【敬語一覧】ビジネスで間違いやすい表現や使い方のポイントを紹介

敬語は尊敬語・謙譲語・丁寧語などに分類できます。ビジネスで目上の相手や取引先とやり取りする際は、上手に使い分けることが大切です。本記事で、敬語の種類やよく使われるビジネス敬語を理解しておきましょう。

敬語の種類とは

ビジネスで目上の相手や取引先と会話する際、敬語を使うことが基本です。ただし、敬語の種類や意味を正しく理解していなければ、相手に失礼な印象を与えることがあるため注意しましょう。

本記事では、敬語の種類や使い分け方について説明した上で、仕事でよく使うビジネス敬語を例文と一緒に解説します。

そもそも敬語とは?

敬語とは、話し手や書き手が相手や話題にしている人物に対して敬意を示すための表現です。目上の立場の相手と話すときには、基本的に敬語を使います。

敬語を使うか、使わないかの基準は、年齢に限りません。取引先の担当者や子どもが通う学校の担任教師のように、相手が自分より年下であっても、立場や役割に応じて敬語を使うことがあります。

敬語が必要な理由

話し手・書き手とその相手(聞き手・読み手)や周囲の人との人間関係・社会関係を示すことが、日本社会において敬語が使われ続けている主な理由です。日本では、古代より敬語が重要な役割を担っていました。

一方、現代社会ではすべての人は基本的に平等とされるため、昔と比べて上下関係が重視されていないことも事実です。そのため、現代社会においては、人間関係をスムーズにすることが敬語を使う理由ともいえます。敬語で相手への敬意を示し、良い人間関係を構築すれば、コミュニケーションを円滑にとれるでしょう。

そのほか、自身に社会常識が備わっていることを示す点も、敬語を使う理由のひとつとして挙げられます。

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敬語の種類

敬語は尊敬語・謙譲語・丁寧語の3種類に分類されることが一般的です。ただし、2007年2月に文化審議会がまとめた「敬語の指針」では、敬語を尊敬語・謙譲語I・謙譲語Ⅱ・丁寧語・美化語の5種類に分類しています(従来の「謙譲語」を謙譲語Iと謙譲語Ⅱ、「丁寧語」を丁寧語・美化語に分類)。

敬語のはたらきや適切な使い方を深く理解できるようにすることが、3種類から5種類に増やした主な理由とのことです。ここから、各敬語の役割や使い方を解説します。

尊敬語

尊敬語とは、相手または第三者の行為・ものごと・状態などについて、その人物を言葉上高く位置付けて(敬って)述べる表現です。相手の動作に対して「〜れる・〜られる」や「お(ご)〜になる」などをつけることで、尊敬語にできます。

尊敬語の例:お使いになる、始められる、お忙しい、ご利用になる

(取引先との会話で)
弊社の新サービスをすでにご利用になりましたか?

謙譲語

謙譲語とは、自分や自分の側にあるものに対してへりくだった表現(自分を控えめにする表現)をすることにより、相手や話題の人物に対して敬意を示す表現です。

謙譲語は、謙譲語Iと謙譲語II(丁重語)に分類できます。主な違いは、動作の対象が敬語を用いる相手に直接関係するか、しないかです。

それぞれ確認していきましょう。

謙譲語I

謙譲語Iとは、自分側から相手側・第三者に向かう行為・ものごとなどについて、その先の人物を立てて述べる表現です。謙譲語Iを使うことで、自分の動作が向かう相手に敬意を示せます。

謙譲語Iの例:伺う、申し上げる、お目にかかる

14時に、御社へ伺いたいのですが、よろしいでしょうか?

