注意すべき4つのポイント
社会保険労務士の勝山竜矢さん
注意すべきこと①:会社の就業規則
まず注意すべきことは、正社員として働く先の就業規則の確認です。労働条件がまとめられた就業規則に、副業は禁止と書かれている企業もあります。
「以前まで、多くの企業が副業を禁止していましたが、ここ最近は許可制・届出制としているところもあります。とはいえ、まだまだ副業を禁止している企業もあるんです。そのことは就業規則に書かれていますので、禁止されていないかどうかを確認しましょう。禁止されているにもかかわらず会社に黙って副業した方は、懲戒処分を受けることもあるので注意してください」(勝山竜矢さん。以下、勝山さん)
注意すべきこと②:労働時間
パートやアルバイト、正社員といった雇用されている労働者には、労働基準法で労働時間(1日8時間、1週間40時間)の上限規制がされています。
「正社員として1日8時間・週40時間働いている人が、副業としてアルバイトをした場合、雇用する側は労働時間の規定上限をオーバーしていることとなります。その際、使用者(雇用主)は時間外労働を強いたこととなるので、1時間あたりの賃金の25%増の『時間外手当(残業手当)』を支給しなければなりません。労働者は自分の労働時間をきちんと把握して使用者(雇用主)へ申告しておきましょう」(勝山さん)
なお「時間外手当」は正社員として雇用されている勤務先が払うのか、アルバイトとして雇用されている勤務先が払うのかといった法整備は今まさに検討されてはいるものの、中々進んでおらず、グレーゾーンな部分があるので、留意してください。
注意すべきこと③:確定申告
副業で得た収入は納税をしなければいけません。
「正社員として働いていると、会社が税金を納めてくれるので、副業で得た収入について納税することを忘れがちです。毎年、2月中旬から3月中旬(2020年は4月16日まで延長)の期間、確定申告をしなければなりませんので、注意しておきましょう。確定申告のやり方は国税庁のサイトなどに書かれていますのでそれらを参照してください」(勝山さん)
注意すべきこと④:本業に支障をきたさない
フルタイムで働く正社員にとって、優先すべきはフルタイムで働く先の業務です。
「副業のし過ぎで健康を害する方がいますが、労働契約においては、労働者は自分の能力を最大限発揮し職務に専念する義務(職務専念義務)があります。副業をこなすために徹夜をした結果、正社員として働いている先の業務を疎かにすれば、それは労働契約違反。懲戒処分を受ける場合もありますので、注意してくださいね」(勝山さん)
副業のメリット・デメリット
副業はビジネスパーソンにどんなメリットをもたらすのでしょうか?
「メリットは、やはりいろんな経験を得られることですね。経験を積むことでフルタイム先の業務にもよい影響を与えられますし、これは企業にとっても嬉しいポイント。経験を得られることのメリットは、計り知れません。さらに、労働者にとっては収入が増えます。またショートタイムで働いてほしい企業にとっては、雇った労働者が複数から収入を得ることで生活が安定するため、事業主としても安定した雇用に期待が得られます」(勝山さん)
一方、デメリットも。
「労働者にとってのデメリットは、先述したように健康を害する可能性があることです。企業にとってのデメリットは、企業にとっての秘密情報が洩れる可能性があること。また副業が好調になってしまった結果、社員が辞めてしまうこともあるので、それも企業にとっては痛手ですね」(勝山さん)
フルタイムで働く勤務先の業務を優先しよう
副業で得られるメリットは多々ありますが、労働時間や納税など注意すべきことはたくさんあります。また、働く上で優先すべきは、正社員として働く企業の業務です。そこをちゃんとこなせると認識してから、副業を開始することをオススメします。その上で、副業で得られるメリットを大いに活用してくださいね。
記事監修=勝山竜矢(社会保険労務士)
文=野田綾子
編集=TAPE
監修者プロフィール
社会保険労務士(社労士)┃勝山竜矢
株式会社リーガルネットワークス代表取締役。1976年東京都生まれ。2005年に開業。独立する1年前よりソニーグループの勤怠管理サービスの開発、拡販などに参画。これまで1,000社以上の勤怠管理について、システム導入および相談を担当してきている。
http://www.kintaikanrikenkyujo.jp/
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