「太鼓持ち」と聞くと「媚びる」「へつらう」「ご機嫌取り」というイメージがあり、あまり良い印象を持たないかもしれません。
その原因は「太鼓の持ち方に問題があるから」と指摘するのが、TVドラマ化もされた大ヒット書籍『正しいブスのほめ方』『正しい太鼓のもち方』の監修を務めた、放送作家の溝端隆三さんです。
上司に好かれて良好な人間関係へと導いてくれる、スマートな「社交辞令」上手になるコツとはどんなものなのでしょうか?
「子分力」がビジネスパーソンのスキルになる…?
「間違った太鼓の持ち方をしてしまうと、金魚のフン…つまり『ドラえもん』でいうところのジャイアンの横にいるスネ夫のようなイメージを周囲に持たれてしまいます。
そもそも、組織のトップである社長や重役クラスに出世できる人はほんの一握り。僕の今までの人生の中で出会った出世頭たちといえば、『小中高と圧倒的な支持を受けて生徒会長に選ばれてきた』『毎週のように他社から引き抜きのオファーがある』『そもそも親が社長』というような人たちばかりでした。
しかし、それ以外の8~9割の人は、常に誰かの下で働いているのが現実社会だったりしますよね。そう、『誰かの部下として生きる道』をほとんどの人が選ばなくちゃいけないわけです。
実は、変なプライドを捨ててそこを割り切ってしまうと、出世しやすくなり、肩の荷が下りて生きることが楽になるということにもつながります」(溝端さん、以下同)
著書である『正しい太鼓のもち方』では、現代社会において「ほめて、頼って、気に入られる」という“子分力”が、ビジネスにおけるコミュ力の必須スキルだと提唱されていますが…。
「例えば、お笑いの世界でいうと、ダチョウ倶楽部の上島竜兵さん、出川哲朗さん、サバンナの高橋茂雄さんなど…これらの『太鼓持ち』は思い切りスポットライトを浴びることは少ないものの、お笑い界の大御所はもちろん、多くの人たちから愛されていたりしますよね。
ただ、これらの人たちを見ていてもコバンザメのような嫌な感じがしませんし、むしろ自分らしく、自由にさえ見えますよね。それはこれらの人たちが『正しい太鼓持ち』ということに他ならないのです」
正しい太鼓持ちになるために必要な4つの条件とは
人の太鼓を持つことで何かメリットがあり、太鼓を持たれた人も気持ち良くなる。まさに「WIN-WINの関係」を築くことができるという太鼓持ち。以下のような心がけが必要とのことです。
1.人の良いところを見つけるプロになる
「その人のことを本当に好きじゃないと、どんな言葉にも気持ちが乗らず相手に響きません。むしろ逆効果の場合も。だから、まずはその人を好きになることが大事です。その人の良いところを見つけて好きになる。人の良いところを見つけるプロになってください」
2.特定の人だけの太鼓を持たない
「誰か一人に肩入れしてしまうと、『あの人、○○さんに気に入られるようにしてる』と思われてしまいます。一人の上司に気に入られる一本槍で戦っていると、もしもその上司が失脚してしまったとき、会社に居場所がなくなってしまうかもしれない。平等に太鼓を持ち、『あの人は基本、太鼓持ちなんだ』と思われるようにしましょう」
3.嘘をつかない
「本心ではないお世辞はその場しのぎにすぎず、忘れてしまうもの。しかし、太鼓を持たれた人はそのうれしい一言を覚えているものです。お世辞だとバレたとき、大きく信用を失ってしまいます」
4.変なプライドは捨てる
「たとえ後輩でも能力のある人の太鼓は持ちましょう。どの世代にも必ずリーダーやトップになれる人たちがいます。その人たちが、いつかあなたの上司になるかもしれません。そんなときでも、良好な関係性を保つことができるでしょう」
溝端さんに聞く! 正しい太鼓の持ち方3選
それでは実際にどんな太鼓の持ち方をすればいいのでしょうか。ここでは溝端さんの著書から一部、上司やシーン別に使えるセリフを教えていただきました。
<こだわりのある上司の場合>
“最近、会社でプチ○○さん、増えてないですか?”
「このセリフは、特に自分の中に何かこだわりがある人に対して響きます。ファッション・持ち物・プレゼンの仕方・言い回し・口癖など、尊敬される人はマネされるものです。人に影響を与えているのって気持ちがいいこと。それをさりげなく伝えてあげるんです。
大事なのは『プチ』と付けることで、しぐさやイントネーションなど、たまたま被ったレベルでも成立し、誰でも何かしら当てはまります。ただし『みんなやってます』と言っちゃうと、『誰が?』と聞かれて困ってしまうので、『僕の周りでは』というような、その人から近くない場所を指すと良いかも」
<情に厚い体育会系上司の場合>
“会社に嫌われたら生活の終わりですけど、○○さんに嫌われたら人として終わりと思ってますから”
「特に情の厚い体育会系の上司に響きます。会社の上司としてではなく、人として尊敬されていることは、人徳者にとってうれしいポイント。
ただし“会社第一”の上司には逆効果になる場合がありますので、どんな上司なのかをよく知り、見極めることもポイントです」
<飲みの誘いを断りたい場合>
“行ったら、絶対楽しくて帰りたくなくなっちゃいますもん!”
「特に昔ヤンチャだった上司に響きます。太鼓持ちとしては、仕事帰りの上司との飲みは評価を上げる最高の場ですから積極的に参加したいところですが、断りたいときもありますよね。
そのため、断るときにも相手に気持ち良くなってもらわなくてはなりません。別件で約束がある場合は、正直に言ったあと『あ~、そっちに行きたかったなぁ…。でもこっちの飲み会は今までに何回も断ってるんですよね』と泣く泣く感を演出しましょう。
しかし、あくまで前例あっての断り方ですので、最低でも1回は楽しい飲みの場があったという事実が必要ですよ」
ポジティブ癖をつけて、好かれる人になろう
実は、溝端さんが最初のヒット作『正しいブスのほめ方』を執筆したのは20代後半の頃。「当時は仕事がなくて、年収120万ほどのギリギリの生活をしていた」と明かします。
しかしそこで、「ブス(外見だけではなく内面含む)をほめられない人=人を見た目だけで判断する人=考えが浅く、応用力がない人」ということに気づき、本書を書きながら“ものごとを多面的に捉えてポジティブに解釈する癖”をつけた結果、仕事や人間関係が好転しだしたそうです。
その経験を踏まえた上で、「どのセリフを使うかということよりも、『人の良いところを見つける』『人に気持ち良くなってもらうためにサービスをしよう』というマインドになることが大事です」と話してくれました。
太鼓持ちなんて古くない?…そう思う方も中にはいるかもしれません。しかし、ただ調子が良いことを言う人を指すのではなく、相手を好きになり、相手の心をつかむクリエイティブなビジネススキルの一種、コミュ力だと思えば、見かたが大きく変わってくるのではないでしょうか。
日々の会社でのコミュニケーションの中、いつもとは違うホメの言葉を一言添えるだけで、相手の気持ちを捉え人間関係が少し前進するきっかけになるかもしれません。
識者プロフィール
溝端隆三(みぞばた・りゅうぞう)
フリーランスの放送作家。テレビ、ラジオ、お笑いの舞台などを中心に活動する傍ら、テレビ東京でドラマ化もされたコミュニケーション・ハウツー本、『正しいブスのほめ方』『正しい太鼓のもち方』など、トキオ・ナレッジ名義で執筆活動もしている。
※この記事は2017/02/13にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。
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