*動作の相手(御社)に対して敬意を示している

謙譲語II(丁重語)

謙譲語Ⅱとは、自分側の行為やものごとを話し相手や文章の読み手に対して丁重に述べる表現です。謙譲語Ⅱを使えば、動作の相手ではなく、聞き手や読者に対して丁重に伝えられます。

謙譲語Ⅱの例:参る、申す、いたす

(取引先に今週のスケジュールを尋ねられて)
明日から、出張で大阪へ参ります。

*動作の相手(大阪)ではなく、聞き手(取引先)に対して敬意を示している

丁寧語

丁寧語とは、話や文章の相手に対して丁寧に述べる表現です。丁寧語は、謙譲語IIと同じような意味で使われることがあります(どちらも丁寧・丁重に表現するための言葉)。

謙譲語IIが主に自分側のことを述べる際に使う言葉であるのに対し、丁寧語はさまざまなことに使える点が主な違いです。また、一般的に謙譲語IIの方が丁寧語よりもあらたまった表現とされています。

丁寧語の例:です、ます

書類は手元にあります

美化語

美化語とは、ものごとを美化して述べるための表現です。「お」を何かの前に付けることで、上品に表現します。

尊敬語も、「お」を付けて表現することがある言葉です。ただし、美化語は尊敬語のように行為の主体や所有者を立てる表現ではありません。

また、謙譲語IIや丁寧語のように、聞き手や読み手に対して丁重・丁寧に表現した言葉でもなく、あくまで「美化」した言葉である点にも注意が必要です。

美化語の例:お酒、お菓子、お料理

〇〇課長は、お酒を召し上がりますか?

参考:文部科学省「平成18年版 文部科学白書 18.文化審議会「敬語の指針」(答申)について」

よく使う敬語一覧表

よく使う動詞を敬語にしたものを以下の表にまとめました(謙譲語Iと謙譲語IIはまとめて「謙譲語」に分類、美化語は省略)。

動詞

尊敬語

謙譲語

丁寧語

する

(行う)

なさる、される

いたす、させていただく

します

いる

いらっしゃる、おいでになる

おる

います

行く

行かれる、いらっしゃる、お出かけになる

伺う、参る

行きます

帰る

お帰りになる、帰られる

おいとまする、失礼する

帰ります

言う

おっしゃる、言われる

申す、申し上げる

言います

聞く

お聞きになる

拝聴する、伺う

聞きます

知る

お知りになる、ご存じ

存じる、存じ上げる、承知する

知っています

見る

ご覧になる

拝見する

見ます

読む

お読みになる

拝読する

読みます

着る

お召しになる

着させていただく

着ます

わかる

おわかりになる、ご理解いただく

かしこまる、承知する

わかりました

考える

お考えになる

拝察する、存じる

考えます

与える

くださる、お与えになる

差し上げる

与えます

受け取る

お受け取りになる

賜る、頂戴する、拝受する

受け取ります

会う

お会いになる、会われる

お目にかかる

会います

食べる

召し上がる、おあがりになる

いただく、頂戴する

食べます

借りる

お借りになる

拝借する

借ります

状況に応じて、使い分けましょう。

敬語を見分けるコツ

誰の動作であるかを意識することが、敬語の種類を見分けたり、使い分けたりするためのコツです。基本的に、自分(話し手)の動作の場合は謙譲語、聞き手や話題の人物の動作に対しては、尊敬語を使われます。

例えば、上司が自分の提出したレポートを読む場合に使うのは、尊敬語(お読みになる)です。一方、上司が作成した資料を自分が読む場合は、謙譲語(拝読する)を使います。謙譲語Ⅰと謙譲語Ⅱの見分け方については、「敬語の種類」の「謙譲語」の部分を参考にしてください。

なお、「です」「ます」「ございます」がついていれば、基本的に「丁寧語」と判断できます。

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仕事でよく使うビジネス敬語一覧

敬語はいくつも存在するため、全てを理解することは困難です。そこで、ここから仕事でよく使われるビジネス敬語をいくつか紹介します。

伺う

「伺う」とは、動作の相手を敬うための謙譲語です。主に「訪れる(行く)」「聞く」「尋ねる」といった3つの意味があります。

(「訪れる」の意味で使うケース)
本日、15時に御社へお伺いします。

(「聞く」の意味で使うケース)
上司:本日の会議が延期になったこと聞いているかい?
自分:はい、〇〇さんから明日の13時開始に変更されたと伺っております。

(「尋ねる」の意味で使うケース)
御社のサービスについて、詳しく伺ってもよろしいでしょうか?

