実はよく分かっていない、お金のアレコレ。今さら聞けないという方もいるのではないでしょうか。 本連載は会社員が知っておきたいお金の「きほんのき」を分かりやすく解説します。
今回、先輩が教えてくれるのは「年末調整と確定申告」。とりあえず言われるがままに記入している年末調整の申告書には、どんな意味があるのでしょうか。
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第1回:手取りと額面ってどう違うの?
第2回:源泉徴収の仕組みとは?
第3回:ふるさと納税って何がお得なの?
【登場人物】
後輩:入社2年目の営業部員。やる気だけは人一倍だが、お金に関してはややルーズ。毎月、給料日前には財布の中がスカスカになるタイプ
先輩:入社以来、総務、経理を経て現在は業務推進部に所属するベテラン社員。同じ大学を出た後輩にとって、何かと頼りになるセンパイ
「年末調整」は勤務先から所得税の還付を受けられる
センパイ、先日、会社から年末調整用の書類が2枚配られたんですけど、これって、全員提出しないとダメなんですよね?
そうだよ。「給与所得者の保険料控除申告書」と「扶養控除等(異動)申告書」の2枚だね。
たしか去年も出したけど、あれから特に変わっていないんだけどな…。
「扶養控除等(異動)申告書」は、翌年に源泉徴収する所得税を算出するための書類で、毎年提出が必要だよ。結婚して扶養家族ができた人などは、その控除対象者の情報を伝えることが大切なんだ。申告する人の年収が1000万円以下で、配偶者の所得が38万円以下、給与年収では103万円以下の場合に38万円の配偶者控除が受けられる。
これを超えても、一定額までは配偶者特別控除が受けられるんだ。独身で扶養家族がいない人は、名前や住所などを書いて出すだけでいいんだよ。
でも、「保険料控除申告書」は、生命保険料などを支払っていたら税金の還付が受けられるんだから、控除証明書を付けてしっかり申告しないと損するぞ。
そうだった! 12月の給与は、年末調整のおかげで手取りが少し増えるんですよね。
前に話した通り(第2回参照)、会社員は所得税を月々の給与やボーナスからあらかじめ源泉徴収されているけれど、その年の年収が確定したら、会社は人的控除や保険料控除なども考慮して所得税を再計算し、多く引きすぎた分はその年最後の給与で還付する、それが年末調整なんだ。
保険料控除の控除額って、どれくらいでしたっけ?
年間で支払った保険料によって控除額は異なるけれど、生命保険の場合、平成24年1月以降の新契約は一般の生命保険と個人年金保険、医療介護保険の3つに分かれていて、控除額はそれぞれ最高4万円だ。平成24年より前の旧契約だったら、一般の生命保険と個人年金保険の2種類で控除額はそれぞれ最高5万円になる。
ボクは昨年、定期保険と医療保険に入ったんですが、保険料控除で、所得税はどれくらい戻ってくるんですか?
定期保険は一般の生命保険になるから、医療保険との合計で仮に8万円の控除額の場合、課税される所得がこの分だけ減って、所得税率が5%なら4,000円、10%なら8,000円が目安。実際の還付額は、源泉徴収額との調整で若干変わるだろうけれど。
なんだ、もうちょっと多いかと思ったけど。
これは、その年に還付される所得税の分だけだ。保険料控除は住民税にも適用されるから、翌年の住民税も軽くなる。地震保険にも加入していたら、その保険料も申告できるぞ。地震保険料は、その年に支払った金額が5万円までなら全額控除できる。
なるほど、それなら申告しないともったいないですね。
個人型確定拠出年金「iDeCo」などの掛け金も申告を!
