LIG社長岩上貴洋に聞く、爆笑コンテンツの裏にある企業理念とは?

株式会社LIGは、「なぜ仕事中はオフィスにいなきゃいけないの?途中で家に帰ってみた」や「わずか二坪。日本最小の住宅で暮らすことになりました。本当にありがとうございました。」など、「おもしろ系コンテンツ」で注目されているウェブ制作会社です。

LIG社長岩上貴洋に聞く、爆笑コンテンツの裏にある企業理念とは?

株式会社LIGは、「なぜ仕事中はオフィスにいなきゃいけないの?途中で家に帰ってみた」や「わずか二坪。日本最小の住宅で暮らすことになりました。本当にありがとうございました。」など、「おもしろ系コンテンツ」で注目されているウェブ制作会社です。

LIGが読者を魅了するコンテンツを生み出し続ける秘訣は何なのか。実はそのひとつが、同社の企業理念とそれを浸透させる仕組みにありました。今回はLIG代表取締役社長の岩上貴洋さんに、LIGの企業理念について話を伺います。

LIGが企業理念を大切にする理由


―企業において企業理念を大切にする理由とは何なのでしょうか?

「働く目的を同じにする必要があるからです。社員数が5人程度の規模の会社であれば、理念をつくらなくても仕事はうまく回るでしょう。コミュニケーションが経営陣の目の届く範囲で行えますから。しかし、例えば10人を超えてくると、話が変わってきます。弊社のLIGという名前は『Life is Good(楽しく生きよう、いいものをつくろう)』の略から来ているのですが、社員数が10人を超えるとLife is Goodの捉え方が変わってきますね。人数がさらに増えて20人になってくると、Life is Goodという理念を、この言葉だけで共有するのは難しくなるでしょう」(岩上氏:以下同じ)

―20人規模になると価値観も多様化してしまいますよね。

「そうです。うちにはコアコンセプトとしてのLife is Goodがあり、その下に企業理念があります。最初は『わくわくをつくる』という企業理念でしたが、会社が30人規模になれば『わくわく』の意味もそれぞれ異なってしまいます。価値観が多様化すると企業の目指すべき方向がブレてしまうので、現在の企業理念『わくわくをつくり、みんなを笑顔にする』に変えたのです。とはいえ、LIGも現在進行形で社員が増え続けており、現在の社員は60名になりました。また企業理念も変えなければならなくなってしまいましたね(笑)」

LIGの理念を記した「クレド」とは


―企業理念を簡潔に記した「クレド」というカードを社員に携帯させることで、企業の価値観を浸透させている企業がありますね。高級ホテルチェーンのザ・リッツ・カールトンや医療品大手の米ジョンソン・エンド・ジョンソンが有名ですが、LIGでもクレドを活用しているとお聞きしました。LIGのクレドはどのようなものなのでしょうか?

「こちらです。カードにまとめてあります」

 


企業理念
わくわくをつくり、みんなを笑顔にする

心がまえ
1.高いクオリティで世に出そう。
2.現状に満足しないで改善しよう。
3.心身共に健康でいよう。
4.仕事を楽しもう。

タカとの約束 ※筆者注 タカとは社長の岩上氏のこと
1.物事に優先順位をつけろ。後で自分が困るだけだぞ。
2.報連相を必ずしろ。後で自分が困るだけだぞ。
3.何事も即レスポンスを心がけろ。後で自分が困るだけだぞ。
4.認識を合わせろ。後で自分が困るだけだぞ。
5.具体的に話せ。後で自分が困るだけだぞ。
6.否定と提案はセットでしろ。後で自分が困るだけだぞ。
7.どうすれば喜ばれるか考えろ。後で自分が困るだけだぞ。
8.効率化を心がけろ。後で自分が困るだけだぞ。
9.常に勉強し、アウトプットしろ。後で自分が困るだけだぞ。
10.大切な仲間を助けろ。後で自分が困るだけだぞ。



「Life is Goodというコアコンセプトのもとに『企業理念』があり、それを日常生活レベルに落としたのが『心がまえ』『タカとの約束』という形式になっています」

―企業理念に「わくわくをつくり、みんなを笑顔にする」という言葉が掲げられていますが、どのような理由からこの理念を選んだのでしょうか?

「私たちが、クリエイターとしてコンテンツをつくることを大事にしているからです。LIGに関わった人に笑顔や笑いや感動、スゴイと思う気持ちなど、人の感情を動かす“ワクワク”をつくりたいと思っています。つくるだけではダメで、見てくれるユーザを笑顔にし、ワクワクさせたい。そういった意味を込め、この理念を掲げました」

―タカとの約束の項目を見てみると、いずれも「後で自分が困るだけだぞ」という文言が付いていますね。これにはどのような思いが込められているのでしょうか?