<関連記事>「伺う」の正しい使い分けをマスターしよう!意味や例文も紹介

おこがましい

「おこがましい」とは、「身の程をわきまえない」「差し出がましい」「ばかげている」などの意味を持つ言葉です。ビジネスシーンにおいて、目上の相手に何かを指摘したり、意見したりする際に、謙虚な気持ちを伝えるための前置きとして「おこがましい」が使われることがあります。

(上司の提案・発言について)
おこがましいようですが、いくつか課題があるのではないかと感じております。

ご教示・ご教授

「ご教示」と「ご教授」は、どちらも目上の相手に教えてもらう際に使う言葉です。一般的に、書類の書き方や作業手順などをその場で尋ねる際には「ご教示」、専門性の高い知識を一定期間にわたって教えてもらう際や、伝統芸能などを習う際には「ご教授」と使い分けます。

○○さまのご都合の良い日程をご教示いただけますでしょうか。

先生の研究分野について、ご教授いただきたく存じます。

<関連記事>「ご教示」と「ご教授」の意味の違いとは?使い分けや例文も紹介

ご自愛ください

「ご自愛ください」とは、「ご自分の体を大切にしてください」「健康には十分に気をつけてください」などの意味を持つ言葉です。ビジネスメールを送信する際、上司や取引先に宛てて手紙を送る際などの結びとして「ご自愛ください」を使います。

(上司や取引先に送る年賀状で)
寒さ厳しい折、風邪など召しませぬようご自愛ください。

<関連記事>「ご自愛ください」の意味や使い方は?注意点と言い換え表現も紹介

ご指導ご鞭撻のほど

「ご指導ご鞭撻」とは、「努力するように励ましてある目的・方向に導く」ことを意味する言葉です。入社式や人事異動の挨拶のように、これから新たな場所で教えてもらうことがいくつもあるケースなどで「ご指導ご鞭撻のほど」を使います。

(新たに配属された部署での挨拶)
一日でも早く皆様の力になれるように精進いたします。
ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。

<関連記事>「ご指導ご鞭撻のほど」とは?正しい使い方とシーン別の例文を紹介

ご放念ください

「放念」とは、「気にかけないこと」や「心配しないこと」を意味する言葉です。ビジネスにおいて、誤ってメールを送信したケースや、相手から謝罪を受けたケースなどで、「気にしないでください」と相手に伝えるために「ご放念ください」を使います。

また、以下の例文のように、何かを依頼する際に相手がすでに対応している可能性や行き違いの可能性を考慮して「ご放念」を使うこともあります。

昨日お支払い期限でしたが、本日15時現在入金の確認がとれておりません。
ご多忙のところ恐縮ですが、状況を確認の上◯◯までご連絡いただきますようお願い申し上げます。
なお、すでに対応いただいておりましたら、ご放念ください。

<関連記事>「ご放念ください」の意味とは?正しい使い方やタイミング、例文を紹介

幸いです

「幸い」とは、「そうしていただければ幸せ」と表現する際に使う言葉です。ビジネスメールで、一文に「幸いです」を添えることで「〜してください」「〜してくれるとありがたい」という気持ちを相手に伝えられます。

大変恐縮ですが、本件について明日までにご回答いただけると幸いです。

<関連記事>「幸いです」の使い方とは?ビジネスで目上の相手に使う際の例文も紹介

させていただく

「させていただく」とは、「する」「行う」の謙譲語です。「(自分にとって)恩恵のある行動」について、上司など目上の相手や取引先などに「(事前に)許しを得る」際に使います。

来週の会議の日程を変更させていただきます。

「させていただく」は敬語ですが、状況次第で使用することが好ましくないこともあるため注意しましょう。基本的に、以下の条件を満たす場合に限って「させていただく」を使用できます。

  1. 相手側または第三者の「許可」を得る
  2. 「させていただく」ことにより、自分が何かしらの「恩恵」を受ける

「させていただく」を使用可能な条件について、より詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。

<関連記事>「させていただく」は正しい敬語表現?2つの条件がポイント

承知いたしました

そもそも「承知」とは、「事情などを知ること」や「依頼・要求などを聞き入れること」などを意味する言葉です。謙譲語の「致す」と丁寧語の「ます」で成り立つ「いたしました」を加え、「承知いたしました」と述べることで、ビジネスで相手に事情を理解したことを丁寧に伝えられます。

