要約のコツとは?注意点や要約力を高めるコツについて分かりやすく解説

ビジネスにおいて「要約力」があると、会議やプレゼンなどいろいろな場面で自分の意見を上手く伝えられるようになるでしょう。本記事では、要約力の重要性と、トレーニング方法まで分かりやすく解説します。

要約して上手に説明するイメージ

「要約力」はとても大切なスキルです。要約力が足りないと、さまざまな場面でコミュニケーションが上手くいかなくなるおそれがあることも。

今回は、ビジネスにおける重要性や似た言葉との違いのほか、得意な人の特徴や高めるコツ、日常で鍛える方法などを、経済学博士の中川功一さんに伺い、分かりやすく解説していきます。

要約とは?似た言葉との違いも解説

要約して後輩に修正すべき点を伝える様子

要約とは、「まとめる」ことを指します。長い話や複雑な話、結論の見えにくい話を、どういうことを意味しているのか端的に分かりやすく、誤解を生まない表現で短く説明することです。

加えて、要約する人が主体的に話全体を短くまとめるという行為になるので、元の文章の構成なども一度解体して、自分なりに話を再構築するという特徴があります。

次に、混同されがちな要旨・要点との違いを見ていきましょう。

要旨とは?

「要約する」とは言いますが、「要旨する」とは言いません。要約は「人の動作」であり、要旨は「文章などの状態」のことです。

通常のビジネスシーンや日常生活ではさほど区別して用いられていませんが、要旨は要約とは異なり、「元の文章を短くまとめる」ことが尊重されます。そのため、要約の特徴である「自分なりに話を再構築」はせず、構成を維持しながら本文全体をコンパクト、かつ一段落程度にまとめたものになります。

要点とは?

要点とは、話の中心的な事項を「点」として抽出するものです。箇条書きによる文章のまとめなどの形で表されることが多い傾向にあります。

要約力とは?

会議で提案する様子

「要約力」、つまり要約する力というのは、ビジネスでたいへん重要です。要約力は人に説明するときはもちろんですが、相手の話を理解する力とも言えるでしょう。その人の話のうち、何が主幹で何が枝葉末節なのか、それを誤ると議論の方向性が逸れてしまいます。

要約できるとは話の中心を理解するということであり、主として論じるべき中心部分を理解できるということを意味するのです。

要約力が活かされる場面

要約力は人から提案を受ける場や、報告を受ける場などで活かされることが多いです。それは人が話す場合や、文書を読む場合も共通と言えます。上手に話の骨子を抽出できれば、不毛な議論をすることもなく、場を生産的に進められるでしょう。

また、要約力は人に説明するときや文章を作成するときにも役立つので、キャリアを力強く支えてくれます。話の分かりやすい人、説明が上手い人、レポートの上手な人という評価がマイナスに作用することは一切ありません。

要約力は、ビジネスを円滑に進められる能力として、コミュニケーションにおける中核的な技能の一つとなるのです。

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要約力が高い人の特徴

短時間で取引先に要点を伝える様子

要約力が高い人には、どのような特徴があるのでしょうか。理由も併せて解説します。

相手の話を分解・再構築する技能がある

要約力が高い人は「相手の話を分解・再構築する技能」である「デコーディング(decoding)」と呼ばれるコミュニケーション能力が高い特徴があります。

人の話を理解するためには、その人の論理構造を受け取って分析し、自分の頭の中で図式化して再構築する必要があります。漫画や映画をよく読んだり観たりする人は、頭の中でストーリーラインを図式的に整理する癖がついている場合が多いです。

上手く言葉としてまとめて話す(書く)能力がある

「エンコーディング(encoding)」と呼ばれる、頭の中で構成された話を言葉としてまとめて話す(書く)技能が高いのも特徴の一つです。

人は他人の話をデコーディングして理解し、自分の頭でエンコーディングして話す、という形でコミュニケーションをしています。自分の言葉で説明したり、メモにまとめたりする習慣がある人は、この技術が身についている人が多い傾向にあります。

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要約力を高めるコツは?

