「時間がない」「お金がない」「言葉の壁が不安」…そんな理由で海外旅行をあきらめている20代の方も少なくないかもしれません。
都内の広告代理店で働くサラリーマンの東松寛文さんも、かつては忙しさのあまりに海外旅行から遠ざかっていた一人でした。ですが、社会人3年目のときに仕事の合間を縫って訪れたアメリカ旅行を機に海外に魅了されます。
そして「サラリーマンしながら世界一周」というとてつもない目標を、なんと3カ月かけて本当に成し遂げたのです。平日は日本でサラリーマンをしながら、毎週末海外旅行へ行くスタイルで、日本にいる間を「トランジット」と捉えていたという東松さん。
まさに弾丸旅行のプロといえる東松さんに、ビジネスパーソンへ向けて弾丸旅行のおすすめスポットや旅行の満足度を上げるコツ、魅了的な旅のエピソードを伺いました。これまで海外旅行に憧れるだけだった人も、これを読めばきっと旅に出ようと思うはず!
海外旅行は日本では出会えない「気づき」を与えてくれる
大学卒業後、都内の広告代理店に就職した東松さん。忙しさに追われる日々のなかで、自然と海外旅行から足が遠のいていました。ですが、社会人3年目のときに、海外旅行の価値観が大きく変わる出来事に遭遇します。
「僕は高校時代にバスケットボールに明け暮れていて、いつか本場の試合を見たいと思っていました。社会人3年目のGWにアメリカで開催されるNBAのチケットが取れて、どうしても試合が見たかったので一人でアメリカに行ったんです。急きょ試合があることが決まったので宿も取らず、しかも旅のバイブル『地球の歩き方』も家に置いてきてしまって、丸裸状態(笑)。
片言の英語で必死に現地の人とコミュニケーションをとって、人に聞きながらでしたが、なんとか宿も取れて試合を見ることもできました。さらには大学でアメフトの練習を見せてもらったり、日本とはまったく異なる光景に出会ったり、想像以上の収穫があったんです」(東松寛文さん:以下同じ)
このアメリカ旅行で、「3つの大事なことに気づいた」と東松さんは言います。
「1つは、『生き方って無限にあるんだ』ということ。日本にいるときはサラリーマンという生き方しか知らなかったのですが、アメリカでは平日なのに大人が海でサーフィンをしたり、子どもと食事をしたり、自由に人生を楽しんでいました。
2つ目は、『自分は何者でもない』ということ。普段から、会社の看板のおかげで自分の能力以上の人に出会えていたからこそ『自分って何者なんだろう』という違和感があったのですが、海外に出たらそれが顕在化したというか。アメリカでは名刺も無意味だし、英語も話せないし、今の僕にあるのは筋肉だけだなって(笑)そんな危機感を感じました。
そして3つ目は、『海外って案外簡単に行けるんだ』ということです。長期滞在しないと楽しめない、英語が話せないとどこにも行けないと思い込んでいたけど、5日でも十分満喫できたし、言葉が通じなくてもどうにかなった。海外旅行のハードルが一気に下がって、これまで海外を避けていたのがもったいなかったと思いました」
一度の海外旅行で価値観がガラッと変わった東松さんは、その後、サラリーマンをしながら世界一周することを決意。「一番自分らしいスタイルで、たくさんの人に旅の価値を広めたい」そんな思いが東松さんを動かしました。
そして、2016年10月7日~2017年1月3日の間、毎週末海外旅行へ行き、見事、世界一周を達成。ロシア、スペイン、イスラエル、エチオピア、中国、ブラジルなど18カ国を回りました。使用した有休は、たったの8日だったというから驚きですよね!