(取引先から、明日会社で話したいとがあると言われて)
承知いたしました。それでは明日御社へお伺いします。

所存です

「所存」とは、「考え」や「心に思うところ」を意味する言葉です。丁寧語の「です」を加えて「〜の所存です」と上司や取引先に述べることで、「〜のようにするつもりです」と伝えられます。

(社内のプレゼンで)
競合他社の攻勢を防ぐために、既存顧客との接点を強化していく所存です。

<関連記事>「所存(しょぞん)です」の意味は?正しい使い方を例文とともに解説

僭越ながら

「僭越(せんえつ)」とは、「地位や立場を超えて、出過ぎたことをする」ことを意味する言葉です。ビジネスでは、本来自分が対応すべきではないことをする場面などで、自分をへりくだって「僭越ながら」と表現します。

本日、課長の〇〇が不在のため、僭越ながら私◇◇が対応いたします。

<関連記事>「僭越ながら」の意味は?ビジネスでの正しい使い方や例文を紹介

存じます

「存ずる・存じる」は、「考える」「思う」などの謙譲語です。ビジネスシーンにおいて、自分の意見を述べる際や、気持ちを伝える際に「考えています(思っています)」などの意味で「存じます」と表現します。

A社と契約する前に、信用調査が必要かと存じます。

<関連記事>「存じます」の使い方と意味は?正しく使う上での注意点も解説

つきましては

「つきましては」とは、「ついては」を丁寧に表現した言葉です。ビジネスで、前に述べた事柄から次の事柄につなげる際に、「したがいましては」という意味で使います。

(朝礼で)
営業第二部から当部に、〇〇課長が着任されました。
つきましては、歓迎の意を込めて今週金曜日に歓迎会を開催いたします。

なお、以下のように「〜に関して」や「〜について」を丁寧に表現する際に「つきましては」を使うこともあります。

(取引先へのプレゼンで)
詳細なデータにつきましては、配布資料の3ページに記載しております。

<関連記事>「つきましては」の意味と使い方は?ビジネスシーンで使える例文も紹介

拝受

「拝受(はいじゅ)」とは、「受け取る」をへりくだって表現した謙譲語です。上司や取引先からメールや資料を受け取る際に、「拝受」を使います。

(取引先からのメールに対して)
メールを拝受しました。
ご提案いただいた内容を社内で協議する必要があるため、今週木曜日までお時間をいただきたく存じます。

<関連記事>「拝受(はいじゅ)」どんな意味で使う言葉?使い方や例文も解説

ご査収

「査収(さしゅう)」とは、「金銭・物品・書類などを、よく調べて受け取る」ことです。「ご査収のほどよろしくお願いいたします」と述べることで、「内容をよく確認して受け取ってください」という意味を丁寧に伝えられます。

ご依頼いただきました見積書について、添付ファイルにてご案内いたします。
ご査収のほどよろしくお願いいたします。

<関連記事>「ご査収のほどよろしくお願いいたします」の意味や使い方は?例文もチェック

恐縮です

「恐縮(きょうしゅく)」とは、「相手に迷惑をかけたり、厚意を受けたりして申し訳なく思う」ことです。感謝や謙遜の気持ちを伝えたいとき・断るとき・依頼するときなどに、「(目上の人の自分に対する厚意に対して)嬉しい・気恥ずかしい・申し訳ない」という意味で「恐縮です」と表現することがあります。

(取引先へのメールで何かをお願いする際)
お忙しいところ恐縮ですが、来週中にご返信いただけますでしょうか。

<関連記事>「恐縮です」の意味とは?正しい使い方や例文もわかりやすく解説

差し支えなければ

「差し支え」とは、「都合の悪い事情や支障」のことです。「差し支えなければ」には、「不都合でなければ」「(もし都合が)よければ」「支障がなければ」といった意味があります。

