- 自分軸とは?
- キャリア形成において自分軸が求められる理由とは?
- 自分軸がある人の特徴
- 自分軸を持って生きるメリットとは?
- 自分軸がない場合に起こりうるデメリットとは?
- 自分軸を作る方法は?
- 自分軸にこだわり過ぎるのはNG
- 自分軸は今からでも形成できるので、恐れずどんどん挑戦を
「自分軸」というと、メンタルヘルスにまつわるワードというイメージを持っている方は多いのではないでしょうか。実は、「自分軸」について理解を深めることで、ビジネスやキャリア形成にもメリットがあるといわれています。本記事では公認心理士の川島達史さんに伺った話をもとに、「自分軸」の意味をはじめ、自分軸を作る実践的な方法などをご紹介します。
自分軸とは?
まずは、「自分は何者?」「自分の目指す道は?」「人生の目的は?」「自分の存在意義は?」と考えてみましょう。その答えがポジティブに出せると「自分軸がある」ことになります。
これは心理学でいうところの「アイデンティティの確立」です。自分を社会の中に位置づける問いについて前向き、かつ確信的に答えられることを意味します。
また、「職業的アイデンティティ」という心理学用語もあります。職業的アイデンティティが確立されると、「職業人として自分は仕事とどう関わるか」「職業を通して自分らしさをどう育くんでいくのか」が前向きに答えられるようになります。
対義語である「他人軸」とは?
「他人軸」とは、自分よりも他人の考えに合わせて意思決定をすることです。そもそも人は生まれながら、協調的・調和的な感覚を多かれ少なかれ持っていると推測されています。そのため、「他人軸」は人が当たり前に持つものとも言えるのです。一人の中に「自分軸」と「他人軸」の感覚がグラデーションのようにあり、「他人軸」の感覚をどの程度残すのかは人によって異なるでしょう。
「自分軸」と、「自己中心的」「わがまま」との違いは?
「自己中心的」や「わがまま」は、他人には配慮せず、その日の気分などにまかせて振る舞うことを意味します。ほかの人に自分の意見を押し付ける行為もそのうちのひとつです。一方、「自分軸」を持つことは「職業人として自分は仕事とどう関わるか」など自分の価値観にもとづいて行動することです。ほかの人の意見は尊重しつつ、自分は振り回されません。
キャリア形成において自分軸が求められる理由とは?
自分軸はキャリアアップに必要といわれることがあります。それには、次のような理由があるようです。
強みが明確になり、オファーが増えやすくなる
「自分は仕事とどう関わっていくか」という一貫した意志があるので、強みが尖りやすくなるでしょう。例えば、「顧客のニーズを汲み取った提案力なら誰にも負けない」という自分軸がある人は、熱心に業界のトレンドや企業研究に取り組みます。その結果、自分にしかできない提案スタイルを確立し、クライアントから指名されるようなトップ営業になれる、というケースもあるでしょう。
その人の強みが明確であるほど、「あの人に仕事を依頼しよう」ということは往々にしてあるものです。もし、自分軸がない人なら、周りの意見や情報に流されがちで、強みを定着させるのが難しくなるかもしれません。
個性のあるアイデアや企画を生み出せる
自分軸があると新しいアイデアや、その人にしかない価値を出していくことができます。企画など新しい発想が求められる場面では、ありきたりではない回答や意見を生み出せる自分軸を持つ人が求められるでしょう。
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自分軸がある人の特徴
自分軸がある人はどのような働き方をしているのでしょうか。主な特徴を3つご紹介します。
“充実しているか”がベース
心理学用語では、意識には「公的自己意識」「私的自己意識」の2つが存在するとされています。このうち、自分軸のある人が目を向けているのは「私的自己意識」です。これは、自分の意識に目を向けること。“自分が楽しいか、充実しているか”をベースに仕事をしています。
もう一方の「公的自己意識」は、他人の目を通して自分を見ることで、他人軸で生きている人は、こちらの意識が強いようです。周りの目を気にするので、自分の意見がコロコロ変わりやすい傾向にあります。
マニュアルがなくても問題なし
「マニュアルどおりにやりましょう」という仕事では、自分の意見は取り入れづらいため自分軸が育ちにくいです。一方、判断が求められる仕事では、自分の頭で考え、価値観を育て、オリジナルのやり方を作ることになります。自分軸がどんどん磨かれていくので、自分で切り開く仕事を多く担当するようになるでしょう。
メタレベルで考える
「メタ」とは「高次の、超越した」という意味。自分軸のある人は、何かしらの行動をするときも、その裏側にある意味や価値を考える習慣があります。「本当に意味のあることなのか?」と長期的な目線で考えられるのです。仕事では場当たり的に行動することは少なく、目の前の利益に飛びついてコロコロと考えを変えてしまうことはないでしょう。
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自分軸を持って生きるメリットとは?
