成果(製菓)主義こそライフワークバランスをかなえる鍵!? カルビー流働き方改革

誰もが知る老舗ながら、働き方を大幅にアップデートしていくことで大躍進を続けているカルビー。今回は、その働く環境にフォーカスを当てたお話を、広報の幕内理恵さんに伺いました。

成果(製菓)主義こそライフワークバランスをかなえる鍵!? カルビー流働き方改革

サクッ、パリッ。

ポテトチップスにじゃがりこ、かっぱえびせん。誰もが幼いころから慣れ親しみ、一度は口にしたことがあるこれらのお菓子を、次々と世に送り出してきたカルビー株式会社。

1949年の設立と、長い歴史を持つカルビー株式会社。昨今動き始めた働き方改革を、いち早く2009年より取り入れ、効率良く柔軟に働ける環境づくりに取り組んできました。その結果、働き方改革を開始してからわずか5年間で、会社としての利益率がなんと10倍になったのだそう。

誰もが知る老舗ながら、働き方を大幅にアップデートしていくことで大躍進を続けているカルビー。今回は、その働く環境にフォーカスを当てたお話を、広報の幕内理恵さんに伺いました。

「ワークライフバランス」ではなく「ライフワークバランス」


―歴史ある大企業のカルビー社ですが、他の企業と比べて非常に柔軟に働き方改革を進めているように思います。何がきっかけだったのでしょうか?

2009年、会長に松本晃、社長に伊藤秀二が就任したことで経営体制が変わり、経営・組織改革を実施しました。それまでの働き方を見直し、効率良く仕事を進め、より成果を上げるために働き方改革にも率先して取り組むようになったのです。

トップから社内全体に「会社が求めているのは時間ではなく、成果です。労働時間が長いからといって生産性が良くなるわけではありません。時間に対して成果が比例するという時代は終わりました。成果を出せるように働き方改革に取り組んでほしい」という強いメッセージが発信されました。

また、改革に取り組む中で、弊社では「ライフのほうが大事」という考えから「ワークライフバランス」ではなく、「ライフワークバランス」を中心に考えた働き方を意識しています。そこで、部署を横断したメンバー同士でライフワークバランスを進めるプロジェクトをつくり、従業員の意識改革を目指した啓蒙活動や、働き方をサポートする制度を設けるなどの取り組みを進めていきました。

―改革を進める上で社員の反応はどうだったのでしょうか。

2014年4月から改革の一環として、在宅勤務制度をスタートしたんですね。そこでは省略できた通勤時間を有効に使うことができ、自宅で集中的に仕事を行うことによって効率がアップするため、非常に良いという声が挙がりました。もともと、その半年ほど前からテスト運用をしていたのですが、その際にとった従業員アンケートではポジティブ評価が多くあったのです。

また、2010年1月に現在のオフィス(本社である丸の内トラストタワー)に移転したのですが、そのころからフリーアドレス制を取り入れています。ノートパソコンと携帯があれば、どこでも仕事ができるという環境が整っていたため、社員の間でもあまり抵抗はありませんでした。この流れから、在宅勤務の導入も比較的スムーズに行えたのではと思っています。

在宅ワークって実際は少し不安……そんな方もいるでしょう。新しいルールや働き方は、慣れるには少し時間がかかるかもしれません。それでも徐々に浸透させることで、意外とすんなり順応ができ、社員にとっても会社にとってもいいことずくめだった在宅ワーク。お互いの信頼関係と時間の有効活用を考えると、柔軟かつ現代のライフスタイルに合わせた働き方なのかもしれませんね。

やめられない とまらない!?「モバイルワーク」「早帰りデー」


―具体的にどのような「働き方改革」を進めたのでしょうか。また、その効果はいかがでしたか?

カルビーでは主に以下のような働き方改革を進めています。

【モバイルワーク】

利用日数週2回が上限で自宅のみOKとしていたところを、2017年4月からは日数と勤務場所の制限をなくし、自宅以外にカフェやコワーキングスペースでも仕事ができるよう、モバイルワーク制度を導入。

モバイルワークが利用できるのは新卒入社3年目以上で、会社の事業所以外で業務遂行することにより作業能率や生産性向上等が図られ、自立的な働き方ができると上司の所属長が認めた社員です。希望者は、上司の許可を必要とする事前登録をします。実際にモバイルワークをする日の前日までに上司へ実施予定や業務内容をメールで連絡し、上司の許可を得たうえでモバイルワークを行います。

本社オフィスでは2017年4月現在、フルタイムの常勤嘱託社員も含む正社員275人のうち、141人がこの制度を利用しています。同月からは1日単位に限らず半日単位でも申請ができるようになりました。

例えば、「午後から子どもの授業参観がある」日に、通勤時間を加味して従来は全日休暇申請していた社員が、午前中は自宅で仕事して午後は半日休みを取るというように、より効率的に時間を使えるようになったのです。

