- 自己開示とは?その概要を解説
- 自己開示にはどんな効果がある?
- 自己開示ができる人・できない人の特徴
- 自己開示の尺度とは?レベルごとの概要を紹介
- すぐに実践できる自己開示の方法
- 覚えておきたい自己開示をする際の注意点
- 自己開示はビジネスの潤滑油になる
ビジネスにおいて重要とされる「自己開示」ですが、具体的にどのように行ったらいいのか分からない人も多いのではないでしょうか。今回は、自己開示の概要からメリット・デメリットをはじめ、すぐに実践できる方法などについて、コンサルタントとしてコミュニケーションに関する多数の執筆・講演活動を行われている横山信弘さんに伺いました。
自己開示とは?その概要を解説
自己開示とは、目の前の相手や不特定多数に対して、自分のことを伝える(開示する)ということです。自分のことといっても、名刺に書いてあるような名前や肩書き、仕事内容についてではありません。一般的には、これまでの経歴・経験や趣味など内面も含めた情報をさします。
自己開示では何を話せばいい?
例えば、「野球で甲子園をめざしていました」「水泳を頑張っていて大会に出たことがあります」といった学生時代の経験のほか、「絵を描いていました」「音楽をやっていました」などの過去に力を入れて取り組んでいたことが挙げられます。また、なぜこの会社に入ったのか、この会社でどういうことを頑張ろうと思ったのかなど、入社した当時の話もいいでしょう。
さらに、過去の話や仕事から離れ、週末に何をしているかなど、自分の趣味の話を伝えるのもいいでしょう。仕事相手に仕事の中身とはあまり関係ないようなプライベートな情報を伝えることで、相手も同じような情報を開示してくれることにもつながり、お互いに深く知り合える可能性が高くなるのです。
自己開示と自己呈示の違いは?
自己呈示は自分をブランディングするために、自分らしさをある程度おさえて、「こう思ってもらいたい」「こう見られたい」という姿が相手に映るよう振る舞うことです。これは印象操作とも呼ばれます。主な違いは、自己開示は自分のことを相手に伝えるコミュニケーション方法の一つであるのに対して、自己呈示は自分のために振る舞う方法である点です。
自己開示にはどんな効果がある?
コミュニケーションにおいて自己開示は重要とされています。その理由は、自分の内面を開示することによって、相手も開示してくれる可能性が高くなる「返報性の法則」があてはまるからです。
返報性の法則とは、こちらが何かをすると相手も何かを返す、もしくは相手に返したいと思う心理原理のことをいいます。ここでは、自己開示の効果について詳しく見ていきましょう。
信頼関係が構築できるようになる
ビジネスでは、上司やチームメンバー、顧客などの多くの人と関わることになります。その際に自己開示をし合ってお互いを深く知ることで、相手に対する警戒心が減って心理的安全性が高まり、よりよい信頼関係が構築できます。
もちろん、こちらが自己開示したように相手も開示してくれるかは分かりません。ただし、こちらから自分の家族や趣味の話をはじめ、仕事のちょっとした悩みや、やりたい仕事などを話すことで、相手も開示するきっかけにつながります。さらに、お互いに開示し合うと意外な一面が見え、打ち解けることにもつながるでしょう。
共通項が見出されて話が盛り上がる
自己開示をし合うことによって、相手との共通項を見出せるようになります。自分の家族や出身地の話、転職経験がある人なら前職についての話のほか、学生時代に打ち込んだことなどをトピックとして取り上げると、意外な共通点が見つかり、お互いに親近感が湧くので、緊張が緩和され、話が盛り上がることにもつながるでしょう。
また、家族や出身地の話だけでは毎回同じ話題になってしまう可能性がありますが、ゴルフや釣りなどの趣味の話であれば、会うたびに話題を更新することも可能です。例えば、上司との雑談の際に「この前、海釣りに行ったんです!」「そうなんだ、何が釣れたの?」などのやりとりができるようになり、会うたびに打ち解けられるようになります。
新たなつながりが生まれる
自分のことを話した相手との共通項がなくても、自分の趣味などを開示しておくことで、「実はうちの部長も○○のファンですよ」と別の人を紹介してくれる場合もあります。そこから、「ぜひ部長さんとお話してみたいですね」のような流れになれば、紹介された部長も「○○ファン同士で話したいな」と新たなつながりが生まれるケースも考えられます。
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自己開示ができる人・できない人の特徴
