エクセルとか数字って、なんかイマイチ苦手なんだよなあ。どんなときにどの関数を使えばいいのか分からない…。日頃の業務のなかで、そう感じているビジネスパーソンも多いのではないでしょうか。
「Excelと数字の両輪駆動で、仕事は楽しいものになる!」。売上15万部のベストセラー『たった1日で即戦力になるExcelの教科書』の著者で、Excel業務改善コンサルタントの吉田拳さんはそう提言しています。
今回は吉田さんに、業務効率化に役立つ「基本的な6つの関数」を教えていただきました。これを読めば、数字への理解が深まり仕事も効率化できるかも…?
「Excel」と「数字」との両輪で仕事は駆動する
吉田さんは、どんな仕事も「数字」を理解し、経営者の視点を持てるようになれば、きっと楽しいものに変わる、と言っています。そして、数字の理解という側面で、Excelはおおいに役立つとのこと。
「私は企業や社会人向けの指導研修を開いたり、著書『たった1日で即戦力になるExcelの教科書』を発表したりするなど、多くの社会人にExcelを使った業務改善の方法を教えてきました。そのなかで、Excelは「数字」を集計・整理できるツールにすぎないこと、最大の目的は「数字を理解すること」にあるのだと教えています。つまり、Excelは“数字”と一組で考えなければ意味がなくなってしまいます。
Excelのアプリケーションでは400以上の関数を使うことができますが、一般的な業務で使うものはせいぜい60?70くらいに絞られ、なかでも基本的な数字の流れを理解でき、業務でも役立つのは「6つの関数」です。今回はこれら6つの基本的な関数について、順を追って説明していきたいと思います」
条件によって答えを変える「IF関数」
まずは「IF関数」の基本を学んでいきましょう。論理式の条件に応じて指定された値を返す関数で、「もし?ならば?」という法則で結果を表示させたいときに使います。例えば、図1のような価格表があったとします。
ここでセル【B2】にある商品価格が3,000円以上なら「○」、3,000円未満の商品なら「×」にするという条件で、次のように結果を表示させるとしましょう。
この表を作成するため、指定のセルにIF関数の書式を入力してみましょう。
〈関数の書式〉 セル【C2】 =IF(B2>=3000,"○","×")
入力書式にある「>=」とは、「≧」(大なりイコール)のことです。セル【B2】の商品価格は「3,000円未満」に該当するため、セル【C2】には「×」が表示されました。セル【C2】を下方向にドラッグコピーすることで、すべての行に同じ関数が適用されます。
この例のように、条件に合うかどうかで答えを調整してくれるのが「IF関数」なのです。
範囲内の合計値を出す「SUM関数」
次に、同じ価格表(図1)を使って5つの商品価格の合計値を表示させたい場合の方法です。
ここではセル範囲に含まれる数値をすべて合計するときに使う「SUM関数」を使います。
〈関数の書式〉 セル【B7】 =SUM(B2:B6)
選択範囲はマウスでドラッグ指定することもできます。オートSUMボタンもしくはAlt+Shift+=のショートカットで「=SUM()」を自動入力させることも可能です。
入力書式のカッコ内にある「B2:B6」は「連続したセル範囲における始点(B2)と終点(B6)」を表します。
「商品1、3、5」など、飛び飛びになった複数のセルの合計値を表示させたい場合は「=SUM(B2,B4,B6)」(対象のセルをコンマで区切る)と入力します。マウスで選択指定(Controlキー+セルをクリック)してもOKです。
SUM関数は合計に関する関数の基本となり、指定範囲内の合計値を計算するときに利用すると便利です。
データの数をカウントする「COUNTA関数」
3番目の「COUNTA関数」は、範囲内にある「空白でないセルの個数」を返す関数です。
例えば、図2のような参列者一覧があり、この表の「男性」「女性」の数を数えていくとします(実際にはこれよりも参列者数が多い表の場合に役立ちます)。
ここでは次のように、参列者表とは別に、同じシート内に<男女別>の表を作り、男性・女性ごとの参列者数(名前が入っているセルの数)をセル【E2】【E3】に表示させます。
〈関数の書式〉
セル【E2】 =COUNTA(A:A)-1
セル【E3】 =COUNTA(B:B)-1
セル【E2】【E3】には同じような書式が入力されていますが、それぞれの列ごとに数がカウントされていることが分かります。なお「-1」としているのは、1行目にある「参列者(男性)」「参列者(女性)」のセルをカウントさせないためです。
COUNTA関数とは別に「COUNT関数」という関数がありますが、こちらは「数値が入ったセルの数のみ」をカウントするもの。用途に応じて使い分けてください。
