注目書店の店長が厳選! 仕事に悩んで眠れない夜に読みたい本5冊

谷の外れにある「SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS」(以下、SPBS)という本屋さんをご存知でしょうか?

注目書店の店長が厳選! 仕事に悩んで眠れない夜に読みたい本5冊

谷の外れにある「SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS」(以下、SPBS)という本屋さんをご存知でしょうか?

2008年にオープンしたこの書店は、目利きとなるスタッフがセレクトした本を販売する一方で、本の出版事業も行っています。最近では「R-STORE」が運営する池袋の「BOOK AND BED TOKYO」という「泊まれる本屋」の選書もしていることでも注目を集めました。

そんなSPBSの店長である鈴木美波さんに、「仕事に悩んで眠れない夜にオススメの本」というテーマで、本をセレクトしてもらいました。マンガ、絵本、エッセイなど「あまり小難しくなくて、気分が軽くなる本」という視点で選んだという鈴木さんオススメの5冊は、いったいどんな本なのでしょうか?

明日も頑張ろうという気持ちにさせてくれる


『ちいさこべえ』望月ミネタロウ著 山本周五郎原作 小学館


「私が望月ミネタロウさんのマンガの愛読者のため、手に取った一冊です。実家を焼失し、両親を失った若棟梁・茂次が、人情と意地で実家の工務店の再建を誓い、奮起するという物語です。

大工さんのお話ですが、『仕事は自分一人だけでするものでもないし、やりたいことだけができるわけではないなかで、どのように仲間を巻き込んで、パフォーマンスをあげていくか』という、誰もが共感できる仕事哲学が詰まっており、『どんなに時代が変わっても、人に大切なものは意地だぜ』というメッセージには胸を打たれました。また、物語は真剣ですが絵はユーモラスなので、肩肘張らずに楽しめます」(鈴木さん:以下同じ)

不満をユーモラスな悪口で代弁してくれる


『悪口の技術』ビートたけし著 新潮文庫


「会社、家庭、外交など、私たちの身の回りの物事について、お笑い芸人・ビートたけしさんの視点で『悪口』を言っていくという本です。平易な言葉で書かれているため、サラッと読めてしまいますが、書かれていることは真理を突いています。

単に『悪口』といっても、たけしさん特有のものの見方には知性がありますし、毒気のなかにもどこか愛が含まれているぶん、痛快な気持ちにさせてくれます。社会に対するモヤモヤを解消させてくれる一冊になると思いますし、上司や会社との向き合い方を考える上でヒントを与えてくれます。実はSPBSの開店以来のベストセラーでもあります」

ラジオを聴くような気分で楽しめる


『コテージのビッグ・ウェンズデー』堀部篤史・ミズモトアキラ著 誠光社


「京都にある書店『恵文社一乗寺店』が運営するフリースペース『コテージ』などで、当時店長だった堀部篤史氏がホストを務める形で、通算20回にわたり開催された体験型トークイベント『コテージのビッグ・ウェンズデー』の書き起こし本です。

タモリ・伊丹十三・村上春樹という誰もが知る文化人について、さまざまな角度からひたすら掘り下げられています。ラジオの小話を聞いているような気分にさせてくれる文章で、ふっと心が軽くなります。インディペンデントで少数発行ですが、ぜひ手に入れることをおすすめします」

自分自身の悩みがちっぽけに感じられる


『世界のはじまり』バッジュ・シャーム作/絵 ギーター・ヴォルフ文 青木恵都訳 タムラ堂


「インドのターラー・ブックスで出版された『Creation』(2014)の日本語版の絵本。南インドの小さな工房で古布を材料として作られた手すきの紙に、シルクスクリーン印刷で刷られています。

紙から独特の匂いもしますし、イラストのインパクトも圧倒的です。文章もインド先住民族の死生観や現実認識を下敷きにして世界の起源を描いた神話なので、五感が刺激され、ちっぽけな悩みが吹き飛んでしまうほど壮大な物語です。手触りも含め、本にしかできない表現が詰まった一冊だと思います」

淡々と目の前の課題に向き合う凄みに触れる


『ジブリの哲学―変わるものと変わらないもの―』鈴木敏夫著 岩波書店


「誰もが知る名監督・宮崎駿さん率いるスタジオジブリの名プロデューサー、鈴木敏夫さんの仕事哲学をまとめたものです。鈴木氏はいくつかジブリの仕事に関する本を出していますが、この本が個人的ベストです。

この本を読むと鈴木敏夫さんのようなベテランでも、スタジオジブリの作品をいかに多くの方に届けるかを常に試行錯誤していることが分かります。鈴木さんはどこまでも仕事に真面目で実直です。

『届けたい』という気持ちの強さが、目の前にあるやるべきことに丁寧に向き合うという姿勢につながるんだと知り、大きな影響を受けました。私も『本屋の店長として、できることはとことんやろう』と、この本を通して思えるようになりました」

まとめ


いかがでしたでしょうか? 仕事で悩んで眠れないときには、本を開いてみれば、ふと目の前の課題がクリアになったり、心が落ち着いたり、客観的に物事を見つめるきっかけになることもあります。眠れない夜がある方は、ぜひ今回鈴木さんのセレクトした本を枕元に置いてみてはいかがでしょうか。


識者プロフィール


鈴木美波(すずき・みなみ)
1987年埼玉県生まれ。合同会社SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERSの店舗事業マネージャー。学生時代から書店「SPBS」で編集やワークショップ運営を手伝い、2010年に入社。現在は同店店長を務めながら、渋谷ヒカリエ、梅田ルクア イーレ内の女性向け雑貨店「CHOUCHOU」の店舗運営、企画立案も手がけている。

(店舗情報)
SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS
150-0047 東京都渋谷区神山町17-3 テラス神山1F
Tel: 03-5465-0588
12:00-24:00(月~土)、12:00-22:00(日)、不定休
http://www.shibuyabooks.co.jp

※この記事は2016/01/12にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。

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