パワーナップとは?
パワーナップとは、昼寝やうたた寝など短時間の睡眠をあらわす「ナップ」と、パワーアップを掛け合わせた造語で、日本では「積極的仮眠」と呼ばれています。NASAの睡眠研究によって、集中力を維持させる科学的な効果が明らかにされており、昼に26分間の仮眠をとると認知能力が34%、注意力は54%向上したと報告されています。
日本でも厚生労働省が公表している『健康づくりのための睡眠指針2014』において、短い昼寝は作業効率のアップに効果的であると示されています。
睡眠の4ステージにおけるパワーナップの位置付け
出典:一般社団法人 日本睡眠教育機構
睡眠には上の図のように4つのステージがあり、パワーナップではこのうち1、2の状態で起きるようにします。1、2の状態は、うとうとと夢を見るような比較的眠りの浅い状態。3、4は、体を触っても反応しないような深い睡眠状態です。
1、2の比較的浅い睡眠では、起きていたときに触れた情報の整理を脳が行っています。これがパワーナップの効果の根幹です。逆に3、4の深い睡眠では、整理された情報を取捨選択することや体の修復に充てられ、主に夜の長時間の睡眠時に行われています。
補足:「パワーナップ」と「うたた寝」「居眠り」の違い
パワーナップは脳の情報整理を行うために自らの意思で眠るため、「積極的仮眠」と呼ばれています。これに対して、ふとした瞬間に意図せず睡眠状態に陥ってしまう現象を「マイクロスリープ」と呼び、日本語で言うなら「消極的仮眠」とも言えるでしょう。
仕事中のうたた寝や居眠りは、情報量が多すぎて頭の中の情報整理ができず脳が休んでしまったり、睡眠不足や疲労により陥ったりという状態と捉えることができます。このためうたた寝や居眠りは「消極的仮眠」、つまり「マイクロスリープ」に分類することができると考えられます。
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短時間のパワーナップをとると作業効率が上がる!
図で説明したように、夜間の本睡眠は眠りの深さに応じて「ステージ4」までの4段階に分けられますが、パワーナップは軽い睡眠レベルの「ステージ2」まで。脳内の情報が整理され、パソコンの「再起動」のように、脳をリフレッシュさせる効果があることが研究で明らかにされています。
つまり、午前中の業務で疲れた頭をいったん休ませることで、午後の仕事にまた全力で取り組むことが可能になります。具体的にはパワーナップは以下のようなメリットをもたらすと言われています。
- 疲れが取れる
- 判断力・理解力・集中力が上がる
- やる気がアップする
- 自由な発想が生まれやすくなる
- 作業効率が上がる
IT系や製造業はパワーナップの導入に積極的。そのワケは?
「社内の生産性を向上させたい」「社員の事故防止に役立てたい」と考える企業は、パワーナップを積極的に導入しています。
パワーナップを導入している企業を業種別で見てみると、断然多いのはIT系(※)。人材不足に悩むIT企業は、体調不良で社員が休職しても代わりが見つからないケースもあり、事前対策としてパワーナップが採用されています。
次に導入数が多いのは、製造業(工場)です。ライン作業で1日中繰り返し作業に取り組んでいる場合、時間が経つにつれて集中力が低下してしまいます。失敗が1つでもあると問題箇所を探すために全行程を調べる必要があります。そのミス自体を減らすためにもパワーナップは効果的です。
昼間の仮眠だけで集中力が高まることもありますが、生活習慣が不規則な場合、まずは夜間の本睡眠をしっかりとる必要があります。仮眠を昼間に何度とっても、本睡眠が足りないと注意力が散漫になってしまうので注意が必要です。
※「快眠デザイン研究所」が行った睡眠研修とコンサルタント業務による業種別導入数。
効率的な仮眠をとるための6つのポイント
パワーナップの時間は、起床から8時間後が最適です。人間の脳は24時間周期の体内時計(サーカディアンリズム)の影響で、起きてから8時間後に眠くなるリズムが備わっています。つまり、起きる時間が6時なら14時ごろに仮眠をとるのがオススメ。そのため、少し早起きして午前5時ごろに起床すれば、ランチ後の眠気と体内時計が合わさるので仮眠には絶好のタイミングです。15時以降の仮眠は、本睡眠に悪影響を与えるので避けるようにしましょう。
