また、「後で見直せる」など、自分に何かしらの恩恵があることが考えられます(2)。
1、2の条件をいずれも満たしているため、正しい表現といえるでしょう。
【例文2】 会議の日程を変更させていただきます
会議の日程を変更すると、参加予定者はスケジュールを再度調整(リスケ)しなければなりません。そのため、当然相手の「許可」を求めます(1)。
また、「自分が別日だと参加可能」「別日だと会議場所を押さえられる」など、変更により何かしらの「恩恵」があるため(2)、この例文も正しい表現といえるでしょう。
正しいとはいえない例文
ここから、正しいとはいえない例文を紹介します。
【正しいとはいえない文章1】弊社の新商品を発表させていただきます
新商品発表によって、自社をアピールできるため、「恩恵」は満たしています(2)。しかし、発表に「許可」が必要と判断される場合と不要と判断される場合があるでしょう。
「許可」が不要な発表にもかかわらず「させていただく」を使用すると、やや冗長な表現になります。ここは、「いたします」を使い、シンプルに表現して構いません。
発表する際の表現を正しく言い換えると?
弊社の新商品を発表いたします。
【正しいとはいえない文章2】◯◯大学を卒業させていただきました
自分が「卒業」することで「恩恵」はありますが(2)、単位を授与する教員などでない限り「許可」は必要ありません(1)。そのため、入社・転勤時の上司への挨拶や、取引先に自己紹介する際の表現としては不適切です。
こちらも、「いたします」を使って表現した方がよいでしょう。
自己紹介で卒業校を説明する表現を正しく言い換えると?
◯◯大学を卒業いたしました。
【正しいとはいえない文章3】下記日程で休業とさせていただきます
休業することで、自分に「恩恵」はありますが(2)、必ずしも「許可」が必要とは限りません。「許可」を求めるための説明でなければ、「させていただきます」を使う必要はないです。
他の文章と同様に、「いたします」で言い換えてみましょう。
休業する際の表現を正しく言い換えると?
下記日程で休業いたします。
なお、今回「正しいとはいえない」と紹介した例文でも、人によって「許容度」は異なるため、問題なしとされることがあります。
【無料診断】そのモヤモヤの原因は?キャリアのヒントが見つかる「モヤモヤ解消診断」
「させていただく」を使う際の注意点
「させていただく」は敬語の形式ですが、使い方によって相手に失礼な印象を与えかねません。そこで、ここから「させていただく」を使う際の注意点を解説します。
乱用は避ける
2つの条件を満たしているケースでも、ひとつの文章に何度も使うと読みにくい文章になります。丁寧にしていたつもりでも、くどく、読みにくい文章を送るとかえって相手に対して失礼です。
何度も「させていただく」を使うことは避け、シンプルでわかりやすい文章を心がけましょう。
二重敬語に気をつける
一般的に、ひとつの言葉に対して複数の敬語を加えた「二重敬語」は、丁寧すぎてかえって失礼だと理解されています。「させていただく」を使う際に、他の謙譲語と一緒に使わないように気をつけましょう。
例えば、「拝読させていただく」は二重敬語のひとつと指摘されることがあります。
「〜せていただきます」とした方がいい場合がある
いつでも「させていただく」の形を作らなければならないと考えて、余計な「さ」を加えてしまう人がいます。余計な「さ」を入れることは、「さ入れ言葉」と呼ばれる誤った表現です。「〜せていただく(いただきます)」と表現すべきではないか考えてから使いましょう。
例えば、「置かさせていただきます」「取り組まさせていただきます」はさ入れ言葉です。正しくは、「置かせていただきます」「取り組ませていただきます」と表現します。
条件を意識して「させていただく」を使おう
「させていただく」は正しい敬語表現のため、目上の人に対しても使えます。ただし、一つの文章に何度も使うと文章が読みにくくなるため、注意が必要です。
また、「させていただく」を使用する際は、基本的に「許可」「恩恵」の2つの条件を満たさなければなりません。条件を意識して、「させていただく」を使うようにしましょう。
【関連記事】
【例文付き】異動の挨拶メールの書き方や注意点・マナーをプロが解説!
間違って使ってない!?メール文面でのあるあるNG敬語
若手社会人が知っておきたい、他社訪問のコツ
あなたの本当の年収がわかる!?
わずか3分であなたの適正年収を診断します