自己啓発とは?メリット・デメリット、効果的な方法や注意点を解説

自己啓発とは、自らの意思によって自分自身の能力向上や、精神的な成長を目指すことを意味します。効果的に自己啓発をするためには、どのようなポイントを押さえれば良いのでしょうか。メリットやデメリットを踏まえて解説します。

プライベートの時間を使って自己啓発に励むイメージ

キャリアの長期化や働き方の多様化に対応するためには、新しいスキルや知識の習得が不可欠。そのためには、自己啓発をすることが効果的です。本記事では、ビジネススキルの研修講師として活躍する松井裕志さんに伺ったお話を基に、自己啓発のメリットや正しい進め方などについて解説します。

自己啓発とは?

自己啓発について考えている人のイメージ

自己啓発とは、自らの意思によって自分自身の能力向上や、精神的な成長を目指すことを意味します。ビジネスにおいては、従業員の意欲を高めたり、仕事を遂行するための能力を伸ばしたりすることを目的として行われます。

自己啓発の具体例

自分自身の能力を伸ばすには、スキルを習得するために行動する必要があります。例えば、仕事内容に関連した研修やオンライン講座を受講する、ビジネス英語を学ぶための英会話レッスンに参加する、などの方法があります。

仕事に直結する技術だけでなく、精神的な成長を目指す行動も自己啓発の一つです。哲学書や自己啓発書を読んで自己理解を深める、日記をつけて自分の考えを整理するといった方法が挙げられます。

「自己啓発」と「自己研鑽」の違い

自己啓発と似た言葉に「自己研鑽」があります。自己研鑽とは、自分自身の知識や技術を深めるため、自主的に学び続けることを指します。一見すると、自己啓発と同じように感じるかもしれません。

大枠としては同じ意味を指しますが、両者はそれぞれ重点を置くポイントが異なります。自己研鑽は、学び続ける継続力に重きを置く言葉です。一方の自己啓発は、新たに見いだせるスキルや考え方によって得られる成長実感や自己効力感(スキルを持っていることで目標の達成が可能であるという自信)など、精神的なものに重きを置いているところに違いがあります。

自己啓発が必要とされる理由は?

自己啓発によりステップアップしていく人のイメージ

ビジネスパーソンが自己啓発の必要性を感じている背景には、どのような課題があるのでしょうか。dodaが社会人15,000人を対象に実施した「自己研鑽(自分磨き)」に関する調査結果から紐解いてみましょう。

「自分磨きが必要な理由としてあげられるものは?」という質問に対し、52.1%の人が、「キャリアアップ・自己成長のため」と回答しています。次いで、「仕事の幅を広げるため」が38.1%、「仕事で成果を出すため」が26.2%でした。また、「転職を見据えて」という回答では、20代が32.4%、30代では30.6%と、より若年層のほうが転職を想定した自己研鑽への意欲が高いことも読み取れます。

このような回答が上位にランクインした理由には、現代の労働環境やキャリアモデルが大きく関係している可能性があります。人材育成の研修を手がけている松井さんによると、主に3つの理由が浮かび上がってくるといいます。

キャリアが長期化しているから

今後ますます加速する高齢化社会、それに伴う労働人口の減少を背景に、定年退職の年齢引き上げや、老齢年金の支給開始年齢の引き上げなど従来よりも長期間にわたって働くことが求められつつあります。キャリアを長期的に継続させるには、時代に即した新しいスキルや知識を学び続けることが不可欠です。自己啓発は、その一助になるものとして考えられています。

リスキリングが重視されているから

リスキリングとは、新たな分野や職種、業務に適応するためのスキルを獲得することです。テクノロジーの進化により、仕事内容は変化し、仕事そのものが消滅する可能性すらあります。そのため、従来のスキルセットだけでなく、新たなスキルを身に付けるためにリスキリングが注目されているのです。

多様な働き方が広まっているから

リモートワークやフリーランスなど、場所や時間、雇用形態にとらわれない多様な働き方が普及しています。採用でも、職務内容に限定したスキルや経験、資格のある人材を雇用するジョブ型雇用を導入する企業も増えてきました。画一的な働き方ではなくなってきたため、自己管理能力やプロジェクト管理能力が求められているのです。これらのスキルを自己啓発によって身に付けることで、多様な働き方にも柔軟に対応できることが期待されています。

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自己啓発をするメリットとは?

