調整力とはどんなスキル?求められるビジネスシーンと身につけ方を解説

ビジネスにおいて重要な「調整力」。本記事では、そんな調整力について、概要や身につける方法のほか、自己PR等でアピールする際のポイントなどを解説します。

取引先とスケジュールの打ち合わせをする様子

ビジネスではさまざまな背景を持った幅広い世代の人が働いているため、プロジェクトや交渉を進める際には各々の立場の意見や論理を尊重しつつ、調整を行う必要があります。そのときに重要になるのが「調整力」です。今回は、ビジネスにおける調整力の重要性をはじめ、調整力がある人の特徴や身につける方法、転職などの自己PRでアピールする際のポイントを、キャリアコンサルタントの村井真子さんに伺い、分かりやすく解説します。

調整力とは?概要を分かりやすく解説

調整力によりスムーズにスケジュールを決める様子

ビジネスにおける「調整力」とは、異なる意見を集約し、合意形成していく力のことを指します。特に調整力はマネジメントにおいて重視されがちですが、さまざまなプロジェクトを推進する際にも、それぞれの立場における意見を尊重しつつ、合意形成することが重要です。そのため調整力は、マネジメント層のみならず、若手ビジネスパーソンにおいても必要な能力とされています。

ビジネスで調整力が求められる理由は?

ビジネスでステークホルダーと調整するイメージ

現在は社内にもそれぞれ異なった背景・経歴を持った、幅広い世代の人が働いており、そもそも前提となる知識や考え方が違います。加えて、その人、部門、会社、地域など、それぞれの立場でも言い分が異なるため、それらを踏まえて案件・プロジェクトを円滑に進めるとなると、調整が求められます。

つまり、ビジネスで何かを上手く推し進めるには、各々の立場における言い分や意見、論理を尊重しつつ、合意形成していくための調整力が必要なのです。

自己PRで調整力をアピールする人が多い?

キャリアコンサルタントの村井さんによると、実際に調整力があることをアピールする転職者は一定数いて、特にコンサルティングやマネジメント関連、バックオフィス系の職種の方で多いとのこと。さらに、面接の場では、リーダーシップを発揮した経験としての調整力をアピールする傾向にあるそうです。

また、基本的にマネジメント・管理職に上がるほど高度な調整力が求められます。そのため、調整力のある人材を歓迎する企業も多く、自己PRや面接で調整力を発揮した経験をアピールする求職者が増えていると思われます。

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調整力が求められるビジネスシーン

同僚と意見をまとめるシーン

ビジネスにおいて、どのような場面で調整力を求められるのでしょうか。具体的なシーンについて解説します。

部門内で意見をまとめる場面

同じ部門で働いていたり、同じプロジェクトに従事したりしていても、全員が常に同じ背景や考え方を持って働いているとは限りません。そのため、方法論や進め方で衝突してしまうことがあります。こうしたことが起こらないよう事前に意向を聞いて調整したり、衝突した場合に双方の言い分の落としどころを探ったりする調整力が求められます。

異なる部門同士でお互いの利益や意見を調整する場面

例えば、部門間で予算を決め、限られた予算を部門ごとに振り分ける際、どこかに多く配分すれば別の部署は少なくなります。このように部門間でトレードオフの関係が生まれる場合、双方が納得いく理由を示しつつ、対立関係にならないように調整する能力が求められるのです。また、これは調整力だけでなく、「社内政治力」とも言えるかもしれません。

顧客と交渉する場面

顧客の要求すべてに対応することができない場合、どの要求を受け入れるか、または、要求を下げてもらうか、妥協してもらうか、代替案を提示するかなど、交渉して調整する必要があります。自社の利益を守りつつ、顧客の利益の最大化を狙うためには調整力が必須となります。

社会利益と自社利益、顧客利益を調整する場面

企業が人権や環境に配慮する「人権デューデリジェンス」や「サステナビリティ」の観点から、利益を追求することが常に正しいわけではありません。社会や環境への負荷を減らすために、かかる追加のコストを製品やサービスの価格に反映させることがあります。その影響で上がった価格は、顧客が負担するというかたちになりますが、自社と顧客、そして社会の利益を守るためには、適切に調整し、三者間で合意を得て進めることが重要になるのです。

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調整力がある人の特徴

調整力とリーダーシップを兼ね備えている人

調整力がある人には、いくつかの共通点が見られます。どのような特徴があるのか見ていきましょう。

リーダーシップがある

組織やチームを引っ張っていくにはリーダーシップが必要ですが、その際、多様な背景を持った人々が集まっている中で、それぞれの考え方や価値観を尊重しつつ、全員が納得できる形で調整しまとめていくことになります。つまり、調整力は、リーダーシップと相関関係にあるのです。

誠実である

人と人を調整するにあたって、どちらか一方の言い分だけを聞き入れるわけにはいかず、両者が納得するなんらかの妥協点を探っていく必要があります。その過程において「この人は自分たちの意見に耳を傾け、誠実に向き合ってくれている」と感じられる対応ができると、相手が折れてくれたり、交渉に応じてくれたりすることがあります。その誠実さが信頼関係の基盤となり、効果的な調整を可能にするのです。

相手の立場に立って考えられる

調整力がある人は、相手の立場に立って「ここだけは譲れない」「ここは譲歩ができる」と要求の内容を分析、反応を予測し、適切な対応策を考えることができます。相手の立場に立つことで、その懸念点を理解しやすくなり、相手が何を求めているのか、どのような条件だと納得してもらえるかなど、言葉にされない前提条件を汲み取ることができるようになります。

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調整力を身につける方法は?