「差し支えなければ」は、主に相手への気遣いを示し、相手に決定を委ねる際に使われることが一般的です。

(取引先に面談場所を聞かれて)
差し支えなければ、弊社までお越しいただけますでしょうか。

<関連記事>「差し支えなければ」の意味は?敬語なのかも解説

敬語を正しく使うためのポイント

敬語を使用していても、正しい使い方ができなければ、相手に失礼な印象や違和感を与えることがあります。ここから、敬語を正しく使うためのポイントを確認していきましょう。

二重敬語を避ける

敬語を使う際、二重敬語を避けましょう。

二重敬語とは、ひとつの語に対して同じ種類の敬語を二重に使用した表現(例:「尊敬語+尊敬語」「謙譲語+謙譲語」)のことです。例外はありますが、基本的に二重敬語を使用することは適切ではないとされています。

例えば、「〇〇部長がお読みになられる」は尊敬語「お読み」と、同じく尊敬語の「〜れる」が重なっているため、誤用ととらえられないように使用を避けた方が無難です。この場合、正しくは「〇〇部長がお読みになる」と表現します。

また、先ほど紹介した「拝受」も、より丁寧にしようとして「拝受いたしました」とすると二重敬語ととらえられることがあるでしょう。なぜなら、「拝受」自体が謙譲語であるにもかかわらず、さらに謙譲語の「いたす(いたします)」を加えているからです。

ビジネス敬語は社内・社外を意識する

とくにビジネス敬語を使う場合は、社内と社外を意識することが重要です。例文を通じて違いを確認していきましょう。

まず、以下は社内での会話例です。

課長:A社と契約する際、誰が同席するの?
自分:〇〇部長にご同席いただきます

上記は聞き手が社内の人物(課長)のため、話題の人物である上司(部長)に対して敬語を使って構いません。

しかし、聞き手が社外の人物(取引先の担当者)の場合、自分の上司に対して敬語を使うことは基本的に不適切です。取引先から質問された場合は、以下のように「部長」ではなく、取引先(聞き手)に対して敬語を使うようにしましょう。

取引先:ご契約時に、どなたか同席されるのですか?
自分:はい。部長の〇〇が同席させていただく予定です。

ここでは、聞き手への敬意を示すために謙譲語の「させていただく」を使っています。

尊敬語・謙譲語を混同しない

尊敬語と謙譲語を混同しないように心がけることも大切です。自分では敬語を使っているつもりでも、相手の動作に謙譲語を使ったり、自分の動作に尊敬語を使ったりすると失礼な印象や違和感を与えかねません。

例えば、上司に「〇〇部長はプロジェクトの詳細について伺いましたか?」と尋ねると誤った表現です(「伺う」は謙譲語)。部長(相手)の動作に対して敬語をつけるため、正しくは「〇〇部長はプロジェクトの詳細についてお聞きになりましたか?」と表現します(「お聞きになる」は尊敬語)。

部下・後輩への言葉遣いに気をつける

部下や後輩への言葉遣いにも気をつけましょう。

敬語は目上の相手や取引先だけに使う言葉ではありません。会社や状況によって、部下や後輩に対しても敬語を使ったり「さん付け」したりすべきとされることがあります。また、丁寧な言葉遣いをすることで、部下に圧迫感を与えて萎縮させることも避けられるでしょう。

なお、部下に使う際の敬語は「丁寧語」が無難です。部下や後輩との会話で自分の動作に「謙譲語」を使ったり、部下の行動に「尊敬語」を使ったりすると、部下や周囲の人々に違和感を与えるでしょう。

敬語を使用しない方が効果的なこともある

状況次第で、敬語を使用しない方が効果的なこともあります。

例えば、歳の近い同僚との会話で常に敬語を使っていると、距離を縮めることが難しいです。年齢や立場、付き合いの長さなどを考慮し、時より敬語なしでの会話を試みることで、さらに良好な関係を築ける可能性があります。

