- オンとオフを切り替えられない人は意外と多い?
- 若手が抱えるオン・オフ切り替えのリアルな悩みは?
- 仕事の効率が下がり、休日も楽しめないという悪循環に……
- 仕事の悩みをプライベートに持ち込まないためにできること
- テレワーク中にメリハリをつけて仕事をするコツ
- まとめ
オンとオフを切り替えられない人は意外と多い?
ワーク・ライフ・バランスへの意識が高まり、多様な働き方が広がりつつある昨今、よく耳にするのが、オン(仕事)とオフ(プライベート)の切り替えの難しさです。
特に、テレワークでの難しさを指摘する声は多く挙がっています。
2023年5~6月に公益財団法人・日本生産性本部が行った「テレワークに関する意識調査」によると、テレワークで働くときの課題として「仕事のオン・オフの切り分けがしやすい制度や仕組み」が必要だと答えた人は31.7%でした。
出典:公益財団法人 日本生産性本部「テレワークに関する意識調査 結果概要」(2023年8月7日)
実際のところ、オンとオフの切り替えがうまくいかずに悩んでいる人は多いのでしょうか?大嶋さんの見解を伺いました。
「多いと感じますね。特に多いと感じるのが、職場での人間関係の悩みをプライベートまで引きずってしまうというケースです。
人間関係がうまくいかず、退勤後も悶々と悩んでしまう。その結果、せっかくのプライベートの時間を楽しめず、憂鬱な気持ちのまま翌日も仕事をすることになってしまいます」(大嶋さん・以下同)
一方、テレワークであれば、そうした職場での人間関係の悩みは軽減されるようにも思えます。しかし、テレワークにはまた別の問題があると大嶋さんは指摘します。
「私たち人間は、場所の影響を否応なく受けてしまう生き物です。
基本的に自宅というのはリラックスして過ごす場所。そこで緊張感をもって仕事をするというのは極めて難しいこと。どこにいても集中できる人もいますが、訓練が必要でしょう。
そういう意味で、テレワークでオン(仕事モード)への切り替えがうまくできない、切り替えても集中が続かないという人は多いのではないでしょうか」
若手が抱えるオン・オフ切り替えのリアルな悩みは?
オンとオフの切り替えは、出社・テレワークを問わず、現代人が抱える大きな悩みのひとつと言えるのかもしれません。
そこで、大嶋さんがビジネスコーチとして日々、接している若いビジネスパーソンたちのリアルな悩みをご紹介いただきました。
先輩や上司との関係性に悩み、プライベートの時間を楽しめない
「人間関係の悩みで言うと、先輩や上司から『仕事ができていない』と指摘を受けて、萎縮したり、落ち込んだりした気持ちのまま退勤後も過ごしてしまう、といった声が多いですね。
取引先との契約がうまくいかなかったなど、仕事の失敗で悩む人ももちろんいます。
しかし、人間関係が良好であれば先輩や上司に相談ができるので、プライベートの時間にまで悩み続けることは減りますよね。
そうした対処ができないと、たとえ仕事終わりに趣味の時間を持ったり、友達と食事に行ったりしても、常に仕事の悩みが頭から離れず、目の前のことを楽しめなくなってしまうわけです」
テレワークでダラダラと仕事をしてしまう、すぐに仕事に取りかかれない
「テレワークに関してよく聞く悩みとしては、自宅という場所の特性上、緊張感を保つことが難しく、『夜遅くまでダラダラと仕事をしてしまう』『始業時間になってもなかなか仕事に集中できない』といった声ですね。
また、仕事机に5分も座っていられない、パソコンを立ち上げてもすぐに作業にとりかかれない、テレビをつけたまま仕事をしてしまう……といった人もいます。
そうした人は、たとえ無自覚であったとしても、オン・オフの切り替えがうまくできていないと言えるのではないでしょうか」
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仕事の効率が下がり、休日も楽しめないという悪循環に……