要約力を意識しつつ説明するイメージ

要約力は訓練次第で磨くことができます。高めるコツについて具体的に見ていきましょう。

要約の構造を理解する

要約力を高めるために、まず要約の構造を理解しましょう。要約にはテーマ(どのような内容について論じているのか)、結論(話し手or書き手の結論はなぜそうなったか)、そして、理由(そのように主張できる理由は何か)の3つの要素が必要です。

人の話には常にテーマ、結論、理由が中核にあり、それ以外は枝葉末節に過ぎません。そのため、慣れないうちは意識的にこの3構造でまとめるようにしてみましょう。

全体を俯瞰する意識を持つ

要約には、全体を俯瞰する意識の持ち方が大切です。そのためには、多面的に見る「虫の目」、俯瞰的に見る「鳥の目」、流れでみる「魚の目」で言うところの、「鳥の目」で見るようにしましょう。

個別の話や具体的なエピソードが面白いと、人はその話に引っ張られがちですが、全体像を理解するときには、常に上空から観察しているような意識を持つ必要があります。

なお、要約を行う際には、「虫の目」「魚の目」は真逆の考え方なので必要ありません。ただし、ビジネスで不要という意味ではないのです。

複眼で多面的に捉える「虫の目」は要約には不要ですが、逆に「短くまとめられた話を多面的に検証する」上では、力を発揮します。

加えて「魚の目」は、物事を大きな時間軸や流れの中で理解しましょうという考え方のこと。ビジネスでは、たびたび書かれていない内容や話されていないことまで視野を広げて、大きな文脈の中でその話を理解しなければいけない場面があります。

つまり、「魚の目」は、要約をする際には余計な作業ですが、要約された文章や説明を大きな文脈の中で理解する際に効果的なので、大切な技能の一つと言えるのです。

要約において「多面的な視点、文脈的な視点」は、ないほうが分かりやすくなります。しかし、要約されたものを再び多面的な視点・文脈的な視点で捉え直す際に大切になると理解すると良いでしょう。

語彙を増やす

要約の力をつけるには語彙の幅広さも重要です。ある物事を説明するのに最適な言葉を選択できなければ、誤った形で情報が伝わってしまいます。

例えば、「すごい」の一言で片づけるのではなく、何がどうすごいのか、自分の感情を細やかな表現で説明できるよう訓練をすることが大切です。また、語彙を広げられるよう、さまざまな文章や映像作品などに触れるのも良いでしょう。

言葉の豊富さは、社会を捉える目の豊かさを意味します。言葉を知ることを通じて、私たちは世界の成り立ちの細やかさを理解していくことができます。それこそが、物事の本質的な部分を端的に説明するという要約力の中心になるのです。

文章を要約するときは文字数の上限を決める

文章を要約するには、さまざまなテクニックが存在します。中でも有効なのは100文字以内、200文字以内のように、上限を決めてしまうことです。最初からその文字数におさめるように心がけることは、要約技能を高める上でシンプルなトレーニングになります。

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要約する際の注意点

最初に結論を意識してプレゼンする様子

要約する際に気をつけるべきことは何でしょうか。それぞれ詳しく解説します。

最初に結論を持ってくる

要約する際には、結論を述べてからその理由を説明する文章形式「Why-so型」を活用しましょう。

この形式は、結論を受けて「なぜそうなるの?」(Why so?)と疑問を持ったところに、続けて説明を加えるものです。人の思考の流れとしてストレスフリーで、分かりやすく理解できるものだと考えられています。そのため、要約する際には結論を最初に持ってくるのがおすすめです。

例えば、「Why-so型」の逆の形式である「So-what型」では、最初に説明が行われ、「それで結論は何なの?」(So what?)と問われてから結論を言う方法です。結論を先延ばしにされるため、ストレスもかかり、話の要点も分かりにくくなる可能性があります。