しかし、同僚相手でもタメ口で話すことは失礼と判断する人もいるでしょう。そのため、敬語を崩すタイミングには注意が必要です。

英語にも敬語(丁寧な表現)はある

実は、英語にも日本語の敬語にあたるような丁寧な表現が存在します。例えば、すでに紹介した「ご放念ください」は、英語でも以下のように丁寧な表現が可能です。

Please disregard my previous message.
(先ほどのメッセージにつきましては、ご放念ください)

海外の取引先や外国人の上司と接する際も、日本語と同様に丁寧な表現を意識しましょう。

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ビジネスで使う際に注意が必要な敬語

敬語であっても、ビジネスで使う際に注意しなければならない表現がいくつかあります。それぞれ確認していきましょう。

構いません

「構いません」は「問題ない」「気にしない」などを意味します。主に相手の行為を許容することを丁寧に表現した敬語です。

しかし、たとえ敬語であっても目上の相手を「許容」することは失礼にあたります。そこで、基本的に部下や親しい同僚に対して使う表現と理解しておきましょう。

部下:資料の送付が遅れてしまい、大変申し訳ございません。
自分:急ぎではないので、構いませんよ。

<関連記事>「構いません」は敬語なの?目上の人に使える?意味や使い方を解説

ご了承ください

「了承」とは、「事情を汲み取り納得すること」を意味する言葉です。「ご了承ください」と相手に伝えることで、「こちらの事情や提示要件を理解・納得してほしい旨」を丁寧に伝えられます。

しかし、「ご了承ください」では、自分が提示した要件や提案について、相手に選択する余地を与えていません。そのため、ビジネスシーンにおいて目上の相手に使うことは失礼とされることが一般的です。

どうしても相手に理解してもらわなければならない場面でのみ、「ご了承ください」を使うようにしましょう。

費用をご負担いただく場合がございます。あらかじめご了承くださいますようお願い申し上げます。

なお、上記のように「ご了承くださいますようお願い申し上げます」と表現すれば、「ご了承ください」よりも丁寧に伝えられます。

<関連記事>「ご了承ください」は目上の人に失礼?意味や正しい使い方、例文を解説

ご容赦ください

「容赦」の意味は、「大目にみること」「許すこと」などです。「ご容赦ください」を使うことで、「大目にみてください、許してください」という気持ちを伝えられます。

しかし、「ご容赦ください」は「ください」と言い切っているため、相手に失礼な印象を与えかねない点に注意が必要です。「ご容赦ください」の代わりに、「ご容赦願います」「ご容赦のほどお願い申し上げます」などの表現を使うようにしましょう。

至らぬ点もあるかと存じますが、何卒ご容赦願います。

<関連記事>ご容赦くださいの意味や使い方をマスター!ご了承くださいとの違いも解説

とんでもないです

上司や取引先から褒められた際に、謙遜する意味で使う「とんでもないです」は、一般的に誤用とされています。そこで、ビジネスで使う際は、「とんでもないことです」と表現するようにしましょう。

上司:〇〇さんのおかけで、このプロジェクトが成功できたと思っているよ。
自分:とんでもないことです。皆さんにサポートしていただいたおかげです。

<関連記事>「とんでもないです」は正しい敬語表現なの?意味や言い換え表現を解説

拝見させていただく

「拝見」は、見ることをへりくだって表現した「謙譲語」です。そのため、謙譲語の「させていただく」をつけて「拝見させていただく(拝見させていただきます)」としてしまうと、二重敬語で誤用と指摘される可能性があります。

「拝見」を使う際は、代わりに「拝見します」などで表現することが一般的です。

(取引先からビジネスの提案を受けて)
一度企画書を拝見します。

<関連記事>間違って使ってない!? OK敬語とNG敬語の境界線 vol.2:上司も間違って使ってるかも?「拝見させていただきます」は誤り⁉ 気を付けたい二重敬語

わかりました

「わかりました」は、何かを理解した際に使う丁寧語を使った敬語表現です。ただし、尊敬語や謙譲語ではないため、上司や取引先などへの使用は控えた方がよいでしょう。

目上の相手には、「わかりました」の代わりに「承知いたしました」「かしこまりました」「承りました」などを使います。

上司:先ほどの資料をメールでA社の〇〇さんに送っておいてもらえるかい?
自分:かしこまりました。本日中に送付いたします。

<関連記事>「わかりました」は正しい敬語?承知しましたとの違いも解説

失念

「失念」とは、「うっかり忘れること」を意味する言葉です。ビジネスにおいて、「忘れていました」を使うよりも、「失念していました」と表現するほうが誠実な印象を与えられます。

