自意識過剰を改善する方法は? そもそもの原因や接し方のコツも解説

自分のことを必要以上に考えてしまう「自意識過剰」はビジネスにおいてさまざまな影響をもたらすケースがあります。その原因や改善方法について解説します。

自意識過剰を改善する方法は? そもそもの原因や接し方のコツも解説

他人からどう見られているかなど、自分について必要以上に考えすぎる「自意識過剰」になっていませんか?自意識過剰は、ビジネスにおいて本人だけでなく組織にも悪影響を与える場合もあるのです。今回は、そんな自意識過剰の原因や改善法について、公認心理師の川島達史さんにお話を伺い、解説していきます。

自意識過剰とは、どういう状態?

自意識過剰とは、どういう状態?

自意識過剰とは、簡単にいうと、自分のことを必要以上に考えすぎてしまう心の状態です。正確にいえば、自意識過剰は自分の考えや価値観、悩みといった内面的な部分に向き合う意識と、「自分は周りからどう思われているんだろう」という外部からのイメージや考えに深く囚われてしまう意識の2種類に分けられます。

しかし、どちらも「自分はどうなのか」という意識が過剰になってしまっている状態には変わりないので、自意識過剰は、必要以上に自分のことについて考え込んでしまう状態のことといえるでしょう。

自意識過剰と被害妄想との違い

被害妄想とは、自意識過剰がさらに過大となった状態を意味します。例えば、自分が離れた場所で知人同士が話していたのを見かけたとします。自意識過剰の人は「自分の話をしてるのかな?」程度の考えに留まりますが、被害妄想の場合は、「自分の悪口を言っているに違いない!」という考えにまで及んでしまうのです。

自意識過剰は病気なの?

自分のことを考えすぎるのは、悪いことではありません。客観的に周りから見た自分を考えることは、社会生活を営む上でも大切です。そのため、健康的なレベルで適度に自己について意識するのであれば、特別問題はないでしょう。

しかし、過剰に考えてしまうことで、人前に出ることに強い不安や恐怖を感じる「社交不安障害」と診断されるケースもあります。自分自身の心身の健康に影響をもたらさないよう、深く考えすぎないよう注意が必要です。

自意識過剰な人にはどんな特徴がある?

自意識過剰な人にはどんな特徴がある?

自意識過剰な人の特徴は、主に「ポジティブタイプ」「ネガティブタイプ」の2つに分けられます。それぞれについて見ていきましょう。

ポジティブタイプ

自意識過剰な人のうちポジティブタイプの特徴は、自分の実体よりも自己評価を高く捉える傾向があります。例えば、上司に少し褒められたとすると「自分にはやっぱり能力がある!」のように過信してしまうケースです。この場合、何事も前向きに考えられる人ともいえるかもしれませんが、自分の実力を過信するあまり、早とちりして突っ走ってしまったり、トラブルを引き起こしてしまったりなどにつながることも少なくありません。考えなしの行動で、会社に思わぬ損害をもたらしてしまわないよう注意が必要になります。

ネガティブタイプ

ネガティブタイプは、ポジティブタイプの逆で、自分の実体よりも自己評価を低く捉える傾向があります。例えば、上司から叱責された部下が、「やっぱり自分には能力がないんだ」と落ち込んでしまうケース。この場合は、上司には否定する気持ちがなくても、部下は必要以上にネガティブに捉え、現実とかけ離れた自己評価をしてしまうのです。

【無料診断】あなたの仕事力はどれぐらい?リモートワークにも役立つ仕事力をチェック

自意識過剰になってしまう原因は?

自意識過剰になってしまう原因は?

自意識過剰になる原因には、考え方が大きく影響します。ここでは、自意識過剰な人が取りがちな、思考パターンについて解説します。

心を深読みしすぎる癖がある

相手の心を読もうとしすぎる癖は自意識過剰の原因になります。「相手は自分をどう思っているんだろう」と考えるあまり、相手の反応や評価を気にして本音を伝えられず、愛想笑いなどの行動にも現れてしまいます。人によっては謙虚と評価される一方で、この癖を続けると、気持ちが病んでしまったり、悩みを抱え込んでしまったりするケースも考えられるでしょう。

「自己関連付け」をしてしまう

自己関連付けとは、外部の情報を何でも自分と紐づける考え方のことです。例えば、チーム一丸となってプロジェクトに取り組んだけれど、失敗してしまった場合に「チームの失敗はすべて私のせいだ」と自分だけで考え込んでしまうケース。自己関連付けによって「物事のすべては自分のせいだ」のように捉えることで、自責の念が強くなってしまうのです。最悪の場合、それが原因となって心の健康を損ねることにもなりかねません。

考え方に癖や習慣がついている

子どもの頃から、「よく考えて行動するべきだ」「もっと自分と向き合わなきゃ」と意識してきた場合、それが原因で自分の考え方に癖や習慣がついてしまっていることがあります。このような思考パターンを幼い頃から培ってきている場合、大人になってからも癖や習慣化として現れてしまうのです。そのため、ビジネスでは、とにかく自信がなく、自分の考えを発言したり表現したりすることが難しくなるといったことにもつながってしまいます。

【無料診断】そのモヤモヤの原因は?キャリアのヒントが見つかる「モヤモヤ解消診断」

自意識過剰がビジネスに影響する場面って?

自意識過剰がビジネスに影響する場面って?

自意識過剰は、ビジネスにおいても悪い影響を与えてしまうケースがあります。例えば、周りの評価が過剰に気になって誰にも相談できず1人で悩むことで、ストレスを抱えてメンタルヘルスが悪くなってしまうなどです。ほかにも、相手に気遣いすぎてしまうことで、会議やミーティングで積極的に発言できなかったり、コミュニケーションをスムーズに図れなかったりなども考えられます。こうなると、結果として成績や人事評価などを下げてしまうこともあるでしょう。

「辞めたい」と思ったら…仕事の不満度チェック

自意識過剰を改善するための方法とは?

