立ちはだかる壁は知力と体力で突破する! ビジネスに活きるボルダリングの習慣

2020年に開催される東京五輪から、新競技として採用されたスポーツクライミング。ビジネスパーソンをはじめ、年齢や性別を問わず幅広い層から、いま多くの注目と人気を集めています。

立ちはだかる壁は知力と体力で突破する! ビジネスに活きるボルダリングの習慣

2020年に開催される東京五輪から、新競技として採用されたスポーツクライミング。ビジネスパーソンをはじめ、年齢や性別を問わず幅広い層から、いま多くの注目と人気を集めています。

一見、体力勝負で難しそうなスポーツに見えますが、このスポーツには筋力と同じぐらい考える力が求められるのだとか。

そこで今回は、元ボルダリング日本代表で現在はフリーランスのインストラクターとして活躍する細野かおりさんに、ボルダリングの魅力や仕事に活きるボルダリングのスキルについて伺いました。

そもそもボルダリングって?


スポーツクライミングは3つの種目(リード・ボルダリング・スピード)の複合種目として実施されます。今回ご紹介するボルダリングは、複数のコースを制限時間内にどれだけクリアできたかを競う種目です。

この場合、ホールドの近くに赤い目印があることが分かりますよね。この赤い印のホールドのみを利用して登っていきます。



ボルダリングにはさまざまな難易度の課題(コース)が設定されており、まずは「スタート(S)」と記されたホールドを両手でつかんでスタート。ホールドとは手がかりや足がかりとなる突起物のこと。利用できるホールドはコースによって決まっており、ホールドの近くには同じ色や数字での目印が振られています。

それぞれのコースごとに決められた順番でホールドを上手につかみながら登っていき、上にある「ゴール(G)」のホールドを両手でつかむとクリアです。

「ボルダリングの語源はボルダー(巨石)から来ており、落ちても平気な高さの岩(壁)を登りきることが由来になっています。ボルダリングはクライミングの入り口としても挑戦しやすいといわれており、決められたホールドのみを使って、難しい課題を登りきることで達成感を味わうスポーツなんです。

ボルダリングジムは大抵、壁の高さが3~5メートル程度。落ちても大丈夫なようにマットが敷いてあり、自分の体力や挑戦するレベルに合わせて手と足をかけながら登ります。基本的には自分と壁の1対1。他人を気にすることなく、目標を決めたらマイペースに登ることができるんです。

ロープをバディ(パートナー)に預けて安全を確保しながら高い所まで登るリードクライミングと違い、低い壁で一人からでも手軽に始められることや、オリンピック競技になったことで日本全国にボルダリングジムの施設が増えたことも、人気が拡大した理由かもしれませんね」(細野かおりさん、以下同)

ほぼ手ぶらで行けてしまうので、仕事帰りにも気分転換でサクッと登るビジネスパーソンが多いようです。

ボルダリングの魅力は手軽な「達成感」

 


初心者からすると、ボルダリングは体力や手足の筋力が必要な、ハードで難しいスポーツというイメージですが…。

「確かに、初めは難しいかもしれませんね。でも、難しいからこそハマりますよ(笑)。

初心者の方は簡単なコースから始められますし、実際は足で登って手は体を支える程度。そのため、女性や握力に自信がない人でも挑戦できて、ゴールにもたどりつくことができます。ボルダリングで一番大事なのはバランス力なんです。

初めはできなくても、諦めずに難しい課題に挑戦して少しでも前に進むことができると、うれしさが倍になってこみあげますよ。また、初対面で名前も知らない人と応援し合うなど、ジム内の仲間が一体になってコミュニケーションできるのも、ボルダリングの魅力ですね」

ボルダリング人気はビジネスパーソンの中でも広がりを見せています。その理由を細野さんは「手軽に達成感が味わえるから」だと話してくれました。

「簡単な課題はクリアできたとしても、難しい課題をなかなか越えられずに失敗を繰り返すこともあります。

繰り返した失敗の数や努力を積み重ねた時間、仲間の声援の分だけ、クリアした時の達成感が病みつきになるし、行き詰まった時は気分転換に違う課題に挑戦することもできる。

なので、ハマる人はすごい勢いでハマるんです。これは仕事と似ている部分があるからかもしれませんね。

ボルダリング上達のコツは、失敗しても諦めずに続けること。できない原因を考えて挑戦して、失敗したらまた考えて…その繰り返し。体を自分の意思で柔軟に動かし、頭で考えた登り方をしっかり表現していくのもポイントです。