「個人が成長していく環境・雰囲気を重要視しているためです。他者責任にするのではなく、社員一人一人が自己の責任と捉えて、改善策を考えてほしいという願いが込められています」

クレドは企業理念を日常レベルまで下げたもの


―書かれているものは社会人としては基本的なことですが、仕事をしているとつい忘れてしまいがちなものばかりですね。このクレドをつくったのはどのような理由からでしょうか?

「先ほどの話にもつながりますが、社員が増えてくると価値観が多様になります。仕事を進める際に、メンバーはそれぞれ意思決定をしていくことになりますが、そのときに意思決定の指針となるものがないと、会社の判断基準とは離れたところで意思決定されてしまいます。実はその積み重ねが、後々かなり大きい差になっていくんですね。

そこで会社側の判断基準を明確にしておくことが必要になります。『自分の判断基準』と『会社の判断基準』の両方があると、社員も迷わず意思決定ができるようになるでしょう。クレドはいわば、企業理念を日常レベルにまで下げたものといえます」

―クレドを実際に導入してみて、他にどのようなメリットがありましたか?

「たとえば仕事をしていて『そういえば俺、なんで頑張っているんだったっけ』と思った時に、クレドを見返せば『あー、そういうことか』と思い返せますね。加えて、『何をすれば会社から評価されるのか』という点が明確になります。これは社員にとって非常に興味を持つ部分だと思います。クレドをつくると、さまざまなことが明確になりますね」

コミュニケーションが円滑に進む企業文化が大前提


―そのようなメリットがあるクレドですが、クレドがあれば何でもうまくいくというわけでもないですよね。

「それこそ、クレドが無くてもうまくいっている企業はたくさんあります。企業理念やクレドがあるから組織が回るのではなく、大前提として『コミュニケーション』が円滑に進んでこそ企業理念やクレドの意味が出てくるのです。コミュニケーションがとれていなければ、せっかくクレドに社長としての考えを込めたとしても、それが実際に機能しません。なので、まずはコミュニケーションを大事にする組織にすること、そしてコミュニケーションが円滑に進むような企業文化・オフィスをつくることが必要になってくると思います」

―今日LIGのオフィスに入って最初に目に入ってきたのが、入り口脇のキッチンでした。社員の方が料理をされていたのですが、なかなか大企業では見られない光景です。これも企業文化と関係があるのでしょうか。

「キッチンやその手前にあるカウンター、来客用の丸テーブル、壁際に並んだ漫画のコレクション。これらはすべて『コミュニケーション』を円滑にするための工夫です。丸テーブルを例にしても、コミュニケーションができやすくするために設置しています。本棚に並んだ漫画は社員がそれぞれ持ち寄って置いているのですが、自分の好きな漫画を他のメンバーが手に取って読んでいたらうれしいですし、そこからコミュニケーションも生まれます。キッチンカウンターも、料理をしている人と会話できるように設置しています。私たちはコミュニケーションを重要視しながら、企業文化をつくっているのです」

―企業文化というのは社員のモチベーションにもつながってくるものだと思います。それをつくるのはなかなか簡単ではないと推測できます。

「企業文化は定量化・定性化できないものです。そのため、浸透させることはとても難しい。さまざまな仕組みを取り入れることで、少しずつ企業文化をつくっていきたいです。企業文化によって社員のモチベーションの向上だけではなく、優秀な人材が集まる強い組織になればと考えています」

LIGには「Life is Good」というコアコンセプトがあり、その下に「わくわくをつくり、みんなを笑顔にする」経営理念があります。そしてそうした理念を浸透させるために、「クレド」というカードや、コミュニケーションが円滑に行われる企業文化があることが、今回の取材で分かってきました。理念を理念で終わらせずに、しっかりと社員一人一人に浸透するためのこのような仕組み。LIGが数々の「おもしろ系コンテンツ」を生み出している裏には、そうした見えない工夫があるのですね。


プロフィール
岩上貴洋(いわかみ・たかひろ)/
1983年生まれ。埼玉県出身。学生時代からモバイルマーケティング、ITベンチャー企業数社に参加し、在学中からアーリーステージを対象とした独立系投資会社にて投資業務、コンサルティング業務に従事。2007年に株式会社LIGを創業し、代表取締役社長に就任。

※この記事は2015/01/30にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。

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