失業保険(失業手当)の仕組み解説。いつからいくらもらえる?

今回は、失業保険を受け取る条件や手続きの方法、トラブル回避のためのポイントについて、社会保険労務士の榊裕葵さんにお話を伺います。

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「失業保険」とはどんなしくみか、説明できますか?

会社を辞める前にしっかり知っておかないと、退職後に生活資金を受け取れない、もしくは受け取ることのできる日数が減るなど損をしたり、時にはトラブルにつながったりすることもあります。

そこで今回は、失業保険を受け取る条件や手続きの方法、トラブル回避のためのポイントについて、社会保険労務士の榊裕葵さんにお話を伺います。

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もくじ:
■失業保険って何?
■失業保険って何のためにあるの?
■受給するための条件とは?
■受給額はどれくらいになるの?
■失業保険に関する参考ページ

 

失業保険って何?


失業保険とは簡単に言うとどのような保険なのでしょうか?

「失業保険とは、正式には雇用保険と呼ばれるもので、会社などで勤務をしている間に給与天引きで保険料を支払う(※1)公的保険制度の一つです。勤務先を何らかの事情で退職しなければならなくなったとき、次の仕事が見つかるまでの間、国から失業手当(正式名称:基本手当)が給付されるというしくみの保険です」(榊さん)

※1 一部、事業主も保険料を負担します。

失業保険って何のためにあるの?


失業保険が支給される目的は、大きく分けて次の2つがあるそうです。

1.失業中の生活維持のため

「多くの労働者にとっては、給与が唯一の生活の糧を得る手段ですので、失業者には基本的に給与の代わりとして基本手当が支給されます」(同)

2.失業中の再就職活動を容易にするため

「足元の生活のために、単発的な仕事やアルバイトに追われると、失業期間が長引いたり、十分な検討期間のないまま急いで再就職してしまい、うまくマッチせず長続きしないなど、不安定な就労状況に陥ったりするおそれがあります。失業者が安心して再就職活動に集中できるようにすることも、基本手当の存在意義です」(同)

受給するための条件とは?


失業保険は誰もが受給できるわけではなく、条件があるようです。その条件は次の3つに分けられるそうです。

1.自己都合退職の場合
2.会社都合退職の場合
3.その他の場合


それぞれの場合ごとに、受給条件をみていきましょう。

1. 自己都合退職の場合


労働者が自発的に退職を申し出た上で、離職した場合を指します。自己都合退職は、さらに「正当な理由なし」の場合と、「正当な理由あり」の場合の2つに分けられ、正当な理由の有無で受給条件が変わってきます。

「正当な理由なし」の場合
例えば、転職や起業を目的とした自発的な離職のことです。

【受給条件】
・離職日以前の2年間に、被保険者期間が1年以上あること
・待期期間(※2)7日間満了後、さらに3カ月の給付制限期間(※3)がある


※2 離職票提出と求職申込みをした日から失業保険支給までに設けられている期間のこと(7日間)。離職理由に関わらず、一律に適用される。
※3 待期期間満了後に設けられている、失業保険支給までの一定期間のこと。条件によって期間が異なる。

「正当な理由あり」の場合

労働できないなんらかの事情により、会社側の解雇ではなく、自ら離職する場合です。例えば、配偶者の転勤に同行するため離職した場合、家族の介護のために離職した場合、傷病による就業困難で離職した場合などです。

【受給条件】
・離職日以前の1年間に、被保険者期間が6カ月以上あれば受給条件を満たす
・7日間の待期期間が完成すれば、直ちに基本手当の支給を開始

 

2.会社都合退職の場合


解雇(懲戒解雇は除く)、倒産、退職勧奨、更新が予定されていた有期契約の打ち切りなどにより、非自発的に離職をした場合を指します。受給条件は、正当な理由がある場合の自己都合退職と同じです。

【受給条件】
・離職日以前の1年間に、被保険者期間が6カ月以上あれば受給条件を満たす
・7日間の待期期間が完成すれば、直ちに基本手当の支給を開始

 

3.その他の場合


上記1.にも2.にも含まれない場合です。定年退職や、更新予定のない有期雇用契約の満了等、自己都合でも会社都合でもなく、あらかじめ合意されていた事由により離職した場合などです。

【受給条件】
・離職日以前の2年間に、被保険者期間が1年以上あること
・7日間の待期期間が完成すれば、直ちに基本手当の支給を開始

 

〈関連記事〉
失業手当(失業給付金)の給付の手続きはどうすればいいですか?

 

受給額はどれくらいになるの?