先日お送りいただいたメールの確認を失念しておりました。
ご迷惑をおかけして大変申し訳ございません。

なお、「失念」は謙譲語のため、自分のことに対して使うことがポイントです。相手に対して何かを忘れてほしい場合は、「失念」ではなく「ご放念」を使いましょう。

<関連記事>「失念」の意味とは?正しい使い方やビジネスで使える例文を紹介

すいません

「すいません」は、「申し訳ない」の意味を持つ「済まない」の丁寧語です。ただし、「すいません」を間違った言葉ととらえる人も一定数いるため、本来の「すみません」を使うことを心がけましょう。

(先輩社員から書類の不備を指摘されて)
すみません。すぐに確認して修正いたします。

なお、「すいません」も「すみません」も、目上の相手や取引先に使うと失礼な印象を与える可能性があります。目上の相手や取引先に謝罪する際は、「申し訳ございません」や「お詫び申し上げます」などを使いましょう。

<関連記事>「すいません」「すみません」正しいのはどっち?上司に使用できる表現も紹介

目上相手に使う際に注意が必要な表現(敬語以外)

敬語以外で上司などの目上の相手や、取引先に使う際に注意しなければならない言葉もあります。ここから、いくつか紹介します。

取り急ぎ

「取り急ぎ」とは、緊急性の高い場面で「とりあえず急いで」という意味で使う言葉です。ビジネスメールでも使える便利な言葉ですが、状況次第で相手に「他のことで忙しいから詳しくは説明できないけれど、とりあえず連絡したもの」と認識されることもあるため、十分に注意しましょう。

〇〇について、下記の通り取り急ぎ報告いたします。
(概要をまとめる)
詳細は、明日のオフィスで直接お伝えさせていただきます。

なお、たとえ「取り急ぎ」を使わざるをえない場面であっても、次に来る言葉を省略して「まで」で文章を締めると(例:「取り急ぎご報告まで」「取り急ぎ御礼まで」)相手に失礼な印象を与える可能性があります。目上の相手に「〜まで。」と伝えることは控えましょう。

<関連記事>取り急ぎの意味や使い方は?目上の相手への言い換え表現や例文も解説

なるほど

「なるほど」とは、相手の言葉に対して「その通り」と同意する気持ちを表した言葉です。便利な言葉ですが、敬語表現ではないためビジネスシーンでは極力使わないようにしましょう。また、丁寧語の「です」を加えて「なるほどですね」という敬語にしても、上から目線で失礼な印象を与えかねません。

そこで、上司や取引先に「なるほど」と同意する気持ちを伝える際は、「おっしゃるとおりです」と置き換えるとよいでしょう。

課長:A社との新規取引は中断した方がよいのではないだろうか?
自分:〇〇課長のおっしゃるとおりです。私も良くない噂を耳にしたので、A社との新規取引は見送るようにいたします。

<関連記事>「なるほど」は相手に失礼な印象を与える?正しい言い換え表現を解説

意味を間違えやすい言葉

敬語以外で、間違われやすい言葉もあります。相手を困惑させないよう、正しい意味を理解しておきましょう。

当方

「当方(とうほう)」とは、「こちら」の意味で使われる言葉です。主に、自分の方や自分の属している方を指します。

「当方」は、自分自身(個人)のことではなく、組織の立場を示す際に使う言葉である点に注意が必要です。

(取引先との商談で)
当方としましては、先日ご提示いただいた条件で問題ございません。

<関連記事>「当方」の意味や使い方は?言い換え表現のパターンも解説!