「SUMIF関数」と「COUNTIF関数」
4番目の「SUMIF関数」と、5番目の「COUNTIF関数」は、これまでに紹介した関数の組み合わせです。「SUMIF関数」は検索条件に一致したセルの値のみの合計を計算する関数、「COUNTIF関数」は『検索条件』に合うデータの個数を指定した『範囲』から検索する関数です。
「SUMIF関数」は、指定された検索条件に一致するセルの値を合計します。例えば、図3のような売上表があり、担当者ごとの売上合計金額を表示させたいとしましょう。
ここでも売上表とは別に<担当者別売上合計>の表を作り、まずは山田さんの売上合計をセル【E2】に表示させます。セル【E2】を下方向にドラッグコピーすることで、渡辺さん、佐藤さんの行にも同様の関数が適用されます。
〈関数の書式〉 セル【E2】 =SUMIF(A:A,D2,B:B)
入力書式のカッコ内は、コンマで3つに区切られていますが、これは“A列の範囲のなかで、「D2」があったならば、B列の範囲でその合計値を出す”という意味になります。
さて、一方の「COUNTIF関数」は、指定された範囲に含まれるセルのうち、検索条件に一致するセルの個数を返す関数です。ここでは、図4のような商品評価一覧を使用し「○」「△」「×」、それぞれの数をカウントしていきます。
ここでも商品表とは別に<評価表>を作り、まずは「○」の数をセル【E2】に表示させてみましょう。セル【E2】を下方向にドラッグコピーすることで、「△」と「×」の行にも同様の関数が適用されます。
〈関数の書式〉 セル【E2】 =COUNTIF(B:B,D2)
入力書式のカッコ内は“B列の範囲のなかで、「D2」があったならば、その数をカウントする”という意味になります。
「VLOOKUP関数」は“垂直方向に探す”
最後に「VLOOKUP関数」です。Vertical(バーティカル)とは「垂直」、Lookupとは「探す」という意味で、“垂直方向に探す関数”だといえます。例えば、図5のような売上管理表があったとします。なお、D列では「単価×個数」が自動計算されるようになっています。
しかし商品が売れるごとに、いちいちその商品の価格・個数を入力するのは、手間がかかりますしちょっと面倒ですよね。そこで、VLOOKUP関数を使って、もっと便利な売上管理表に“改善”してみましょう。
まずは、あらかじめマスターとなる<商品価格表>を用意しておきます。そしてセル【B2】にVLOOKUP関数を入力してみましょう。
〈関数の書式〉 セル【B2】 =VLOOKUP(A2,F:G,2,0)
カッコ内にある入力書式はすなわち、“「A2」の文字列を、「F列?G列の範囲」の1列目から探し出し、(範囲内左から)「2列目」のセルの値を入力する”ということを表しています。
VLOOKUP関数があることで、2行目に商品名(A)と個数を入力するだけで、<商品価格表>から自動的に単価が選択され、かつ、小計が自動計算されるようになります。かつ、セル【B2】を下方向にドラッグコピーすることで同様の関数が適用されます。
今までは都度入力し計算していたものが、エクセル技でこんなにも簡単に分かりやすく変えられるのです。
まとめ
吉田さんはこれらExcelの関数をただやみくもに覚えるだけで「即座に業務が改善する!」という誤解をしてほしくないと繰り返し言います。
ビジネスパーソンはExcelの関数を利用して会社のお金を集計・整理し、会社のお金の動きを知ることが大切。なぜなら会社経営はまずは売上があり、そこから原価が差し引かれ、最終的に利益が残るという構造で成り立っているからです。利益が残らなければ、会社は運営できず、従業員である皆さんの給料も支払えません。
だからこそExcelの関数を活用し、数字の動きを理解する必要があるのです。理解できるようになると、仕事が前向きで楽しいものへと変わることでしょう。
識者プロフィール
株式会社すごい改善 代表取締役
吉田拳(よしだ・けん)
Excel業務改善コンサルタント。メルシャン株式会社に在籍していた当時に業務効率化のためExcel技術を追求。2010年に株式会社すごい改善を設立。実務直結主義のExcel研修を開催するなど、指導実績は2000名を超える。著書『たった1日で即戦力になるExcelの教科書』(技術評論社)は15万部、今年6月に発表した第2作『たった1秒で仕事が片づく Excel自動化の教科書』(同)と合わせ、シリーズ累計で19万部を突破した。
※この記事は2016/09/15にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。
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