自己啓発をキャリアアップにつなげた人

ビジネスパーソンが自己啓発に取り組むと、どのような効果をもたらすのでしょうか。自己啓発によって得られるメリットについて解説します。

仕事のモチベーションが向上する

新たなスキルや知識を習得することで、自己成長を実感しやすくなります。その成長が自己効力感を高め、仕事のモチベーションアップにつながるという好循環を生み出すのです。例えば、習得したスキルを新規プロジェクトで実践してみることで、自分の貢献度が高まったと感じ、仕事への情熱も増すでしょう。

キャリアアップにつながる

最新のスキルや知識の習得は、競争力の強化に効果的です。これにより、昇進やプロジェクトを任せてもらえるチャンスなどが増え、キャリアアップにつながることが期待できます。業界のトレンドや新たな技術をいち早くキャッチアップして実践することで、ほかの候補者との差別化も図れるでしょう。

柔軟な対応力が身に付く

自己啓発によってスキルや知識の引き出しが増え、柔軟な対応ができるようになります。例えば、未経験のプロジェクトにアサインされるなどの予期しない状況や新しい環境にも、迅速に適応できるでしょう。人事異動や転職などの場面で強みとなるはずです。

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自己啓発をするデメリットとは?

自己啓発にのめり込み視野が狭くなった人のイメージ

メリットが多い一方で、自己啓発にのめりこみすぎることで生じる弊害もあります。あらかじめデメリットを把握して、よくある失敗に陥らないよう意識すると良いでしょう。

かえって視野が狭くなってしまう

自己啓発に集中しすぎると、自分の興味や関心が特定の分野に偏る可能性があります。ほかの重要な分野に対する関心が薄れてしまい、偏った見解に基づいた判断を下してしまうのは危険です。特定のスキルや知識に固執せず、ほかのメンバーの意見や異なる視点を軽視しないよう注意しましょう。

必要以上にお金を費やしてしまう

自己啓発を目的としたセミナーや教材の中には、多額の費用がかかるものもあります。自己投資だからと資金を注ぎ込みすぎて、貯金や生活費まで失うことにならないよう気を付けましょう。

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自己啓発の正しい進め方は?

自己啓発を進めるための流れ

実際に自己啓発を行うには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。ここでは、自己啓発の正しい進め方を解説します。

STEP1:目標を明確にする

目標は、自分にとって重要な事柄で、かつ具体的な内容で設定しましょう。また、あらかじめ達成する期限を決め、達成できたかどうかを確認しやすい内容であることもポイントです。

STEP2:自分をよく知る

紙やメモ機能などに自分の強み・弱み、得意なこと・苦手なことを書き出して、現状の自分を把握するリストを作成します。客観的に自分を評価できなければ、上司や同僚にヒアリングすると効果的です。リストを眺めながら考えれば、目標達成のために必要なスキルが何であるかが見えやすくなります。

STEP3:学習計画を立てる

目標達成までの期間を考え、マイルストーンとなる小さな目標を立てましょう。それらを順番に達成することで、着実に目標へ近づくことができます。オンライン講座や読書、ワークショップへの参加など、学習方法はさまざま。実際に取り組みながら、自分に合った習得方法を探求してみましょう。

STEP4:習慣化する

自己啓発は、地道に毎日少しずつ取り組み、習慣化することが重要です。毎日15分だけでもビジネス書を読む、資格試験のテキストを1ページでも進めるなど、小さな一歩から始めましょう。

STEP5:実践とフィードバックを繰り返す

学んで得た知識やスキルは、積極的に実践してこそ身に付くものです。実際に使ってみることでさまざまな気づきが得られます。さらに、他者からフィードバックを受けて改善につなげていきましょう。

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自己啓発のテーマや、身に付けるべきスキルを見つけるコツ

自発的にテーマや課題を見つけられる人

いざ自己啓発に取り組もうとした際に、テーマや課題が見つからない場合はどうすればいいのでしょうか。自己啓発のテーマや身に付けるべきスキルを設定するにあたり、足がかりを見つけるためのコツを解説します。

自己啓発のテーマを見つける方法

まずは自分自身の興味や情熱に注目してみましょう。趣味やアクティビティなど、自分が楽しめることや、情熱を感じるものがあるはずです。それらに焦点を当ててみましょう。

また、現状から課題を見つける方法があります。日常や仕事で困難を感じたとき、解決策を見つけることがテーマ設定のヒントになるかもしれません。例えば、時間の管理が苦手だと感じているなら、タイムマネジメントのテクニックを学ぶ、といった具合です。

そのほかにも、キャリアや目標に焦点を当てる方法もおすすめです。自分の将来を想像して、求められると予想されるスキルに焦点を当て、逆算してみましょう。例えば、将来的にマネジメント職に就く予定だからリーダーシップを学ぶ、などです。

身に付けるべきスキルを探す方法

自己啓発のテーマが定まったら、目標達成のために必要なスキルが何かを調べましょう。さまざまな角度から自己分析することが大切です。例えば、上司や同僚の意見を基に、改善に必要なスキルを見つける方法があります。プレゼンテーションが苦手な場合は、論理的思考能力や対応力を鍛えるといった方法があるでしょう。

また、業界のトレンドを調査する方法もあります。例えば、IT業界なら最新のプログラミング言語を学習するといったことが可能でしょう。

ほかにも、自己分析テストなどのツールを使い、自分の強みや弱みを理解することもテーマ設定のヒントになります。Web上の性格診断テストなどを受けるところから、自分を見つめ直してみるのもいいでしょう。

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自己啓発に取り組む具体的な方法は?

