報告書に議事録、打ち合わせの資料にプレゼン資料など……。ビジネスシーンでは、さまざまな場面で資料作成が求められます。
そんなとき、毎回「資料の作り方が分からない!」「いろいろと盛り込んでいたらまとまらなくなってしまった」と、頭を抱えてしまう人もいるのではないでしょうか?
そこで今回は、最短時間で理想的な資料を作成するためのポイントを伝授します! 教えてくれたのは『仕事が速い人は「見えないところ」で何をしているのか?』の著者であり、日本アイ・ビー・エム株式会社の開発チームで数百人の指揮を執る木部智之さんです。資料作成のステップを4つに分けて、くわしく解説していただきました。
効率的に仕事を進めたいビジネスパーソンに必見の内容です。
「良い資料」の定義とは?
資料作成のステップを解説する前に、まずは「良い資料」の定義とは何かを知っておきましょう。このポイントを押さえておくことで、資料の出来栄えは大きく変わってきます。
「良い資料とは一言で言えば、言いたいことが相手に“伝わる”資料です。とくに若手の人にありがちなミスが、“伝える”ことを主眼においてしまうこと。資料を読む側の人が『努力をしなくては理解できない』のはいい資料とはいえません。資料を作る際は、相手に無理させず伝わるかどうかを一番に考えてみてください」(木部智之さん:以下同じ)
資料の目的は情報の報告・確認、ものごとの判断材料にするなどさまざまですが、すべてに共通する「良い資料のポイント」は以下の3つ。
・端的であること
・分かりやすいこと
・相手の目線に合わせていること
この前提を踏まえたうえで、資料作成の4つのステップについて学んでいきましょう。
最短で理想的な資料が完成! 4つのステップ
資料作成には、「構想を練る作業」と「落とし込む作業」の2つの段階があります。ポイントは構想に8割の時間をかけること。構想がしっかり固まっていれば、落とし込む作業にはそれほど時間をかけなくても済むようになります。
では実際に資料を作成する際のプロセスを4つに分けて解説しましょう。木部さんいわく、構想の段階に当たるステップ1から3までは、短時間で修正がしやすい「手書き」で行うのがベスト。紙を上手に活用することによって、効率的に作業を進めることができるのだとか。
<ステップ1>
「自分が伝えたいこと」「相手が聞きたいこと」を紙に書き出す
「資料を作る際、一番に考えるべきは『何のために』『誰に』『何を』伝えるのかという3点。それを踏まえやってほしい作業は、まず『自分が伝えたいこと』と『相手が聞きたいこと』の2つの項目を1枚の紙に書き出すこと。おそらく、両者が重複する部分と異なる部分が見えてくるはずです」
<ステップ2>
小さめの紙にエッセンスを書き出し、グルーピングする
「ステップ2では、ステップ1で書き出した項目に当てはまる要素を一通り洗い出します。この段階では要素を絞らないほうがいいですね。僕の場合はA5サイズの紙1枚に対して、1つのネタを手書きで書いていきます。そうするとネタが書かれた紙が何十枚も出来上がるので、それを項目ごとにクリップで留めてグルーピングしていきます。グルーピングする段階でいらないネタは省き、1枚にできるネタはまとめます」
<ステップ3>
A4用紙を使って、資料のレイアウトを書く
「グルーピングした紙の束をもとに、A4の用紙に資料のレイアウトを書いていきます。この段階では、配置などの大枠までを書いておけば大丈夫です」
<ステップ4>
レイアウトをパソコンのソフトに落とし込む
「ステップ4で初めてパソコンのソフトを開きます。ステップ3の段階で資料の構想がカッチリ固まっているので、あとはパソコン上で文章を補足して見た目をキレイにするだけ。ただ、見た目のブラッシュアップに時間をかけすぎるのはオススメしません。内容がしっかりしていれば、見た目はそれなりでもきちんと評価されるはずです」
資料作成スキルをさらにアップさせるポイント5選
最後に、資料作成におけるスキルアップのコツをまとめました。以下の5つのポイントを踏まえれば、理想的な資料をより早く完成させることができます。ぜひ、今後の資料作成に生かしてみてください。
●資料のテンプレートをストックしておく