また、空いた時間に自己啓発のためのセミナーに参加したり、社外の人と会う機会が増えたなど、社員からのうれしい声も多数挙がっています。

ソロ
オレンジの椅子が「ソロ」席。パーテーションもあるので集中できる。

コミュニケーション
緑の椅子が「コミュニケーション」席。「ソロ」に比べると人と人が近く、パーテーションもない。

集中
携帯も私語も禁止!な「集中」の席。

【フリーアドレス制】

“ダーツ”と呼ばれるシステムにより自動的に席が割り振られ、毎日異なる席で業務を行います。席は「ソロ」「コミュニケーション」「集中」の3種類があり、自身の業務の進め方によって席の種類を選べる、という仕組み。

業務における「簡素化、透明化、分権化」を進めたほか、「ノーミーティング、ノーメモ」といって、できるだけ無駄な会議をしない、無駄な資料をつくらないことも促進。フリーアドレスになってから会議の回数が大幅に減って以前の3割ほどになりました。

【フレックスタイム制】

定時の8時30分~17時をベースに、フレックスタイム制を導入。現在は午前10時~15時でコアタイムを設けていますが、業務に応じてさらに柔軟で効率的に働くことができるよう、2017年度中にコアタイムは撤廃する予定です。

【早帰りデー】

残業をなくすため毎週水曜日を「早帰りデー」として、「早く帰りましょう」と呼びかけを行うもの。呼びかける担当者は部署ごとに持ち回りで、さまざまな部署の従業員が夕方になるとオフィス内で呼びかけを行っています。

オフィスはもっとも危険な場所……!?


―「Commitment & Accountability」(=約束と結果責任)を導入し、成果主義型の徹底をされていますが、それによって変化したことはありますか?

この「C&A」は達成された結果を重視するというコンセプトの制度で、目標管理をベースとした評価制度そのものの名称です。これは年度ごとに各社員が数値指標に基づく目標を設定して、その達成結果に応じてインセンティブ(賞与)を支払う仕組みになっています。

「人の成長なくして、会社の成長なし」という考えのもと、さまざまな人事システム改革に着手してきました。それまで一般社員層については、業務プロセスなどに基づく年次評価が行われていたのですが、新体制以降はそのようなプロセスによる評価は廃止され、C&Aに一本化しています。成果が賞与に確実に反映されますし、役職者のコミットメントと成果は社内ポータルで公開もされています。成果が出なければ降格することも。もちろん再びの昇進ということもあります。

―社員にとっては少し緊張感がありますが、逆を言えばやりがいにも大きくつながるかもしれませんね。若手にとってもチャンスはたくさんある環境だといえそう。

全社員の評価がこのC&Aのみで決定されるため、社内で高い役割を目指すためには、C&Aで成果を挙げて自らチャンスをつかみ取ることが求められています。このようにC&Aはキャリアに直結しているため、社内ではすでに一般用語となり、成果主義という考え方そのものも普通になりましたね。

Pay for Performance(成果給)の実現を目指して、上司と部下が目標を共有し、具体的な課題へどう取り組んでいくかを明確化するようになりましたし、社員一人ひとりも成果にこだわるようになったのです。それに伴って会社の業績も右肩上がりとなっています。

また、在宅勤務や時短勤務などの制度を整え、働き方改革とダイバーシティ活動を推進することで、2010年に5.9%だった女性管理職比率は、2017年には24.3%になりました。執行役員や管理職の中には子育てしながら精力的に働いている女性もいますよ。

―社員にとって会社、オフィスはどうあるべきだと思いますか?

会長の松本晃がよくこんなことを従業員に言っています。

「成果を出すためには、仕事を効率よく短く切り上げ、時間をもっと有効に使うことで、もっともっと人間性を磨きなさい。人間性を磨くためには勉強をしたり、文化・教養を高めたり、体を鍛えて健康を維持したり、家族と一緒に意味のある時間を過ごして英気を養ったり、そういうふうに時間を有効に使って魅力的になった人が良い仕事をできるのです。会社はそれらの成果を出す場です」

また、「Office is the most dangerous place(=オフィスはもっとも危険な場所)」というのも松本の言葉です。いつも同じ席に座り同じ顔触れで目新しい情報交換もなく、さらに残業ばかりしてオフィスに一日こもっているだけでは、何も生み出せないという意味です。

―最も危険な場所……確かに変化がないと毎日がルーチン化してしまい新たな発想が生まれにくい。ダーツ制度の必要性がここで深く分かりました。最後に、カルビー社が「働き方」で大切にしていることを教えてください。

引き続き、一人ひとりが自立的に成長しながら成果を出し、変革し続ける強い組織の実現に向け、今まで以上に従業員が成果を出すことに集中して生き生きと仕事ができる環境づくりを続けていきたいと思います。

成果主義からアイデア生まれる「製菓」の会社


既存の働き方にとらわれず、徹底的に「成果」を求めるために働き方を改革してきた“製菓”メーカーのカルビー株式会社。

働き方を変えることで社員の人生を豊かに輝かせ、その上で一人ひとりのアイデアもザクザクと増やしていく。このような働き方ができるからこそ、社員も会社もクリエイティブな新商品を次々と生み出していけるのでしょう。

たった5年での急成長の秘密は、新しい働き方「ライフワークバランス」への挑戦の結果だったようです。

(取材・文:ケンジパーマ)

 

識者プロフィール
幕内理恵さん
カルビー株式会社コーポレートコミュニケーション本部広報部広報課

http://www.calbee.co.jp/

※この記事は2017/06/21にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。

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