自己開示と一口にいっても、開示するのが上手な人とそうでない人がいます。自己開示が得意な人とは、自分のことを話すのが好きな性格の人、もしくは自己開示の経験が豊富な人です。例えば、これまでチーム競技や集団活動など、チームで力を合わせて何かをした機会が多いと、自己紹介や話し合いなどで自身の意見を他者に伝える経験を多く積んでいます。そのため、自然と自己開示がうまくなる傾向にあります。
一方、自己開示が苦手な人はもともと内気な性格であることや、これまでの人生で自己開示をする機会が少なく、慣れていない場合が多いです。人間の思考パターンというのは、「過去の体験のインパクト×回数」できています。回数を繰り返すことによって価値観や考え方が変わってきます。そのため「自己開示をしたいけれどできない」と悩んでいる人は、この先回数をこなせられれば、段々とできるようになるでしょう。
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自己開示の尺度とは?レベルごとの概要を紹介
自己開示には尺度があり、日本パーソナリティ心理学会が「自己開示の深さを測定する尺度の開発」(2010年)を公開しています。ここでは4つのレベルに分け、それぞれの概要とレベルごとの自己開示のポイントを紹介します。
レベル1:趣味・嗜好の開示
レベル1の段階としては、趣味・嗜好、つまり自分の好みを開示します。経験の話というよりは、休みの日にすることや自分の好きなこと・ものの話がいいでしょう。例えば、「野球が好き」「好きなYouTuberがいる」「旅行によく行く」「時計を集めている」などが挙げられます。ただし「どんな球団が好きなの?」と返された際に「〇〇です」のみで終わらないようにし、どんなところが好きなのかなど、自分にとって話を広げられそうな話題を見つけておくのがおすすめです。
レベル2:困難な経験の開示
レベル2では、困難な経験を開示します。ただし、部活やアルバイト、受験・資格試験など、大変だった経験や努力した経験を唐突に話し始めても相手はただ困惑するだけです。そのため、例えば「部長はどうしてこの会社に入ったんですか」というさりげない話から、相手が乗り越えた課題などを聞き出せれば、「私も経験しそうなお話なので、そういった時にどう乗り越えればいいのか、良かったら教えてもらえませんか」という話を相手に振りましょう。相手に先に開示してもらうことで、こちらも「実は自分も大学時代にこんな経験がありまして…」と話しやすくなります。
レベル3:決定的ではない欠点や弱点の開示
レベル3では、決定的ではない欠点や弱点を開示します。こちらもレベル2同様、自己開示をするとはいえ、取り返しのつかないような失敗や自分の欠点・弱点を話してしまうと初対面の相手の場合は特に「この人と仕事をして大丈夫?」と相手を不安にさせてしまう可能性があります。そこで、例えば「昔、試験勉強を頑張りすぎて、試験当日風邪を引いてしまったことがあるんです」といったエピソードを話すと「確かにやりすぎは禁物だけど、熱心に頑張ることも大切だよね」というような、長所として受け取ってもらえる内容のものがおすすめです。
レベル4:自分の性格や能力の否定的側面の開示
自分の性格や能力の否定的側面の開示ですが、レベル3以上に開示する内容のボーダーラインが難しく、否定的なところを開示しすぎてしまうと、やはり仕事に影響が出てしまうことが懸念されます。そもそも信頼関係がある程度構築されていないと、このレベルの話はできないでしょう。例えば上司と部下の関係であれば、勇気をもって自分の欠点や弱み、もしくはそれに伴う悩みを吐露し、自分の否定的な部分を知ってもらうことで信頼関係の醸成につながることがあります。このように、ある程度の信頼関係が構築できている段階でレベル4の開示ができれば、心理的安全性が高まり、より信頼関係が深まるケースもあるでしょう。
ただし、先述したように自分の性格や能力の否定的側面を伝えるのは、なかなか難しいことです。そのため、大人数のなかでむやみやたらに話すのではなく「折り入って相談があるのですが…」のように話を持ち出し、相手と自分のみの2人きりのシチュエーションで開示するようにしましょう。
すぐに実践できる自己開示の方法
ここでは、すぐに実践できる自己開示の方法について、4つのSTEPで解説します。
STEP1:いきなり自己開示はせず、まずは相手に質問をする
自分から自己開示をした方がいいという先入観を持ってしまいがちですが、いきなり自分から自己開示をするのは難しいでしょう。自己開示をするのは、移動中や食事中などちょっとした隙間時間が多いです。そういう時に、「私は野球が好きなんです」と唐突に話しはじめても相手は困惑してしまいます。
