【連載】“ラビジ”のススメ┃「インプット術は時間術!」 精神科医・樺沢紫苑に聞く、脳を上手に使いながら必要な情報だけをインプットする方法 

第2回目は、『学び効率が最大化する インプット大全』(サンクチュアリ出版)。「インプットの質と量を見直すことで自己成長が最大化できます」と著者・樺沢氏は語ります。それはなぜなのでしょうか。

【連載】“ラビジ”のススメ┃「インプット術は時間術!」 精神科医・樺沢紫苑に聞く、脳を上手に使いながら必要な情報だけをインプットする方法 

「ライトノベル」が「ラノベ」なら、気軽に手に取れるビジネス書は「ラビジ」。

カタすぎるビジネス書はハードルが高いけど、「なるほど、これなら自分にもできそうだ」と、はたらく上ではもちろん、人生のヒントが詰まった1冊をご紹介するのが本連載「“ラビジ”のススメ」です。

第2回目は、『学び効率が最大化する インプット大全』(サンクチュアリ出版)。著者である精神科医の樺沢紫苑(かばさわ しおん)氏は、昨年8月に『学びを結果に変える アウトプット大全』(同)を刊行しており、今回はその続編です。

>「アウトプット大全」のインタビューはこちら
キーワードはアウトプット!趣味を楽しみつつちょっとずつレベルアップするおトクなテクニックとは?

「インプットの質と量を見直すことで自己成長が最大化できます」と樺沢氏は語ります。それはなぜなのでしょうか。樺沢氏にお話をうかがいました。

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インプット術は時間術 マンダラチャートで自分を知ろう


――本書ではインプットは「量」よりも「質」が重要とされていましたが、それはなぜでしょうか? 多くのことをインプットできれば、それで良いような気もします。

「量」よりも「質」を優先すると、まず時間が生まれます。ほとんどの人の場合、インプット時間が無駄になっていると思うんですね。読んだ情報を覚えていないことが多いんです。

使えない情報を100個集めても、例えば3ヶ月後にどれだけ自分の役に立っているかというと90%以上は役に立っていないはず。そうなってくるとインプット時間の90%が無駄ということになってしまいます。

だから自分にとって本当に必要なもの(情報)をセレクションする。情報100個のうち10個が自分の役に立つとしたら、最初からその10個だけインプットすれば時間を節約できますよね

ですからインプット術は「時間術」と呼ぶこともできます。そこで生まれた時間をアウトプットに使えるので、インプットとアウトプットを3:7の比率でできるようになってきます。

――自分にあった情報を得るために、日々どのようなことに注意していけば良いのでしょうか?

重要なのは「脳内情報図書館」を作ることですね。自分に必要な情報とは何か、事前に明確に書き出しておくのです

マンダラチャートを使って自分の興味があること、仕事や趣味などを書き出してみる。そうすることで本屋に行った時やネットを見ている時でも「これは必要、これは必要ない」と、その情報の必要性がわかるのです。

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『学び効率が最大化する インプット大全』P.249より抜粋 樺沢氏のマンダラチャート



逆に言うと、マンダラチャートにない項目は見ないということ。優先度が低いわけですから。

基本的にはこのマンダラチャートに書いたものを頭に入れておけば自分にとって必要な情報が明確になり、無駄な情報に引っ張られることも少なくなります。

マンダラチャートは、自分にとって必要な情報を短時間で集めるためのツールになりますね

――実際にマンダラチャートを作ろうとしても、何を書けばいいかわからない場合はどうしたら良いでしょうか?

最初から全部埋める必要はありません。3つぐらいでもいいのですが、具体的に落とし込むことによって自分がどういうことに興味があるのか洗い出すことができます。

――まずは書いてみることが重要なんですね。

そうです。逆に(興味が多すぎて)書ききれない人はもっと広げて書いていけばいいのです。とりあえず書き出すことをまずやってみましょう

“アウトプット前提”でインプットの質を上げる


――本書内に「良質なインプットをするには適度な緊張感が必要である」とありました。日常生活の中で適度な緊張感を保つにはどうすればいいでしょうか?

それは“アウトプット前提”で過ごすことですね。なんでも良いのでインプットしたことをブログやSNSに書いたり、友達に話したりすることを必ず行うようにします。

書くのは短くてもいいです。それをやるか、やらないかだけでインプットの質が違ってきます

本を読んだ時、心に残った一節だけでも書き留めておく。そういう簡単なところからアウトプットを前提にすることが大切ですね。

――どんな本を読んだか、タイトルのメモ程度でもいいのでしょうか?

“気づき”を書けると良いですね。気づきと、それをもとにした“ToDo”です。

脳の回路は気づきが起きている時に“変わる”と言われています。ボーッと見ていても意味がありません。「こういうことなんだ」という気づきがあると脳の情報の線路が切り替わり、そこが自己成長する瞬間になるのです。逆に言うと、気づきを探しながら読んでいくといいと思います。

そして、具体的な行動目標としてToDoを書く。本を読んだ時に3つの気づきと3つのToDoを得られたら、その本には十分な価値があると思います。

――良質なインプット、アウトプットをする上でオススメしたいツールはありますか?

手書きのノートですね。私は映画の感想や参加したセミナーのことなどを見開き2ページを使ってノートに書いています。

右上から時計回りにざっくりと大きな内容を書くんです。マインドマップに近いですね。

――ノートのこだわりはあるのですか?

A3の5ミリ方眼が好きです。書くのに使うペンも決めていて、文房具にはこだわっています。

――こだわりがあった方が捗るものでしょうか?