それでは、オン・オフの切り替えがうまくできないと、具体的にどのような弊害があるのでしょうか。仕事とプライベートそれぞれに対する影響を大嶋さんに解説いただきました。
仕事への悪影響
パフォーマンスが低下する
「気持ちの切り替えができず、プライベートの時間にまで仕事の悩みが侵食してしまうと、心配や不安から眠れなくなり、睡眠不足になりがちです。
十分な休息が取れないと、集中力や判断力の低下を招き、仕事のパフォーマンスは明らかに下がるでしょう。
結果として、ミスが増えたりイライラしやすくなったりして、職場での人間関係も悪化する。すると、ますます悩みが増えてプライベートを楽しめなくなる……という悪循環に陥ってしまうと考えられます」
新しい発想が浮かびづらくなる
「常にオン(仕事モード)で、遊びなどの余暇の時間がなくなると疲労やストレスは溜まる一方です。自分の人生をどう生きたいのかという軸がどんどん見失われて、視野が狭くなってしまいます。
新しい発想が浮かびづらくなるし、目の前の仕事を淡々とこなすだけになり、人生の楽しみも失われてしまうのではないでしょうか」
プライベートへの悪影響
家族との時間や新しい出会いが減る
「仕事からプライベートへの切り替えがうまくできないと、家族と過ごす時間は否応なく減り、関係性が疎遠になってしまいがちです。
また、職場以外のコミュニティに参加する機会が減れば、人生を中長期的に見たときに大切になる友達や仲間、パートナーなどの新しい人間関係も生まれづらくなりますよね」
人生に対するオーナーシップが失われる
「仕事への影響とも重なりますが、常に仕事モードで生きていると、どんなふうに自分の人生を生きたいのかという、いわば“人生に対するオーナーシップ”が損なわれてしまうように思います。
例えば、語学の勉強など、人生を耕して種まきをするようなスキルアップの時間も取りづらくなりますよね。変化の激しい時代なので、今の仕事を長く安定して続けられるとも限りません。
そのための種まきができないと、急に仕事がなくなってしまったとき、進むべき道が分からず、途方に暮れてしまうことにもなりかねません」
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仕事の悩みをプライベートに持ち込まないためにできること
仕事・プライベートの双方にさまざまな影響が考えられるオンとオフの切り替え。ここからは、その切り替えがうまくいかないときの対処法についてご紹介します。
悩み事を書き出す「ジャーナリング」をしてみる
「ジャーナリングとは、自分の中にあるモヤモヤを言語化する試み。
整理整頓して書こうと思わなくて良いので、頭の中でグルグルと考えていることを、とにかくノートに書き出してみてください。それだけでも気持ちがすっきりしますよ。
実は、『悩む』ことと『考える』ことは、似ているようで違うんです。
どうしよう、どうしよう……と悶々として前に進まないのが『悩む』、どのように改善しようかと“悩み”を“課題”に変えて前に進むことが『考える』です。
ジャーナリングをすると、自分が何に悩んでいるのかが明確になり、課題として具体的に解決策を考えられるようになります」
誰かに話を聞いてもらう
「これは私もよくやる方法ですが、仕事やプライベートのことで悩んでいるときは信頼できる仲間に相談するようにしています。
人に話すことで気持ちをクールダウンできるし、『ネガティブになりすぎていたな』などと、自分を客観視できるからです。
オンとオフの切り替えがうまくできないという悩み自体も、仲間やコミュニティなど頼れる相手に相談してみることで、何かいいアイデアがもらえるかもしれません」
テレワーク中にメリハリをつけて仕事をするコツ
最後に、テレワークをしている人向けのオンとオフを効果的に切り替えるコツについてもアドバイスをいただきました。
着替える・場所を変えるなどのトリガーポイントを設ける
「テレワークでなかなか仕事に取りかかれない大きな要因として、プライベートの時間から仕事モードに切り替えるためのトリガーが存在していないことがあげられます。
