深夜のメールはマナー違反? リモートワークで変容するはたらき方に合わせたビジネスマナー

若手ビジネスパーソンのなかには、自己流マナーで仕事相手と接している人も多いのではないでしょうか。正しい言葉遣いやメール対応ができていないと、自分自身はもちろん会社の評価を下げてしまう可能性もあります。今回は、マナー講師として多岐にわたり活躍する、マナー西出ひろ子先生に知っておくべきビジネスマナーについて質問。ビジネスメールの“基本のき”からコミュニケーションを深めるクッション言葉まで、幅広く解説いただきます。「迷ったら聞きなさい!」の言葉に込められた、大きなメリットとは?

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ビジネスメールの基本「宛先の使い分け」

ビジネス上のメールに関して、さまざまな疑問を感じている若手ビジネスパーソンもいるのではないでしょうか。

基本からおさらいすると、宛先の「To」にはやりとりをしている当事者、「CC」には情報共有やトラブルを回避するためにプロジェクトメンバーや関係者を追加します。先方の関係者のメールアドレスが分からないときには、「まず自分の関係者をCCに追加→先方が返信するときにCCに相手側の関係者を入れる」という流れになります。「BCC」は相手にメールアドレスが見えないので、相手に知らせる必要のない自分側の関係者を追加するときに使用するものです。CCがいるにもかかわらず、Toの相手にだけ返信してしまうビジネスパーソンも多いので注意しましょう。

意外と知らない、CCに入っている人への配慮

メールの本文の前にメインの相手(To)の名前を記載しますが、その下にCCに追加されている人の名前を書くこともありますよね。基本的には直接やりとりに関係がない場合には、CCに入っている人の名前はわざわざ記載しなくてかまいません。ただ、例えば「To:取引先の新入社員/CC:取引先の部長(面識あり)」といった場合には、一度挨拶したことのある相手かつ目上の人なので、メール内にCCに入っている人の名前も記載するのが好ましいでしょう。

マナーの総論になるのですが、マナーは“儀礼”ではなく“礼儀”なので「こういう時には、必ずこうすべき」というものではありません。相手との関係性や自分のポジションを考えながら、必要な配慮を行うのが正しいマナーなのです。「TPPPO®」(TIME・PLACE・PERSON・POSITION・OCCASION)を意識しながら、その時々で最適な言動を選択しましょう。

深夜のメールは失礼? 一般的には控えるべき行動だけど……

「深夜にメールを送ると失礼かな」「夜は何時までメールを送っていい?」と、メールのやりとりについて悩んでいる若手ビジネスパーソンも多いのではないでしょうか。

実はメールのやりとりについては、新型コロナウイルスの影響を受け、リモートワークが増加していることで少しずつ変化しています。働き方改革が進むなかで17時や18時以降はやりとりをしないと決めている企業も多かったのですが、自宅で作業する社員が増えたことで土日や遅い時間のやりとりも増加しているのが現状です。一方で、コンプライアンス遵守の観点から、規定時間外やりとりは行わないと決めている企業も存在します。

先述したように、マナーの本義は相手との関係性や自分のポジションをふまえて、相手への配慮を行うこと。一般的には遅い時間や朝早い時間のメール送信は控えるべき行動だと言えます。大切なことは、まずは自社のルールを遵守すること。もし、自社にその明確なルールがない場合には、やりとりをしている相手との関係性を考えたうえで判断するようにしてくださいね。

マナーや対応に悩んだときには「迷ったら聞く」が鉄則!

ビジネス時のメールに限ったことではありませんが、私はマナーや対応について疑問が生じたときには「迷ったときには、まず聞きなさい」とアドバイスしています。あれこれ考えてモヤモヤしている若手ビジネスパーソンも多いと思いますが、本当にもったいないことなんですよ!しっかりコミュニケーションをとって相手のことを知っておくと、今以上にお互いが仕事をしやすくなるはずです。恥ずかしいとか、聞いたら迷惑かな、などというのは、自身の勝手な思い込み。仕事ですから、怖がることなく遠慮なく聞きましょう。自分の頭の中で考え込むのではなく、素直な気持ちで心の扉をひらいて相手に聞いてみましょう。

相手を敬う気持ちは、「敬語」で示す

ここ数年、肩書きや役職をつけずに“○○さん”と呼ぶ風潮があります。もちろん世代や立場の垣根を超えて距離を縮められるのは良いことですが、だからといって相手を敬う気持ちを忘れてはなりません。

例えば、目上の人に対しては「お疲れ様です」ではなく「お疲れ様でございます」と伝えるのが望ましいです。お互いを対等に感じられる“~です”ではなく、“~ございます”を使うことで相手への敬意を表せます。丁寧で美しい言葉遣いは、使っている本人にとってもプラスに働くもの。ビジネスパーソンとして成長するためにも、ぜひ正しい敬語や話し方を身に付けてほしいと思います。

クッション言葉を制するものは、ビジネスシーンを制す!

ビジネスシーンにおいて、相手への配慮となる“クッション言葉”は非常に重要な役割をもちます。上司や先輩に何かを質問するときには、急に話し始めるのではなく、相手の名前を呼んだうえで「○○さん、ご多用のところ恐れ入ります」「○○部長、今お時間よろしいでしょうか?」と聞くように心がけましょう。直接話しているときはもちろん、メールや電話でもクッション言葉を挟むことで相手への敬意を示せます。

<ビジネスシーンで使えるクッション言葉(例)>
・お忙しいところ恐縮ですが
・大変恐縮ではございますが
・ご多用のところ恐れ入りますが

少し堅苦しい印象を持ってしまう方もいるかもしれませんが、自分を助けてくれるクッション言葉をぜひ身に付けてくださいね。

【監修】
マナー西出ひろ子●ヒロコマナーグループ代表。ウイズ株式会社代表取締役社長。一般社団法人マナー教育推進協会代表理事。マナー講座や研修はもちろん、マナー評論家として数多くのメディアに出演。28万部の『お仕事のマナーとコツ』(学研プラス)のほか、近著に『テレワークマナーの教科書』(あさ出版)など国内外で95冊以上の著書・書籍監修。
https://hirokomanner-group.withltd.com/

文=山本杏奈
編集=五十嵐 大+TAPE

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