「とんでもないです」は正しい敬語表現なの?意味や言い換え表現を解説

「とんでもないです」は正しい敬語表現でしょうか?それともNG表現でしょうか?上司や取引先から褒められた時に正しく返答できるように、「とんでもないです」の意味や正しい敬語表現・言い換え表現を把握しておきましょう。

「とんでもないです」は、謙遜して相手からの褒め言葉を否定する場面や相手に謝られた場面、感謝された場面などに使われます。ただし、使う相手によって、「文法上誤用では?」と指摘される可能性がある点に注意が必要です。

本記事で、「とんでもないです」の正しい言い換え表現について解説します。

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「とんでもない」「とんでもないです」の意味

「とんでもない」は、「まったくそうではない」「滅相もない」「もってのほかである」「意外である」などの意味を持つ言葉です。そのうち「まったくそうではない」や「滅相もない」の意味は、主に相手の言葉を否定する場面で使用します。

なお、「とんでもない」は「とんでも」と「ない」に分けず、ひとつの言葉と考えることが一般的です。

「とんでもないです」の使い方

状況次第で、「とんでもないです」の使い方も変わります。ここから、3つのシーン別に「とんでもないです」の使い方を確認していきましょう。

謝られた時

相手に謝られた時に、「謝っていただく必要はありません」「気にしないでください」などの意味を込めて、「とんでもないです」を使うことがあります。

先輩社員:昨日13時に打ち合わせの約束をしていたのに、いきなりA社◯◯部長から面談アポ入ったので参加できずごめんね。
自分:とんでもないです。急に大変でしたね。

感謝された時・褒められた時

相手から感謝された時や、褒められた時にも、謙遜して「とんでもないです」を使うことがあります。

先輩社員:昨日はB社との商談をサポートしてくれてありがとう。〇〇さんのわかりやすい商品説明のおかげで、先方も興味を持ってくれたみたいだよ。
自分:とんでもないです。お役に立ててよかったです。こちらこそ、いつもご指導いただきありがとうございます。

なお、「とんでもないです」で謙遜するだけでなく、上記例文のようにこちらからも感謝の言葉を添えると、相手によりよい印象を与えられます。

相手を非難する時

相手の言動や態度を非難する時に、「もってのほか」の意味で「とんでもないです」を使うこともあります。

(後輩社員に対して)
取引先の社長に対して、さすがにあの態度はとんでもないよ。次から気をつけよう。

「とんでもございません」の意味・使い方

「とんでもございません」も、「とんでもないです」と同じような意味を持つ言葉です。相手に謝られた時に「謝っていただく必要はありません」「気にしないでください」の意味で使ったり、相手から褒められた際に謙遜の気持ちで「とんでもございません」を使ったりすることがあります。

なお、「とんでもありません」も「とんでもないです」や「とんでもございません」と同じように使う言葉です。

実は「とんでもないです」「とんでもございません」は間違い?

ここまで「とんでもないです」の使い方を紹介してきましたが、実は文法上間違いと指摘されることがあります。なぜなら、「とんでもない」をひとつの形容詞ととらえると、「とんでもないです」は文法上誤用とされる「形容詞+です」の表現になるからです。

同じく、本来一語の「とんでもない」を「とんでも」と「ない」に分解して丁寧に述べた「とんでもございません」や「とんでもありません」も、誤用と指摘されることがあります。

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文法上正しい表現は「とんでもないことです」

「とんでもないです」や「とんでもございません(ありません)」の代わりに使用できる正しい表現が、「とんでもないことです(とんでもないことでございます)」です。上司など目上の相手や取引先から褒められた時や、謝られた時に謙遜したい場合に、「とんでもないことです」を使用できます。

ただし、「とんでもない」には「もってのほか(けしからぬ)」という意味もあります。「とんでもないことです」を使うタイミングを間違えると、相手を非難しているように聞こえるため注意しましょう。