リーマントラベラーおすすめの「弾丸旅行スポット」ベスト5
世界一周を達成したあともリーマントラベラーとして、週末旅行を続けている東松さん。これまでに旅した数十カ国から、2泊3日の弾丸でも十分楽しめるビジネスパーソンにおすすめのスポットをランキング形式でご紹介します。
<5位> オーストラリア
「南半球にあるオーストラリアは日本と季節が真逆なので、たとえば日本が冬の時期に行けば、真夏のビーチで遊べて最高ですよ! さらにタスマニア島では運が良ければオーロラが見られることも。シドニーなら金曜の深夜に出発して土曜の朝に到着、丸々2日遊んで月曜の朝5時に東京に着くというプランがおすすめですね」
<4位> ボラカイ島
「リゾートが好きな人には、フィリピンの首都マニラとセブ島の間にある小さな島『ボラカイ島』がおすすめです。ボラカイ島は、マニラやセブ島から飛行機とフェリーを乗り継いで訪れる必要があり、マイナーなので海外へ行ったのに日本人がたくさんいた…なんてことになりにくいんです。3kmにわたって続くホワイトビーチが有名で、ビーチ沿いにレストラン、ホテル、ショッピングセンターなどがそろっているので、すごく便利ですよ」
<3位> サムイ島
「こちらもマイナーなリゾート地のサムイ島。タイの首都バンコクから飛行機に乗る必要がありますが、田舎っぽい懐かしい風景が魅力です。ココナッツアイランドと呼ばれていて、ココナッツの木より高い建物を建ててはいけないというユニークな決まりがあるんです。また、サムイ島からフェリーで行けるパンガン島という島では、満月の夜にだけ開催されるフルムーンパーティーがあって、こちらも最高に楽しいですよ。欧米人が数万人と押し寄せ、ビーチがクラブのように変わります」
<2位> 香港
「海外旅行の初心者や女子旅におすすめなのが、香港です。街がコンパクトで観光しやすいし、欧米人が多いので英語が比較的通じます。日本で言うSuicaのようなパスを購入すれば、地下鉄やバスだけじゃなくコンビニでも使用できるし、治安がいいので場所によっては女性一人で夜に出歩くこともできたりしますよ。中環(セントラル)地域は、古い街並みにアーティスティックなウォールペイントがされていたりして、フォトジェニック! 街歩きにピッタリです」
<1位> イラン
「意外なセレクトかもしれませんが、イランは視野を広げるために心底おすすめしたい国です。報道でのせいか、危険な国という印象があるかもしれませんが、行ってみるとみんなすごく優しくてオシャレで、報道から受けているイメージとのギャップがすごい。イスラム教シーア派国家のイランでは宗教警察が風紀など取り締まっているのですが、みんな警察の目を逃れてオシャレを楽しんでいるんです。警察の位置情報が分かるアプリまであったり(笑)。『イランの真珠』とも称されるイスファハンという街は、タイル細工が美しいモスクなど、見どころ満載です」
<番外編> キューバ
「もし5日間の休みが取れるなら、断然キューバがおすすめです! 社会主義国のキューバは平均年収が約24,000円で、いまだに配給制度があるような国なんですが、そんな経済状況にもかかわらず、おもてなしの精神がすごい。ローカルな道を歩いていたら、おばちゃんに呼ばれてご飯をごちそうになったり、その場で開催されていたダンスパーティーに誘われて飛び入り参加したり。
さらには、水たまりで汚れた僕の靴を知らないおばちゃんが洗ってくれたことも。で、おばちゃんが靴を乾かしてくれている間に、僕はお茶をいただくみたいな(笑)。衝撃的な出会いの連続で、必ずまた訪れたい国です」
旅のプロが明かす! 満足度の高い旅にするための5つのコツ
続いて、旅の満足度を高めるコツを5つ教えていただきました。このコツを意識すれば弾丸でも異国の文化を十分に体感でき、疲れも最低限に抑えられるそう!
1、期間限定のイベントを探す
「いつでも行ける場所よりも、その時期ならではのイベントなどに参加することで特別感が生まれ、非常に満足度を高めることができます。お祭りやスポーツ観戦、ミュージカル鑑賞などもいいですね。先ほどのランキングでご紹介したパンガン島のフルムーンパーティーも、まさにそうです」
2、スケジュールには余白をつくる
「旅の計画をきっちり立てたいという人もいると思いますが、ドイツのとある学者さんいわく、旅の計画ってプランニングが終わったときが興奮の絶頂らしいです。予定をこなしていくのは確認作業なので、興奮度は下がってしまうそう。僕の場合は一度の旅行につき行きたい場所を1、2カ所だけ決めて、あとは何も決めずに道中で面白そうな場所を探します。ガイドブックに載っていないすてきな場所を見つけたときの興奮は、病みつきになりますよ! ちなみに現地では、オフラインでも使える地図アプリ『MAPS.ME』がおすすめです」
3、オープンマインドで現地の人と接する
「僕は英語も他の言語も苦手ですが、常にオープンマインドで接することで、現地の人とも簡単に仲良くなれます。たとえば現地の人に食事を勧められたら、迷わずにいただく。食べておいしくなかったら無理はやめようぐらいの気持ちでいます。一番簡単なのは写真撮影をお願いして、そこから会話して仲良くなる方法。僕はなんとなく友達になれそうな現地の人を探して声をかけます」
4、個室部屋で十分な睡眠を確保する
「時間があるときはゲストハウスに泊まって交流を図るのもいいと思いますが、弾丸の場合は睡眠が命。しっかり睡眠を確保するために、ホテルは個室を取りましょう。僕の場合は、毎回5千円~1万円のビジネスホテルに宿泊しています」
5、最終日は飛行機に乗る前に日本時間を意識する
「僕は最終日に現地の空港に到着したところで、時計を日本時間に戻して、その時間に合わせて過ごします。そうすることで帰国後の時差ボケがかなり緩和されますよ。ただ、旅行で時差の少ない国への弾丸旅行であれば、最初から時差を無視して過ごすのもおすすめです。睡眠時間は日本時間に合わせて取るなど、体内時計はズラさないままにしておけば帰国後の仕事にも影響が出ませんよ」
会社へのフォローも抜かりなく! リーマントラベラー的心得とは?