私もボルダリングを通して、普段から無駄に力を使ってないか、どうしたら上手に動きがこなせるか、考える癖がつくようになりました。体の疲労具合にも気づくようになってくるので、けがもせずに続けられると思いますよ」

仕事の中でも、どこかで壁にぶつかることがあるはず。その場合も「なぜ」「どうすれば」と頭を使って分析し、適切な回答を求めていく。そこで諦めずに進めていけばきっとゴールが見えてきます。

その点においては、ボルダリングの壁を登ることと重なるところがあるかもしれませんね。

 

ボルダリングスキルが仕事に活きる3つのメリット


さらに、細野さんからビジネスパーソンがボルダリングを通して得られる3つのメリットについて聞いてみました。

(1) 先見性が身につく


「達成すべき課題を登るために『オブザベーション』(下見)という“先を見る力”がつきます。

課題を達成するには、登る前にコースをよく見てどう登るのかを頭でシミュレーションしながら計画を立てます。そして登る時は無駄な体力を使わないようにしなくてはなりません。

たとえ間違えてしまっても、『この場合はこう対処しよう』と臨機応変に対応できるような考え方も身につきますよ」

(2) 忍耐力と発想力がつく


「何度も失敗を繰り返しながら成長していく経験を通じて、自然と忍耐力がついてきます。また、切り替えを早くして方向転換を行い、『次からはこうしよう!』という打開策を生む発想力も同時に身につきます。このように、メンタル面でも前向きな思考力が得られるようになるのです」

(3) デスクワークの肩こり・腰痛の解消に


「腕や背中を曲げたり伸ばしたりしてホールドをつかむのがボルダリング。全身を柔軟に使うので、血行が良くなり、運動不足も解消します。高い場所のホールドをつかむために腕を大きく上げて肩や背中の筋肉を伸ばすので、普段デスクに座りっぱなしで肩こり・腰痛に悩んでいる方にはいいかもしれませんね」

他のスポーツにはない魅力にとりつかれた


細野さんは現在、フリーのインストラクターとしてクライミングに関わるさまざまな仕事をしています。他のスポーツにはない、ボルダリングの魅力とは?

「小学生のころから体を動かすことが大好きで、サッカーやバスケットボール、陸上やカヌーなど、スポーツばかりをして育ちました。動物看護師として勤めていたころ、たまたま友人からボルダリングジムへ遊びに誘われたことがこのスポーツとの出会いだったんです。

ボルダリングは一人で好きなタイミングでできるのが良いところ。自分を追い込むのも自分次第ですし、仲間とも切磋琢磨しながら練習することもできるので自然と上達していくことができる。

競い合いながらも、お互いを応援し、登りきった時の達成感を共有できる喜びがとにかく新鮮。今までに経験してきた他のスポーツとの違った楽しさに、私は一気にのめり込んでいきました」

自分と、みんなと。達成感を成長力に変えるのがボルダリング


一人で課題に向き合いながらも、周りには応援してくれる仲間がいる心地よさ。明確な目標設定をして、失敗しても途中で諦めることなく、頭と体を使って地道にゴールへ向かおうとする姿勢。職場を離れ、趣味を通じてネットワークは広がり、さらに体を動かすことでストレス発散の効果も望める、それがボルダリングの真の魅力なのかもしれません。

これらの体験は普段の生活にも仕事にも、きっと良い影響を与えてくれるはず。ポジティブ効果がいっぱいのボルダリングは、ビジネススキルをさらにアップさせたい20代のビジネスパーソンにぴったりなのではないでしょうか。


(取材・文:ケンジパーマ)

識者プロフィール

 


細野かおり(ほその・かおり)
1987年生まれ。栃木県宇都宮出身。2014年、2015年ボルダリング日本代表。
元動物看護師。クライミングジム・オズ店長を経て2015年よりフリーランスのインストラクターに。全国どこでも依頼があればクライミングに関わる仕事はなんでもこなす。
2017年現在は群馬県に移り住み、群馬県強化選手として国民体育大会に出場している。
細野かおりさんHP:http://kaorin.rocks

※この記事は2017/09/19にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。

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