自意識過剰を改善するための方法とは?

自意識過剰な性格を改善したいという場合は、どのような点に注意すればいいのでしょうか。まずは以下の改善点を意識しながら、自分を見つめなおしてみましょう。

人の心は完全に理解できるわけではないと割り切る

そもそも、自分以外の人の心を完璧に理解することは不可能です。そのため、他人の心を深読みしすぎる癖がある場合は、割り切ってしまうことも大切になります。相手の心を推し測ろうとすればするほど、時間もかかる上、相手に対して変な先入観を持ってしまうこともあります。そのため、無理に相手の心を読もうとするのではなく、適度なタイミングでやめて、自分が今取り組むべき目の前の作業に切り替えて取り組むようにしましょう。

相手の発言を何でも自分に関連付けない

相手の発言を何でも自分に関連付けし続けると、自分自身が余計に疲弊してしまいます。そうなる前に「これ以上考えても答えは出ないし…」と、いったん考えるのをやめるようにしましょう。おすすめの方法として、思考中断法があります。この方法は「考えるのはおしまい!」と自分で自分に声をかけるものなのですが、合わせて、体に合図を送るのも効果的です。具体的には、顔や手、お腹を一緒にパンパンと軽く叩いたり、「よし!」と拍手したりなど、このように体に合図を送り、気持ちを切り替えるのがいいでしょう。

自意識過剰であることを受け入れる

自分自身が自意識過剰であることに気づくだけでも、十分改善が期待できます。方法としては、自分を客観的に観察する意識を持つメタ認知トレーニングや、瞑想のようなマインドフルネスを活用しましょう。自分自身を俯瞰して見つめ、「今、考えなくてもいいこと考えすぎちゃってるかも…」と気づくことが重要になります。

【最新版】社会人の平均年収はどれぐらい?年代別・職種別・業種別ランキング

自意識過剰な人への接し方

自意識過剰な人への接し方

職場や身近に自意識過剰な人がいた場合、どのような接し方をすればいいのでしょうか。次のことを意識してみましょう。

打ち明けやすい雰囲気をつくる

自意識過剰な人は、一人で抱え込む傾向にあります。そのため、話しやすくなるような雰囲気づくりを心がけましょう。特に抱え込んでいそうな人には、「何か悩んでない?」「最近困ってない?」とこまめに声をかけてきっかけをつくってあげると、打ち明けやすくなります。中でも自己開示が苦手な人は、話すこと自体苦手な性質があるので、一対一で話せる環境を整えてあげるのも効果的です。

別の見方はないかと促す

自意識過剰な人が、根拠が明確ではないことで悩んでいたら、自分一人で考えを反芻してしまっている可能性があります。そのため、しっかりと話を聞いて受け止めつつ、別の見方はできないかどうか、考えを促してあげましょう。例えば「それは実際あったことなの?」「別の見方はできないの?」といった声のかけ方が有効です。相手の悩みを解きほぐしつつ、考える方向性の修正を提案しましょう。

自分と相手の問題を分けて考えるように意識する

どのように相手をケアしようとしても自意識過剰が改善されず、その状態に自分が疲れてしまうこともあるかもしれません。この場合、無理に助けようと必死になるのではなく、あたたかく見守る姿勢も大切になります。

このようなケースでは、アドラー心理学の一つである「課題の分離」という、自分と相手の問題を分け、必要以上に思い悩まない姿勢をとる考え方を用いましょう。

自意識過剰にはプラスの側面も

自意識過剰にはプラスの側面も

自意識過剰は、悪いことばかりというわけではありません。見方を変えると、その性質がプラスに働く場合もあります。例えば、自意識過剰のうち「ポジティブタイプ」の特徴の人は、確かに突っ走ってしまうところはあるかもしれません。しかし、言い換えれば、その分自信にあふれていたり、コミュニケーションをとるのが得意といえたりします。

そのため、プレゼンで大いに企画力を発揮する人や、関係構築がうまい人として認められる可能性も考えられるしょう。さらに、相手の心を読みすぎる癖は、気遣いができる人ともいえ、顧客や社内のスタッフへのきめ細やかな対応が評価されることもあるかもしれません。つまり、自意識過剰は一概に悪いものとはいえず、よい側面も含んでいるのです。

【無料診断】いまの仕事に対する満足度は?仕事探しの軸がわかる

自意識過剰と上手く付き合う

自意識過剰は、ビジネスにおいて早とちりして突っ走ってしまったり、自信がなく自分の意見をいえなかったり、もしくはストレスを抱えて心身ともに悪い影響を及ぼしてしまう可能性があります。なので、過剰に考え込んでしまうことは避けるべきといえるでしょう。ただし、自意識過剰にはプラスの側面もあります。そのため、改善する意識を持ちつつ、自意識過剰な性格と上手に付き合うことが大切です。

監修:ダイレクトコミュニケーション 代表取締役 川島達史
目白大学大学院心理学研究科を修了し、現在ではコミュニケーション講座の講師として、心理学や人間関係に関するワークを行う。専門は成人のソーシャルスキルが孤独感・対人不安に与える影響。普段は「コミュニケーション講座」の主催や、YouTubeチャンネル「ダイコミュ大学」による情報発信を行っている。

【関連記事】
人間関係リセット症候群とは? 原因や解決方法を公認心理師が解説
知っておくと職場の人間関係が楽になる!? 人間関係における「好き」「嫌い」のメカニズム
嫌なことを気にしない方法は?職場で役立つマインドセットを手に入れよう

page top