自分の会社のウェブサイトを企業が持つのは今や当たり前。
最近では、それに加えて自分たちの会社をPRするためのコンテンツを配信するウェブサイト「オウンドメディア」を持つ企業が増えています。ビジネスにおけるインターネットの重要性は年々高まっていくばかり。今やIT系の会社でなくても、ウェブサイトと密接に関わるビジネスパーソンもかなり多いのではないでしょうか。
そこで今回は『入門 ウェブ分析論』の著者でもある小川卓さんに、若手ビジネスパーソンにとって必要最低限のウェブ分析の知っておかなければならない基礎知識を聞きました。これを押さえておけば、あなたがウェブ担当になったときも安心です!
必須スキルとしてのウェブ分析とは?
小川さんによれば、ウェブ分析とは「ウェブサイトで取得できるデータから、どこに強みと弱みがあるのかを導き出して、より良いサイトに改善していくこと」だと言います。
「簡単に言うと先ほどお伝えしたようなプロセスのことをウェブ分析と呼ぶのですが、クセモノなのが“良いサイト”というところです。良しあしのモノサシがどこにあるのか、企業や立場、サイトによって異なるので注意が必要です」(小川さん:以下同じ)
ウェブサイトはサイトを訪れる人、そして運営している人の目的を達成するためのツール。一にも二にも、そのことを忘れてしまうと、いくらウェブ分析をしたつもりになっても、その分析は、目的をより達成してもらうための改善につながりません。
そんなウェブ分析ですが、実際にどんなことに注意しながら、何をすればいいのでしょうか。
ウェブ分析の基礎1「目的と目標を明確にする」
「企業のウェブ担当者にとって重要なのは、ウェブサイトの目的と目標を明確にすることです。最初にサイトが存在する理由を明確にしましょう。たとえば、売上を上げたい、問い合わせ件数を増やしたいといった目的がある場合は、『2カ月後に今ある100万円という売上を200万円にしたい』『1年間で問い合わせ件数を現在の3倍に持っていきたい』といったように、数値と期間を明確にすることです。具体的な目標を決めて、サイトの改善を通じて目標を達成することが、ウェブ担当者にとって大切な業務であることを認識しておきましょう」
こういった具体的な目標設定がないと、サイトが何のために存在しているのかが曖昧になり「作って終わり」となってしまいがちなのだとか。
「目的と目標を明確にできていないウェブ担当者は、とりあえずサイトがどのくらい見られたか=閲覧数(PV数)ばかりを気にしがちです。しかし、目的と目標が明確になっていれば、1つのページに対してもいろいろなデータの見方があります。そういった意味でも、具体的な数字目標を定めるというのが重要だと思います」
また、目標は常に同じではなく、時間を経ていく中で変わっていくものです。そのため、目標設定は定期的に見直していくことも大切なのだとも言います。
ウェブ分析の基礎2「立場によって把握すべきところは変わってくる」
「ウェブ担当者といっても企業の場合、チームや部署で業務を内容によって分けるケースも多く、自分が担当する業務内容おいては、特に深く把握しておくことが重要です。例えばウェブサイトへの集客担当であれば、Twitterなどのソーシャルメディアや、Yahoo!などの検索、またリスティングと呼ばれる広告から来ているのか、といったように流入経路の種類やトレンドを把握しておく必要があります。また、ウェブサイト内のコンテンツの担当であれば、どの記事が読まれていて、どの記事が読まれていないのか、そしてそれはなぜなのかといったことを知らないといけません」
大きな企業であるほど分業化され、把握しておかなければいけないところは細分化されるようです。
「上司や経営層に報告義務がある人は、もちろん目標とそれに対する達成率を完璧に把握しないといけません。サイトの全体を見渡すリーダーであれば、今後の見立てや方向性、課題、同業他社との違いなどを把握すべきでしょう」
さらに、このリーダーに関しては、ウェブサイトの運営においてかなり重要な役割があるのだと言います。
「こうして担当別に動いていると、それぞれのゴールが食い違ってくることもあります。自分の担当の数字だけしか見られない人が出てくるので、リーダーには、個別の数字だけでなく全体の最適を考えることが求められます」
ウェブ分析の基礎3「PDCAサイクルを回すスキル」
「ウェブ分析にも、他のビジネスでも求められるようなPDCAサイクルを回していくことが大切です。PDCAとはPlan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Act(改善)の頭文字をとった用語で、これら4つの段階を順に繰り返すことでウェブサイトを改善していく手法。このサイクルを回すうえで、よくある失敗例としてはPlan(計画)だけで終えてしまうケースです。その原因は、実行不可能な計画設計、評価するための指標や基準が明確になっていないといったことが考えられます。PDCAサイクルを回すためには“その計画が現実的であるか?”、“評価するための指標や基準は明確か?”、“達成のための施策が思いつき、それが実現可能か”ということに注意して最初の計画を考えましょう」
いかがでしたでしょうか。今後、ますますウェブに関わる人は増えるでしょう。その中で、どのような心構えで取り組むべきなのか。今の自分には関係ないという人も、既に自社のウェブサイトに関わっているという人も、いま一度、ウェブ分析の基礎知識をおさらいしておきましょう。
識者プロフィール
小川卓(おがわ・たく)/1978年生まれ。ロンドン大学(UCL)、早稲田大学大学院卒。
マイクロソフト、ウェブマネー、リクルート、サイバーエージェント、アマゾンジャパンなどで活躍。ウェブサイトの分析・改善施策の提案などや、全国各地で講演会や勉強会を行っている。デジタルハリウッド大学大学院客員准教授・株式会社USERDIVE Chief Analytics Officer・株式会社Faber Company Chief Analytics Officer
ブログ:リアルアナリティクス
※この記事は2015/04/13にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。
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