そうですね。自分が書きやすいことが重要です。書きやすいということは、書きたいという気持ちになります。楽しみながらできるといいですね。

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「記憶のゴールデンタイム」と「脳のゴールデンタイム」


――本書では、寝る前の15分は「記憶のゴールデンタイム」、起きてから3時間は「脳のゴールデンタイム」とされていました。この時間帯を最大限に活かすためにはどのように過ごしたら良いのでしょうか?

まず、寝る前の15分は記憶の衝突が起こりません。

例えばセミナーを聞いて、その後に打ち合わせがあると余計な情報が挟まります。でも寝る前は後に何もないので整理されていて、記憶に残りやすいんです。なので自分の覚えたいことや復習に使うといいですね。

寝る前の「3行ポジティブ日記」もオススメです。今日あった楽しかったことを3つ書いて寝る。そうするとポジティブな状態で眠りにつくことができます。

そして、朝の時間の過ごし方ですが、最も集中力が高い時間なので一番重要な仕事をすべきですね。あるいは一番骨の折れる仕事、やりたくない仕事。仕事の順番を変えるだけで効率はものすごく高まります。

一番やってはいけないのは、メールチェックや電話連絡などライトな仕事です。

――「脳のゴールデンタイム」は起きた瞬間からどのくらいの時間、有効なのでしょうか?

色々な考え方がありますが、わかりやすく言うと“机(頭の中)が整理された状況”なら何時間でもいけます。余計なことをしなければいいわけです。頭の中を整理整頓した綺麗な状態で使い続けることが大切です。

一般的なビジネスマンは通勤の時間がありますから、そこで机はどんどん物(情報)が溜まってしまいます。

なので例えば資格の勉強をしたいならば、早起きして最初の1時間は家で勉強してから仕事に行く。あるいはカフェで勉強してから出社するなど、脳のゴールデンタイムを自分のために活用できるようにしましょう

――前日にポジティブな気分で眠って、スッキリした気持ちで起きて重要な仕事をすると一番良いわけですね。

そうですね。人生が変わります。

休憩時間はスマホを見てはダメ?


――休憩時間はスマホを見ていることが多いのですが、本書を読んでいるとそれが実は良くない休憩の仕方ということで驚きました。そうなのでしょうか……。

人間の脳は80%くらいを視覚情報の処理に使っていると言われています。

サラリーマンはパソコンに向かって書類を作るなど、仕事で視覚情報の処理をしている人が多いですよね。目から情報が入ってくると、脳が疲れてきます

なので、休憩時間には脳を休めなければいけないのですが、その時間にスマホを見ていると仕事と同じ処理をやることになり、休憩になりません

頭の中を綺麗に使うことが重要で、スマホから雑多な情報が入ってくるとその情報を処理するために余計に疲れます。

休憩で一番いいのは「目をつぶっている」こと。5分間目をつぶっていると仮眠と近い効果が得られるとも言われています。

私がオススメする休憩はコミュニケーションです。同僚とコーヒーを飲みながら雑談したり、楽しくおしゃべりする。これは感情を動かします。仕事中に感情はあまり動かないじゃないですか。違う部分を刺激することで脳としてバランスが取れます。

――休憩中にスマホでゲームをするのはどうですか?

あれも疲れていると思いますね。仕事で疲れているからゲームしかできないというのもわかりますけど(笑)。

でも、脳はより疲れます。スマホの画面が点滅することで脳は興奮して、休憩どころかもっと脳を疲れさせてしまいます

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『学び効率が最大化する インプット大全』P.141より抜粋

 

脳の状態を変えるだけで、アウトプット力とインプット力は変わる


――『インプット大全』の読者には、どのようになってほしいですか?

インプット効率を上げてほしいですね。インプット量はアウトプットでしか評価できません。「アウトプットできた量がインプットである」というのが、私のインプットの定義です。

例えば学校の授業後に、子供に「内容を説明して」と言ってもほとんどできません。それは“聞いていない”ということなんですね。全部説明できるようであればパーフェクトなインプットになりますが。

私だったらセミナーに行って、後で同じ話をしろと言われてもできます。そういうことを前提として、自分が話すとしたらどうだろうかとシミュレーションをしながら聞いているからできるんです。でも受け身な人には不可能。

そのようにインプットする時の脳の状態を変えるだけで、アウトプット力とインプット力は根底から変わります。『インプット大全』には80個のノウハウがありますので、一つひとつやっていただきたいです。そうすることで皆さんに時間が生まれてきます。

今まで無駄なインプットをしていた時間を、もっと有意義なことに使えるようになります。それによって自分の成長も感じられると思います。

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意識したインプットをすることで自分が変わる


今回のインタビューでは「インプットするものを選ぶ」「自分が欲しい情報をより正確に知る」ことの大切さを知ることができました。

そして、アウトプットすることを前提に情報に接することで、確実に自分の中にインプットされていきます。そうすることで「生産性が上がり、時間が生まれ、仕事力も上がっていきます」と樺沢氏は教えてくれました。

インプットの質を上げることで時間をつくり、その時間でアウトプットをすることで自分の成長に繋げていけたら良いですね。

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『学び効率が最大化する インプット大全』
著者:樺沢紫苑
出版社:サンクチュアリ出版
発売日:2019年8月3日
判型:四六判
定価:1,450円+税

樺沢紫苑(かばさわ・しおん)
精神科医、作家。1965年、札幌生まれ。札幌医科大学医学部卒。2004年から3年間、米国シカゴのイリノイ大学に留学。「情報発信を通してメンタル疾患、自殺を予防する」をビジョンとし、YouTube10万人、Facebook15万人、メルマガ10万人など、累計40万人以上にインターネットメディアで情報発信を行う。著書は31冊。『読んだら忘れない読書術』(サンマーク出版)は15万部、『学びを結果に変えるアウトプット大全』(サンクチュアリ出版)は40万部のベストセラーとなっている。 公式ブログ https://kabasawa3.com/blog/



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