また、効率的に仮眠をとるために次の6つを心に留めておきましょう。
- 横にならない
- 何かにもたれかかる
- 椅子に座ったまま伏せて眠るのが効果的
- 睡眠時間は30分以内
- 15時以降の仮眠は逆効果
- 仮眠の前にカフェインをとる
1.横にならない
横になると本睡眠に入ってしまうため、必要以上に眠りすぎてしまう可能性があります。人間は座った状態で数時間眠ることは難しいため、横になることなく仮眠をとるようにしましょう。
2.何かにもたれかかる
十分な睡眠が取れていない人の場合、もたれかからずに椅子に座ったまま眠ると、睡眠に入る瞬間に首がガクッとなることがあります。そのタイミングで覚醒してしまうこともあるため、パワーナップで重要な要素である「脳の情報整理」の妨げとなってしまう可能性があります。そのため、壁際などにもたれかかるようにして首が安定した状態を保ち仮眠を取ることで、それを防ぐことができます。
また、外出先では車の中で仮眠をとる人も多いと思いますが、シートを深く倒してしまうと睡眠が深くなってしまうので、少し倒した30〜45度ぐらいにしておくことがポイントです。
3.椅子に座ったまま伏せて眠るのが効果的
2で説明したように、睡眠に入る際に首がガクッと動いてしまうことを防ぐ方法として、伏せて眠ることは効果的です。この方法であれば、壁や首まで支えてくれる椅子でなくても、仕事机があれば可能です。
4.睡眠時間は30分以内
仮眠時間が30分以上になると本睡眠に到達してしまい、起きた時に頭がぼーっとした状態に。パワーナップは15〜30分の短時間にすることが、午後の作業効率アップにつながります。
パワーナップを終えたときに眠気が残っているという場合は、やや仮眠時間が長い可能性があります。その場合は睡眠時間を短くし、自身のリズムに合うちょうど良い睡眠時間を探してみることをオススメします。
5.15時以降の仮眠は逆効果
出典:一般社団法人 日本睡眠教育機構
人は夕方になると、体温が徐々に下がってきます。体は夜に向けて、しっかりとした睡眠をとる準備を始めます。夕方に仮眠をとってしまうと、体温の下がり方が不安定になります。体に備わっている「体温が上がれば目が覚める、体温が下がれば眠くなる」という循環を妨げてしまうことにつながります。そのため、15時以降にパワーナップを行うのはオススメできません。
6. 仮眠の前にカフェインをとる
そして仮眠する前にはコーヒーなどカフェインが入っているドリンクを飲むことをオススメします。カフェインが体内に吸収されるのは飲んでから15〜30分後。仮眠後にちょうど覚醒効果が表れ、きちんと目覚めた状態で午後の仕事に取り組めます。
また、仮眠時にはリラックス効果が得られるアロマを利用するのも効果的。リラクゼーション効果が高いラベンダー、カモミール、ティートゥリーなどの香りを選べば、気分がリフレッシュして午前中に溜まっていたストレスも軽くなります。
まとめ
パワーナップを仕事に取り入れることで、作業が効率的になる可能性があります。眠くない場合でも、目をつむるだけでも一定の効果があります。パワーナップ(積極的仮眠)を取り入れて、毎日の集中力をパワーアップさせてみてはいかがでしょうか。
現在、コロナ禍の在宅勤務による、生産性の増減や体調不良なども散見されています。今後パワーナップだけではなく、健康経営もさらに注目が予想され、体調不良や働き方の改善は今後も継続して注目されるものと思われます。
取材協力=快眠デザイン研究所
文=平原健士(iPPON COMPANY GROUP)
編集=野田綾子+TAPE
【監修者プロフィール】
古泉典彦
快眠デザイン研究所代表
大学卒業後、呉服チェーン店に入社。その後、実家の寝具呉服店を継ぐため退職し、老舗寝具店から「眠り屋」として、こだわり寝具専門店へ業態転換させることに尽力。2019年2月「人にさらなる快眠を」という想いから快眠デザイン研究所を設立。快眠を普及させる「睡眠専門家」として、全国で研修を実施。
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