取引先からのハラスメント、暴言などのパワハラやしつこく食事に誘うなどのセクハラが
はたらく場で起こる“ハラスメント”には、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、ジェンダーハラスメントなど、さまざまなものがあります。これらのハラスメントは、自分が所属する社内だけで起こるものではありません。行為の意図に関わらず、取引先との間にハラスメントが発生することも、当然あり得ます。
取引先との間に生じるパワハラの事例としては、取引先の従業員にスケジュール変更や値引き交渉など明らかに無理な要求を強要する、暴言や暴力を振るう、私的な用事に付き合わせるなどがあります。
また、取引先との間に生じるセクハラの事例には、私的な食事にしつこく誘われる、性的な関係を迫られる、酒席で体に触られるという行為のほか、「食事に付き合ってくれなければ(性行為に応じてくれなければ)取引をやめる」と言われることなどがあります。
取引先との間に生じるこういったハラスメントは、する立場にもされる立場にもなりうるもの。自社のメンバーがハラスメントをしていないか、されていないか、共に注意する必要があります。
取引先から明らかにハラスメントと思われる要望を受けた場合、それに従う必要はありません。上司に報告・相談し、会社として取引先に申し入れを行う等の対応をしてもらいましょう。
接待の場で女性社員を隣に座らせるように要求するのはNG! 接待する側にも注意が必要
業務の一環として取引先を招待して酒席での接待をする際も、ハラスメントが起こらないように注意する必要があります。まず接待する側としては、自社の女性従業員に主賓男性の隣に座るよう促したり、お酌をするように強要したりしてはなりません。このこと自体がセクハラになります。また、自社の従業員が取引先からハラスメントの被害に遭わないよう、注意を払う必要もあります。お酌を強要されたり体を触られたり、一気飲みを強要されたりしないように配慮しましょう。
接待される側としては、相手側の従業員は要求を断りにくいことを理解しなければなりません。異性の従業員を隣に座らせるように要求したり、体を触ったり、性的な冗談を言ったりするのはセクハラです。また、一気飲みを強要したり、裸踊り等の余興を強要したりしてはなりません。そのような余興が以前から行われていたことがあったとしても、誰かを不快にさせる可能性がある慣例を続けるべきなのか、見直す必要があるでしょう。
取引先とのハラスメントが発生したら、どのような対応をとるべきか?
もし、取引先からハラスメントを受けるようなことがあれば、すぐに上司に相談し、会社として対応してもらいましょう。部下から取引先からハラスメントを受けたという報告があった場合は、すぐに適切な対応をとる必要があります。部下から具体的なハラスメントの内容を聞き、一時的に担当を外す、必要な休養をとらせるなど、被害者救済のための措置をとりましょう。そのうえで、会社として正式に、取引先に対してハラスメントの訴えがあったことを伝え、調査のうえ事案に応じて、適切な対応をとるよう申し入れる必要があります。
また、取引先から、自社の社員がハラスメント加害者になっているという報告があった場合は、取引先の調査に必要な協力を行いましょう。自社の従業員がハラスメントを行わないようその業務を注視して、担当者を変更するなどの対応が必要です。またそれと並行して、従業員全体にも研修を行うなど、ハラスメントに対する理解を深めさせ、ハラスメントを行わないよう徹底させることが必要です。
取引先との関係においては、発注する側、受注する側という背景をもとに上下関係ができてしまうことが、ままあります。しかし、取引先は協力して業務を進める対等な仕事のパートナーであると認識し、お互いを尊重する必要があります。取引先とも適切なコミュニケーションを図り、より良い環境を築いていきましょう。
【監修】
山田・尾﨑法律事務所 脇まゆこ●1975(昭和50)年生まれ。第二東京弁護士会所属。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。2006年、弁護士登録。山田・尾﨑法律事務所勤務。2012年~2016年、東京家庭裁判所 家事調停官。企業法務や労働事件、一般民事事件、離婚、相続などの家事事件、犯罪被害者支援、破産事件などを中心に弁護士活動を展開している。
文=松村 知恵美
編集=五十嵐 大+TAPE
【関連記事】
オンライン環境で起こり得るパワハラ・セクハラとは リモートワーク中も要注意!
異性間だけでなく同性間も要注意! セクハラについて注意しておきたい4つのこと
増加している男性へのセクハラ。多様性に伴う、LGBTへの配慮も必要不可欠
部下から上司へのパワハラも!? 立場の差を利用したハラスメントに要注意
あなたの本当の年収がわかる!?
わずか3分であなたの適正年収を診断します