- 「価値観」の意味とは?
- 自分の価値観を把握するメリットとは?
- 自分の価値観を分析して把握する方法は?
- 価値観を把握する上で注意すべきポイントは?
- 職場の人と価値観が違う場合はどうすればいい?
- 多様な価値観に触れることも重要
自分の価値観について考えたことはありますか? 明確に把握しておくと、日々の仕事はもちろんキャリア形成にまで役立てられるのです。今回は、仕事における価値観とは何か、その価値観を把握するための自己分析方法などについて、キャリアコンサルタントの村井真子さんに伺った話を基に解説します。
「価値観」の意味とは?
価値観とは、何にどのような価値を認め、物事を判断・評価するかを決める基準のこと。この価値観に基づいて、自分の好きなこと・苦手なこと、大切にしたい生き方などを決定しています。
日常生活やビジネスシーンでは、「価値観の違い」「価値観が合う」「価値観の押し付け」といった言い方がよく用いられます。他人と価値観が合えば良好なコミュニケーションを築け、仕事も円滑に進むでしょう。一方で価値観に違いがあると、衝突や論争が起きる可能性も。さらに、お互いの価値観を押し付け合うことで、意見のすり合わせができなくなることもあります。
人生観・仕事観との違いは?
価値観とよく混同されがちな言葉に「人生観」と「仕事観」がありますが、どちらも価値観という大きな括りの中に含まれるものです。
「人生観」は、どのように生きていきたいのか、何のために生きていくのか、などを考える際の基準になる価値観です。仕事とプライベートを分けず、生涯に起こり得るあらゆるできごとが対象となります。
一方の「仕事観」は、仕事に限定した価値観を指します。具体的には、どのように働きたいか、何のために働くのか、働く上で何を意識しているか、などです。就職・転職先を決める際の判断基準になり、社風や仕事における裁量、給与や勤務形態など、自分が優先したい事項に直結する傾向があります。
仕事における「価値観」とは? 具体例を紹介
仕事における価値観とは、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。転職先を探すシーンを想定して、価値を置くポイントを「お金」「ワーク・ライフ・バランス」「成果」に分けた具体例を見てみましょう。
「お金」に価値を置く人は、報酬の高さを重視して求人情報を探します。自分が希望する給与水準以上の求人情報に絞り込んでから、業務内容や勤務地、福利厚生などをチェックするでしょう。また、入社後に昇給や昇進が望めるのかも大きなポイントです。
「ワーク・ライフ・バランス」に価値を置く人は、仕事とプライベートのどちらも充実させたいという願望が強い傾向にあります。求人情報を探すにあたっては勤務時間をはじめ、フレックスタイム制やリモートワークの有無、月の平均残業時間、年間休日数などを重視するはずです。
「成果」に価値を置く人は、働き方以上に“働いた結果、どのような経験やスキルが得られるか”を重視します。自己成長のためには、ある程度の負荷がかかる仕事でも構わないという考え方が多いようです。
これらはやや誇張した例ですが、仕事における価値をどこに置くかによって、仕事の選び方や働き方に大きな違いが生まれることがイメージできたのではないでしょうか。
自分の価値観を把握するメリットとは?
価値観とはどういうものなのかについて理解が深まったところで、自分の価値観を把握するとどのようなメリットがあるのかについて解説します。
自分が価値を感じる仕事を見つけやすくなる
自分の価値観をはっきりと把握していれば、自分の価値観にマッチする仕事を見つけやすくなります。例えば、「高い報酬」に価値を置くなら歩合制の仕事、「安定した収入」に価値を置くなら固定月給制の仕事に絞り込んで探すほうが効率的です。
また、現在の仕事を続けていく上でも、自分の価値観を明確にすることで、今まで見えていなかった仕事のやりがいや魅力に気づき、モチベーションの向上につながるでしょう。
キャリアプランを考える際に役立つ
キャリアプランとは、「自分がビジネスパーソンとして、将来どういうキャリアを持ちたいか」ということを具体的に考えて、実現するための計画を指します。キャリアプランを考える際にネックになるのが、他者と比較してしまうこと。
例えば、同期入社した同僚が自分より先に昇進した場合に、「同僚よりも優位なポジションに就きたいから昇進したい」と考えてしまうと、他人を基準にして価値判断をすることになります。その同僚とは関係なく、「この会社で必要とされたい、自分の裁量を広げたい。だから自己研鑽が必要だ」という自分発の価値観を基に、今後のキャリア構築に向けた取り組みをするようにしましょう。このように、迷ったときに自分の価値観に立ち返るよう意識すれば、上司・同僚・後輩の動向に焦ることがなくなります。
就職・転職で企業とのミスマッチを回避できる
社風や企業理念は、いわば企業の価値観です。たとえ仕事内容や給与などの条件に満足していても、企業と自分の価値観が合わなければ、そのギャップを苦痛に感じる可能性は高いでしょう。
企業研究では、会社のミッション・ビジョン・バリュー、人事評価制度、勤務形態に着目すると、社風をつかみやすくなります。リサーチを経て、「A社はトップダウン方式が根強い」「B社は社員のチャレンジを促している」といった傾向が見えてくるはずです。どのような企業とマッチするのかを図るためにも、まずは自分自身の価値観を把握することから始めるべきでしょう。
自分の価値観を分析して把握する方法は?