海外旅行に魅了されてから、毎月のように海外を旅しているという東松さんは、平日は忙しく働くサラリーマン。有給休暇をしっかり確保しながら、仕事でも成果を出すには、どんな工夫をしているのでしょうか?
2週間前から「休暇」を告知
「僕は有休を取得する2週間ほど前から、メールの署名で休暇を告知しておきます。ちょっと小さめの字で『大変せんえつですが、○月○日~○月○日まで休暇をいただきます』と署名欄に記載しておくんです。これは社内宛のメールにのみ取り入れており、取引先の方には事前に直接お会いして休暇を取る旨を伝えています。こうやって告知しておけば大きなトラブルを防ぐことができます」
休暇中は社内からのメールを自動応答にする
「休暇中は極力仕事のメールを気にせず旅を楽しみたいので、社内の人から送られるメールに対して自動応答にしておきます。『現在、休暇をいただいており、○月○日には戻ります。何かありましたら〇〇までご連絡ください』と、引き継ぎ先もしっかり添えておくと、社内に迷惑がかかりません。社外からのメールを自動応答にするのは失礼にあたると思い、使っていません」
日頃から自分で締切りを決めて、仕事をする
「リーマントラベラーになる前は、会社に決められた締切りで仕事していました。ですが海外旅行を始めてからというもの、自分で締切りを決めて、スケジュールに余裕を持って仕事をするようになりました。そうじゃないと、何かトラブルがあったときに休みが確保できなくなってしまうんです。このスタイルに変えてから『やらされている』という感覚が消え、仕事の充実感も増しました」
夢を応援してもらうことで、自分にプレッシャーを与える
「海外旅行を始めてから、社内のメンバーに頼ることも増えたし、会話も増えました。夢をみんなでシェアしている感じですね。これだけ応援してもらっているんだから、迷惑をかけないようにしようと自分にプレッシャーを与えることで、がんばれています。仕事にかける時間は短くなりましたが、その分、密度が上がったと実感しています」
やりたいことが見つかったら、サラリーマンは最強!
「海外に飛び出すようになって人生が一変した」と東松さんは言います。異国で出会った、自分らしく自由に生きているたくさんの人たち。彼らとの出会いを経て、東松さんは自分のやりたいことを自由にやることに抵抗がなくなったのだそう。最後にキャリアコンパスの読者に向けて、こんなアドバイスをおくってくれました。
「会社のなかで夢を見つけられたら、それは最高なこと。きっと、時間を忘れて仕事に熱中できるでしょう。でも必ずしも会社のなかで夢が見つかるとは限らない。もし、会社の外で夢が見つかったとしてもそれを悲観することはないと思うんです。その夢を追いかけることがきっと仕事にもいい影響を与えます。夢を実現するための時間を捻出するために効率的に働くようになりますし、会社の外でたくさんのインプットを得るため新しいアイデアだって生まれます。
また、やりたいことが外で見つかったとき、僕は『サラリーマンは最強』だと思っています。確実にベースの収入があるので、時間さえ作ることができればやりたいことに投資できるし、やりたいことで稼がなくてもいい。げんに僕のブログは広告収入を得る必要がないので、広告はすべて消しています。だからこそ自分のやりたいことを思いっきりやることができる。それって圧倒的に強みだと思うんです。
やりたいことをやりだしたら、サラリーマンは無敵です! オンとオフの概念が消え、ビジョンにつながることにしっかりと時間をかけられるようになります。会社員の皆さんも、やりたいことを見つけたらどんどんチャレンジしてみてくださいね!」
サラリーマンは最強。実際にサラリーマンをしながら「世界一周」という前人未到の夢をかなえた東松さんの言葉には、説得力がありますよね。やりたいことがあるならばまずは時間を作り出して、なにか一つでもかなえてみませんか? これまでの価値観を丸ごと変えるような、新しい景色が見えてくるかもしれません。
(取材・文:小林香織)
識者プロフィール
東松寛文(とうまつ・ひろふみ)/リーマントラベラー
1987年、岐阜県生まれ。平日は広告代理店に勤務しながらも、週末に世界中を旅しているサラリーマン。TOEICは575点につき、海外での会話は専らボディランゲージ。2016年10月~12月の3カ月間は、平日は東京でサラリーマンをする傍ら毎週末海外旅行に行き、3カ月12回の海外旅行で5大陸18カ国を制覇し、「働きながら世界一周」を達成。
公式ブログ:http://www.ryman-traveler.com/
※この記事は2017/10/12にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。
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