「僕は書くことがとにかく好きだった。その思いに正直に向き合った」―― 編集者 朽木誠一郎氏が語る、“好き”を仕事にするキャリア論

皆さんが当たり前のように行っている仕事。“やりがい”や“楽しさ”を見出させていますか?

「僕は書くことがとにかく好きだった。その思いに正直に向き合った」―― 編集者 朽木誠一郎氏が語る、“好き”を仕事にするキャリア論

皆さんが当たり前のように行っている仕事。“やりがい”や“楽しさ”を見出させていますか?

一度、ふと立ち止まって考えてみてください。1日8時間、それを40年も続けていかなければいけない仕事。人生の3分の1を費やすものといっても過言ではありません。やりがいを見出せないまま働いていては、無駄に時間が過ぎていくだけです。

今回、話を伺ったのはメディアの運営やマネジメント、いわゆる管理系の仕事をメインとする「編集長」という肩書きを捨て、自分の好きな”執筆”や”編集”に注力する選択をとった、編集プロダクション「ノオト」の朽木誠一郎氏。彼を突き動かしたものは何か、そして彼にとって仕事を楽しむとはどういうものだったのでしょうか?

好きなことがあったのに大学へ。僕は少し後悔してます


(インタビュアー)― 朽木さんは、大学卒業後、ライターとしてキャリアをスタートさせていらっしゃいますが、いつ頃、書くということに魅力を感じるようになったのでしょうか?

朽木:14歳、中学2年生の頃ですね。自宅にPCが届き、「スワロウテイル」「花とアリス」で知られる、岩井俊二監督のオフィシャルサイト『円都通信』にあるシナリオ募集のコーナー“しな丼”に応募したり、小説のコンテストに応募したりしていました。

とにかく書くことが楽しくて楽しくて。応募先の人から評価されませんでしたけど、すごく気持ちの良い時間だったなぁと、今でも思っています。


― その後、大学ではライティングとは関係のない、いわば専門的な領域に進まれたのですよね?

朽木:「ライターとして食っていきたい」という思いはずっと持ち続けていたのですが、周りから「それは無理なんじゃないか?」とすごく反対されたんです。

当時は今ほどライターという職業が一般的ではなかったですし、“書く仕事”というと、小説家のようなイメージが強かったと思います。確かに、“書く”ことだけで生計を立てられる人は、一握りだったかもしれません。

そういった背景もあり、両親や家族は「冒険はせず、勉強して良い大学に入った方がいい」と。僕も「まぁ、そうだよな」と思い、理系の専門課程に進学しました。

その頃は、「周囲の人が言っていることはもっともだし、学歴があるに越したことはないな」という考えが強かったんです。それで、大学進学の道を選んだのですが、今思えば損していたなと。この時代、キャリアを形成していく上で学歴が本当に関係なくなってきているので、「もっと自分が興味ある学部に進んで、ずっと執筆活動をしていれば良かったな」と思います。

やっぱり書くことが好きだった。自分の声に従って決断した、ライターというキャリア



― でも、今はやりたかったことを追求されていますよね?ライターとして生きていく決断はいつされたのでしょうか?

朽木:大学を卒業する間近、本当にギリギリのタイミングです。高校生の頃は結局、大学に進学する道を選びましたが、 在学中も未練が心のどこかにあったんでしょうね、「自分には書く才能がある」と周りに対して口にしていて。

そう、ライターとしてのキャリアを諦めきれていなかったんです。ただ、本当に口だけで全く行動していなかった。そんなとき、「自分はライターとして生きていけるのだろうか……」と、ハッと思ったんです。


朽木:そこからはもう行動あるのみで、まずは「ライターとして食っていけるか試してみよう」と。まずは色んなメディアを見て、書き方を真似してみる。こうして少しずつ”書く”方法を自分なりに勉強し、記事の書き方を勉強していきました。

フリーとして記事を書けるようになっていったら、少しずつ上手くいき始めて、ライターの仕事だけで学費や生活費を稼げるくらいになりましたね。

― 学費も稼げるようになったんですか、すごい!

”書く”ことで稼げるようになり、楽しさを感じているところだったのですが、卒業という決断のタイミングを迎えることになって。今後の人生をどうするか考えたときに、「やっぱり書くことを仕事にしたいな」と。大学進学のときに、周りの声に従ってしまったからこそ、今度は自分の内なる声を信じてキャリアを決めようと思いました。


― ライターとして本格的にキャリアをスタートさせて、1年経過しましたが、いつ頃、「楽しい」と書くことに目覚めましたか?

朽木:最近ですね。前職はメディアの運営やマネジメントなど管理系の仕事が中心で、”執筆”に注力できずにいたので、ライターとしてはつまらなかった。

ちょこちょこ記事は書いていましたが、やっぱり集中できなくて・・・今は環境が変わり、自分が好きな執筆という行為に注力できるようになったので、楽しいんですよ、好きなことなので。とはいえ、もちろん苦しさもあります。

ただ、そうした思いも全て引っくるめて心から「楽しい」と思えます。やっぱり”書く”ことが好きだったんだなぁと。

好きなことを見つけ、好きなことに正直になって欲しい

 


朽木:こうやって、自分が志した職に就くためには、好きなものを見つけ、その好きなことに対して正直になることが重要です。そして、好きなことに打ち込んでいけば、自然と仕事になっているのではないでしょうか。そのためにも、ちょっとでも興味があることは何でも試してみればいいと思います。そうすれば、自分の好きなことがわかってくるでしょう。

―たしかに、何事もチャレンジしてみないとわからないですよね。そのチャレンジをおろそかにしているようでは、好きも嫌いもわからないし、向いている向いていないも判断できない。まずは自分の心の声を聞くためにも素直に行動に移すことが重要ですね。

ポカポカ陽気の中、楽しい取材を有り難うございました!

朽木:外で昼から飲むビールって、やっぱり美味しいですね(笑)

※この記事は2016/11/04にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。

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