自分の価値観を把握する重要性は理解できたものの、把握の仕方が分からない方も多いはず。そんなときは、自分が普段の生活や仕事で大切にしている・したいと思っていることを書き出してみるのがおすすめです。また、価値観を診断するWebコンテンツを利用するのもいいでしょう。ここでは、dodaが展開している3つのコンテンツを紹介します。
転職タイプ診断
簡単な質問に答えるだけで、仕事選びのヒントが分かる診断です。現状の仕事のどのようなところに満足しているか、不満を感じているかをチャートで可視化できます。仕事においてどんなことを大事にして、どんなことにやりがいを感じる傾向にあるかも明らかになるため、今後のキャリアを考えるきっかけになるでしょう。
キャリアタイプ診断
独自のアルゴリズムで、自分の強みや弱み、能力などを多角的に診断します。性格や能力をはじめ、何を基準に判断や行動をしているかが見えてくるので、自分の価値観を構成する要素の把握に最適。さらに、自分に合った企業風土についても診断できるので、会社選びにおけるミスマッチ防止にも役立てられます。
エゴグラム適職診断
エゴグラムとは、自分の性格や思考、行動パターンなどの内面を客観的に把握できる性格診断法です。診断結果を通して、自分自身の内面が整理されるため、自分の価値観をより明確に把握しやすくなるでしょう。
価値観を把握する上で注意すべきポイントは?
自分の価値観を把握する際には、自分の価値観こそが正しいと思い込まないように注意しなければなりません。価値観は唯一のものではなく、組織や人の数だけ存在します。
例えば、仕事のやり方や業務内容、目標などは組織としての価値観が優先されます。そのため、自分の価値観を優先できない場合も珍しくありません。自分の価値観を通そうとすると、協調性が損なわれて組織全体が機能しなくなってしまいます。そこで、組織を俯瞰して客観的に考えることや、代替案を提示するなど、双方の価値観を尊重する良いバランスを見つけることが大切です。
加えて、同僚などほかの人にもそれぞれの価値観があることを理解しましょう。多様な価値観がある中で、自分の価値観が絶対に優先になるわけではありません。相手の主張にも耳を傾け、それぞれの立場になって考えることで、互いを尊重し、価値観を認め合うことも必要です。
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職場の人と価値観が違う場合はどうすればいい?
上司や同僚など、職場ではさまざまな価値観を持った人たちとともに仕事をします。コミュニケーションを通して、根本的な価値観の違いを感じたときはどのように対応すればいいのでしょうか。
相手の価値観を否定しない
価値観の相違を感じた際に大切なのは、「価値観が違う」ということだけを把握することです。価値観の違いによって意見がぶつかりそうになったときは、決して否定せず、「そういう考え方もあるよね」と受け入れることでより良い人間関係を築けるでしょう。
ことビジネスにおいては、否定から入ってしまうと交渉の余地を失ってしまうリスクがあるので注意が必要です。異なる価値観を尊重し、自分と相手の妥協点を探り、交渉や調整を慎重に進めるようにしましょう。
無理に同調しなくて良い
妥協点や折り合いがつけられず、あまりにも自分の価値観と異なる場合は、無理に同調する必要はありません。例えば、利益拡大のために不正を指示されたり、不当な差別を受けたりした場合には、退職を検討しても良いでしょう。
多様な価値観に触れることも重要
さまざまな価値観に触れる機会がなければ、自分の価値観こそがスタンダードであるという思い込みが強くなり、ほかの価値観は非標準的だととらえて排他的な思考になってしまいます。また、異なる価値観を知ることで、自分の価値観が否定されたと感じてしまう人も少なくありません。
違うものを受け入れるのは本来難しいことですが、まずは異なる価値観がたくさんあるということを知ることから始めましょう。そして、それをそのまま認めることが大切です。
監修:村井社会保険労務士事務所 代表 村井真子
社会保険労務士/キャリアコンサルタント/経営学修士(MBA)。総合士業事務所で経験を積み、愛知県豊橋市にて2014年に独立開業。LGBTQ+アライ。行政協力業務を経験し、あいち産業振興機構外部専門家を務めた。地方中小企業における企業理念を人事育成に落とし込んだ人事評価制度の構築・組織設計が強み。著作に『職場問題グレーゾーンのトリセツ』、監訳に『バウンダリーレス・キャリア上巻』『組織と従業員の間で変化する心理的契約』『経営心理学』など。
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