「とんでもないことです」の例文

「とんでもないことです」の例文を、上司に褒められた時と上司に謝られた時に分けて紹介します。

上司に褒められた時

上司:〇〇さんがいなければ、このプロジェクトは成功しなかったよ。
自分:とんでもないことです。皆さんに助けていただいたおかげです。

上司に謝られた時

上司:昨日は急遽A社との面談に同席できなくなり、申し訳なかったね。
自分:とんでもないことです。お気になさらないでください。

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ビジネスで「とんでもないです」と伝える言い換え表現

「とんでもないことです」以外にも、「とんでもないです」を伝えるための正しい言い換え表現がいくつか存在します。それぞれ確認していきましょう。

恐縮です

「恐縮」とは、「(目上の人の自分に対する厚意に対して)嬉しい・気恥ずかしい・申し訳ない」という意味です。上司や取引先など目上の人に対して自分をへりくだる際に「恐縮です」を使います。

「恐縮です」を使った例文

(上司に最近の営業成績を褒められて)そんなお褒めの言葉をいただき、大変恐縮です。

なお、「恐縮です」の意味や使い方については、以下の記事も参考にしてください。

<関連記事>「恐縮です」の意味を正しく理解している?使い方と例文を解説

滅相もないことです

「滅相もない」は、「とんでもない」「思いがけないことである」などの意味を持つ言葉です。主に相手の言葉を否定する際に使います。

「とんでもない」と同様に「滅相もない」で一語のため、「滅相もないです」や「滅相もございません」よりも「滅相もないことです」「滅相もないことでございます」と表現した方がよいでしょう。

「滅相もないことです」を使った例文

部長:〇〇さんが来たおかげで、うちの部署の成績が一気に伸びたよ。
自分:滅相もないことです。これからも一層業務に邁進して参ります。

光栄です

「光栄」とは「名誉に思うこと」という意味を持つ言葉です。自分の業績や行動を褒められた際や、重要な役目を任された際に「光栄です」と表現します。

なお、「とんでもないことです」や「滅相もないことです」と異なり、「光栄です」は相手の言葉を否定する言葉ではありません。

「光栄です」を使った例文

上司:〇〇さんは本当に仕事が早いね。おかげで、課の業務効率が上がっているよ。
自分:お褒めいただき、光栄です。今後もより一層頑張って参ります。

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ビジネスで「とんでもないです」に関する注意点

「とんでもないです」はさまざまな場面で使われる言葉ですが、ビジネスではいくつか注意しなければならないことがあります。ここから、各注意点を確認していきましょう。

上司や目上の相手には言い換え表現を使う方が無難

先ほど説明したように「とんでもないです」は誤用とされることがありますが、実は1952年4月14日に国語審議会において「形容詞+です」について今後認めていくという見解が出されているのです。また、文化庁の文化審議会が2007年に文部科学大臣に答申した「敬語の指針」でも、「とんでもございません(とんでもありません)」を容認することが示されています。

上記を踏まえると、「とんでもないです」や「とんでもございません」「とんでもありません」は必ずしもNG表現とは言い切れません。

しかし、本来誤用とされる表現であることから、相手の受け取り方次第でマナー違反になる可能性はあります。そのため、上司や目上の人に使用する際は、誤解を受けないように言い換え表現を使った方が無難でしょう。

相手の言葉の否定や謙遜しすぎに注意する

「とんでもない(こと)です」を使えば、相手の褒め言葉を否定して謙遜できます。しかし、せっかくの褒め言葉を否定したり、謙遜しすぎたりすると相手を不快にしかねません。

「ありがとうございます」や「光栄です」なども織り交ぜて、「とんでもない(こと)です」の乱用を防ぎましょう。

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「とんでもないです」の英語表現は?

海外の取引先や外国人の上司から褒められて「とんでもないです」を英語で伝えようとしても、基本的に日本語で「とんでもないです」にあたる謙遜表現はありません。そこで、”Thank you.”や”Thank you for praising me.”のように褒められたことに対してシンプルに感謝を述べる表現を使うとよいでしょう。

また、相手から感謝の言葉を伝えられた場合は、「どういたしまして」に近いニュアンスを持つ”Not at all.”や”It’s my pleasure.”を使えます。

「とんでもないです」の正しい敬語表現を意識しよう

「とんでもないです」は基本的に誤用

「とんでもないです」や「とんでもございません」は、元々誤用とされる表現です。近年OKとされるケースも増えていますが、マナー違反ととらえられないように上司や取引先への使用は極力控えた方がよいでしょう。

正しい表現は「とんでもないことです」「とんでもないことでございます」です。目上の相手から褒められた際は、相手に失礼な印象を与えないように配慮しましょう。

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