そこで、おすすめなのが身なりを整えること。部屋着のままではなく、外出できるような服装に着替えるだけで気持ちが変わり、仕事モードに移行しやすくなります。
また、場所もトリガーポイントになります。
仕事部屋や仕事用のコーナーを設けても良いです。自宅で気持ちを切り替えるのが苦手なら、外に出てワーキングスペースなどを利用するのも良いでしょう。
もし会社で仕事ができるなら、週2~3回出社するという方法もおすすめですね。オンとオフのスイッチを切り替える自分なりの儀式をつくってみてください」
予定を入れるなどして終業時間を決めておく
「ダラダラと夜遅くまで仕事をしてしまうというのは、テレワークで特にやりがちですよね。そうならないためには、終業時間を意識的に決めておくことが大切です。
時間があるとギリギリまで仕事をしてしまうので、仕事終わりに予定を入れるのもひとつの手。友達とごはんに行く約束をするとか、コンサートに行くとか、なるべく人やお金が絡む予定が良いですね。
期限があれば強制的に仕事を切り上げることができるし、『終わらせなければ』という緊張感があれば仕事のパフォーマンスも上がるかもしれません」
画面の見過ぎには要注意。意識的に遠くの景色を見よう
「長時間パソコンの画面を見続けていると、慢性的に疲労してしまいます。
仕事中だけでなく、夜にスマートフォンをいじりながらそのまま寝落ちしてしまうのもNG。眠っても疲れがとれません。
こうした状態が続くと、集中力の低下やイライラを引き起こすため、間接的にオン・オフの切り替えにも影響するので要注意です。
また、眼精疲労も影響しているので、定期的に窓の外など遠くの景色を見るよう心がけましょう。もしそれが叶わない環境であれば、遠くの景色が写った写真を5~10分程度見るだけでもOKですよ」
定期的に体を動かす
「定期的な運動も気持ちの切り替えには効果があります。
ずっと座っているのは良くないので、お昼休みに少し外を散歩したり、太陽の光を浴びたりすると良いですよ。テレワーク時に限らず、オフィスにいるときも30秒間ストレッチするだけで気分がクリアになります。
筋力がつくと不思議と精神力も強くなるものです。体と心はつながっているので、悩み事で鬱々とした気分でもぜひ体を動かしてみてください。
個人的には、心を落ち着けるために瞑想を取り入れることもおすすめしています。1時間に1回、深く深呼吸をするだけでも良いのでぜひやってみてくださいね」
まとめ
働き方の形を問わず、悩んでいる人が多い「オンとオフの切り替え」の問題。その悩み方もひとつではなく、人によってさまざまです。
まずは「自分なりのオンとオフの状態を理解することが大事」と話す大嶋さん。誰かに話したり書き出したりしてみることで、どこがどううまくいっていないのか、自分なりの「課題」を知ることが大切なようです。
今回ご紹介した切り替え方のコツも参考に、仕事とプライベートのどちらも充実させる、自分に合った方法を探してみてはいかがでしょうか。
話を聞いた人:大嶋祥誉さん
ライフデザインコーチ、エグゼクティブコーチ、人材戦略コンサルタント、TM瞑想教師。センジュヒューマンデザインワークス代表取締役。上智大学卒業。米国デューク大学Fuqua School of Business MBA取得。米国シカゴ大学大学院MA修了。マッキンゼーなどの外資系コンサルティング会社で経営戦略や人材マネジメントのコンサルティングに従事。20年以上にわたり、エグゼクティブコーチとして、経営者、政治家、弁護士、医者などのプロフェッショナルへのコーチング実績を持つ。「TM瞑想」を30年以上実践、エグゼクティブにTM瞑想や生産性を上げる効果的な休息法や習慣なども指導。著書に「マッキンゼー流 入社1年目問題解決の教科書」「マッキンゼーで当たり前にやっている働き方デザイン」「究極の瞑想」など23冊。累計40万部突破するベストセラー作家でもある。
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