要約をする場合は「Why-so型」で行うように心がけましょう。

断言する

「断言しない」ということは、知性や善意の顕れではありません。自分にはこんなことは断言できない、と思う人も多いかもしれませんが、聞き手や読み手は「いかなる物事も断言などできない」ことを理解しています。要約では、要約者がこの話をどうまとめたのかを相手は期待しているのです。

中には、断言をするにはエビデンスがない、と考える人もいるかもしれませんが、その場合には「断言できない」ことを示すエビデンスもないケースも多いです。

例えば「断言できないという明白なエビデンスがある」ときには、そのエビデンスを提示した上で、「この点については諸説ありますが~」などと説明するのが効果的です。一番聞き手・読み手が混乱するのは、要約者の結論がどちらなのか分からない場合なので、混乱を与えないように意識しましょう。

接続詞を使わない

文章の要約の際には、接続詞を使わないようにしましょう。誰しも文章と文章の間のつながりは、自分で勝手に読み解いています。

その読み解きを特定の接続形態でかためてしまうと、思考を阻害されたと感じてストレスになったり、ときには接続詞が違っているのではないかと、本筋と外れたところで疑問が生じたりしてしまいます。すると、文章全体の理解ができなくなることがあるので、接続詞を使わないほうが良いでしょう。

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日常的に要約力を鍛える方法

日記を書くことを習慣にしている人

要約力を鍛えるにはどのような方法があるのでしょうか。ここでは、日常的に実践できる方法を紹介します。

日記やブログをつける

日常的に要約力を高めるための方法としては、日記、もしくはブログをつけるのがおすすめです。日々の出来事や考えを文章にする際、重要なポイントを抽出し、簡潔に表現しなければなりません。

これにより、情報の本質を見抜く力が養われ、無駄を省いて核心を伝える要約力が向上します。また、繰り返し続けることで、より効果的に話をまとめる技術が自然と身についてくるでしょう。

身近な人に説明する習慣をつける

自分が観たり読んだりした映像作品や本、漫画などの内容をまとめ、友人や家族に説明するのも効果的です。まとめて説明することで要約力を高められる上、その相手からの質問やフィードバックを通じて、自分の説明の理解度や改善点を確認することもできます 。

楽しい時間を過ごし、自分の感想を共有する素敵な時間を大切にすると、物事を説明する力が磨かれていくのです。

どんな分野でも良いから勉強する

要約力の向上に最も力を発揮するのは「どんな分野でも良いから、勉強をする」ことです。ビジネス関連やIT、法律など何でも良いですが、勉強するという行為は、書籍や動画で語られていることをデコーディングして理解し、自分なりにエンコーディングしてアウトプットする作業です。

要約とは知識を上手に頭に収めていく作業にほかなりません。学びを通じて、新しい技能を身につければ、キャリアや人生に新しい彩りや展望も生まれるでしょう。学びを通じてさまざまな技能ととともに要約力を磨くのがおすすめです。

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要約力を高めて仕事の効率やクオリティアップを目指そう

要点をつかみ、それを相手に簡潔に伝える要約力は、ビジネスのあらゆる場面で大切です。この力が不足すると、コミュニケーションも上手くいきません。そのため、要約力を鍛えていくことが重要になります。

要約力は練習次第で伸ばしていける技術です。紹介したような方法を用いて日常的にトレーニングをし、仕事の効率やクオリティを上げていきましょう。

監修:やさしいビジネススクール学長 中川功一
経済学博士(2009年、東京大学)。「アカデミーの力を社会に」をライフワークに据え、日本のビジネス力の底上げと、学術知による社会課題の解決を目指す。学長を務めているオンライン経営スクール「やさしいビジネススクール」を中心に、YouTube・研修・講演・コンサル・著作などで経営知識の普及に尽力している。 主な著書に『感染症時代の経営学』『ど素人でもわかる経営学の本』『戦略硬直化のスパイラル』など。

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