相手の主張を汲み取ろうとする様子

調整力を身につけるには、どうすれば良いのでしょうか。その方法を具体的に解説します。

相手の主張の論理構造を考える

まずは、相手がどのような前提を持って、どういう意見を主張しているのかという論理構造を考えるようにしましょう。具体的な方法としては、日頃から意識的に「相手の発言がどういう前提をもって語られているか」「本当に言いたいことは何か」を考える癖をつけるなどが挙げられます。これができると、調整対象との交渉を優位に進められたり、自分の提案の納得感を高められるようになったりするでしょう。

幹事など、実際に調整役をやってみる

プロジェクトはもちろん、飲み会の幹事などの小さな場面でも良いので実際に調整役をしてみると、組織内、もしくはコミュニティ内のキーマンの発見や、全員にとって納得度の高い結論へ導くプロセスなどを体得できます。大きな交渉を行うためには周囲からの信頼獲得が必要です。実際に調整役として動いてみることで周囲からの評判も得られ、信頼関係の構築にもつながっていくでしょう。

相手の背景を理解する

相手が大切にしている考え方や価値観の背景を理解しておくことは、調整力を発揮する場面で役立ちます。そのため、日頃からアンテナを張るようにしましょう。各部署における業績評価や目標達成の指標である「KPI」や「KGI」、顧客のニーズなど情報収集しておくことで、いざ調整するというときに、落としどころが見つけやすくなります。

マメにいろいろな人とコンタクトをとる

いろいろな人とコミュニケーションをとるのは情報収集の基本です。こまめにコンタクトをとって情報提供したり、意見交換をしたりしておくと、「この人はこういう考え方をするんだな」「この組織はこういうロジックで動く」「この会社のキーマンはこの人」といった情報を得やすいです。そのためにも、マメにいろいろな人と関わるように心がけましょう。

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自己PRで調整力をアピールする際のポイント

面接で自己PRする場面

転職をする際や異動希望を出す際など、調整力をアピールする場面においては、いくつかポイントがあります。それぞれ詳しく解説します。

再現性の高いエピソードを添える

自己PRする際に、ただ「〇〇のような場面で、このように調整力を発揮しました」というだけでは、「たまたまタイミングが良かったからできたのではないか……」と思われかねません。そのため、相手や場面が異なっても発揮できることをきちんと伝えましょう。

例えば、「Aという場面ではこのように調整力を発揮した、Bという場面ではこのように調整力を発揮した、共通するのは……」という伝え方をすると再現性があるため、会社でも調整力が発揮されると思ってもらえるでしょう。

調整できなかったときにどのように対応したかを伝える

実際に、調整の場面に立ったことがあるという実績とともに、調整が上手くできなかった際にどのように対応したかも伝えましょう。すると、誠実さ、失敗から学ぶ力もアピールできます。また、その調整の場面で自分が大事にしたこと、今であればどのように失敗を回避するかも併せて伝えるのも効果的です。

自分のためではないもののために調整力を発揮した例を伝える

自分のための調整ではなく、第三者や組織、部署の利害を調整した経験を伝えましょう。第三者や組織のために行う調整は難易度が高まるため、その調整を任せられた経緯と実績を伝えることは、自己PRにおいて非常に有効です。

責任感を持って調整ごとを果たした経験を伝える

調整役の人が調整を途中で投げ出してしまうと、組織にとって大きな損失になります。そのため、最後まで調整を続け、合意形成を行った実績は高く評価されます。その際のストレスマネジメントやメンタルコンディションの維持は調整役にとって欠かせないものです。調整した際には、それをどのように行い、責任を果たしたかを伝えると、面接官に好印象を与えるでしょう。

また、自己PRで調整力をアピールする場合の例文については、こちらを参照してみてください。

転職活動の自己PRで調整力をアピールできる例文6選

調整力はキャリアアップに欠かせない能力

調整力はAIに代替されない、人間固有の高度な能力の一つです。調整は複数の人の利害が絡むため難しく、失敗することもあるでしょう。しかし、その失敗から学ぶ姿勢を持ち、誠実に対象と向き合うことでより高められるものなのです。

特に、キャリアアップするためにも欠かせない力なので、20〜30代のビジネスパーソンこそ身につけるべき能力とも言えます。紹介した方法などを日頃から意識して、調整力を高めていきましょう。

監修:村井社会保険労務士事務所 代表 村井真子
社会保険労務士/キャリアコンサルタント/経営学修士(MBA)。総合士業事務所で経験を積み、愛知県豊橋市にて2014年に独立開業。LGBTQ+アライ。行政協力業務を経験し、あいち産業振興機構外部専門家を務めた。地方中小企業における企業理念を人事育成に落とし込んだ人事評価制度の構築・組織設計が強み。著作に『職場問題グレーゾーンのトリセツ』、監訳に『バウンダリーレス・キャリア上巻』『組織と従業員の間で変化する心理的契約』『経営心理学』、漫画『御社のモメゴト』の原作など。

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