「一から資料を作るのは、必要以上に時間がかかってしまい非効率。あらかじめ、資料のテンプレートをいくつか手元に持っておきましょう。たとえば『パワーポイント、テンプレート』などと検索すると、たくさんのテンプレートが見つかります。無料で使えるものも多いので、ここから使いやすいものをストックしておくとすぐに使えて便利です」
●要素が5つ以上あるときは「図・グラフ・箇条書き」を活用する
「要素が5つ以上出てきたときは、文章で書いただけでは伝わりづらくなってしまいます。数字のデータであれば図やグラフを、文章であれば箇条書きにすると、グッと分かりやすくなります」
●迷ったら結論から書く
「資料の構成は、内容によって結論から伝えたほうがいい場合と問題提起から入ったほうがいい場合があります。ただ悩んだ場合は『結論』を頭に持ってくれば、まずハズレはありません。前提が長くダラダラしていると、資料を読んでいる相手、プレゼンを聞いている相手はだんだん飽きてしまいます」
●プレゼン資料は極力文字を減らす
「アップル社を創業したスティーブ・ジョブズ氏のプレゼンを思い出してみてください。彼のプレゼン資料は文字が極端に少なく、大きめの写真やイラストで構成されていますよね。資料に文字が多く書かれていると、聴衆はどうしても資料を読むことに集中してしまい、プレゼン内容が耳に入りづらくなるんです。また、広い会場だと文字が見えづらいことも。プレゼン資料は極力文字を減らすのがセオリーだと覚えておきましょう」
●相手の反応を見て、次の資料作成に反映させる
「たとえば自分が作成した資料が相手にとって伝わりづらい資料であった場合でも、相手が面と向かってダメ出しをしてくれる機会は案外少ないもの。資料の出来を判断するには、相手が資料に目を通したときの反応を見るのが一番。何度も前のページに戻っていたり、首をかしげていたりといった相手の反応があったら、まだまだ改善の余地があるということ。次の資料作成に生かしましょう」
手書きを駆使してコツを積極的に盗むと、資料作成は上達する!
資料作成の肝は、「手書きを使った構想のプロセス」と「良い資料のテクニックを盗む姿勢」だといえます。木部さん自身、十数年のキャリアを重ねた今でも、他人の資料から良いと思ったテクニックを盗み、自分の資料に取り入れているそう。また現在執筆中の書籍も、紙を使い手書きで構想を練っていると教えてくれました。
より効率的に質の高い資料を作成するためにも、プリンターから出力された他の人の資料に目を通してみるなど、日頃から良い資料をリサーチする癖をつけておくといいでしょう。そして分かりやすい資料を見つけたらどんどんパソコンのフォルダにストックしておけば、いざ自分が資料を作る際にスムーズに進められますよね。
20代のビジネスパーソンにはまだまだ資料作りが慣れないという人もいるでしょう。しかし、これらのポイントを意識して臨むことで、徐々に資料作成が簡単・スムーズにできるようになるはず。まずは、パソコンのデスクトップにストックを保存するフォルダを作ることから始めてみませんか? 空き時間などにストック資料のいいところをピックアップして、自分フォーマットを作っていくのもいいかもしれませんね。
(取材・文:小林香織)
識者プロフィール
木部智之
木部智之(きべ・ともゆき)/日本IBMエグゼクティブ・プロジェクト・マネージャー。
横浜国立大学大学院環境情報学府工学研究科修了。2002年に日本IBMにシステム・エンジニアとして入社。入社3年目にしてプロジェクト・マネージャーを経験、2006年にフィリピン人メンバーと一緒に仕事をした際、優秀な彼らに衝撃を受け、いちビジネスパーソンとして世界中どこでも通用するスキルを身につけることを追求。2009年に役員のスタッフ職を経験し、2010年には最大級の大規模システム開発プロジェクトにアサインされ、中国の大連への赴任も経験。現在もそのプロジェクトを担当しており、日本と大連で数百人のチームをリードしている。プロジェクト内で自分のチームメンバーを育成するためにビジネススキル講座を始め、そのコンテンツは社内でも評判となった。
※この記事は2017/08/09にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。
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