リラックスしながら勉強する様子

自己啓発に取り組むためには、どのような手段があるのでしょうか。ここでは、具体的な方法とそのメリットについて解説します。

本を読む

読書は手軽に始められる自己啓発の一つです。一冊の本に多くの知識が凝縮され、著者の経験を知ることができます。また、移動中や余暇などを使い、自分のペースで学べることもメリットです。

資格取得の勉強をする

資格取得は、勉強を通して知識やスキルを体系的に学ぶのに効果的です。また、試験に合格して資格を取得することで、学びの成果を目に見える形で実証できます。キャリアアップにも直接つながる手段といえます。

研修・セミナーを受講する

講師は専門の知識を備えたプロフェッショナルです。その業界や分野における最新の情報や、実践的なスキルを直接的に学んで吸収することができます。

対面やオンラインのスクールに通う

オフライン・オンラインを問わずスクールで定期的に学ぶメリットには、体系的なカリキュラムと指導を受けられる点にあります。継続的に学習しやすい環境のため、技術やスキルをしっかりと体得するのにも効果的です。

メンターやコーチを見つける

身近にいる上司や先輩へ相談することも一種の自己啓発といえます。豊富な経験から良きアドバイザーとなってくれるはずです。個別のアドバイスやフィードバックが直接受けられるため、徐々に自分の成長へとつながるでしょう。

コミュニティに参加する

同じ目標を持つ仲間との集いや、異業種交流会などへ参加し、さまざまな人と関わることで見聞を広げることができます。情報交換はもちろん、コミュニケーションが刺激となってモチベーションの向上・維持にもつながるでしょう。

自己啓発を成功させるための注意点は?

注意点を説明する人のイメージ

自己啓発は、ただがむしゃらに勉強すればいいというわけではありません。次に挙げる注意点を押さえておけば、遠回りせずに自己啓発を成功へと導くことができます。

自己啓発そのものを目的にしない

自己啓発は、あくまでも手段です。成長やキャリアアップが目的であることを忘れないようにしましょう。常に最終目標の達成を意識することが大切です。

費やすお金や時間をあらかじめ決めて管理する

自己啓発は、時間やお金を費やす行為でもあります。あらかじめリソースを設定し、計画的に管理して、過度な負担や浪費を防ぎましょう。一日の学習時間や、毎月の予算を設定することで、無理のない継続にもつながります。

定期的に成果を振り返る

日々積み重ねてきたことや成果を、目に見える形で記録することは、モチベーションアップにつながります。振り返りにより進捗状況が確認でき、必要に応じて修正することも可能です。学習効果の最大化や達成感が得られる効果も期待できるでしょう。

継続可能なペースで進める

自己啓発は、一時的なものではありません。無理のないペースで進め、持続可能な学習習慣を身に付けて続けていくことが重要です。また、他者と比較して焦る必要はありません。自己啓発の目的は、自分自身の成長です。自分のペースを維持して取り組みましょう。

自己啓発をより効果的なものにするために

自己啓発は、自分が見つけた課題を解決するための訓練です。学んだことを、実際の業務や生活に活かすことで、初めて成功につながるといえます。実践と応用を意識しながら、自己啓発の効果を実感することが大切です。

さらに、自己啓発は継続することに意義があります。そのためには、義務的にやるのではなく、興味と楽しさを持つ気持ちが欠かせません。飽くなき興味を持ちながら、持続的な自己啓発に努めましょう。

監修:株式会社 夢育 代表取締役 松井裕志
株式会社リクルートでのプロジェクトマネージャーなどを経て、2010年に経営コンサルタント・講師として独立。2014年に株式会社夢育を創業。エグゼクティブコーチング(経営者・組織長)、組織開発グループコーチング(ビジョン策定、戦略策定、人財活用 等)、プロジェクト支援に関する研修(プロジェクトマネジメント、チームビルディング 等)などを得意とする。また、各種スキルを育成する研修の経験も多数(管理職研修、部下育成、キャリアデザイン、コーチングなど)。

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