はたして失業保険で受給される額は、どれくらいの金額なるのでしょうか? 榊さんに計算方法を伺いました。

失業保険の受給額は、次の計算式で算出されます。

『失業保険の受給額=基本手当日額×所定給付日数』

基本手当日額とは


一日当たりの受給額のことで、賃金日額(退職前6カ月の賃金合計÷180)に、「給付率」という係数をかけて算出します。

注意点!
・賃金日額には年齢に応じた下限額と上限額があります。
・給付率は年齢と賃金日額に応じて、45%~80%の範囲で決まりますが、複雑な計算式に基づくので、ハローワークに問い合わせて確認しましょう。

 

所定給付日数とは


受給できる日数のことで、年齢や退職理由などの条件に応じて決まります。

A.「自己都合退職」および「その他」の場合

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B.「会社都合退職」の場合(一部の「正当な理由のある自己都合退職の場合」を含む)

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(参考:「基本手当の所定給付日数」ハローワークインターネットサービス
では、具体的な例に基づいて、失業保険の受給額を計算してみましょう。

◆甲山乙男さん
年齢:28歳
勤続期間(被保険者期間):6年間
離職理由:退職勧奨に応じた
退職前6カ月の賃金:22万円、23万円、22万円、26万円、24万円、23万円
(時間外手当や通勤手当など、諸手当も含んだ額で計算する)



◆甲山さんの基本手当日額

(22+23+22+26+24+23)万÷180=7,777円 (1円未満の端数は切り捨て)

7,777円×0.6648(66.48%<給付率>)=5,170円 (基本手当日額)

◆甲山さんの所定給付日数

会社都合退職に該当するので、Bの表に当てはめると、所定給付日数は120日となります。

以上より、甲山さんの失業保険の受給額は、

5,170円×120日=620,400円 となります。

(ただし再就職が決まった場合は、受給額が120日に達しなくても失業保険の給付は終了)

失業保険にまつわるトラブル、どんなものがある?


失業保険を受給するに当たって、トラブルが発生することもあります。代表的なトラブル事例とその対策を伺いました。

会社を退職後、雇用保険未加入だったことが判明! 失業保険は受給できない!?


「元の勤務先がそもそも雇用保険の加入手続きをしてくれていなかったことに、退職後初めて気付くケースです」(同)

【対策】

「在職中に確認しておくことが肝心ですが、万一、退職後に気が付いた場合でも、さかのぼって加入することは可能なので、元の勤務先へ手続きをとってもらうよう依頼しましょう」(同)

試用期間は受給条件に含めてはいけないの?


「雇用保険自体には加入していたけれど、試用期間や契約社員だった期間が雇用保険未加入になっているケースです。試用期間や契約社員だった期間でも、週20時間以上勤務していれば雇用保険への加入義務があります」(同)

【対策】

「これらの期間が未加入扱いのために、基本手当の受給資格が失われたり、受給日数が減ったりしてしまう場合は、元の勤務先へ依頼して、さかのぼっての加入手続きをしてもらいましょう」(同)

会社都合のはずなのに、離職票に「自己都合退職」と書かれている!


「本当は会社都合退職なのにもかかわらず、元の勤務先が自己都合退職扱いで離職票を作ってしまうケースです」(同)

【対策】

「元の勤務先に離職票の訂正を求めましょう。また、ハローワークの窓口で事情を説明して、会社都合退職の認定を受けることも可能です。

以上に挙げた二つの場合で、元の勤務先がさかのぼっての手続きをしてくれないときは、ハローワークの担当者や社会保険労務士に相談をしてください」(同)

失業保険に関する参考ページ


最後に、退職者や退職予定がある人が見ておきたい、失業保険に関する情報が掲載されているページを伺いました。

ハローワークインターネットサービス「雇用保険手続きのご案内」

「基本的な雇用保険についての情報や手続き方法が載っています」

ハローワークインターネットサービス「失業された方へのご案内」

「失業期間中の年金や医療保険の手続きなどについても知ることができます」

いまのうちから確認を


退職後、すぐに再就職しない場合に受け取ることのできる失業保険。その受給条件やトラブル時の対策をあらかじめ知っておくだけでも大きく違ってきそうです。


これから退職を控えている人も、そうでない人も、念のため雇用保険に加入しているかを確認しておく、退職後どれくらいのお金が受け取れるのかを調べて計画を立てておくなど、準備を万全にしておくと良いのではないでしょうか。

識者プロフィール


榊裕葵(さかき・ゆうき)/ 特定社会保険労務士(あおいヒューマンリソースコンサルティング代表) 上場企業経営企画室出身の社会保険労務士として、労働トラブルの発生を予防できる労務管理体制の構築や、従業員のモチベーションアップの支援に力を入れている。また、「シェアーズカフェ・オンライン」に執筆者として参加し、労働問題や年金問題に関し、積極的に情報発信を行っている。

※この記事は2015/06/23にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。

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