その他ビジネスで使われる言葉

ここまで紹介してきた言葉以外にも、ビジネスで使われる機会の多い言葉があります。ここで、いくつか確認していきましょう。

忌憚

「忌憚(きたん)」とは、「いみはばかること」や「きらいいやがること」を意味する言葉です。ビジネスでは、「遠慮しないで伝える意見」のことを「忌憚のない意見」と表現することがあります。

(会議で自分の企画案を発表し終えてから)
ぜひ、忌憚のない意見をお聞かせください。

<関連記事>「忌憚」の意味・読み方とは?ビジネスに使える言い換え表現も解説

五月雨式

「五月雨式」とは、断続的に物事がおこなわれることです。ビジネスシーンで立て続けに連絡する際や納品を複数回に分ける際に、「五月雨式に失礼いたします」「五月雨式で申し訳ございません」「五月雨式の納品でも問題ないでしょうか」などと表現します。

(取引先にビジネスメールを送る場面で)
お世話になっております。〇〇です。

五月雨式に失礼いたします。
□□の件につきまして、質問がございます

<関連記事>「五月雨式」の意味は?読み方やビジネスシーンでの例文も紹介

何卒

「何卒(なにとぞ)」とは、「どうぞ」や「どうか」のように相手に強く願う気持ちを表す言葉です。「何卒」自体は敬語ではありませんが、敬語表現と一緒に使うことで丁寧な印象を与えられます。

「何卒」は、ビジネスメールの締めに、「何卒よろしくお願いいたします」「何卒よろしくお願い申し上げます」などの形式で使われることが一般的です

(取引先へ送信するビジネスメールで)
つきましては、〇〇様のご都合のよろしい日時をご教示いただけますでしょうか。
お忙しいところ恐縮ですが、何卒よろしくお願い申し上げます。

<関連記事>「何卒」の意味は?ビジネスでの使い方も例文でわかりやすく解説

ちなみに

「ちなみに」は、前に述べた事柄に対して簡単な補足を付け加える際に、「ついでに(言うと)」という意味で使う言葉です。「ちなみに」自体は敬語ではありませんが、敬語表現をあわせて用いることで目上の相手にも使用できます。

(プレゼンの場面で)
〇〇は〜を可能にするサービスです。
ちなみに申し上げますと、弊社のサービスは市場において現在3割のシェアを占めています。

なお、話題を変える際に「ちなみに」を使うことは、基本的に誤用です。

<関連記事>「ちなみに」は敬語表現なの?意味や使い方、言い換え表現を解説

所感

「所感(しょかん)」とは、本来「事に触れて心に感じた事柄」や「感想」などを意味する言葉です。ただし、ビジネスシーンでは、一般的に「感想」よりも踏み込んだ内容を伝える際に使われます(感想+ビジネスにどう活かすか)。

(社内会議で)
わたしの所感としては、今回の取引は見送るべきかと考えています。
なぜなら、先方が強く望んでいる条件で契約した場合に、当社で採算が取れないためです。

<関連記事>「所感」とは?意味やビジネスシーンでの使い方・書き方のポイントを紹介

鑑みる

「鑑みる(かんがみる)」とは、「過去の例や手本などに照らして考える」ことです。ビジネスシーンにおいて、何かを提案する際や説明する際に「鑑みる」を使います。

(取引先に提案する場面で)
既に導入された企業様の事例に鑑みて、弊社のサービスが御社のお役にも立てることと存じます。

なお、「〜に鑑みると」の代わりに「〜を鑑みると」を使うと、誤用ととらえられかねません。詳しくは、以下の記事を参考にしてください。

<関連記事>「鑑みる」の意味・使い方とは?ビジネスシーンで使える類語や例文も紹介

敬語を使って上手に上司や取引先とコミュニケーションをとろう

敬語とは、話し手や書き手が相手や話題にしている人物に対して敬意を示すための表現です。現代社会において敬語を使う理由のひとつとして、人間関係をスムーズにすることが挙げられます。

敬語は、尊敬語・謙譲語I・謙譲語Ⅱ・丁寧語・美化語の5種類(もしくは3種類)に分類可能です。敬語の種類は、敬意の対象などによって使い分けられます。

失礼な印象や違和感を与えないためには、敬語の違いを理解しておくことが大切です。ビジネスで上手に敬語を使い、上司や取引先とコミュニケーションをとりましょう。

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