生きていく上ではもちろんのこと、ビジネスでも自分軸が役立ちます。どのようなメリットが期待できるのか、主なものを挙げてみましょう。
自己肯定感を保ちやすい
自分軸がある人は、周りの目を気にしすぎません。批判をされても自分の行動指針に合っていれば、自己肯定感を保ち続けられるでしょう。
信頼され、ファンがつくことも
意見が一貫していると、発言の矛盾が減ります。結果として信頼されたり、一定数のファンがついたりします。また、一つの分野に精通しやすいので、「私は○○のスペシャリストです」と言い切れるようになれば、その分野の仕事を任せてもらいやすくなるでしょう。
転職活動に有利にはたらくことも
自分軸があるとキャリアに一貫性が生まれやすくなります。これは転職活動をするにおいても志望動機を伝える際などにプラスにはたらくことがあるでしょう。
キャリア形成に役立つ
仕事においてしっかりとした自分軸があると、「自分が今後どのようなキャリアを歩んでいきたいのか」を考える指標になります。振り分けられた仕事をただ消化する人と、スキル開発の一環として取り組む人とでは、同じ仕事内容でも身につくスキルや経験値に差が生まれるはずです。このように、なりたい自分の姿をイメージしながら行動するプロセスこそ、キャリア形成なのです。
自分軸がない場合に起こりうるデメリットとは?
心理学においては、アイデンティティが確立されるほど、自尊心は高まるという研究報告があります。自分軸がない人は、自分のあり方に自信を持ちにくいのです。さらに、自分軸がないと「周りの言うことを聞かなくてはならない」と潜在的に感じ、周囲の人をまず警戒するような姿勢になることも。人への信頼感が低くなってしまうことは、仕事ではデメリットと言えそうです。
自分軸を作る方法は?
ここまで、自分軸があることはメリットが多いと紹介してきました。では、自分軸はどうやって作れば良いのでしょうか。具体的な方法を見ていきましょう。
困難なことにチャレンジする
「自分で考える必要のある場面」に遭遇することがまず第1ステップです。とにかく試行錯誤してみることが大切。心理学では「アイデンティティクライシス」と呼ばれるもので、困難なときほど価値観が確立されます。どんどんチャレンジすると良いでしょう。
文字にしてメタレベルで考える
感覚的なことは記録として残し、メタレベルで考えると思考が深くなります。感じたことを「本当にそれは意味のあることなのか?」などと考えていくようにしましょう。言語化するとほかの人に説明しやすくなる、という面でもおすすめです。
意見を言う習慣をつける
自分軸は、自分の世界だけで完結させると、偏った考え方になりがちです。そこで、意見はどんどん人に話し、磨きあげていくと良いでしょう。特に仕事で尊敬をしている人には積極的に意見を話し、ブラッシュアップする意識を持ちましょう。意見を言う人は注目され、チャンスをつかみやすくなるものです。
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自分軸にこだわり過ぎるのはNG
自分軸で注意をしたいのは、自分の価値観にこだわりすぎて、人間関係が悪化してしまうことです。
例えば、プロジェクトチームの会議で自分の意見を主張し、ほかのメンバーの意見を一切認めない態度をとる場合。チームの人間関係はぎくしゃくし、チームワークが整わず、プロジェクトの成功から遠のいてしまうかもしれません。
そのため、ある程度は調和することも大事です。いくら「自分軸だから」といっても、他人に迷惑がかかるものや、非倫理的なものは長続きしません。アドラー心理学では「共同体感覚」と呼ばれ、エネルギーは社会のために使うとより健康的になりやすいといわれています。自分軸は、周りの人や社会と調和しながら発揮すると良いでしょう。
自分軸は今からでも形成できるので、恐れずどんどん挑戦を
自分軸について、心理学の観点などから解説しました。自分軸があると、仕事でも個性が輝いたり、強みができたりと、さまざまなメリットがあります。
「まだ自分軸がない」と感じている人は、今からでも作ることができます。自分軸を持ち、磨くために、まずはどんどん挑戦をしていきましょう。
監修:ダイレクトコミュニケーション 代表取締役 川島達史
目白大学大学院心理学研究科を修了し、現在ではコミュニケーション講座の講師として、心理学や人間関係に関するワークを行う。専門は成人のソーシャルスキルが孤独感・対人不安に与える影響。普段は「コミュニケーション講座」の主催や、YouTubeチャンネル「ダイコミュ大学」による情報発信を行っている。
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