【連載】“ラビジ”のススメ┃ハライチ・岩井さんが教えてくれた―苦労なんてしないほうがいい。「こつこつやる奴はごくろうさん」

前編で「働く意義」について語ってくれたハライチの岩井勇気さん。もし彼がビジネスパーソンだったら……「真っ先に枕営業をする!」と言う根拠には、コツコツ働く読者も納得のメソッドがありました。 連載第4回目、初のエッセイ『僕の人生には事件が起きない』(新潮社)を刊行した岩井さんのインタビュー〈後編〉をお送りします。

【連載】“ラビジ”のススメ┃ハライチ・岩井さんが教えてくれた――苦労なんてしないほうがいい。「こつこつやる奴はごくろうさん」

 

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ハライチ・岩井さんが教えてくれた――楽しい仕事って? 稼ぐための仕事に意味はあるのか

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第1回:上司は教えてくれないお金と仕事の幸せの話! 会社に縛られない生き方とは
第2回:精神科医・樺沢紫苑に聞く、脳を上手に使いながら必要な情報だけをインプットする方法
第3回:ネガティブ思考を吹っ飛ばすために「脳を鍛える」? “がんばりすきない休み方”が仕事を楽にする

王道の道を行って苦労するなら、喜んで近道を使う 

――若手ビジネスパーソンの中には、下積み時代が大事と自分に言い聞かせて、セクハラやパワハラを受けても我慢してしまったり、遅くまで残業してしまったりする人も中にはいると思います。それはどう感じますか?

僕はそういう理不尽なことに従ったことがあんまりないんで抵抗しますね。今の仕事でも「どういうことですかこれ?」って。それがめんどくさいって思われて、もう呼ばれないってこともありますけどね。「それで結構です」って思っています。

――組織にいるとそれも難しかったりすることもあると思うんですが。

もしね、僕がサラリーマン組織で出世しようっていうのが目標だったら、そういうセオリーは無視しますね。芸人だったらありえないけど、極端な話、枕営業が通じるなら全然やりますよ。のし上がるために。

――えっ! ほんとですか?

ほかの全員が通らない道でもメリットがあるならばやります。けっこう、人を出し抜くのが好きなんですよ。というか出し抜くことは楽しい(笑)。

――でも仕事はコツコツやっていくのが美学みたいなところってあるじゃないですか。

そういう日本的な感じはありますよね。でも近道があるならそれを使いたいでしょ。王道を行って苦労するくらいなら、「なんで近道使わないの?」って。みんながいる王道を行くと、苦労してるやつに足を引っ張られるだけなんですから。

――先輩や上司に「俺はこんなに苦労したんだから」みたいなことを言われることもありますよね。

僕の中ではそんなこと言われたら、「苦労したんすね~。要領悪いんですね~」って思うだけです(笑)。 うちの事務所の植木等さんも「こつこつやる奴はごくろうさん」って言ってますからね。いい言葉だと思います。

――今まで苦労したなと思ったことはありますか?

僕はマジで苦労したくないし、したこともないと思ってます。もし、座右の銘みたいなものを聞かれたら、「努力しないように頑張る」。そう思っているんで。だって大変じゃないですか。

――どうすれば苦労を避けていけるんでしょうか。

まず、みんながやっている「そうやらなきゃいけない」ってことを、「なんでそうやらなきゃいけないのか?」って考えてみる。

そうすると、別に「そうやって苦労してやっていく必要はないんじゃないの?」っていう結論にたどり着くことがあります。

――「苦労することはない」「だったらそれはやる必要がない」ということですね。

僕はそういうふうに考えながら、ずっとやってきましたね。そもそも生まれたときから理由もなくそうじゃないといけない、と思っていることはけっこう多いですよね。

「働かなきゃいけない」「結婚しなきゃいけない」「子供を産まなきゃいけない」とか。別にどっちでもいいじゃないですか。苦労だってしないで済んだ方がいいですからね。

苦労もしたくないし、事件も起きない。そんな平凡な人生

――今回、発売されたエッセイには岩井さんの日常が書かれていますけど、そもそも平凡で何も起きない人生を楽しむ方法という観点なんですよね。

最近は、自分の人生が平凡でも楽しめる希望のエッセイというより、どうせ誰にも事件なんか起きてないよっていう絶望のエッセイだと感じだしてきてますね(笑)。

――でも、岩井さんが自分のことを客観的に面白がっているところは、こういう捉え方もあるんだなと興味深かったです。

その方がおもしろいですし、つらいことでも楽しめますしね。

――落合福嗣さんと初めて野球観戦に行く話がありましたけど、あれもおもしろそうだなと思ったからですか?

「知らない人と野球を見に行ったらどんな感じなんだろう」という興味からですね。よく知らない人と好きでもない野球を見に行くのって本当は嫌じゃないですか。会話も弾まないんじゃないかなとか想像したりもするし。でもそういうときって自分の想像がおよばないことが起きることが多いんです。

――何か起きそうだなとピンと感じたときだったとか?

そういう意図がなくても、誘われれば断らずに行きます。あと頭ごなしに「これってダメそうだから」っていうのもないですね。そういうところはアクティブです。文句をつけようにも、1回経験してみてからじゃないと言いようがないところもありますから。

――あんかけラーメンにハマっていたときに、汁を水筒に入れて、出先で飲んでいたというエピソードもありました。

あれも、人から見たら何を飲んでようがどうでもいいことでしょうけど、自分が好きだったから飲んでたってことで。みんなだいたいが思いつきなんですよね。

――そうすることで、SNSのいいね!やリア充を自慢することに頼らなくても充実した時間が持てそうですね。

人の価値観に振り回されずには済みますよね。まぁ「人にどう見られているか」という部分においての視野は狭いかもしれないですけど、「どうおもしろがるかを追求する」っていう根本のところだけは揺るがないんで。自分で日常を楽しんでいくコツみたいなものですね。

――最後に働き盛りの読者に一言いただければと思います。

普段の生活の中で感じた疑問や違和感に向き合ってみることで、だんだん自分の視点ができてくる。絶望を突き付けるエッセイではあるんですけど、「では、あなたの与えられた人生をどう楽しむんですか?」っていうことに関して、僕はこういう楽しみ方をしていますっていうことを本にしたためています。

僕みたいに平々凡々とした日常を送ってるなと思ってる人が読んで、何かヒントになってくれたらいいなぁって思いますね。

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ハライチ・岩井さんが教えてくれた――楽しい仕事って? 稼ぐための仕事に意味はあるのか

『僕の人生には事件が起きない』
著者:岩井勇気
出版社:新潮社
発売日:2018年9月26日
判型:B6判
定価:1,320円(税込)

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