自己開示の第一歩として大事なのは、まずは相手に質問することです。「私は野球が好きで○○ファンなんですけど、課長は野球好きですか?」というように、相手の話を引き出すきっかけとなるような質問をしましょう。自己開示は相手とのコミュニケーションを図るためのものなので、まずは相手に開示してもらうことを意識して、質問をするのが効果的です。
STEP2:即答できる質問をする
相手にする質問の内容も重要です。つい「趣味はなんですか」「週末は何をされてるんですか」と聞いてしまいがちですが、こういう質問は意外と答えづらかったりするものです。まずは、自己開示をしてもらう土台づくりとして、相手が即答しやすい質問を用意しておきましょう。例えば、「前はどんな部署にいたんですか」「そこで何をされていたんですか」などの仕事がらみの質問であれば、すぐに答えられるだけでなく、多くの人が共通して話せる話題なので、話を発展させやすいのです。
STEP3:相手の話を掘り下げる
即答できる質問のあと、相手がまだまだ話したい様子であれば、その話題を掘り下げていくとよいでしょう。相手が気持ちよく話せるよう適度に相槌を打ちつつ、「その時、どうされたんですか」「差し支えなければ、私の今後のためにもっと詳しい話を教えていただけませんか」などと踏み込んでいくと、話をより掘り下げることができます。ただし、話を発展させようとするあまり、無理やり深い話に持っていく必要はありません。
STEP4:相手の話に合わせた内容を自己開示していく
STEP1〜3を経て、ようやく自己開示をするタイミングです。その際に注意しておきたいのは、自己開示そのものが目的ではなく、相手との関係を構築するのが目的だということです。そのため、自分のことを知ってもらおうと一方的に話すのではなく、相手が開示した内容に合わせて「そうなんですね。実は私も…」というように、まずは、相手の話に近いエピソードや考え方などを自己開示するのが、理想的な流れといえます。自己開示を意識しすぎて相手の話の腰を折らないように気をつけましょう。
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覚えておきたい自己開示をする際の注意点
最後に、自己開示をする上での注意点を解説します。
はじめから自己開示をしすぎない
自己開示の最初は、出身地や趣味、好きなスポーツなどの表面的なことにとどめておきましょう。はじめから自己開示しすぎてしまうと逆に相手が警戒してしまうので、深い話につながらないケースがあります。相手が開示したら、それに合わせて自分の家族のことや過去のエピソードなどで徐々に話を深めつつ、「今後、何をしたいか」「会社でどんなことをやりたいか」といった、将来について開示していくのがいいでしょう。ただし、「あの上司が嫌い」などのネガティブな話題や深刻な悩みは、よほどの理由がない限り、はじめの段階で軽はずみに開示しないことが大切です。
自己開示をすること自体を目的にしない
自己開示は、相手との信頼関係を構築して、仕事をやりやすくするための手段の一つです。自分が開示することは目的ではないため、自分ばかりが話すのではなく、相手に気持ちよく話してもらうということを第一に考えましょう。ただし、「君はどうなの?」と向こうから質問された際に、すぐに答えられるよう自分が話せるエピソードをあらかじめ整理しておくのがおすすめです。
自己開示はビジネスの潤滑油になる
自己開示は、相手との信頼関係を構築するという目的で行うコミュニケーション方法の一つです。適切な自己開示ができれば、どんな相手とも緊張がほぐれて仲を深められるでしょう。特にビジネスにおいては、仕事を潤滑に進めることにも役立ちます。そのため、いろいろなシチュエーションを想定して、相手が答えやすい質問を普段から考えておくようにしましょう。
監修:株式会社アタックス・セールス・アソシエイツ 代表取締役社長 横山 信弘
企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。15年間で3,000回以上の関連セミナーや講演、コラム執筆、昨今ではYouTubeチャンネル『予材管理大学』を通じ「予材管理」の普及に力を注いでいる。大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持ち、各種ビジネス誌への寄稿、多数のメディアでの取材経験がある。メルマガ「草創花伝」は3.8万人超の企業経営者、管理者が購読。主な著書には「絶対達成」シリーズのほか、「『空気』で人を動かす」「キミが信頼されないのは話が『ズレてる』だけなんだ」等多数。
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