もう一つ、忘れてはいけないのが、個人で支払っている確定拠出年金の掛金だ。勤務先が掛金を拠出している場合は申告の必要はないが、個人で加入してiDeCoの掛金を自分で納めている人などは、「小規模企業共済等掛金控除」の欄に、年間で納めた掛金を申告すれば、その分は全額、所得から控除されるんだ。
そういえば、会社員や公務員でもiDeCoに加入できるようになったんですよね。
勤務先で企業型確定拠出年金に加入している人は、規約で同時加入が認められている場合だけだが、全体的には加入者が増えているからね。この掛金は全額所得控除の対象になるから、節税効果も高いんだ。
センパイもiDeCo、やっているんですか?
もちろん、老後のために始めているよ。うちのように企業年金がない会社員は、掛金の上限が月23,000円だから、年間で276,000円まで所得から控除できる。所得控除額としては保険料控除よりも大きいから、利用しない手はないな。
なるほど、ボクも来年から始めてみようかな。ほかにも控除できるものってあるんですか?
所得控除は14種類あるけれど、年末調整で申告できるものは扶養控除や配偶者控除などの人に関わる控除と、社会保険料や生命保険・地震保険料控除、さっき説明した小規模企業共済等掛金の控除だけなんだ。
ただ、税額控除になる住宅ローン控除については、2年目以降は勤務先の年末調整でできるようになっている
そうか……。ボクも、もっと申告できるものがあればいいんだけれど。
そうだな。控除額が38万円の扶養控除は、今は16歳以上が対象だけど、19~23歳未満だと、特定扶養控除で控除額は63万円と多くなるから、子どもが大学生の人なんかは、優遇されているよね。
70歳以上の親などを扶養している人も同居・別居にかかわらず控除を受けられる。いずれも対象者の所得が38万円以下の場合だけどね。
たしか、同期の佐藤も年金の少ない親を扶養家族にしているって言っていたけれど、扶養家族が多いと、税金面ではそういうメリットがあるんですね。
そうそう、子どもや妻の国民年金保険料を本人に代わって支払っている人なんかも、その分は自分の社会保険料に上乗せして控除できるから、申告するのを忘れないようにしないとね。
年末調整で申告できない分は、確定申告で再度チャンスあり!
ところで、年末調整でできない税金の控除は、どうするんですか?
会社員でも、年末調整で申告できない控除がある人は、翌年に自分で確定申告すれば、納めすぎた所得税は還付されるんだよ。
たとえば、今年マイホームを取得して、初めて住宅ローン控除を申告する人とか、医療費がたくさんかかった人は医療費控除、台風などの災害で損害が生じた人は雑損控除という具合に、申告できるものはいろいろある。年末調整で漏れた分なども申告できるよ。
漏れた分って、どういう場合ですか?
年末調整の書類を出した後に保険料を支払って、控除証明書が届くのが遅くなった人とか、年末調整後に扶養親族などの異動があった人などだ。会社によっては、翌年1月に再調整してくれる場合もあるが、自分で確定申告をして申告してもいいんだ。
確定申告というと、ちょっと面倒そうだけれど、当てはまる控除があったら、やはり申告したほうがいいですね。
当然だよ。給与以外に一定の所得がある人も確定申告は必要だけど、年末調整や確定申告で還付の申告をする場合は、それに応じて所得税が軽くなり、会社員などは先に源泉徴収された分から一定額が戻ってくるんだから。さらに、翌年度に天引きされる住民税も自動的に軽くなるから、申告は絶対に必要だよ。
年末調整の用紙、もう一度きちんと見てみようっと。
用紙の裏に、細かい条件などが記載されているから、表面だけでなく、裏面まできちんと目を通すことが大事だよ。
わかりました。期限までに目を通して、遅れないように提出しま~す。
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第1回:手取りと額面ってどう違うの?
第2回:源泉徴収の仕組みとは?
第3回:ふるさと納税って何がお得なの?
マネージャーナリスト┃光田洋子
出版社の雑誌編集部などを経て、編集者・ライターとして独立し、編集事務所インタープレスを設立。現在は家計全般、住宅、保険、税金などの生活まわりのお金について、MOOKや雑誌などの編集・取材を担当するほか、新聞・情報サイトなどにも執筆している。
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